博物館 第一機動中隊と夜明けを齎した者
私『ご紹介しましょう。第一艦隊の中にあってなお最精鋭の中核。第一機動中隊です』メモ・強化兵中隊も合流していたので、実質二個中隊。
私『第一艦隊の役割が特務大尉と同じ戦場で戦うことなら、第一機動中隊の役割は【可能な限り】ここ大事でテストに出ますよ? 可能な限り、特務大尉の近くで戦うこと。もしくは特務大尉の手が回らない方面の制圧です』
『念を押す必要あるか?』
『テストって……』
『それくらい重要ってことでしょー。まあ、困った時は山勘で乗り切るけどー』
A『最後の手段だよねー』メモ・その最後の手段で行動してた奴がいましてねえ……。
私『戦争中は常に人類の上澄みしかいなかった第一機動中隊は、先程言った通り超人の集団です。しかしながら率いていた男が超人という言葉では表せない異常個体でしたので、付いていけないことも多々ありました。なにせ敵の司令部を爆破するから、その後の混乱で敵を叩けとか平気で言う男ですからね』
『なんか頭痛くなりそうだ……』
私『はははは。当時は特務カウンセリングなんていう概念もあった程ですよ。おっと、ご覧になっているのは当時の写真、武器になりますね。いやあ、特殊な専用カスタムの多いこと』
私『大敗走時代は落ちていた武器や鹵獲したガル星人の銃器を使いやすいようにしたため、正規の装備からはかけ離れていますね。次の反抗時代は様々な特殊部隊の選抜兵が加わると同時に、彼らの古巣の装備も合わさった結果、第一機動中隊の装備で統一感なんてものはありません』
私『纏めると、あらゆる状況に対応できるのは最低ラインで、そこから更に何かしらの尖った能力を持った者が集まり、第一機動中隊を形成。あらゆる敵を粉砕していきました』
私『さて……その説明をした上で彼らをご紹介しましょう。特務大尉が率いた第一機動中隊にあってなお特別。超人の中から更に選ばれた者たち』
私『人類最精鋭。夜明けを齎した者。夜明け勲章を授けられた十一人の中の十人。俗に言うリヴァイアサン分捕り部隊です。展示されているのは、当時の彼らが使用した装備ですね』
私『元軍人も何人か含まれていたとはいえ、正規の軍人は……皆様に分かりやすい表現にしましょうか。あの軍曹のみ。あとは全員が民間人なのですから、まあ、異色ですね。約半数が皆さんの地元出身なので、馴染みがない出身外の人間の方を軽く紹介しておきましょうか』
『地元の誰かに会ったことあるか?』
『一度だけある』
『あるー?』
A『ないよー』メモ・十人には会ってないでしょうね。十人には。
私『まずギャンブラーを名乗っている男。本名は分かっていません。割と借金が洒落になっていなかったようです。今もギャンブル惑星で見かけることが多いとか』
私『例の記者で有名な彼は、戦争を通して常に記者が本業だと訴えてましたが、周囲の人間は冗談だと思っていました。大敗走時代の第一艦隊の映像や、強行偵察による情報の数多くがこの人物によるものです。寄贈されているのがカメラなあたり、矜持を感じますね』
私『セールスマンも偶に経済界のニュースで見かけますね。仕入れた武器の性能テストを自分で行なうとは思ってなかったでしょう。ただ、説明書を見たらなんでも使えたのは才能でしょうね。夜明け勲章を受け取った中で、唯一資産的価値に気が付けた人物でもあり、授賞式では一番ガチガチでした』
私『最後はこの方。軍曹。例の軍曹。あの軍曹。サーイエッサーの軍曹。唯一無二の軍曹。色々と言われている人物です。現在は退役していて、講演を行いつつ色々趣味を見つけたようです』
『しょっちゅう何かで見るよな』
『ああ』
『ザ・軍曹の顔。そう思わない?』
A『分かるような分からないような』
私『戦争全体を通してみれば非常に短い期間ですが、特務大尉の右腕を務めた軍曹は様々な局面で戦いました。これだけでも素晴らしいの一言ですね。ある意味で特務大尉に慣れた者が増えた反抗時代ならともかく、大敗走時代に特務大尉の補佐が出来たのは異常とも言えます』
私『出来ないことはガル星人の戦艦を操ることだけだと冗談で語られていますが、それくらいなんでも出来た。言ってしまえば、ギリギリ人類の範疇に収まっている特務大尉なら、このくらいになるのではと思わせるような人物です』メモ・テストパイロットの話が出てましたが、最初期のバードなら多分いけると思うんですがねえ。
私『そして彼らは伝説になった。センター近郊の戦いにおいて、艦内の構造を知らないまま突入した敵旗艦内でガル星人を殲滅。いくら高度な自動化が施されているとはいえ、たったの十人と一人が後にリヴァイアサンと名付けられる戦艦を制圧したのです』
私『当時の熱狂の資料には事欠きませんね。メディアはどこもかしこもが彼らを取り上げ、政府は専用の夜明け勲章を授与。式典のテレビ中継は視聴率がほぼ100%で、彼らは一夜にして人類史に刻まれる英雄となりました』
私『反抗時代においては各地で教導を担当。育てられた精鋭たちは、極々少数では成し遂げられない多方面での星系制圧に活躍し、究極の矛が広げた突破口を広げ続けました』メモ・十人が抜けた穴は強化兵が埋めた。よくフルマラソンを自虐しているが、彼らもまた飛び抜けている。
『やっぱすんげえな』
『ああ』
『軍曹の講演があったら聞きたいけど、倍率がヤバいって話だよねー』
A『うん。よっぽどの運が必要かも』メモ・誰かさんが電話をしたら即とは言うまい。
私『さあていよいよ時間が無くなってきましたが、機動兵器のコーナー、チキンレース、バード、そしてなによりバハムートへ行ってみましょうか』




