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【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!  作者: タカば
転生王女は家族を守りたい

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王妃暗殺未遂事件

 私も、部屋の中を見回した。

 壁は手芸品だらけだった。廊下ほどではないものの、至るところに小物が飾られている。そしてそれらはすべて、お守りだった。

 サウスティでは編み物で安産祈願のお守りを作るのが一般的だ。

 産まれてくる子供の小物を作る傍ら、お守りを編み、健やかな成長を願うのだ。

 だから、出産間近の王妃の部屋に、安産祈願の編み物があるのは不自然じゃない。でも、ここに飾られたお守りのほとんどは厄除け祈願。邪なものを退けるために、そばに置くものだ。

 出産に関わる事故を避けるためと考えても、ちょっと数が多い。


「何があったんですか?」


 ジル兄様にたずねられて、お義姉様は紅い瞳をふせた。


「最初は、ただの事故だと思ったの……」


 そっとお腹に手をあてる。


「階段にロウが塗ってあったり、食事の中に鬼灯が混ぜられていたり……そんなことが続いて……警備を強化しているはずなのに、いつの間にか、コップの中に折れた針が入っていたりして……」

「えっ……」


 それは、明らかな悪意だった。

 ひとつひとつは小さいように見えるけど、それらはどれも、お義姉様の体とそのお腹を狙っている。

 あっては、ならないことだった。


「それで、こんなにも警備が強化されているのですね」

「ええ……」

「考えうる限りの対策をたてて、警備兵たちの守る離れで暮らしているのだけど……どうしても不安になっちゃって。つい、厄除けの小物ばかり作ってしまうの」


 サラお義姉様がジル兄様に笑いかける。でもその表情はひきつっていて、無理に笑っているのが明らかだった。

 やせ我慢ばかりって人のことを言うけど、お義姉様も十分やせ我慢タイプだ。

 ここは私が妹としてひと肌脱がないと。


「お義姉様、一番お気に入りのお守りってどれですか?」

「そうね……この緑のサシェかしら。レイナルドにお願いして、二針縫ってもらったの。子供のことを想って、ふたりで作ったものなのよ」


 あのレイナルド兄様が縫物。

 どんな顔をして針を使っていたんだろうか。

 突然ラブラブ豪速球を投げられた私は一瞬言葉を失った。

 いやいやいや、いちゃいちゃ話が聞きたかったんじゃなくて。


「ディー」


 私は女神から遣わされた従者を振り返った。

 私が首からさげている虹瑪瑙のペンダントは、真っ黒から暗い藍へとほんのり色合いを変えている。王城に巨大ロボットを安置し、力の消費量が減ったおかげだ。

 ディーはこくん、とうなずくと、お義姉様の座るソファのひじ掛けに、前脚を乗せて伸び上がった。


「あら、ヒョウの従者さんどうしたの?」

「お義姉様、ディーにお守りを渡してください」

「こう、かしら」


 お義姉様が口元にお守りを近づける。

 ディーが額をこすりつけるようにして、お守りに触れると。布地と糸でできているはずのお守りが、虹色に光った。

 光はすぐにおさまり、お守りは元の姿に戻る。


「まあ……これは?」

「女神の祝福です」

「えっ」

「それはたった今、とても強い『お守り』生まれ変わったんです」

「強い……?」


 お義姉様はお守りをまじまじと見つめた。


「肌身離さず持っていてください。女神様の力が、必ずお義姉様を守ってくれるはずです」

「あなたが女神の聖女になった、とはレイナルドから聞いていたけど……本当に、奇跡の力を使うことができるのね」


 ぎゅうとお守りを手胸に抱きしめる。


「こんな素敵な贈り物、感謝してもしきれないわ」

「お気になさらないでください。子供は、全員健やかに生まれてくるべきだと、思ってるだけなので」

「ありがとう、コレット。絶対にこの子を守ってみせるわ」

「私も元気な家族の顔がみたいです。一緒にがんばりましょう」


 私たちは手をとって、笑いあった。


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