反撃
『久しぶりにセンターに来たら、随分と船が揃ってるな』
『おやお帰りなさい。斬首作戦ご苦労様です。一人で。まあそんな事はどうでもいいです。さあ見てくださいエージェント! この最新鋭の艦隊を! 私が徹底的に改良を加えたこの艦船達なら、ガル星人の艦隊とも、まあ、それなりに戦えるでしょう!』
『まあとそれなりを取っ払え』
『無茶言わないでください。どれだけ技術差があると思ってるんですか。まあとそれなりが付いただけでも御の字ですよ』
『リヴァイアサンからの技術収集はどうなった?』
『ほぼ吸い終わりましたが、今の人類の技術水準では、全てを有効活用するのは無理ですね。現在はむしろお手頃な主力戦艦の方が欲しいです。やれるなら鹵獲をお願いできますか?』
『分かった』
『まあなんと軽く受けて』
『兵の士気と練度は?』
『上々ですよ。エージェントが訓練施設に送り込んだ10人とも素晴らしい腕前です』
『そうか。軍曹達には迷惑を掛ける』
『一応言っておきますけど、彼らは昇進してますからね。エージェントと違って』
『特務少佐より特務大尉の方がしっくりくるからいい』
『負け惜しみじゃありませんよね? 言っておきますけど、あれだけ命令違反しておいて、昇進する方がおかしいですから』
『なら準備終わったか』
『無視かコラ。ええそうですね。もういい加減いいでしょう。時間稼ぎご苦労様です。それでは』
『反撃だ』
『それでこそですエージェント』
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『おい。一体どうなってる』
『だから言ったじゃないですか。エージェントがセンターに降りたら、群衆に囲まれて一歩も動けなくなるって』
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『おはようございます皆さん。大統領です。ついに、ついにこの日がやって来ました。語るべきことは多く、その全てを私は言いたい。しかし、だからこそもう一度言いましょう。ついに……この日がやって来た……。長かった。一度は滅亡の危機に瀕していた我々が、艦隊を再編し、軍を再編し、我々から全てを奪い去ったガル星人に反撃をするこの時が! ここに私は、人類領域奪還作戦の発動を宣言します!』
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『その、特務……リヴァイアサンはセンター防衛の任に……』
『バードの最前線運用作戦が最重要だ。元帥もそう言っていた。そしてバードはリヴァイアサンの艦載機だ。つまり空母がたまたま総旗艦だっただけの話だ。なにもおかしいことはない』
『あ、はい……』
『それに反撃作戦の最初に総旗艦がいないでは格好がつかん』
『それは確かに。あれ、今空母じゃなくて総旗艦って……』
『それでは俺は、バードに乗り込む』
『あ、はい……』
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『お待ちしておりました特務!』
『工廠の人員なのに、最前線の総旗艦に連れて申し訳ない』
『いいえ! バードは不具合の塊ですから仕方ありません!』
『そうですよ!』
『お返しは勝利でよろしくお願いします!』
『毎日届けるから期待していてくれ。それでは乗り込む』
『はっ!』
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『ザ・ファースト。作戦のタイムスケジュールに齟齬は?』
『何もありませんよ。予定通り、ハチの巣を突いた騒ぎのガル星人艦隊を撃滅。宙域の確保。後に惑星に降下しての確保。長く厳しい戦いになりそうですね』
『なに、終わったらあっという間だ』
『終わらせられますかね?』
『そのために、今一歩踏み出した。昨日倒れた者の為に明日一歩前に。一昨日倒れた者の為に明後日二歩前に。子供達が、後の命が歩む道を、明日を、未来を守ってみせる』
『ならもう言う事はありません。行ってらっしゃい』
『ああ。特務大尉、出撃する』




