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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
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第412話  真実は?



 さっきの不思議な感覚。

 移動したという事実。


 それなら、時間遡行を発動したってことか?

 そのはずなのに、どうして日本じゃないんだ?


 ……。


 いったい、どうなってる?



「功己?」


「!?」


 背後からかけられた声。

 その声色に、一瞬で胸が詰まってしまう。


 期待と不安に振り向く俺の目に入ってきたのは……。


「……セレス様?」


 ああ!

 セレス様が無事に!!


 よかった……。


 本当によかった……。



「……功己?」


「……」


 時間遡行できたんだ!

 無事にセレス様のいる過去に!


 その事実を前に、言葉が出てこない。


「……どうしたの?」


「……」


 俺を見上げてくる姿はセレス様そのもの。

 その姿を見ているだけで、安堵と喜びが溢れてくる。


 けど、この様子は……。

 幸奈?


「……幸奈か?」


「へっ?」


 目を丸くしている。

 この反応は幸奈だ。


「幸奈だよな?」


「どうして、そんなこと聞くの? 今まで一緒に話していたのに」


 幸奈だ!


 しかし、今まで一緒に話をしていた?

 ここで?


「……」


 と、いうことは。

 今は異世界間移動で日本に戻る前?

 まさか、4時間半前??


「功己……大丈夫?」


「……ああ」


 4時間遡行のギフトで4時間半を遡行したって?

 そんな馬鹿な!


 今の時間は?

 懐中時計で確認を……。


 ない!

 ポケットに入ってないぞ!


 どうして?


 あっ、幸奈に渡したのか?


「幸奈、懐中時計持ってるよな?」


「今渡してもらったこれのこと」


 幸奈の手の中にある懐中時計。

 その時計で時間を確認すると、表示は20時過ぎ。

 4時間半前だ!


「……」


 しかも、正面には俺の部屋への扉。

 広場からも喧騒が聞こえてくる。


 間違いない。


「ちょっと、おかしいわよ、功己? 本当に平気なの?」


 4時間半という時間を遡行した。

 20時という時間に戻ってきた!


「功己!」


「……大丈夫。問題ない」


 この状況、まったく理解できないけれど。

 問題はない。

 むしろ、ありがたい!


「……」


「……」


 これまでの俺の態度は、明らかにあやしいよな。

 幸奈も怪訝そうにこっちを見ている。


「……ちょっと疲れてるだけで、心配するほどじゃないぞ」


「ほんとに?」


「ああ、本当だ」


「うーん……分かった。そういう事にしておいてあげるよ」


 悪い。

 今は見逃してくれ。


「……で、何の話だった?」


「今から日本に戻るって話でしょ」


 まさに今、異世界間移動を使う時点に遡行したってことか。


「そうだったな」


 この状況……。


 4時間半遡行した原因は分からない。

 異世界間移動の影響か?

 単なる誤差か?


 全く分からない。

 けど、それでいい。


 そんなことより……。


 セレス様は日本で古野白さんたちと一緒にいるはず。

 もちろん、無事だろう。

 セレス様の身体を持つ幸奈も目の前に健在だ。


 なら、俺がすることはひとつ。

 あの悲劇を防ぐだけ。


「功己、移動しないの?」


「ん? ……ちょっと延期しようと思う」


「ええ? さっきあれだけ話したのに!」


「やり残したことを思い出したんだ」


「そんな、急にどうして? 功己、やっぱりおかしいよ!」


 こっちとしては矛盾のない行動。

 けど、幸奈には不自然に映るよな。


「悪い。今は言えない。ただ、これには確かな理由があるんだ。今は俺を信じてほしい」


「……」


「頼む!」


「……うん、分かった」


「助かるよ」


「まっ、わたしは功己のこと信じてるからさ。いつもね」


「……俺も幸奈のことは信用している」


「へっ、へえ~。そうなんだぁ」


「……」


「えっと、あの、それで、これからどうするの?」


「そうだな……」


 本来なら、この後にセレス様の身に起きるであろう悲劇。

 それを繰り返さないためには何をすればいい?


 いや、違うか。

 ここにはセレス様はいないんだ。

 なら、あの悲劇は幸奈を襲うことになる。


 何としても幸奈を護らないと!


 ただ……。


 セレス様が倒れた原因は不明のまま。


 ……。


 24時のセレス様。

 真っ赤に染まった姿。

 あの状況は、魔落脱出後の悪夢のような惨事と酷似している。


 とはいえ、全く同じものかと言われれば……その判断はつかない。

 あの時と同様の激しい咳症状があったのかも分かっていない。


 今判明している類似点は、真っ赤に染まったさっきの様子と、それがテポレン山で起きたという事実だけ。


 ……失敗したな。


 前の時間の流れの中で、日本に戻ってきた幸奈にもっと詳しく状況を聞いておくべきだったんだ?

 せめて、咳があったのかどうかだけでも。


 ……。


 まいった。

 今手にしている材料だけでは、方針を定められない。

 目処が立たない。


 けど……。


 やるしかないんだ。

 そう。

 考えられることを、試してみるしかない。


「功己?」


「……ああ、ちょっと時間をもらっていいか?」


「いいけど……」


「悪いな」


 何をどう試すべきか?

 まずは、今回の原因について仮説を立ててみよう。

 魔落後に考えた仮説も踏まえると……。


1、セレス様の持病

2、菌やウィルスなどの感染

3、魔物による負傷


 そして。


4、魔法、呪い

5、毒


 すぐに思いつく原因はこんなもの。

 一般論に過ぎない。


 ただ、あの時、あの神域で……。


 どうやってもセレス様を完治させることができなかった俺が、トトメリウス様から聞いた。


『人どもの間の問題には干渉しない』


 この言葉。

 そこから導き出した。


 原因は人にある。

 セレス様に害を与えた者がいる。


 という考え。

 これをトトメリウス様は否定しなかった。


 それなら、今回のセレス様の症状も……。

 人の手によるもの。

 魔法、呪い、毒、あるいは人為的な感染。


 そう考えてもいいんじゃないのか?


 もちろん、前回とは違う原因だと考えることもできる。

 が、やはり、ここは第三者によるもの。

 その可能性が高い。


 つまり……。


 注意すべき相手が、この地下にいる……。


 ここに犯人がいる!?





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― 新着の感想 ―
[一言] 今近くに犯人がいる? うーん、なんか色々気になる人がいすぎて逆に分からない( ̄▽ ̄;)
[良い点]  いるといいのですが……  にしても神娘を捕らえたい王軍の中にセレス様に害する人間がいるのでしょうか。ううむ……手段もそうですが、理由も謎ですね
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