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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
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第391話  テポレン山の戦い 14

 

            <北 断崖>

                             少数集団

                               ↓

                       <<<樹林>>>


                ディアナ   *

別動 ×ヴァーン     幸奈  コーキ*→

歩兵隊 ワディン騎士   魔法隊    *  ノワール×歩兵隊   王軍

                魔道具隊   *  念動力隊       イリアル

                ワディン騎士 *

                        *

               ↑       <<<樹林>>>

               魔物


            <南 密林と斜面>





「フォルディさん、少し下がってください」


「はい!」


「ノワール、来い!」


「オーン!」


 東側の王軍は俺とノワールが相手をしてやる。

 だから、俺が戻るまで南の魔物は頼む。



「「「「「「「「ううぅぅぅ……」」」」」」」」


 今はちょうど爆発を起こした直後。

 B地点付近では多くの軽装歩兵が倒れたまま。

 足の踏み場もないほどだ。


 その先に控える歩兵隊。

 彼らの足は止まり。


「また、あいつだ!」

「あいつが戻ってきたぞ!」

「くそぉ! どうすればいい?」


 呆然とこっちを眺めている。


 悪いな。

 こっちにはゆっくりしている余裕なんてないんだ。

 遠慮なくいかせてもらう。


「雷波!」


 剣を振るう。

 ただひたすらに剣撃を浴びせ続ける。


「オオゥゥ!!」


 ノワールもその鋭い爪と牙で歩兵隊を圧倒。


「「「「「うわぁぁ!!」」」」」




 よし!

 わずかな時間でA地点近くまで、王軍を押し戻すことに成功した。


 南は……大丈夫か?

 もう魔物が姿を現すぞ。


「止まれ! 止まるんだ!」

「あいつらを倒せば我らの勝利なんだ! 怯むなぁ!」


「西の味方は健在だぞ。ここからが勝負だ!」

「そうだ、ここからだ!」


「勝てるぞ、勝てるんだ!!」

「いけぇ!」


「「「「「おお!」」」」」


 俺とノワールの猛攻で後退していた歩兵隊。

 その顔にまた闘志が戻っている。


 これだけの大軍なのだから、士気が高いのは分かる。

 分かるが、さすがにこれは普通じゃない。


 魔法矢、魔法爆弾、それに俺とノワール。

 自軍の兵が次々と倒れていく姿を目の前にして、ここまで士気を保ち続けることができるものなのか?


 いや、それどころじゃないぞ。

 何度も衰えかけた闘志が、すぐに蘇っているんだ。


 ……。


 スキル?

 味方を鼓舞する何らかのスキルでも存在する?


「歩兵隊、騎馬隊、進めぇ!!」


「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」


 くっ!

 これまで以上の勢いだ!


 歩兵隊だけじゃない。

 その後ろからは騎馬隊も近づいて来る。

 ずっと沈黙していた騎馬隊が。


 馬で坂を駆け上がられるとまずい。

 何としてもここで止めなければ!


 ザン、ザン、ザシュッ!


「雷波!」


「「「「「ドーン!!」」」」」

「「「「「ドゴーン!!」」」」」


「「「「「ぎゃぁぁ!」」」」」

「「「「「おおぉ!!」」」」」


 剣に魔法に魔法矢。

 悲鳴と叫声と怒号。


 なのに、止まらない。


 ザン、ザン、ザン!


「オオォォ!!」


「「「「「うわぁぁ!」」」」」


 完全に狂乱状態と化した前戦。

 それでも、王軍の攻勢は止まらない。

 身に負う傷など気にもせず、まるで死兵のように攻め寄せてくる。


 おかしい。

 あり得ない。

 やはり、スキルなのか?


「いけぇ!」

「「「「「おう!!」」」」」


 キン、キン、ザシュッ!!


「っ!」


 これは……。

 B地点まで退いて、爆弾を使うか?


 と、そこに。


「「「グゥギャァァ!!」」」

「「「グゥオォォォ!!」」」


 後ろから咆哮!

 魔物だ!

 多種の魔物が一斉に姿を現した。


 ……ウルフ系が多い。


 っ!?

 ブラッドウルフもいるぞ。


 そんな魔物の一団が王軍には目もくれず、ワディン騎士の前へ。

 凄まじい勢いで突進を始めた!


 まずい。

 想像以上の魔物の猛襲だ。


 騎士たちが押されている。

 あれじゃあ、長くはもたない!

 防壁を突破される!!


 すぐにでも援護に向かわないと!

 が、こっちも。


「進めぇ!」

「「「「「おう!!」」」」」


 離れることができない。

 どうする?

 どうすればいい?


 そんな危機的な状況なのに。


 ダーン!

 ドン!


 戦場に上がる砂埃。

 それは、謎の集団が作り出したもの。

 北東にいた少数の集団が戦場に降り立った!


「な、何だ!?」

「あれは?」


「……」


 その数8名。

 わずか8名だが、只者じゃない。

 特に中央の人物、青髪の剣士の気配は尋常じゃないぞ。


 けれど、それ以上に。


 どういうことだ?

 8人全員が仮面をつけている。

 それも、仮面舞踏会でつけるような派手なマスカレードマスクを!


 ……。


 この殺伐とした戦場に奇妙なマスクの集団。

 なのに、とんでもない気配を放っている。


 そのアンバランスな眺めに、皆が動きを止めてしまう。


「「「「「……」」」」」

「「「「「……」」」」」


 一瞬にして場を支配した8名。


 とはいえ、今は狂乱の戦闘中。

 王軍が猛攻を再開した。


 キン、キン!


 剣を交わしながらも、意識は他に向かってしまう。

 背後ではワディン騎士たちが魔物に押され続けている。


 そして左手の8人。

 その8人が動いた!


 跳ぶようにして、俺の傍らに。

 その圧力に思わず王軍歩兵と5歩の距離を置き、俺は8人と対峙……。


 しようと思った俺の眼前で振るわれた剣が王軍歩兵を屠り去る。

 マスカレードマスクの剣が歩兵隊を斬り裂く。


「っ、何者!?」

「お前たちは何だ?」

「ワディンの者か?」


 喚く王軍に振るわれるのは冴えた剣。


「「「「ああぁ!!」」」」

「「「「ううぅぅ」」」」


 殊に先頭の人物の剣は圧倒的だ。

 青藍を纏った細剣が王軍を一蹴していく。


 たちまち、王軍との間に空白ができてしまった。



「……待たせたな」


「……」


 その手に持つ青藍の剣と同じ輝きを放つ濃紺の髪。

 ふざけた仮面の中の眼が笑みをたたえている。


「加勢しよう」


 そう。

 こんな仮面じゃ隠し切れない超絶の存在感。

 この距離で気付かないわけがない。


「助かりますよ」


 剣姫さん。






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― 新着の感想 ―
[良い点]  謎の集団は味方……この展開、流石!
[一言] とんでもない味方きたー(≧▽≦)
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