家族会議
「姫様、お茶をお持ちしました」
「ご苦労様」
お茶を出してくれた侍女に、私はにっこり笑いかけた。
テーブルの上では、いれたてのお茶がいい香りを漂わせている。行軍中もお茶は出してもらってたけど、野外のテント生活では限界がある。設備の整ったお城で出してもらうお茶は格別だった。しかも、今日は焼き立てのお菓子もセットだ。
長旅のあとの好物お菓子セット、うれしすぎる。
「……いまさらですが、私が同席してよかったんですか?」
いつになく、ひかえめな様子でルカが声を発した。
それもそのはず。
レイナルド兄様が私たちを案内したのは、王城の奥、王族用の部屋が並ぶプライベートエリアのリビングだったからだ。ゆったりとしたソファが並ぶその部屋には、私、両親、ふたりの兄に、ダリウス卿とオスカー。私の横でちょこんとお座りしているディーをのぞけば、彼ひとりが部外者である。
「オーシャンティアに送った、ルカ王子救出の知らせの返事はまだ届いていない。本国から迎えが到着するまで、王城で暮らすことを考えれば、君もサウスティ宮廷事情を把握しておいたほうがいい」
「ご配慮、感謝します」
ルカはぺこりと頭をさげた。レイナルド兄様は、それを見てふっと笑う。
「そう緊張しなくていい。敵地から無理をしてでも連れだしてきたというなら、妹の中ではもう君は、弟のようなものなのだろう。なら、私にとっても弟だ。この城にいる限りは、家族としてもてなそう」
「……ありがとうございます」
「部屋も、王族用のエリアに用意してある」
「えっ」
ルカがぎょっとした顔になった。
家族としてもてなす、という言葉を社交辞令として受け取っていたからだろう。私も、レイ兄様の破格の待遇にちょっと驚いてしまう。
レイ兄様は、いたずらが成功した子供のような、人の悪い顔になる。
「これは警備の都合でもあるんだ。友好国の王子を万が一にも危険にさらすわけにいかない。だから、王宮で二番目に安全なエリアに滞在してもらう」
「二番目?」
兄様の説明にひっかかりを感じて、思わずつぶやいてしまった。
王城で一番警備が厳しいのは、王族が暮らすプライベートエリアのはずだ。それ以外に守るところがあったんだろうか。
「今、一番警備が厳重なのは、サラが暮らしている裏の離れだな」
「お義姉様が離れに……?」
そう聞いて、ますます首をかしげてしまう。
サラお義姉様は、レイ兄様の妻として国王の主寝室で寝泊りしていたはずだ。なぜ城内で別居しているんだろうか。まさか、私がいない間に喧嘩でもしたとか?
「今、ちょっと失礼なこと考えただろ」
「いいいい、いえ? 何も考えてませんよ? お兄様!?」
「……サラが離れで寝泊りしているのは、出産のためだ。臨月が近いこともあり、産婆や医者が待機しやすい離れに一時的に移っている」
「お義姉様が!?」
初耳だ。
でも、しかし……。
私は兄たちに出迎えてもらった時のことを思い出す。
「私たちが帰ってきた時にお義姉様がいなかったのは、そういうことだったんですね」
「ああ。帰還兵たちが何人も出入りする場所に、身重のサラを出せなかった」
「そういうことなら、納得です……」
不仲どころか、ラブラブだからこその別居だったらしい。
「お前に知らせなくて悪かった。だが……サラの懐妊がわかったのは、ちょうどお前がイースタンに出立したあとだったんだ。あちらへは、無事出産してから伝える予定だった」
「世継ぎの誕生は国家の一大事ですから。レイ兄様が情報を伏せるのは当然ですわ」
まして、イースタンはアギトに寝返った敵国である。
むしろ警戒して正解だろう。
「もうひとつ、お前たちに共有しなくてはならないことがある」
「なんでしょう」
「ジルベールの花嫁としてやってきた、イーリス姫のことだ」
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