表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第3章  救出編
100/701

第99話  ダブルヘッド 8


<ヴァーン視点>




「さすがに、これはまずいな」


「魔力ねぇのか」


「残り僅かだ。ここから4つの目をつぶすのは難しい」


 4つどころか2つですら容易じゃない。


「ちっ、しかたねぇな」


「オオォォォ!」


「っと、避けろ!」


 完全に目を回復させたダブルヘッドが飛びかかってきた。

 目をつぶされた怒りからなのか、これまで以上に恐ろしい威力だ。


「ぐっ!」


 その攻撃を、俺は左にギリオンは右に跳び退いて何とか躱す。


「あっぶねえな」


「ああ」


 これは危なかった。

 そして、まずい状況だ。


 とりあえず、続戦するにしろ、逃げるにしろ、少しでもダメージを与えておきたい。

 話はそれからだ。


「隙を見て魔法を撃つから、1つだけでも目をつぶしてくれ」


「おう、分かったぜ」


 完全にやる気になっているダブルヘッドとの間合いをはかる。


 まだ、まだだ。

 もう少し。


 よーし、次で。


「ファイヤーボール」


 魔法を放つ。

 さらに次の魔法を放つべく詠唱を始めようとしたまさにその時。


 ドシーーン!!


 地響きを立て、この開かれた空間に砂煙が舞い上がる。


 その中から姿を現したのは……。


 新たな魔物!


「なっ!?」


 なんてことだ!?

 信じられない!!


 常夜の森の方向からやってきたその新たな魔物。

 それは、ダブルヘッド!!


 2頭目のダブルヘッドだった。


「……まじぃな」


 さすがのギリオンも顔色が悪い。

 俺も同様だろう。


「ああ……」


 新たに表れたダブルヘッドは今まで戦っていたダブルヘッドに比べると一回り小さなサイズだが……。


 それにしても、ダブルヘッドが2頭。

 こうなると、逃げるのも困難か。


「おう、よく見ろ。あいつ左の頭がねぇぞ」


 ギリオンの声に思わず目をやると、その言葉通り小さいダブルヘッド、小ダブルヘッドの左頭部分は無惨に切り取られていた。


「単頭のダブルヘッド。それなら可能性も」


 あるんじゃないか。

 どこで首を斬られたのか分からないが、というかダブルヘッドの首を切断できる存在が近くにいることに驚きだが、これは不幸中の幸いだ。


 ほんの僅かながらも光明が見えた。


 そう思えたのに。


 無傷の大ダブルヘッドが単頭のダブルヘッドに近づき身を寄せる。

 するとすぐに、失っていた頭の部分が光り始め……。


「嘘だろ」


「んだよ、それ」


 頭が再生してしまった。


「……」


 最悪だ!

 いや、最悪を超えている。


 ……。


 もう、どうしろというんだ。


 あまりのことに頭が真っ白になり、呆然と立ち尽くしてしまう。


「おい、ヴァーン。しっかりしろ。攻撃がくんぞ!」


「あ、ああ」


 そうだ、な。

 まだ、身体は動く。

 僅かだが魔力も残っている。


 微かに見えた希望の光は消えてしまったけれど。

 最後まであがくしかない。





***********





 ダブルヘッドを追い、常夜の森の端を駆ける。

 今まさにあいつはテポレン山との境界の開けた空間に入った。


 そこがお前の墓場だ!


 魔力を身体中に巡らせ、さらに加速。

 空地が見えてきた。


 そこには、冒険者らしきふたりの姿。

 ギリオンとヴァーンだ!!


 こんな所にいたのか!

 でも、良かった。

 無事みたいだ。


 が、ダブルヘッドと戦っている。

 うん?

 あれは2頭目のダブルヘッド。

 ここにもう1頭いたのか。


 さっきのダブルヘッドより大きな個体。

 そんなダブルヘッド2頭と戦っているふたり。

 さすがに苦しいはずだ。

 案の定、押され続けている。


 あっ、まずい!


 ダブルヘッドの攻撃がギリオンに迫る。

 ここからじゃ間に合わない。


 まずい、まずいぞ!!


 ダブルヘッドの凶悪な爪がギリオンの身体を抉ろうとした、その瞬間。

 その爪がはじき返された。


 えっ、アル?

 アルなのか!


 ギリオンの後ろから飛び出したアルが剣でダブルヘッドの攻撃を防いだんだ。


 いいぞ、アル。

 以前とは見違える動きだ。


 けど、アルも随分疲れているように見える。


 もう少し耐えてくれよ!

 すぐに到着するからな。


 しかし、アルもここにいたとはな。

 きっとシアもいるのだろう。

 これで4人を救い出せるぞ。


 と思った瞬間。


 後方に隠れていたシアが前に出てくる。

 そこに向かってダブルヘッドが突進を開始する!


 危ない!

 シア、魔法を撃てるのか?


 もう少しだけ防いでくれよ。

 今着くからな。


 一気に森を駆け抜け。


 開けた空地へ!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点] コウキの接近を知らない4人の行動が見ていてヒヤヒヤします。切迫感のある、とても楽しい幕引きでした。そして、さすがのコウキも、勝てるかな、ととても楽しみな流れです。ここから先も読み応えがあり…
[良い点] 魔力は残り少ない、おまけに手負いで狂暴化していると不安要素が多いですね。 手負いの獣は危険と言われていますし、再生能力まであって知恵まであるので絶体絶命のピンチと言っても…… ここにコーキ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