王城
結局、王城の中庭に整備車両と巨大ロボットを安置したのは、もう日が暮れようという時間だった。
いやもう大変だった、大変だった。
サウスティ騎士団を勝利に導いたという白銀の鎧を見ようと、王都じゅうの人間が街道に集まってきていたのだから。
市民が飛び出さないよう、厳重に街道を見張る騎士。
騎士の目をくぐってなんとか前に出ようとする市民。
道に出るのがダメなら、周りに並ぶ建物から見ようと、屋根や窓に鈴なりになる市民。
騎士の中にも、あまりに異様な光景に思わず道出そうになる者がいたりした。
わかる。
一目見たいって気持ちはよーくわかる。
私も弟分を連れてお台場に出かけて、巨大ロボ撮影イベントに参加してた人間だから、『なんかデカくてかっこいいもの見たい』って気持ちは、心の底からわかる。
でも、大きなものはそのぶん危険度が増す。
人間なんか、ロボの下敷きになったら簡単につぶれるからね?
ロボじゃなくても、大型トラックの下敷きになったらぺしゃんこだからね?
街道を通過する間、対物センサーがずーっと『人の通行を検知しました』って、ピーピー警告音を出し続けてて、生きた心地がいなかったよもう……。
「コレット様、ロボットと車両の固定が完了しました」
「お疲れ様、ディー」
移動の後始末を終えた子ユキヒョウに、ねぎらいを返す。これでやっと本当に移動終了だ。
「んっ……助手席に座ってるだけでも、結構疲れたな」
降りてきたルカがのびをする。
警備の都合もあり、彼にはずっと整備車両に乗ってもらっていた。車の強化ガラスと鉄板に守られたシートほど、安全な場所はないからね。
「いい部屋を用意するよう、事前に指示をいれてたから、今日はぐっすり寝られると思うよ」
逆に、ジルベール兄様は着飾った馬に乗っての行軍だった。サウスティ騎士団を率いる総大将として、その威光を示すのもお仕事だからだ。
「ここからは、俺がそばにつく」
馬に乗って少し離れてついてきていたオスカーが、やってきた。
本人はもっと近くで並走したかったらしいんだけど、馬車と同じ感覚で自動車と並走するのは危険だ。
馬が排気ガスのにおいを嫌がったのもあって、どうしても離れるしかなかったんだよね。
鉄壁の装甲に守られてるから、と説明されてやっと納得してたけど、異世界と現代の感覚ギャップ、難しい。
ふわ、とルカがあくびをした。
「とにかく一度休みてえな」
「そうね……」
私も懐かしの我が家のベッドにダイブしたい。
城内に入る大扉に、全員で向かおうとした時だった。
「コレット!」
「コレットちゃん、おかえりなさい!」
大扉の向こうから、人影がふたつ、足早に向かってきた。





