第139話 新ギフト
まず、レベルが1つ上がって5になっているが、今回はレベル上昇によるギフト的な恩恵はないようだ。
鑑定改。
一般的な鑑定としての精度は今までの初級より少し上がっている程度だった。
が、なんとこの鑑定、生物の鑑定に特化しているようなんだ。
人や魔物のステータスを見ることができるんだよ。
これは凄いことだ。
今後の冒険者生活にとって大変な恩恵になるぞ。
ちなみに、ノワールを鑑定してみると。
ノワール
レベル 1
2歳 牡 デフォームドダブルヘッド
トトメリウス神の眷属
有馬功己の従魔
HP 235
MP 121
STR 232
AGI 155
INT 133
<スキル>
黒炎 再生 変形 2点転移
という感じ。
今後は鑑定改で、調べたい個体を詳しく知ることができる。
本当に便利だ。
しかし、ノワールはトトメリウス様の眷属になったんだな。
それで、俺の従魔でもあると。
いや、まあ、いいんだけどさ。
不思議な魔物だよな。
……。
それで、
続いてセレス様はというと。
セレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディン
レベル 1
17歳 女 人間 ワディン辺境伯爵家長女
HP 35
MP 51
STR 21
AGI 23
INT 156
<スキル>
予知 祝福
ローディン神の加護、トトメリウス神の加護
といったところ。
ステータス表示上での違いとしては、特殊能力がギフトではなくスキルの名称で記載されている点くらいかな。
しかし、セレス様もノワールも凄いスキルを持っている。
一般人の平均なんて知らないけれど、これらのスキルが普通じゃないのは確かだと思うぞ。
それと、大した問題ではないけれど、最初からレベル1の表記があるのも俺とは違うな。
俺の場合はレベルが上がって初めて表記されたから。
まっ、詳しいことは今後検証していけば分かるだろう。
さて、俺のステータスについてだ。
多言語理解。
これは文字通り、エストラル語だけではなく多言語が理解できるようになったということ。今のところエストラル語以外に使う予定もないのだが、先々使うこともあるだろう。
非常に有用な能力だ。
とはいえ、全言語ではなく多言語というのがポイント。
全ての言語を理解できるわけじゃないみたいだ。
あっちの世界の言語はどうなんだろ?
時の神の加護、トトメリウス神の加護。
時の神というのは俺をこの世界に連れて来てくれた神さまのことだろうな。
なぜだか今までは表示されていなかったが、トトメリウス様の加護の表示と共にステータス上に表示されるようになったようだ。
加護の具体的内容は鑑定でも知ることはできなかったけれど、時の神様に時と知恵と魔法の神様なのだから、時、知恵、魔法に関する何らかの恩恵があるのではないかな。今はありがたいものだと納得しておこう。
時間遡行(1刻)1。
何といっても、問題はこれだろ。
おそらく、今回のクエストの報酬として時の神様が与えてくださったのだろうが……。
これって、トトメリウス様の意向に完全に反しているんじゃないのか。
セーブ&リセットを扱えなくなったというのに、代わりにこんなギフト。
本当に時を遡って良いのか?
はなはだ疑問ではある。
けど、まあ。
「……」
神様間でやり取りがあったのかもしれないし。
トトメリウス様から俺に何も言ってこないのなら、使ってもいいということだよな。
正直、使いきりのギフトとはいえ、2時間も時間を遡ることができるというのは、リセットが使えなくなった今の俺にとっては最高のギフトだから。
セーブ&リセットのようにいずれ使えなくなるかもしれないし、使用可能な内に有効に利用させてもらうとしよう。
「コーキさん、何を考えているの?」
ノワールとの戯れに一段落ついたのか、セレス様が不思議そうな顔で俺を見つめている。
ステータス画面を見つめている状態は、他人から見れば虚空を見つめているだけだから奇妙に見えるよな。
しかし、セレス様……。
あまり顔色が良くないな。
「少し考え事をしていただけですよ。それより、少し疲れましたか?」
「大丈夫……。その、咳と頭痛が少しあるだけだから」
「休みましょうか?」
「平気。もうすぐ着くんでしょ」
「ええ、まあ」
「それなら、本当に大丈夫だから。それでさっきの話の続きだけど」
「……」
「コーキさんは……異世界人なのね」
異世界人。
その話は避けて通れないよな。
そもそも、ステータス表示上で露見1となっているのだから、もうこれは仕方ない。
観念するしかないか。
「……そうですね」
「本当なのね」
「ええ、この世界とは異なる世界からやって来ました」
「そう……。それだったら、あれも……」
「何か言いましたか?」
後半部分が小声で聞こえなかった。
「……」
うん?
セレス様、足下がおぼつかなくなっているぞ。
目も虚ろだ。
さっきの咳といい、本当に大丈夫なのか?
「平気ですか?」
「ええ、大丈夫……。少し待って」
「……」
その言葉通り、ほんの僅かな時間で眼に力が戻って来た。
「もう大丈夫。それより、異世界の人ってこの世界に実在しているのね、驚いたわ」
「私も自分以外の異世界人は知りません」
「そうなのね」
「ええ。トトメリウス様の話からすると、この世界にはほとんど存在していないのではないでしょうか」
「私も聞いたことがないから……。コーキさんがこの世界で唯一の異世界人なのかもしれないわね」
セレス様、さっきから少し様子が変だな。
まあ、疲れもあるだろうし、その上、いきなり目の前の人物が異世界人だと言われたら普通ではいられないか。
とはいえ。
できるなら、俺が異世界人であるということを、受け入れてもらいたい。





