第391話 テポレン山の戦い 14
<北 断崖>
少数集団
↓
<<<樹林>>>
ディアナ *
別動 ×ヴァーン 幸奈 コーキ*→
歩兵隊 ワディン騎士 魔法隊 * ノワール×歩兵隊 王軍
魔道具隊 * 念動力隊 イリアル
ワディン騎士 *
*
↑ <<<樹林>>>
魔物
<南 密林と斜面>
「フォルディさん、少し下がってください」
「はい!」
「ノワール、来い!」
「オーン!」
東側の王軍は俺とノワールが相手をしてやる。
だから、俺が戻るまで南の魔物は頼む。
「「「「「「「「ううぅぅぅ……」」」」」」」」
今はちょうど爆発を起こした直後。
B地点付近では多くの軽装歩兵が倒れたまま。
足の踏み場もないほどだ。
その先に控える歩兵隊。
彼らの足は止まり。
「また、あいつだ!」
「あいつが戻ってきたぞ!」
「くそぉ! どうすればいい?」
呆然とこっちを眺めている。
悪いな。
こっちにはゆっくりしている余裕なんてないんだ。
遠慮なくいかせてもらう。
「雷波!」
剣を振るう。
ただひたすらに剣撃を浴びせ続ける。
「オオゥゥ!!」
ノワールもその鋭い爪と牙で歩兵隊を圧倒。
「「「「「うわぁぁ!!」」」」」
よし!
わずかな時間でA地点近くまで、王軍を押し戻すことに成功した。
南は……大丈夫か?
もう魔物が姿を現すぞ。
「止まれ! 止まるんだ!」
「あいつらを倒せば我らの勝利なんだ! 怯むなぁ!」
「西の味方は健在だぞ。ここからが勝負だ!」
「そうだ、ここからだ!」
「勝てるぞ、勝てるんだ!!」
「いけぇ!」
「「「「「おお!」」」」」
俺とノワールの猛攻で後退していた歩兵隊。
その顔にまた闘志が戻っている。
これだけの大軍なのだから、士気が高いのは分かる。
分かるが、さすがにこれは普通じゃない。
魔法矢、魔法爆弾、それに俺とノワール。
自軍の兵が次々と倒れていく姿を目の前にして、ここまで士気を保ち続けることができるものなのか?
いや、それどころじゃないぞ。
何度も衰えかけた闘志が、すぐに蘇っているんだ。
……。
スキル?
味方を鼓舞する何らかのスキルでも存在する?
「歩兵隊、騎馬隊、進めぇ!!」
「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」
くっ!
これまで以上の勢いだ!
歩兵隊だけじゃない。
その後ろからは騎馬隊も近づいて来る。
ずっと沈黙していた騎馬隊が。
馬で坂を駆け上がられるとまずい。
何としてもここで止めなければ!
ザン、ザン、ザシュッ!
「雷波!」
「「「「「ドーン!!」」」」」
「「「「「ドゴーン!!」」」」」
「「「「「ぎゃぁぁ!」」」」」
「「「「「おおぉ!!」」」」」
剣に魔法に魔法矢。
悲鳴と叫声と怒号。
なのに、止まらない。
ザン、ザン、ザン!
「オオォォ!!」
「「「「「うわぁぁ!」」」」」
完全に狂乱状態と化した前戦。
それでも、王軍の攻勢は止まらない。
身に負う傷など気にもせず、まるで死兵のように攻め寄せてくる。
おかしい。
あり得ない。
やはり、スキルなのか?
「いけぇ!」
「「「「「おう!!」」」」」
キン、キン、ザシュッ!!
「っ!」
これは……。
B地点まで退いて、爆弾を使うか?
と、そこに。
「「「グゥギャァァ!!」」」
「「「グゥオォォォ!!」」」
後ろから咆哮!
魔物だ!
多種の魔物が一斉に姿を現した。
……ウルフ系が多い。
っ!?
ブラッドウルフもいるぞ。
そんな魔物の一団が王軍には目もくれず、ワディン騎士の前へ。
凄まじい勢いで突進を始めた!
まずい。
想像以上の魔物の猛襲だ。
騎士たちが押されている。
あれじゃあ、長くはもたない!
防壁を突破される!!
すぐにでも援護に向かわないと!
が、こっちも。
「進めぇ!」
「「「「「おう!!」」」」」
離れることができない。
どうする?
どうすればいい?
そんな危機的な状況なのに。
ダーン!
ドン!
戦場に上がる砂埃。
それは、謎の集団が作り出したもの。
北東にいた少数の集団が戦場に降り立った!
「な、何だ!?」
「あれは?」
「……」
その数8名。
わずか8名だが、只者じゃない。
特に中央の人物、青髪の剣士の気配は尋常じゃないぞ。
けれど、それ以上に。
どういうことだ?
8人全員が仮面をつけている。
それも、仮面舞踏会でつけるような派手なマスカレードマスクを!
……。
この殺伐とした戦場に奇妙なマスクの集団。
なのに、とんでもない気配を放っている。
そのアンバランスな眺めに、皆が動きを止めてしまう。
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
一瞬にして場を支配した8名。
とはいえ、今は狂乱の戦闘中。
王軍が猛攻を再開した。
キン、キン!
剣を交わしながらも、意識は他に向かってしまう。
背後ではワディン騎士たちが魔物に押され続けている。
そして左手の8人。
その8人が動いた!
跳ぶようにして、俺の傍らに。
その圧力に思わず王軍歩兵と5歩の距離を置き、俺は8人と対峙……。
しようと思った俺の眼前で振るわれた剣が王軍歩兵を屠り去る。
マスカレードマスクの剣が歩兵隊を斬り裂く。
「っ、何者!?」
「お前たちは何だ?」
「ワディンの者か?」
喚く王軍に振るわれるのは冴えた剣。
「「「「ああぁ!!」」」」
「「「「ううぅぅ」」」」
殊に先頭の人物の剣は圧倒的だ。
青藍を纏った細剣が王軍を一蹴していく。
たちまち、王軍との間に空白ができてしまった。
「……待たせたな」
「……」
その手に持つ青藍の剣と同じ輝きを放つ濃紺の髪。
ふざけた仮面の中の眼が笑みをたたえている。
「加勢しよう」
そう。
こんな仮面じゃ隠し切れない超絶の存在感。
この距離で気付かないわけがない。
「助かりますよ」
剣姫さん。





