第387話 テポレン山の戦い 10
「「「「「「「「「「うわぁぁ!」」」」」」」」」」
かなり近い距離から放たれた雷波と黒炎で、目の前にいた王軍軽装歩兵部隊が1人また1人と倒れ伏していく。
ここまで、こちらの魔法矢と魔法攻撃をくぐり抜けてきた敵の猛者たちも、至近距離で雷波と黒炎を受けたら堪らないよな。
けど、まだだな。
「残兵は任せた」
「おうよ! おめえとノワールは先をやっちまってくれ!」
「了解だ!」
この猛攻を仕掛けてきた敵軽装歩兵。
その多くを片付けたが、それでも相手は途方もない大軍だ。
先には多くの王軍兵が溢れている。
「ノワール行くぞ!」
「オオーン!」
ノワールと共にB地点手前まで疾走、そして。
「雷波!」
「ゴォォォ!」
と黒炎だ。
「「「「「「「「ああぁぁ……」」」」」」」」
崩れ落ちていく王軍歩兵部隊。
「「「「「「「ううぅぅぅ……」」」」」」」
俺の雷波もかなり効果的だが、ノワールの黒炎はそれ以上。
魔落で俺が受けた黒炎より、ずっと威力がある。
恐ろしいほどの攻撃力だよ。
「逃げるな! ここで踏ん張れ!」
「ここからが勝負だぞ!」
「敵は寡兵に過ぎん。恐れるなぁ!!」
「「「「「「「おお!」」」」」」」
この状況でも喊声を上げる軽装歩兵部隊。
本当に士気が高い。
その歩兵隊の後ろ、そこから。
「「「「「ファイヤーボール!」」」」」
「「「「「アイスボール」」」」」
「「「「「アイスアロー!」」」」」
敵の魔法攻撃が降ってきた。
「ストーンウォール!」
「ストーンウォール!」
素早く構築した2重の魔法壁で防御。
ドドン!!
ガン!!
ドゴン!!
問題なく耐えきったな。
じゃあ、次はこっちの番だぞ。
けど、その前に。
「ノワール、黒炎は控えめで頼む」
黒炎は強力無比な攻撃だが、そうそう連発できるものじゃない。
先のことを考えて、取っておくべきだろ。
「クウーン」
「そんな顔すんな。お前のことは頼りにしてるんだから」
「オン!!」
その調子だ。
ってことで。
「いくぞ!」
「オオーン!」
ノワールと共に防壁を出て。
「雷波!」
からの、突撃。
「「「うわぁ!!」」」
剣を振るう。
右に左に、左に右に!
目につく王軍の兵に剣を振り下ろしていく。
「グゥォォ!!」
傍らのノワールも普段とは全く違う様子。
その鋭い牙を剥き出しにして、王軍兵を蹂躙している。
「「「ぎゃぁぁ!!」」」
「「「ああぁぁ!!」」」
その様はまさに鬼神。
縦横無尽に傍若無人に駆け回っている。
まったく……。
敵わないな。
けどまあ、負けてられないか。
「雷波!」
「雷撃!」
「炎波!」
魔法3連発。
そして、強化した身体で剣を一閃、二閃、三閃……。
なぎ倒していく。
「止めろ! あいつを止めるんだぁ!!」
「駄目です、止まりません! あぁぁ……」
さらに、斬り裂く敵の後方。
A地点付近に。
「「「「「ドーーン!!」」」」」
「「「「「ドガーン!!」」」」」
放物線を描いた魔法矢が降り注ぐ。
「「「「「「「「「「うぅぅ……」」」」」」」」」」
矢の数は少なめだが、この戦況での援護射撃としては完璧だ。
よし!
ザン、ザシュッ!
こっちも剣の冴えを見せてやろう。
ザン、ザン!
ザシュッ! シュッ!
「グオォォォ!!」
俺とノワールが軽装歩兵部隊を斬り裂くこと数分。
士気の高かった敵軍もかなり浮足立ってきた。
そこに。
ドッゴーーン!!!
ドッドーン!!!
ドガーン!!
ダーーン!!!
左右の樹林から地面を揺らすような爆発音が同時に響き渡る。
「「「「「「「「「「ううぅ……」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ああぁ……」」」」」」」」」」
当然のように、樹林内から聞こえてくるのは無数のうめき声。
「左右の爆発は完璧だぞ、コーキ!」
後ろから言葉をかけてくるヴァーンの声も弾んでいる。
「了解!」
ホント、最高のタイミングだな。
上手くいき過ぎと思えるくらいだ。
「くそっ! 退くんじゃない!!」
「……」
左右の敵兵の状況。
眼前の軽装歩兵の惨状。
これはもう……。
今回の軽装歩兵部隊による速攻。
悪くない策だったが、防ぎ切ったんじゃないか。
となると、いったん自陣に戻るべきか?
「敵に後ろを見せるなぁ! 留まれぇ!!」
「しかし、この状況は!」
「我らには大軍が控えているんだ、少数の敵に怯える必要はない!」
「進めぇ! 前へ進めぇ!!」
「「「「「「「「「「おおう!!!」」」」」」」」」」
左右の樹林を行く敵兵の足は止まっているが、中央の山道にいる歩兵隊の動きは止まっていない。
これだけの数の味方を目の前で倒されながら、それでも退くことなく攻め上ろうとしている。
一度止まりかけた足、士気はかなり下がったように見えたのに……。
「クウーン?」
ああ、まだ戻れそうにないな。
敵ながら、大したものだよ。
「ノワール、やれるな?」
「オン!」
なら、もうひと暴れしよう。
「雷波!」
ザシュッ! シュッ!
ザン! ドスッ!
「オオーン!!」
剣が敵を斬り裂く音、ノワールの爪が敵を屠る音。
それだけが耳に入ってくる。
そんな時間が過ぎていき……。
「「「「「うわぁぁ!!」」」」」
「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」
突然、ワディン、エンノアの陣から悲鳴のような怒号のような喚声があがった。
その驚声に剣を止め、坂上を振り返ると……。
「敵兵だぁ!」
「後ろ、後ろを見ろ! 王軍が後ろに!」
「「「ああぁ!!」」」
「西から王軍が現れたぞ!」
西から?
オルドウ方面から!?
「コーキ、まずいぞ!」
「コーキさん、背後を攻められてる!」
くっ!
西の獣道から王軍が現れたのか!?





