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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
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第406話  宴 2



「こんな楽しい酒は久しぶりだぜ」

「ああ、生きててよかったぁ」

「美味い、美味いぞ!」

「酒だぁ、酒をくれえ!」



 エンノアの民は酒に慣れていないし、ワディン騎士たちにとっても久しぶりの酒。

 早く酔いが回るのも納得できるが、それでも宴は始まったばかりだというのに。



「アル、お前も飲めぇ! ほろ、もっといけんだろ!」


「おう! 今日は飲むぞぉ!!」


 酒に強いはずのヴァーンまで……。

 アルは程々にしとけよ。


「いい飲みっぷりだぜ!」


「ふ~。あったりまえだ!」


「おっ、シアももっと飲んでいいぞ。セレスさんも!」


「ヴァーンさん、わたしも飲みますよ!」


「セレス様……」


 幸奈も飲むのかよ。


「ヴァーンさん、これ、美味しいわ!」


「そうそう、この酒いけるんだよな」


「エンノアのお酒って美味しいんだ……」


 いや、違うぞ。

 それ、俺が提供した日本の酒だからな。


「セレス様、無理しないでください」


「シアさん、大丈夫よ。今日は素敵な日なんですから、一緒に飲みましょ」


「ほら、シアも飲めって」


「そうだぜ、姉さん」


「ヴァーン、アルも……」


 シアが助けを求めるように俺に視線を投げてきた。

 が、悪い。


「シアも楽しんだらいいぞ」


「先生……」


 そっちは任せるわ。


 まっ、楽しければ、それでいいよな。

 特に今夜は特別なんだからさ。

 飲み過ぎても、治癒魔法と回復薬があれば何とかなる。


 さて、他の皆はというと。

 少し離れた席にいるディアナとユーフィリアは……。


「……」


「……」


 静かに飲んでいるんだな。

 彼女たちらしい。


 ゼミアさんやルボルグ隊長はメルビンたち冒険者と飲んでいる。

 フォルディさんもエンノアの皆と笑顔で過ごしている。


 ……悪くない宴会だ。



 さて俺は。

 酒はそこそこにしてと。

 これからのことを考えないとな。

 問題は山積みなんだ。


 ……。


 何よりも優先すべきは、幸奈とセレス様の入れ替わり。

 とにかく、ふたりの魂を元に戻さないといけない。

 幸奈の異能も今なら発動可能なはず。

 あとは入れ替わりのタイミングが問題となるだけ。


 そのタイミングを計るためにも、ふたりと話をする必要があるんだが……。


 ヴァーンたちと一緒に宴を心から楽しんでいる幸奈の邪魔はしたくない。

 こんなに楽しそうな幸奈を見るのは、この世界では初めてのことなんだから。


 ただ、このまま飲み続ければ、今夜話をするのは難しいだろう。

 となると、先に日本に戻ってセレス様と話をした方がいいか?

 セレス様の様子も気になるし、伝えることもたくさんある。


 よし。

 今日の深夜にでも日本に戻るとしよう。


 それまでの時間は……諸々の確認だな。

 まずは俺のステータスから。


 ……。


 ……これは!?


 ありがたい。

 本当にありがたい。

 けど、俺だけがこんな恩恵を被っていいのか?

 申し訳ない気持ちがどうしても生まれてしまう。


 ……。


 今さらか。

 そうだよな。

 この世界に足を踏み入れて以来、多くの恩恵のおかげでここまでやって来れたんだから。

 いただけるものは、喜んでいただいておこう。


 で、そのステータスはというと。


 まずは、レベルアップ。

 いつの何が影響してレベルが上がったのか分からないが、とにかくまたレベルアップしている。


 それにより各数値が上昇し、さらに今回は異世界間移動に関する恩恵までいただけたようだ。

 その恩恵は時間についてのもの。

 これまでは1/2だった移動先の時間経過が1/3になると。


 つまり、こっちで24時間過ごして日本に戻った際、日本では8時間しか経過していない。

 そうなるわけだ。

 1/2でも十分ありがたかったのに、これは有用過ぎる。

 ほんと、神様には感謝しかないな。


 しかし……。


 俺の肉体の老化についてはどうなるんだ?

