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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第3章  救出編
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第117話  魔落 8



 セレスティーヌ様を壁際に残し、トリプルヘッドに向かい足を進める。


 そんな俺を見て、立ち止まるトリプルヘッド。

 俺も足を止める。

 彼我の距離は5メートル。


 お互いの視線が絡み合う。


「……」


「グルルル」


 でかいな。

 俺の知るダブルヘッドより、ひと回りは大きいように見える。

 圧力もかなりのものだ。


 これは全く油断できないな。

 手を抜いて勝てる相手じゃない。


 幸い、魔力には余裕がある。

 なら。


 剣を抜き魔力を込める。

 今できる最上の強化だ。

 身体には既に魔力を纏っている。


 手加減なしだ。

 いくぞ!


「雷撃!」


 5メートルの距離から放った雷撃。

 左横に跳んで躱した。


 まあ、そうだろうな。

 想定内だ。


「雷撃!」


 着地点に連続の雷撃を放つ。

 これならどうだ。


 着地と同時に、さらに左に跳躍しようとするトリプルヘッド。

 が、躱しきれない。


「グゥオ!」


 トリプルヘッドの右半身に雷撃が命中。

 小さくうめき声をあげるが、それだけ。

 平然としたものだ。


 やはり、通常の雷撃では効果が薄いか。

 それもダブルヘッドとの戦いから、ある程度分かっていたことだ。


 だから、次の手を打っている。

 距離を一瞬で消し、上段から一閃。


 濃密な魔力を纏った剣撃を味わえ!


 3つの頭の右端、俺から見ると左の首筋に叩きこむ。


 ガシュッ!


 鈍い音。


 この魔力を纏っていても、切断には至らない。

 手応えはそれなり、といったところ。


「グゥルオォォ!」


 右頭の咆哮。

 そんな右頭をよそに中の頭が俺に牙をむく。

 粘りつくような体毛を震わせながら迫ってくる。


 首筋に挟まった剣を抜き取り、離脱!

 間一髪のところで抜け出すことができた。


「グルルゥゥ」


 しかし、こいつの身体は厄介だな。


 魔法攻撃、物理攻撃に対して高い防御力を見せる硬い体表。

 剣が通りにくい濡れた体毛。ダブルヘッド以上に赤みが強い黒の体毛だ。

 切り付けた剣を咥えこんでしまう筋肉質の肉体。


 ダブルヘッドの上位互換のような防御性能を誇っている。


 さらに、ダブルヘッドと同等以上の回復魔法や攻撃魔法を使えるとすると、本当に大変な相手だ。


 とはいえ、スピードはそれほどでもない。

 ダブルヘッドと同程度といった感じか。

 これなら、最高に強化した俺のスピードの方が上だ。


 実は、これ以上のスピードにすることも可能なんだが、そうするとその速度に思考がついてこない。そして、すぐに身体が限界に達してしまうからな。


 今はこの速度が最高ということになる。


 おっと!

 危ない!


 トリプルヘッドの突進からの左腕の薙ぎ払いを、左後ろに跳ぶことで避ける。

 そこに右手の爪による連続攻撃。


 キン!


 これを剣で受け止め、左に流し。

 返す剣でさっきの首筋に一撃!


 ザシュッ!


 まだ足りない。

 が、あと一撃で切断できそうだ。


「グゥオォォン!」


 右頭が叫び声を上げる中。

 また、中頭が嚙みつきにきた!

 さっきより簡単に抜き取った剣とともに再び離脱。


 同じような攻防が2回続いたな。


 ということは、やっぱり!

 ここで突進か。

 それなら、同じ対応をするだけだ。


 左腕の攻撃を避け、右爪の攻撃を流し。

 3度目の正直だ。


 首筋に剣を差し入れる!


 ザシュン!


 よし!

 剣が通ったぞ。


 ドン!


 必然、右の首が地面に転がり落ちることになる。


「グゥルオォォ!」


「グゥオォォォ!」


 中の頭が咆哮し、今まで沈黙していた左の頭も声を上げる。


 今度は右肩から突進してきた。

 腕を使うことなく、肩をぶつけるつもりか。


 けど、その速度では無理だ。

 大きく左に跳び、トリプルヘッドの突進を躱す。


 トリプルヘッドはすぐに勢いを殺すことができず、10メートルほど通り過ぎてしまった。

 もちろん、頭は突進方向、尻は俺の方に向いている。


「炎舞」


 振り返る前に、焼いてやるよ。


「グギャ」


「グロォ」


 炎がトリプルヘッドの身体全体を包む。

 範囲効果がある炎舞なら、あの巨体全てを包み込むことができる。


 もちろん、これで倒せるとは思っていない。

 ほら、あの体毛のせいか、もう消えてきた。


 だから。


「炎舞」


 さらに。


「炎舞」


 炎舞の3連発だ。


「グギャァァァ」


「グロォオォォ」


 振り向いたトリプルヘッドが悲鳴のような声を上げる。

 結構効いているみたいだな。


 特に中頭が苦しんでいるぞ。

 火に弱いのか。


 これは充分に効果ありだ。


 おお!

 体毛の光沢が薄れている。

 炎舞の炎でぬめりが少し取れたんじゃないか。


 これはいける。


 火が消える直前。

 トリプルヘッドに接近し、中の頭の頸部に向けて剣撃一閃。


「グギャギャァァ」


 今までで最も手応えがあった。


 切断には至っていないが。

 もう少しだ。


 剣を抜き取り、そのまま、もう一撃!


 よし!


 ドスン。


 これで2つの頭を切り取った。

 残るは1つだ。







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― 新着の感想 ―
[良い点] コウキは恐ろしく強いですね。負けるようでは話がまただいぶ戻ってしまうので、読者としても頑張ってほしいところ(笑)ダブルベッドがどれだけ彼にとって余裕だったのか、そして桁外れの実力を持ってし…
[良い点] コーキさんから見ると娘くらいの年齢だから、恋愛関係に進むのは至難の業ですよね。 やはり、テーマBGMで現れ、『ラブコメ殺しの男! コーキさ!』!? ダブルヘッド以上の防御力を誇り、三つの…
[良い点] 更新お疲れ様です。ここを超えれば一段落かな? 時間の流れが違うと言っても、不慮の事態に陥ると現代に戻り難いのが難点
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