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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第4章  異能編
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第156話  お仕置き 2


「すごい、すごいよ!」


 称賛の目を俺に向ける里村。

 何というか、ちょっと頭がくらくらするぞ。

 こいつ、変な力でも持ってるんじゃないだろうな。


「……」


 って、そんなわけないか。


 おっ!


「有馬君、後ろ! 危ない!」


 ありがとう、里村。

 でも、分かっている。

 あっちの世界では、何度も背後からやられたからな。

 もう背後はやらせないさ。


「これでも食らいやがれ」


 振り向いた先には、難癖コーヒー男。

 片手にはナイフ!


 おいおい、刃物はまずいだろ。


「何を考えてるんだ?」


 振るわれるナイフの刃先を躱しながら、一応聞いてやる。


「俺を怒らせたお前が悪い!」


 駄目だ、こいつ。

 本当に俺と同じ大学の学生かよ。

 そこそこ偏差値の高い大学なんだぞ。


「刃物を出したら、ただの学生の喧嘩じゃ済まないぞ」


「うるさい!」


 本気で刺しにくる気か。

 まあ、動きは見ちゃいられないけどな。


「さすがにナイフは……」


「おい、やめとけって」


 仲間ふたりは、そこは(わきま)えているのか。


「お前ら、黙ってろ! くそっ!」


 叫びながら突進してくる難癖男。

 もう相手をする必要もないな。


 差し出されたナイフを右に躱し、手刀でナイフを握る手首を叩きつける。


「うっ!」


 ナイフを落としたところを捕まえ、腕を固めて拘束。


「ううぅ」


 さっきより痛い思いをしてもらうぞ。

 さあ、軽く関節を外してっと。


「ああぁぁ! おま、やめ! 止めてくれぇぇ!」


 大丈夫。

 軽くしておくから。






「それじゃあ、どういうことか説明してもらおうか」


 抵抗の意志が無くなる程度に3人の相手をしてやった後。

 校舎裏に転がした3人に説明を促す。


 もちろん、難癖男の持っていた学生証などで個人情報は確保済だ。

 ちなみに、残りの2人はここの大学生ではなかった。

 ある意味、ほっとしたよ。


「俺はコーヒーを零されただけだ」


 難癖男が口にするのは、そればかり。


「その話はもういい。さっきの電話は何だったんだ?」


「……」


「最初から里村を狙ってたんだな?」


「……」


「話さないなら、俺がこの携帯の履歴から、さっきの相手に電話をかけてやろう?」


 奪った携帯電話を左右に振って見せつけてやる。


「それは……」


「お前ら、分かってるのか。さっきの暴力や学食での言い掛かりも問題だが、もし里村を拉致しようとしていたのなら、これは大学内で解決できる問題じゃなくなるぞ」


 ナイフで襲うだけでも大問題だけどな。


「そんなつもりは……なかった。ただ、少しだけ拘束するというか……」


「それが犯罪なんだよ。これが公になってみろ、退学どころじゃ済まないんだ。分かるよな?」


 この大学に通っている学生が、こんなことも理解できないとは思えない。


 ホント、どういうことなんだ?

 こいつが愚かなだけなのか?


「……ちょっと連れて行って、すぐに帰すつもりだったんだ。それは本当だ」


 その顔色。

 やっと、事の重大さを理解しはじめたようだな。


「とりあえず、詳しく話してみろ」


「……」

「……」

「……」


 これでも、話さないのか。

 なら。


「仕方ない。警察に連絡するか」


「やめろ! ただの喧嘩じゃないか」


「里村を拉致するつもりだったんだろ?」


「だから、そんなつもりはなかったって。本当だ。信じてくれ」


「そうだ、ちょっと頼まれただけで」


「おい!」


「あっ……」


「……」


 こいつら、拉致するまでの心算はなかったのか?

 ただ、里村をどこかに連れて行こうとしていただけ?


 それが本当なら、やはり、今回の件を依頼した相手が問題だな。


「有馬くん、どうするの? ボクのことなら、もういいんだよ。有馬くんのおかげで無事だったし」


「裏を聞き出そうと思う。少し待っててくれるか」


「……うん、分かった」


 素直な里村と違って、こいつらときたら。


「悪かったって」


「もう、そいつには手を出さないから」


 このまま見逃してもらえる、なんてな。

 そんな都合の良い話があるかよ。


「全て正直に話したら、考えてやる」


「……」


「依頼者は誰だ?」


「……」

「……」

「……証拠なんかない」


「何?」


「だから、そいつを外に連れ出そうとした証拠なんてないだろ」


 まだ、言い逃れする気なのか。

 往生際の悪いやつだ。


「仕方ない。少し話しやすくしてやろう」


 懐からそれを取り出して。


「ほら」





『今からお前たちを、ある場所に連れて行く』



『ちっ、うるせぇやつだ。黙って付いて来ればいんだよ』



『よし、この生意気な後輩を少し躾けてやろうか』

『ああ』

『賛成だ』



「顔を殴ったな」

『ああ、それがどうした』

「お前が俺たちをここに連れ出し、先に手を出したんだぞ。俺の顔を殴ったんだぞ」

『だから、それがどうしたってんだ』

「確認しただけだ」



『おい、3人でかかるぞ』

『おう』

『いいぜ』



「今度は3人がかりで俺に暴力をふるうつもりか?」

『うるさい、いくぞ』



『これでも食らいやがれ』

「何を考えてるんだ?」

『俺を怒らせたお前が悪い!』

「刃物を出したら、ただの学生の喧嘩じゃ済まないぞ」

『うるさい』




「なっ!」

「これは?」

「録音!」


 その通り。


「この録音機に全て記録させてもらった」


「……」

「……」

「……」


 ますます顔色が悪くなったな。


「有馬くん、そんなことまで」


「ああ、一応な」


「さすがだよ、すごいよ、有馬くん!」


「……」





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― 新着の感想 ―
[良い点] 刃物まで出したら、もう喧嘩の域を超えてますね。 これはもう助さん格さんやってしまいなさいのお時間です。 そもそも、これまで生死の境を彷徨う戦いを経験してきたコーキさんにとって、ぬるいですよ…
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