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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第8章  南部動乱編
362/701

第359話  白都キュベルリア 2


<ギリオン視点>




「……取り押さえろ。命は奪うなよ」


 おっ!

 黒づくめの男たちが、包囲を狭めてやがる。

 本格的に動き出したとってことは。

 やっぱり、出番だよなぁ。


 よーし、オレ様が助けてやる!


 と思ったんだが……。


「ふふ、ふふふふ……」


 何だ、あの女の余裕は?

 威勢の良さは、ハッタリじゃねえってか。


「命は助けてくれるそうだぞ、ウォーライル」


「では、こちらも命は奪わないようにしましょう」


「ふむ。聞きたいこともあるしな」


 黒づくめは10人以上いるってえのに。

 3人とも余裕の表情だぜ。


 ホントに、やれんのかよ?


「……かかれ!」


「「「「「おう!」」」」」


 ちっ!

 始まっちまった。


 こいつぁ、やっぱり。

 オレが出るしかねえだろ。

 とりあえず、3人を囲む黒づくめの後ろから。


 いくぞ!

 覚悟しやがれ!


「どりゃぁ!!」


「うっ!」


 上段からの一撃でひとり目!

 そのまま隣の黒づくめに。


「だぁぁ!!」


「うぐっ!」


 横薙ぎ一閃。

 これで、ふたつだ。


「なっ、何者!?」


 黒づくめのリーダーみてえな奴が驚いてやがらぁ。


 おい、あの女も驚いてんじゃねえか。

 

「君は!?」


「……正義の味方だな」


「正義の?」


「加勢するぜ!」


 キン、キン!


「……」


「エリシティア様、一般人は巻き込まない方がよろしいかと」


「うむ。君、加勢は要らぬ。ここは危な……くはないか」


 ギン、ザン!


「我らだけで充分。無関係の者が戦う必要はないのだから、離れていなさい」


 キン、キン!


「すぐに離れるんだ」


「はあ?」


「今の話、聞いてなかったのか?」


 何をごちゃごちゃと。


「聞こえてらぁ」


「ならば」


 うるせえ。

 こっちは、もう戦ってんだぞ。


 っと!


「やあ!」


 ギン!


 危ねえ。


 ギン!


 一撃喰らいそうだったぜ。


「こんの野郎!」


 邪魔すんじゃねえ。

 空気読みやがれ、黒づくめ!

 おめえみてえな奴はなぁ。

 オレの剛剣で真正面から叩き切ってやらぁ!


「とりゃあ!!」


 会心の手応え!


「うぅ……」


 オレ様の剛力と高っけえこの剣にかかりゃあ、一撃ってなもんだ。


「君……」


 ふん、これで分かったろ。


「ってことで、オレ様が助けてやるよ」


「……」

「……」

「……」



「くそっ! あいつからやってしまえ」


 おう、おう!

 かかってきやがれ!


 キン、キン!


「だぁ!」


 キン、ギン!!


「とりゃ!」


 ザシュッ!


「うぐっ!」


 ザン!


「ああ……」


 はっ。

 手応えのねえ奴らだぜ。



「エリシティア様?」


「ここまでくれば、やむをえまい」


「……」


「サイラス、皆を呼べ」


「はっ」


 何だ、その光?

 眩しいぞ!


 ん?

 合図か?


「「「「「「「……」」」」」」」」

「「「「「「「……」」」」」」」」

「「「「「「「……」」」」」」」」


 おい、おい……。

 どっから現れたんだ?


 30人程いるじゃねえか。


「っ! まずい。撤退だ」


「ファイヤーウォール!」

「ストーンウォール!」

「ストーンウォール!」


「何っ!?」


 壁で退路を断ちやがった。


「ファイヤーボール!」

「ファイヤーボール」

「ファイヤーアロー!」

「ストーンバレット!」


 そこに魔法の斉射。


「「「あぁぁ!」」」


「「「ぎゃあぁぁ!!」」」


「……」


 えげつねえな。






「助勢、感謝する」


「ん……」


 この数と魔法。

 助けなんて不要じゃねえか。

 こっちも分かってりゃあ、加勢なんてしなかったのによ。


「歯切れが悪いようだが……」


 ったりめえだ。


「ふふ、どうした?」


「……」


「奴らに剣を放った時とは随分違うな」


 この女……。


「威勢はどこにいったのだ?」


 威圧感が半端ねえぞ。

 鍛えてるって感じもしねえのに。


 ちっ!


「どこにもいってねえよ」


「それは重畳」


「……あんたら、最初からこうするつもりだったんだな?」


「ふむ。まあ、そういうことだ」


「なら、助けなんて要らねえだろ」


「だから、そう言ったであろう」


「……」


 何を?


「……ウォーライル?」


「聞いてなかったようですね」


 戦闘中に?

 そういえば、何か言ってたような……。


「ふふ、おかしな男だ」


「おかしくねえ」


 戦闘に集中してただけ。

 何もおかしくねえんだよ。


「おい!」


 うん?

 顔を真っ赤にした奴が前に出てきたぞ。


「貴様!」


「……」


「いい加減口を慎め!」


 誰だ、こいつ?


「無礼者! 失礼にも程がある!」


「んだと!」


 無礼なのは、割り込んでくるおめえの方だ。


「リリニュス、よい。問題ない」


「ですが……」


「私が良いと言っておる」


「……」


「不服か」


「いえ……申し訳ありません」


「ふむ、分かればよい。さて、話の腰を折って悪かったな」


「んなこたぁ、気にしねえよ」


「助かる」


 こっちは、おめえの笑顔の方が気になるわ。


「ふむ、どうした?」


「……何でもねえ」


「ふふ、そうか」


 こいつ……。


 髪は後ろでまとめただけ。

 化粧もしてねえ。

 服装も飾り気のないもんだ。

 それでいて、時折見せる威圧感が尋常じゃねえ。


 おそらくは貴族なんだろうが……。


 まっ、よく見りゃ、品もあるわ。

 金髪もつり目の碧眼も、貴族令嬢っぽいしよ。



「それで、君は冒険者なのか?」


「ああ」


「ふむ、やはりな」


「……」


 冒険者と聞いて嬉しそうな顔しやがって。

 貴族の女が冒険者相手に、何なんだ?


 ほんと、意味分かんねえ。


「……」


 くそっ!

 貴族なんて、ろくでもねえのに。

 なのに、こいつの戦闘時の素振りや今のオレへの対応は……。


 ちっ!


 悪くねえじゃねえか。



「しかし、王都の冒険者がこんな所に何の用だ?」


「ん? オレは王都の冒険者じぇねえぞ」


「というと?」


「普段はオルドウで活動してんだよ」


「オルドウ?」


「ああ」


「オルドウの冒険者……」


「オルドウに何かあんのか?」


「ふむ、オルドウの冒険者には少々縁があるのでな」





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― 新着の感想 ―
[良い点]  この二人共コーキに縁があるということ以外は正反対ですね……
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