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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章上編『忘却されたⅫの栄光』

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Deviance World Online ストーリー3『絢爛な晩餐』

「……、すみません。誰か代わりに持ってくれませんか?」

「「絶対に断る。」」


 即座に断る2人、それだけ高価なモノ。

 当然触れるのも億劫なモノであり、正直触りたくない。


「た、食べ物ですしも、持ってくださいよ!?」

「じゃぁ、瓶を持つわ。」


 そう言って、瓶を一本だけ持つ黒狼。

 レオトールも同じように瓶を一本だけ持つ。


「いや、ふざけないでください!? もう少し持つモノが他にあるでしょう!?」

「絶対に持ちたくない。」

「右に同じく、と言うかゾンビ一号。お前が持てるほどそれは軽いのか?」

「え? そう言われたら……。アレ? 滅茶苦茶軽い……?」

「……、よしレオトール。先にダンジョン出ようぜ?」

「そうだな、早速出ることにしよう。」

「いやいやいや!? 逃げないで!? ねぇ!! 逃げないでください!?」


 全力でEXITと書かれた扉に全力ダッシュする2人、彼らを追いかけるゾンビ一号。

 そしてそのまま全力で走り……、幻想郷を見た。

 勿論、本当の幻想郷ではない。

 幻想郷、とは言ったもののそこに妖精(フェアリー)や精霊がいたわけではない。

 豪華絢爛とはまた趣の違う、嫌らしさの無い落ち着ける空間。

 用意されているものは机と椅子、そして石畳だけ。

 だがその三つに刻まれた細かな彫刻が、もしくは何もない無骨な表面が調和を生みそして満点の星空が神秘を醸し出す。


「綺麗……。」

「……(レオトール、コレどれぐらい値段がかかりそうだ?)」

「(維持費抜きでも豪邸が建つのではないか? 生憎と私はそっちの方面に詳しくはないが……。)」

「(地獄かよ。)……、そうだな!! 飯食おうぜ?」

「まぁ、そうするか。ゾンビ一号、机に鞄を置いてくれ。」

「え? わかりました。」


 そう言って机の上に鞄を置くゾンビ一号、置かれた二つのカバンからレオトールは様々な酒と食べ物を取り出す。

 出された食物は最低限の調理しかされていない、だがそれだけでもわかるほどに香ばしいにおいが漂ってくる数々だ。

 こうして出している間にもゾンビ一号とレオトールの腹は鳴りっぱなしである。


「とりあえず人化薬を飲むか、ゾンビ一号も飲んだらどうだ?」

「分かりました、飲んだら私たちも準備を手伝いますね。」

「ああ、早く手伝ってくれないとつまみ食いをしてしまいそうだ。」


 そう言いながら、手早く料理の数々を並べる。

 中から出てくる食べ物は途切れがなく、全て出し終えたのを見れば用意されて机にほぼ完全に埋まるほどだ。

 さらに他で用意された一級品の食器も有り、それらも並べていく。

 ここが野外ということを差し引いても、いやここが野外であるからこそその幻想性がより湧き立てられる。


 まさに幻想郷だ。


「っと、俺が完全に変化する前に準備が終わったな……。」

「黒狼って意外とかっこいいんですね、黙ればイケメンですよ。」

「黙れば、な?」

「喋ればブサイクって言いたいのかコンニャロ!!」


 そう言いながら肌白ろさがないゾンビ一号にヘッドロックを決め、即座に止めると席に着く。

 真っ白な大理石っぽい机に置かれた大量の食べ物、ソレを3人は和かに、賑やかに食べ始めた。


*ーーー*


「むにゃ……、もう食べられない……。」

「ゾンビ一号は寝ちまったか、とは言え気持ちはわからなくもないけどな。」

「ああ、と言う私も気を抜けば寝てしまいそうなほどに満足してしまっているな。」

「重労働の後の美味い飯と酒はやっぱり悪魔の組み合わせだな?」

「ハッハッハッ、違いない。」


 互いに杯を掲げながら笑う。

 ここまで楽しかったことは他にあっただろうか? 人生の絶頂とまでは言わないものの遜色ないほどの喜色を見ながら黒狼はレオトールとさまざまな話をしていた。

 ダンジョンでのことから始まり、出会いやソレ以前。

 辛かったことや、逆に楽しかったこと。

 その全てを心ゆくまで語り合った。

 金額には変えられない、金銭では得られないソレは2人の心を満たしこの難行の最高の報酬として光り輝いていた。


