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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
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第408話  発動?



「早くセレスさんと入れ替わらないとね」


 確かに、早い方がいいとは思うが。


「多分、今なら異能を使えるんじゃないかな。……うん、大丈夫。何とかなりそ」


「幸奈、今すぐに異能を使うつもりなのか?」


「そうだよ。早く替わってあげたいから」


「いや、待ってくれ。まだ準備ができてないだろ。幸奈もセレス様も」


 入れ替わる前に、色々とやることがあるはずだよな?


「そんなことないよ。それに、問題があっても魂替をもう一度使えばいいし。まずはちゃんと発動するか試さないとね」


「……だから、今試すと?」


「うん。案ずるより産むが易しって言うでしょ」


 幸奈、こんな性格だったか?


 ……。


 セレス様として暮らすことで、変わったってことか?


「じゃあ、始めるね」


「幸奈、ちょ……」


「魂替!!」


「おい……」


 やってしまった。


「……」


「……」


「……あれ? おかしいなぁ?」


 発動しない。


「なら、もう一度。魂替!!」


「……」


「……」


 やはり発動しない。


「替わらない……」


「……」


「……功己、何も起こらないよ! どうしよ?」


 どうしたらいい?

 俺に原因など分かるわけないが……。


「幸奈が最初に異能を使った時と何か違いがあるか?」


「最初って、日本でのことかな?」


「そうだ」


「あの時は、異能を使った自覚なんてないから。気づいたら、こっちの世界にいただけだし……」


 前回の魂替は、幸奈がオーバードーズで意識を失っている間に発動したもの。

 つまり、無意識に異能を使ったと。

 けど、それなら。


「今発動しようとしていただろ。その方法はどうして分かったんだ?」


「それはぁ……なんとなく?」


 なんとなく分かるものなのか?


「こう、パッとすればサッとできる、みたいな」


「……」


 それ、全く伝わらないぞ。


「とにかく、分かるんだよ。それが異能なんじゃないかな」


 そう言い切られてしまえば言葉もないが。


「なら、その感覚で何か気づくことは?」


「うーん……異能を使う力は足りているような気がするし、上手く使えたと思うんだけど。発動が途中で消えちゃった感じがするから……ここと日本が繋がっていないとか?」


「繋がっていないなら、そもそも幸奈がこの世界に来ることもできないだろ」


「まあ、そうだよね。じゃあ、何が違うのかなぁ??」


 今の幸奈と、病室の幸奈。

 違ってる点は……姿からして違うよな。


「……困ったね」


「ああ」


 大問題だ。

 幸奈の記憶が戻っても魂替を使えないんじゃ、ふたりが元に戻ることなんてできないのだから。


「あっ!?」


「どうした?」


「今のわたし、ペンダントを持ってない」


「ペンダント?」


「功己がわたしにプレゼントしてくれたペンダントだよ。あれって、この世界の物だったんでしょ」


 翠緑のペンダント。

 俺が幸奈にプレゼントした魔道具。

 確かに異世界製品だが、それと魂替に何の関係がある?


「あのペンダントが、病室にいたわたしとこの世界を繋いでくれたんじゃないかな?」


「……」


 そんなことが……?


