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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
430/701

第426話  ぬくもり

本日は2話更新になります。

こちらは1話目です。


<セレスティーヌ視点>




「「「「「おおぉ!!!」」」」」

「「「「「やったぞ!!!」」」」」

「「「「「ディアナ!!!」」」」」


 ディアナの勝利に周りの騎士たちが大騒ぎしている。


「ディアナ、よくやったぜ!!」


「セレス様、やりました! ディアナさん、勝ちましたよ!!」


 ヴァーンさんもシアも大喜びだ。


「……そう、ね」


 私も嬉しい。

 ディアナのことを誇らしく思う。


 なのに……。


 この感じは?

 胸に走る鈍痛。

 喉が詰まるような感覚は……。


「セレス様?」


「……」


 覚えがある。


「セレス様!?」


 記憶の中、いいえ、幻視で覚えた痛みに似ている。


「……ゴホッ」


 咳?

 この咳……。


 ディアナの試合に夢中になり過ぎて、違和感に気付けなかった。

 でも、今ははっきりと分かる。

 感じる。


 あっ!?


 自覚した途端、急激に体が重くなって……。



「セレス様、お顔の色が!」


「シア……」


「どうされたのですか? お辛いのですか? セレス様、セレス様!!」


「ゴホッ、ゴホゥッ!!」


「「「セレス様!?」」」


「セレスさん!!」


 シア、アル、ユーフィリア。

 そして、ヴァーンさんが私を覗き込んでくる。


「セレス様……」


 コーキさんが呆然とした表情で見つめている。

 けど、私は……。


「……」


 上手く喋れない。

 やっぱり、あの症状と同じ!!


 でも、どうして?

 さっきまで何ともなかったのに?

 何もされてないのに……。


 ……。


「コー……キさん……ゴホッ、ゴホッ!」


 身体から力が抜けていく。


 重い!

 苦しい!!


「「「「「セレス様!!」」」」」


 ガシャーン!!


 椅子に座っていることもできず、身体ごと地面に倒れて……。


「ゴホッ!!」


 うぅ。

 息ができない。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥッ!!」


 口を押さえた掌に血!?

 喀血!!


「はあ、はあ……うぅ……」


 もう、間違いない。


「ゴホッ!!」


 もう動けない。

 もう、もう……。


「セレス様ぁ! 今すぐ薬を、薬を用意しますから!!」


 手を取ってくれるのは……シア?

 抱えてくれるのは……コーキさん?


「セレス様、これを!!」


 魔法、薬?

 でも……力が……。


「失礼します」


「うっ! ううぅ……ゴホッ、ゴボォ」


 飲ませてくれた?

 コーキさん?


 魔法薬が喉に、胸に沁みていく……。


「セレス様、楽になりましたか? 楽になりましたよね? ねえ、セレス様!!」


「シア……」


 泣かないで。

 少し楽になったから。


「効いてます? よかったぁ! セレス様、効いたんですね!」


「セレスさん、大丈夫だ。魔法薬が効けば問題ないからよ」


 シア、ヴァーンさん……。


「あり、がとう」


「セレスティーヌ様、大丈夫です。治ります!」


「セレス様、気を確かに!」


 みんな……ありがとう。


 でもね……。


 私は知っているの。

 今は少し楽になってるけど……。


「もう一度魔法薬を!」


「治癒魔法も!」


「……」


 もう、長くはもたない……。


「ゴホ、ゴホ、ゴホォッ!!」


 手が地面が真っ赤に染まる。


「「「「「「セレス様!!」」」」」」


「「「「「「セレスティーヌ様!!」」」」」」


「……」


 ……。


 ……。


 …………嫌だ!!


 やっと、戻って来れたのに。

 これからなのに!


 どうして!?


「はあ、はあ……」


 まだ、ここにいたい。

 みんなと一緒にいたい!!


「ゴホッ!」


 いや!

 ひとりになりたくない!


「ゴホッ、ゴホォ!!」


「セレス様!!」


 ああ……。


 ワディンも……。

 コーキさんとも……。


 もっと、もっと……。


 ここで私は……。


 …………悔しい!!


「セレス様!!」


「……」


 悔しい。

 寂しい。

 怖い。


 ひとりはいや!!


「ゴホォッ!!」


「セレス様ぁ!!?」


 ひとりは……。


「うぅ……」


 コーキ、さん……。


 あなたの顔を見せ、て……。

 触れさせ、て……。


「ゴホッ……」


 暗い!

 あなた、が、見えない。

 ど、こ?


 コーキ……さん?


「……さま!!」


 聞こえ、ない……。

 見えな、い……。


 怖い……。

 怖いよ……。


「……さま!!」


 コーキ、さん??


 手を、あなた、の顔に……あっ?


 あたた、かい。

 これ、は……コーキさん、手?


 あな、たの、ぬくもり……。


 ぬくもり、が……。


 ……。


 ……。


 ……。






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― 新着の感想 ―
[良い点]  セレス様が。  ああ、どうなるのか、でも今回は原因は判明したから何とかなりますよね? [一言]  お疲れ様です。  無理なさらず。  次回も楽しみ。頑張ってください。
[良い点]  ぎゃー!  犯人は誰!? [一言]  結局読んでしまう(笑)
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