 だからだろう、その話題が出たのは。


「コレから、お前はどうするのだ? 黒狼。」

「……、どうするって?」

「いや……、私はコレから元依頼主と会おうと思っていてな。勿論、ある程度ステータスが回復するまでは休養しなくてはならんが。」

「ふーん? いいんじゃね?」

「そう言う話じゃないだろう……、お前の旅には少ないくない間付き合うつもりがないと言う意味だぞ?」

「あ、そう言う? けど別にかまわねぇよ。俺も、この世界換算で九日ほど遠出するし。」

「そうか……、ちょっと待て? 遠出というのは神々の祝祭(※プレイヤー風にいうとイベント)しかも異世界に召集される類のものということだよな?」

「そうなるけど。」

「なればゾンビ一号は着いていけんぞ?」

「はぁぁぁぁぁああああああ!?」


 慌てて黒狼はインベントリを開き、イベント詳細を確認する。

 そして、【※NPCは参加できません】という一文を確認してNooooooOOOOOO!!!!! と叫ぶ。

 その大声で目覚めかけたゾンビ一号だが、レオトールの手によって即座に寝かされた。

 状況を軽く説明すると、ゾンビ一号はワイン瓶片手にグデーっとレオトールに膝枕させながら寝ておりレオトールは残っている料理をナイフとフォークで上手に切り分け口に運んでいる。

 黒狼は対面の席で立ち上がりながら絶叫していると言った感じだ。


「うるさいぞ、黒狼。」

「煩くもなるだろ!! 今から4、いや3時間後だぞ!? しかも信頼できる戦力がいなくなるとかマジかよ!?」

「落ち着け、ソレに異邦人ならば異邦人らしく異邦人に協力を求めるのはどうだ?」

「あー、よし採用!! ソレで行こう!!」


こうして夜は更けていった。


*ーーー*


ー〈ID:2937193691 設定名:黒狼 が入室しました〉ー


102 黒狼

よろしくお願いします!!


103 千子村正

よろしく


104 ネロ

うむ!!仲間が増えたな!!


105 ヴィヴィアン

よろしくお願いいたします。

さてもう1時間後に迫っていますが、場所の確認はされたでしょうか? 皆さま。


106 ロッソ

>>105

問題ないわ


107 ネロ

問題ない!!


108 千子村正

問題ねぇよ


109 黒狼

す、すいません。

どこで見れますか?


110 ロッソ

メインチャットを横にスクロールしたら出てこない?


111黒狼

あ、解決しました。

ありがとうございます。


112 ヴィヴィアン

皆さんが問題なければ、イベント開始時刻からゲーム内時間5時間後に集合したいのですがよろしいでしょうか?


113 千子村正

問題ねぇよ


114 ロッソ

問題ないわ


115 黒狼

大丈夫です。


116 ヴィヴィアン

あれ? ネロさん遅いですね……?


117 ネロ

うむ、問題ない!!


118 ヴィヴィアン

では、明日……ではないですね。

本日明朝から9日間よろしくお願いいたします。


*ーーー*


「あっぶねぇ、アイツとは連絡つかねぇし……。」


 そう言ってインベントリから視線を外す黒狼。

 目の前では食卓を片付けたレオトールの姿があった。


「次、どこで出会う?」

「ならばこの国の冒険者組合(ギルド)で出逢おうか、連絡は……。まぁ、依頼すれば直ぐだろう。」

「へー、便利だな。」

「ああ、そしたら私は寝させてもらうことにするよ。」


 そう言って、レオトールは片付けた机から離れテントを作るとそこにゾンビ一号を寝かせレオトールは別で立てたテントに入った。

 ソレを見た黒狼は、静かにログアウトボタンを押した。

1日3話投稿ってやばいな……。


っと、どうも黒犬です。

今回で一章上編『忘却されたⅫの栄光』の本編が終了します!!

いやぁ、長かったですね。

今回で98話!! なんと98話ですよ!!

最初の予想では70ぐらいかな? だったのでマジでびっくりしてます。

次はラスト『黄金童女』ネロの話をして一章中編に入ろうかと思っています。

ちょくちょく挟まれていた別キャラクターの話は一章で活躍するキャラクターなので読んでなければ是非読んでください。

ぶっちゃけ飛ばしても本編を読む上で問題はないです。


さて、前話で登場した英雄の王を名乗る人物。

彼の正体も気になりますね、まぁギルガメッシュと名乗っていますが。

ではDeviance World Onlineを引き続きお楽しみください。

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