 まだ大きな問題はないものの、こんな活動を10年、20年と続けたら影響も出るはず。

 俺の老化は……それも1/3になるとか?


 ……。


 今考えることでもないか。


 なら、次は。


<露見>


地球    1/3

エストラル 1/3


 点滅ではなく、確定が1つずつ。


 これはもう仕方ない。

 セレス様と幸奈に知られているんだから。


 ん?

 ちょっと、待て。


 地球の露見は以前から確定1だったぞ。

 あの壬生との戦いの後に、露見確定していたんだ。

 それなら、今は2/3になるのでは?


 どういうことだ?

 壬生に何かあったのか?

 それとも、幸奈の露見がまだ未確定なのか?


 分からない。

 分からないけど……。

 これは悪いことではない、よな。


 ……。


 とりあえず、今はこの事実をありがたく受け入れておこう。



 さて次。

 これが問題、というか驚きなんだが。


<クエスト>


1、人助け 済

2、人助け 済

3、魔物討伐 済

4、少数民族救済 済

5、貴族令嬢救出 済

6、兇神討伐 済

7、神山守護 済


 神山守護とは、今回の戦いのことだと思う。

 他に思い当たる節はないからさ。

 それで、このクエストの報酬が。


<ギフト>


異世界間移動  基礎魔法  鑑定改  多言語理解 アイテム収納

時間遡行(2刻)2



 なんと、時間遡行が2つも手に入っているんだ!

 しかも、これまでの1刻遡行ではなく、2刻(4時間)の遡行。


 1度のクエスト達成で2つの報酬?

 しかも2刻の時間遡行。


 喜んでいただくと言っても、これはやっぱりなぁ。


 本当にいいのか?

 トトメリウス様には、セーブ&リセットを禁じられたというのに?


 ……。


 ……。



「コーキ殿、コーキ殿?」


「……メルビンさん?」


 目の前にはメルビンとエレナ。

 いや、もう今の関係なら、頭の中でもメルビンさんとエレナさんと呼ぶべきかな。


「どうしました?」


「皆、話がしたいと言ってるんですよ。こちらで飲みませんか?」


「私とですか?」


「他に誰がいるんです。コーキさん、こっちに来てください」


 そう言って俺の手を取るエレナさん。


「……良いのですか?」


 今の彼らは仲間同士で盛り上がっている。

 そこに俺が入っても?


「もちろんです。皆喜びますよ」


「……それなら、少しだけ」


 酒は控えるつもりだったが、彼らと話すなら少しはいいか。

 と思って立ち上がったところで。


「コーキさん、こっちにも来てくださいよぉ」


 ユーリアさんとアデリナさん。

 ふたりともかなり酔っているように見えるぞ。


「まずは弟子と飲むべきでしょ」


「そうですよ。一緒に飲んでください」


 ブラッドウルフの襲撃から護ることができたユーリアさん。

 自己流の治療で何とか命を救うことができたアデリナさん。

 ふたりに請われて何度か魔法を教えたことから、弟子を名乗っているんだよな。


「先生、弟子って何の話です! わたしが一番弟子じゃなかったんですか?」


 シア、お前はヴァーンたちと飲んでいたんじゃ……。


「ちょっと、何ですか?」


「そちらこそ!」


「……」


 みんな酒に飲まれ過ぎだ。


「はは、コーキ殿は大人気ですねぇ」


 笑ってないで助けてくれ、メルビンさん。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「こんな楽しい酒は必死ぶりだぜ」 1行目、久しぶりだぜの誤字でしょうか?
[良い点]  トトメリウス様にとっては今回の勝利が大きかったということでしょうか?  あれ、露見は幸奈とセレス様だけ? あの壬生は……現世で何が!?
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