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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
415/701

第411話  例外?



 ……。


 ……。


 俺の腕の中。

 目を開くことのないセレス……。


 また彼女にこんなことを……。

 凄惨な経験を……。


 ……。


 ……。


 苦い。

 痛い。


 胸に灼熱の大釘を打ちつけられたかのように。

 無理やり心に風穴を開けられたように。

 痛苦と虚無が絶え間なく押し寄せてくる。


 ……。


 腕に感じる存在の儚さ。


 光が消えていく……。

 暗い……。


 目の前が歪んで、立つことができない。

 動けない。


 ……。


 ……。


 ……。


 悲しみと痛みと悔恨と自己嫌悪。


 制御も理解もできない感覚のまま。

 どれくらい廊下に佇んでいただろう。


 ……。


 はは……。

 馬鹿だな、俺は。


 何度同じ失敗をして、何度自己満足の後悔に浸れば気が済むんだ。


 何度経験しても、学んでいない。

 成長していない。

 ほんと、何をやってんだ。


 まだできることがあるのに、情けない。


 ……。


「セレス……」


 助けてやる。

 必ずだ!


 この手の中のあなたを助けることはできないけれど。

 もう一度あなたを!


 今はしっかりと感じるこの重み。

 次は亡くしはしない!!


 ……。


 ……。


 2刻(4時間)の時間遡行。

 今使うことができて良かった。

 これがなかったら、何の術もなかったのだから。


 時の神様には感謝しかないな。

 こんなに都合よく、俺の未来を見透かしていたかのようなタイミングであっても。

 この力には感謝しかない。


 そう、今は感謝しか……。



 よし、戻るぞ!


 今はこちらの時間で12刻過ぎ(24時30分頃)。

 遡行で4時間戻ると、20時30分か。

 その時間の俺は……!?


 まずい!!

 こっちの20時30分に俺はこの地に存在していない。

 日本に移動した後だ。


 なら、どうなる?


 日本の早朝に遡行すると?

 時間遡行で世界を渡ると?


 そんなことが可能なのか?


 ……。


 分からない。

 どうなるのか、全く見当もつかない。


 失敗すればもう……。


 ……。


 けど、時間遡行を試すしか術はないんだ。

 過去に遡行して、セレス様を救う。

 試すだけだろ!


 とにかく、やるしかない!

 今は上手くいくことだけを考えるんだ!


 その時間遡行、上手く発動したとすると……。

 まずは早朝の日本に戻り、その後また異世界間移動でこっちの世界に……って、待てよ!?


 日本からこの世界に渡るまでには12時間の制限があるんだぞ。

 今から早朝の日本に遡行して、そこから12時間後ということは、さっき俺がこっちに戻った時間と同じ時にしか戻れないってことになるのか?


 つまり、俺がこの地に戻った時にはセレス様は既に……。


 駄目だ!

 それじゃ、救うことができない。

 同じことを繰り返すだけになる。

 遡行する意味がない!


 いや……。

 違う。

 意味はある!


 時間遡行を連続で使えばいいじゃないか!

 都合の良いことに、幸いなことに、前回のクエスト報酬で時間遡行を2つ手に入れることができたんだ。

 それをすべて使えばいい。


 1つ目で日本の早朝に戻り、2つ目でこっちの世界の宴開始時間に戻れるはず。

 それで助けることができる。

 上手くいく!


 ただ、問題は……。


 本当に4時間戻れるのか?

 時間遡行で異世界間を渡れるのか?


 できなければ……おしまいだ。



 トン、トン!


 玄関の扉が叩かれる音?

 誰が?


「先生、セレス様は御一緒ですか?」


「コーキ殿! セレスティーヌ様のお姿が見えないのです」


 シアとディアナ、それにユーフィリアがセレス様を探しに来た?


「先生、お部屋にいないんですか?」


「……」


 ここで3人を招き入れても、いたずらに彼女たちを悲しませるだけ。

 それなら、このまま……。


 ここで時間遡行を使うべき?


 ……上手く発動するかは分からない。

 けど、悩んでも何も変わることはない。


 だから。


 ドン、ドン!


「先生?」

「コーキ殿!」

「コーキさん!」


 3人とも、ごめん。


 この時間軸がどう流れていくのか?

 俺には分からないし、もう、どうすることもできない。


 ただ、俺は……。


「……時間遡行!!」


 ……。


 ……。


 久々に感じるこの奇妙な感覚。

 よし、時間を遡行しているぞ。

 肝心なのは異世界である日本に渡れるかどうかだが……。


 戻った視界の中に入ってきたのは……。


 ……!?


 この空気、この眺め。

 日本じゃない!?


 エンノアの地下都市なのか?


 ……。


 失敗した?

 過去に戻れなかった?


 そんな馬鹿な!

 さっきの感覚は時間遡行のそれだった。

 明らかにそうだった。


 4時間遡行できたはず。

 なのに、ここは……日本じゃない。


 ……。


 ……。


 失敗なんて、嘘だろ。

 そんなこと!


 ……。


 でも、ここはあの廊下じゃない。

 場所が移動している。


 ということは……。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  異世界にいたまま四時間の時間遡行!?  それなら……  いや、やっぱり2回使わないと救えない気がしますね……
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