表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
421/701

第417話  覚醒



「先生……」


 シアのこの表情。

 普通じゃない。

 只事とはとても思えない。


 不吉な予感が、否応なく鎌首をもたげてくる。


 そんなはずはないのに!


 ……。


 昨夜、幸奈をシアたちに任せて部屋に戻った後。

 朝までずっと、幸奈の休む家屋周りの気配を探り続けていたんだ。


 本来ならセレス様の身に危害が及んでいたはずの宴での4時間。

 犯人も手段も分からない状況で、あの時間を無事に切り抜けられたのは、こちらにとって僥倖だった。と同時に犯人にとっては計画外だったことだろう。


 そんな犯人の次の動きは?

 深夜から未明にかけて、行動に移る可能性が高いんじゃないのか?


 なら、俺は幸奈と離れ、罠を張った方がいい。

 気配察知の感度を最大限に上げて家屋周辺を探っておけば、侵入者が現れた時点で俺がそいつを取り押さえることができる。この惨事を回避し、解決できる。


 そう考えたから、シア、ディアナ、ユーフィリア、ノワールに警護を任せ、俺は幸奈と離れ徹夜で気配を探り続けたんだ。


 結果、今の今まで侵入者どころかあやしい者すら現れなかった。


 なのに、シアのこの真っ青な顔色は!?

 まさか?



「先生……セレス様が……」


 セレス様という言葉が出た瞬間。

 一気に身体が強張ってしまう。

 心臓が激しく走り出す。


「セレス様が、目を覚まさないんです」


 ……え?

 目を、覚まさないだって?


「……」


 ということは。


「呼吸はあるんだな?」


「は、はい。それは、はい。でも、どれだけ声をかけても反応してくれなくて」


 息がある。

 生きてるんだな!


 ああ……。

 安堵のあまり、強張っていた身体から力が抜けていく。


 よかった。

 本当に……。


 もし、あの惨劇が繰り返されていたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれないのだから。


「先生、早く部屋に来てセレス様の様子を見てください」


「分かった。急ごう」


「姉さん、おれも行く」


 シアと共に俺とアル、ヴァーンが幸奈の眠る部屋へ。



「セレス様!」


「セレスさん!」


 眠り続ける幸奈の傍らには、ディアナとユーフィリアが控えている。

 空気は重い。


「セレスさん、起きてくれ。セレスさん!!」


 ヴァーンがすぐ近くで声をかけるが、反応はまったく見られない。


「セレス様……」


 今にも涙が溢れそうなシア。


 けど、大丈夫だ。

 息があるなら、何とでもなる。


「シア、少し落ち着け。治療すれば良くなるはずだから」


「……はい」


「コーキ殿、セレス様は目を覚まされるのか?」


「すぐに覚醒するかは分からない。が、大きな問題にはならないはずだ」


 仮に俺の治療で目を覚まさなかったとしても、命さえ無事ならやり様はある。


「そうか……」



 試すのは、治癒魔法と魔法薬。

 収納から魔法薬を取り出し、魔力と気を整え……治療の準備は完了。

 治療開始、のその前に。


「少し教えてくれ。昨夜、俺たちがこの部屋を出た後、何か変わったことは?」


「何もないです。セレス様がお休みになった後も、わたしたちが交替で不寝番をしていましたが、特に何も。それなのに……。」


 襲撃がなかったことは察知済み。

 それ以外の問題もないと。


「セレス様がこのような状態になるのは今回が初めてなのか?」


「……そういえば、この容態は。カーンゴルム近くの隠れ里で倒れた時と似ている気がします」


「ああ、そうだ。あの時もこんな感じだったぜ」


「それは、セレス様が記憶を失くした時のことだな?」


「はい」


「……分かった。とりあえず治療をしてみよう」


 まずは治癒魔法を発動。

 ゆっくりと全身に治癒の光を行き届かせる。


「「「「「……」」」」」


 固唾をのんで見守る5人の前で、治癒魔法による治療を進めていく。


 ……。


 この世界に戻ってきた当初は全く自信のなかった俺の治癒魔法。

 けど今は。


 エンノアの民の病を癒し、魔落で自分とセレス様に治療を行い、その後も何度も治癒魔法を行使し続けてきた。だから、それなりのモノになってきたというささやかな自負もある。


 自負と自信をもって、今は幸奈の治療をするだけだ。


「「「「「……」」」」」


 この辺り……。

 魔力の通りが良くないな。


 少々強めに治癒を行使……。

 よし、通りが良くなったぞ。


 ここと、そこもだな。


 ……。


 ……。


 治癒を続けること数分。

 そろそろ魔法薬を試す頃合だろう。


 一度、治癒魔法を終了して。

 魔法薬を取り出したものの……。


 この状態で、どうやって飲ませればいい?

 上手く体内に入れるには?


「コーキ、口移しでいいんじゃねえか」


 おい、ヴァーン!


「戯言を! 貴様は高貴なる血というものを理解しておらぬのか!」


「はっ、そんな場合じゃねえだろ。お前こそ、状況を理解しろ!」


「何だと!!」


「ヴァーン、ディアナ、争っている場合じゃない」


 珍しくユーフィリアが止めに入った。


「そうだぜ。ふたりともやめてくれよ」


「……」


「……」


「で、コーキさん、どうする?」


 薬を飲ませたいが、肺に入ると大変なことになるんだ。

 どうすれば……。


 いや、これは水じゃない。

 魔法薬なら、平気なのか?


 分からない……。


 と、使用法に悩んでいるところに。


「……んっ、んん」


 これは!?


「セレス様!!」


 幸奈の口から漏れ出た声に反応するように、シアが幸奈の手を。


「……」


 期待と緊張が部屋を包み込んでいく。


 ……。


 ……。


「んん…………えっ!?」


 幸奈の目が開いた!


「ここは……」


「ああ、セレス様ぁ!! ……よかった」


「…………シア? シアなの?」


「そうです! シアですよ」


「……」


「「「セレス様」」」


「目を覚ましてくれて良かったぜ、セレスさん」


「クゥーン」


 治癒魔法が効いたってことか。

 けど……。

 寝具の上に身を起こしたこの様子は?


「……アル、ディアナ、ユーフィリア。ヴァーンさん。ノワールも」


「はい、みんな揃っています」


「……」


「セレス様、お辛いのですか? でしたら、もう少し横になっていてください」


「……大丈夫。でも、少しだけ時間を貰えるかしら?」


「はい、もちろんです」


 幸奈が目を瞑り、何かを考えるように額を手で押さえている。

 そのまま数分が過ぎ。


 ……。


 ……。


「セレス様?」


「ありがとう。もう大丈夫よ」


「いえ……。お辛くないですか?」


「ええ」


「良かったです。……あの、セレス様?」


「どうしたの?」


「その……記憶が完全に戻られたのですか?」


「……ええ、戻ったみたい」


「っ!?」


「「「セレス様!!」」」


「クゥーン」


「……皆には、心配をかけたようね。でも、もう問題ないから」


 やはり、これはそういうことなのか?

 けど、どうして?

 そんなはずじゃ??






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点]  んんん?  まさか中身はセレス様!?  一体………
[一言] んん?魂替は関係ない??
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