ディーのアイデア
「簡単な設計図をお渡ししますので、材料を集めてとにかく組み立ててください。精度は低くて構いません。それらしい形になっていれば十分です」
「それじゃ、役には立たないんじゃないの?」
「通常は。しかし、こちらには女神の加護があります」
「あ……!」
私は思わず声をあげた。
「コレット?」
不思議そうな兄様たちに、奇跡の力の特性を説明する。
「女神はすでにあるものに力を与えるのが得意なの。虹瑪瑙のペンダントに加護を加えたり、創造神様の像を巨大な鎧に変えたり。雑に組み上げられたボウガンでも、仕上げに奇跡の力を加えれば、最高精度の武器に産まれかわる……そういうことでしょ?」
「その通りです」
「職人が必要ないのはわかったが……さきほど、女神の力を使い果たしたと言ってなかったか?」
そういえばそうだった。
私の胸に下げている虹瑪瑙は相変わらず真っ黒なままだ。武器に加護を与えて回れるほどの力があるようには見えない。
ディーはユキヒョウの姿で、人間くさくため息をつく。
「そこは、回復した端から消費するしかないでしょうね。私としては、コレット様をお守りする力をある程度確保しておきたいところですが」
「そこは、俺たち護衛がカバーすればいい」
オスカーが一歩前に出る。ディーは彼を見上げたあと、ふっと視線をそらした。
「そういうことにしておきましょう。ジルベール殿下、ダリウス卿、いかがでしょうか」
「君の案を採用しよう。武器製造が十分実現可能なプランだということはわかったし、かわいい妹をずっと戦場に縛り付けておくわけにはいかない」
たし、とディーがまたタブレットを肉球で叩いた。
画面が切り替わり、ずらっと四角が並んだ、現代日本人には非常になじみ深いデザインになる。いわゆる表計算ソフトの書式だ。
「ジルベール殿下、こちらが武器製造に必要な資材の試算になります。集めるのにどれくらいかかりますか」
「……複数回に分けて届けさせるとして、まず明日にでも第一陣を、三日後に第二陣、五日後に第三陣、といったところかな」
「そこに武器製造の工程が加わるとして……早くて七日、遅くとも十日後には武器をそろえましょう」
「助かる。コレットもそれでいいかい?」
こちらを振り向くジルベール兄様に、私はにっこり笑い返した。
「構わないわ。対抗策が整うまでの防衛はまかせて」
はあ、と大きく息を吐いてジルベール兄様が肩を落とす。
「空飛ぶドラゴンが出て来たときにはどうなることかと思ったけど、なんとか生き残れそうだね?」
「対抗策はあるんです。がんばりましょうお兄様!」
「はは、頼もしいな。まさか妹が女神の聖女になるとは思わなかったよ」
お兄様はへにゃ、と力なく笑った。





