第426話 ぬくもり
本日は2話更新になります。
こちらは1話目です。
<セレスティーヌ視点>
「「「「「おおぉ!!!」」」」」
「「「「「やったぞ!!!」」」」」
「「「「「ディアナ!!!」」」」」
ディアナの勝利に周りの騎士たちが大騒ぎしている。
「ディアナ、よくやったぜ!!」
「セレス様、やりました! ディアナさん、勝ちましたよ!!」
ヴァーンさんもシアも大喜びだ。
「……そう、ね」
私も嬉しい。
ディアナのことを誇らしく思う。
なのに……。
この感じは?
胸に走る鈍痛。
喉が詰まるような感覚は……。
「セレス様?」
「……」
覚えがある。
「セレス様!?」
記憶の中、いいえ、幻視で覚えた痛みに似ている。
「……ゴホッ」
咳?
この咳……。
ディアナの試合に夢中になり過ぎて、違和感に気付けなかった。
でも、今ははっきりと分かる。
感じる。
あっ!?
自覚した途端、急激に体が重くなって……。
「セレス様、お顔の色が!」
「シア……」
「どうされたのですか? お辛いのですか? セレス様、セレス様!!」
「ゴホッ、ゴホゥッ!!」
「「「セレス様!?」」」
「セレスさん!!」
シア、アル、ユーフィリア。
そして、ヴァーンさんが私を覗き込んでくる。
「セレス様……」
コーキさんが呆然とした表情で見つめている。
けど、私は……。
「……」
上手く喋れない。
やっぱり、あの症状と同じ!!
でも、どうして?
さっきまで何ともなかったのに?
何もされてないのに……。
……。
「コー……キさん……ゴホッ、ゴホッ!」
身体から力が抜けていく。
重い!
苦しい!!
「「「「「セレス様!!」」」」」
ガシャーン!!
椅子に座っていることもできず、身体ごと地面に倒れて……。
「ゴホッ!!」
うぅ。
息ができない。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥッ!!」
口を押さえた掌に血!?
喀血!!
「はあ、はあ……うぅ……」
もう、間違いない。
「ゴホッ!!」
もう動けない。
もう、もう……。
「セレス様ぁ! 今すぐ薬を、薬を用意しますから!!」
手を取ってくれるのは……シア?
抱えてくれるのは……コーキさん?
「セレス様、これを!!」
魔法、薬?
でも……力が……。
「失礼します」
「うっ! ううぅ……ゴホッ、ゴボォ」
飲ませてくれた?
コーキさん?
魔法薬が喉に、胸に沁みていく……。
「セレス様、楽になりましたか? 楽になりましたよね? ねえ、セレス様!!」
「シア……」
泣かないで。
少し楽になったから。
「効いてます? よかったぁ! セレス様、効いたんですね!」
「セレスさん、大丈夫だ。魔法薬が効けば問題ないからよ」
シア、ヴァーンさん……。
「あり、がとう」
「セレスティーヌ様、大丈夫です。治ります!」
「セレス様、気を確かに!」
みんな……ありがとう。
でもね……。
私は知っているの。
今は少し楽になってるけど……。
「もう一度魔法薬を!」
「治癒魔法も!」
「……」
もう、長くはもたない……。
「ゴホ、ゴホ、ゴホォッ!!」
手が地面が真っ赤に染まる。
「「「「「「セレス様!!」」」」」」
「「「「「「セレスティーヌ様!!」」」」」」
「……」
……。
……。
…………嫌だ!!
やっと、戻って来れたのに。
これからなのに!
どうして!?
「はあ、はあ……」
まだ、ここにいたい。
みんなと一緒にいたい!!
「ゴホッ!」
いや!
ひとりになりたくない!
「ゴホッ、ゴホォ!!」
「セレス様!!」
ああ……。
ワディンも……。
コーキさんとも……。
もっと、もっと……。
ここで私は……。
…………悔しい!!
「セレス様!!」
「……」
悔しい。
寂しい。
怖い。
ひとりはいや!!
「ゴホォッ!!」
「セレス様ぁ!!?」
ひとりは……。
「うぅ……」
コーキ、さん……。
あなたの顔を見せ、て……。
触れさせ、て……。
「ゴホッ……」
暗い!
あなた、が、見えない。
ど、こ?
コーキ……さん?
「……さま!!」
聞こえ、ない……。
見えな、い……。
怖い……。
怖いよ……。
「……さま!!」
コーキ、さん??
手を、あなた、の顔に……あっ?
あたた、かい。
これ、は……コーキさん、手?
あな、たの、ぬくもり……。
ぬくもり、が……。
……。
……。
……。