 いや、あり得るかもしれないぞ。

 そもそも、魂替には異世界を渡る力なんて備わっていない。

 なのに、幸奈は日本の誰かと入れ替わるのではなく、異世界のセレスさんと入れ替わった。


 つまり、2つの世界を繋ぐ何らかの力が作用したということ。

 それが翠緑のペンダントの力だと。

 十分に考えられる。


「でも、あのペンダントはあっちのセレスさんが今も身に着けているんだよね。それなら、今も繋がっている状態なのかなぁ?」


「魂替の発動者が身に着けている必要が……いや、魔力か!」


「えっ、何?」


「今のペンダントは魔力が抜けた状態なんだ。だから、2つの世界を繋ぐことができない。魔力による通路が接続されていない。そう考えられるんじゃないか」


「そう、なの?」


「全ては推測に過ぎない。が、試す価値はある」


 いずれにしろ、このままでは入れ替わることはできない。

 考えつくことは全て試すべき。

 その価値はある。


「俺が日本に戻ってセレス様の持つペンダントに魔力を込めてみる。それでも魂替が発動しないなら、次はペンダントをこの世界に持ち帰ってまた試してみればいい」


「うん、そうね。じゃあ、今から戻って?」


「ああ、今からやってみよう」


 失敗に終わる可能性もあるんだ。

 早く試した方がいいだろう。


「わたしはどうしよ?」


「そうだな……」


 俺が日本に戻り、幸奈はこちらで……。


「まず俺が日本に戻り、そこでセレス様に事情を説明して、ふたりで待機する」


「うん」


「次にこちらの世界で、幸奈が魂替発動だ」


「分かった」


「で、入れ替わった幸奈を日本で俺が迎え。その後、俺がこの世界に戻ってセレス様

の様子を見る。この流れで進めよう」


「うん、うん。まっ、上手く発動すればなんだけど」


「発動しなかった場合は、12時間後にペンダントを持って戻るだけだな」


「そうだね」


「あとは、発動のタイミングをどうするか?」


 一度異世界間移動を発動した場合、次に発動するまで12時間が必要となる。

 レベルアップした今の俺の異世界間時差は3:1。

 つまり今俺が日本に移動した場合、再び戻って来るまでに必要な時間は日本で12時間、この世界で4時間ということ。


 さらに困ったことに、今の日本が何時なのかは見当もつかない。

 戻った日本が早朝かもしれないし、深夜かもしれない。


 それを踏まえ、セレス様の都合とこちらに戻る時間を考えると……。


 この後、日本で9~12時間、こっちで3~4時間の間に幸奈が魂替を発動させれば、何とかなるはず。


「幸奈、3~4時間後に魂替を使ってくれるか?」


「それは、いいけど。どういう計算なの?」


「それは……」


 ということで、幸奈に諸々説明し、懐中時計を手渡し。


「異世界間移動!!」





********************


<セレスティーヌ視点(姿は幸奈)>




「そういうことだから、気をつけて」


「分かりました」


 壬生本家であやしい動きがある。

 それは私も何となく分かっていたことだけれど、こうして古野白さんから伝えられると切迫感が違ってくる。


「まっ、何かあったら、オレがすぐに駆けつけっからよ。いつでも電話してくれ」


「武上君に電話するより私の方がいいわ。いつでも、私に連絡してね」


「どうしてだよ?」


「あなたの電話、繋がらないことが多いでしょ」


「んなことねえ」


「ジムだの、お酒だの、寝てただの、これまで何度言い訳を聞いてきたか。鷹郷さんも嘆いていたわよ」


「それは、まあ、たまたま……ちょっとな」


「なので、和見さん。連絡のつかない武上君ではなく、私に電話してね」


「ありがとうございます、古野白さん」


「気にしなくていいのよ」


「そうだぜ、ヒーローに遠慮は無用ってな」


「ふふ。ありがとう、武上君」


「いいってことよ」


 このふたりには、お世話になってばかり。

 コーキさんへの借りを返しているだけだと、言ってくれるけど。

 本当にありがたいことだと思う。


「で、有馬は何してんだ?」


 それは……。


「だから、同じことばかり聞かない。和見さんも困ってるでしょ」


「っても、変な話だろ。あいつ、ホント、どこで何してんだ?」


 私と幸奈さんのため、そしてワディンのために必死に頑張ってくれているコーキさん。

 決して遊んでいるわけじゃない。


 異世界で頑張ってくれています!

 そう言えれば良かったのに。






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― 新着の感想 ―
[良い点]  ペンダントにはそんな力が!?  まあ、意味合いを考えれば当然かもですね!
[一言] おぉ、一気に色々動き出してきた!
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