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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章上編『忘却されたⅫの栄光』

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Deviance World Online ストーリー2『勝利の可能性』

「『赤は火炎、青は流水、黄は土砂、緑は風雷』」


 レオトールが絶技を放つ直前、ゾンビ一号は詠唱を開始していた。

 溜めが酷く、大型の相手以外には通用しないソレ。

 だが、この一時ばかりは状況が違う。


「『絡み絡み離れ崩れ、四大を以て一極を織り成す』」


 目の前に魔法陣が完成し出す、直後周囲に桜吹雪が完成しレオトールが3回目の殺害を成し遂げた。

 ソレと共にゾンビ一号が出すことが可能な最大火力、己の持つ最大手段を展開させる。

 確実にコレで一殺に持っていく、その覚悟と共に魔術を完成させた。


「『ここに極線を成せ、【四刻相殺極魔砲マジカルキャノン】』!!!」


 一瞬の停滞、そして現れた何かを掴もうとしたヘラクレスを吹き飛ばす。

 吹き飛ばす、だけではない。

 極光がヘラクレスを焼き尽くし、4回目の殺害を成し遂げた。


(コレで4回、あのバカ(黒狼)が言うには合計12回殺せばいいと言う話でしたが……。)


 殺害の達成ソレを喜ぶより先に、MPの消失による倦怠感と黒狼に告げられた内容の疑念が浮かぶ。

 何度も何度も復活するヘラクレス、その生命のストックを彼らは把握していない。

 一体どれだけ、何回復活するか不明な今尚強くなり続ける敵を殺さねばならないのか?

 焦りと共に、絶望感が背後に忍び寄りはじめた。


*ーーー*


 話は少し巻き戻り、黒狼が復活した時点となる。


「ゾンビ一号!! 聞こえるか?」

「先にポーションください!!」


 直後、ポーションを投げつける黒狼。

 回復したゾンビ一号は、体に刺さる矢をひきぬく。

 ヴァンパイアと化したとは言え、その肉体は未だ屍。

 痛覚は乏しく、死への恐怖はレオトールと比べれば大きく劣る。


「アレのギミックがわかった、恐らくアレは11回蘇生する!!」

「具体的な理由は?」

「勘!!」

「信用するに値しませんね!!」

「けど、12の根拠はこのダンジョンだ!!」


 そういうと、口早に黒狼は語る。

 先ほどログアウトした時、友人に尋ねたのだ。

 12の難業、ヒュドラやアマゾネスに関連する人物は? と。

 それに対して、友人は『え? ヘラクレスしかないけど?』と言う回答で返した。

 ヘラクレス、ギリシャ最大の英雄。

 史実において、贖罪の為の12の試練を乗り越えた末に神の座の末席に迎え入れられた大英雄。

 その血には、ギリシャ神話の主神【ゼウス】の血が混ざっている。


「12回、人間では成し得ないような試練を達成した結果12個の命を得たとしても不思議じゃない!!」

「……そっち(異邦)の話が関係ある以上これ以上の推察は無意味ですか。分かりました、12回殺せばいいんですね!?」

「恐らくだがなァ!!」


 飛んでくる攻撃の余波、ソレを避けながら黒狼はそう叫ぶと何かを閃いたのか彼は駆けて行く。

 こうして冒頭のシーン戻るのだ。


(12回殺す、言うは易いが行うは難しって訳かよ!!)


 ゾンビ一号のマジカルキャノンが炸裂した瞬間、ジリジリと減ったHPを見ながら黒狼は心の中でそう叫ぶ。

 12回殺すのが突破条件、確証こそないものの確信しているソレを強くイメージしながら骨ながら険しい顔をする。

 レオトールは当然のようにその場から離脱している、ヘラクレスのそばに現れた武器は大きな楽器のようなモノ。

 マジカルキャノンに触れたことにより大きくヒビが入っているがソレでも原型は保っている。

 レオトールに目配せしその武器を、銅羅を破壊もしくは回収する様に要求する。

 視線だけで全てを察したレオトールは、即座に行動を開始。

 その間に黒狼はヘラクレスに接近すると、現れる武器を掴もうとする手に槍剣杖を狙う。


「『錬金術』!!」


 疑似的な応用、錬金金属を変形させ手枷とし己と無理矢理繋ぎ合わせた。

 瞬時にポーションを上に投げる。

 現れた棍棒を手に取ったヘラクレスはその手枷を認識し、その棍棒で黒狼を叩くために動く。

 轟音と共に迫り来る棍棒、それによって全身の骨を叩き砕かれる黒狼だが……。


 さて、ここで一つの仕様を説明しようか。

 アンデッド、スケルトンである黒狼はHP表記が少々異質になっているのは周知の事実だろう。

 では、何故あのような異質な表記になっているのか? その答えはスケルトンという種族は厳密に言えば骨に宿る幽霊(レイス)であるからだ。

 そも生命は肉体に依存するモノ、だがアンデッドの大半は肉体に依存しない。

 アンデッドとはすなわち、アンチデッド。

 死を否定する存在だ、それ故に死を肯定する生命と違い肉体に依存しない。

 だが、そのアンデッドが生者に焦がれ肉体を得ればどうなるか? 答えは、歪な形で肉体と結合する。

 生命として成立していないからこそHP(生命力)は存在せず、されど生命としての肉体があるが故にHP(耐久値)は存在する。

 

 さて以上のことを踏まえた上で、特殊な仕様がここに一つある。

 アンデッド、ソレの肉体を得たプレイヤーが死亡する場合どの時点で死が確定するのか?

 その結論を、黒狼は何度も何度も死ぬ中で感覚的に掴んでいた。


「『復讐法典:悪(アヴェスター)』」


 HPがゼロになり、普通のプレイヤーならば死んでいる現状。

 その中の一瞬の猶予で彼は、最も身勝手な復讐を行う。

 その復讐は、正当な身勝手な復讐。

 故に、()()()()()()()()()()()

 

 ヘラクレスの肉体、その骨が黒狼と同じく粉々に砕ける。

 上位者にすら通用する最強スキル、ソレを発動した黒狼は完全な死に至る直前降ってきたポーションを浴び完全復活を成し遂げた。


「俺のHPは耐久値、そしてポーションは()()()()H()P()()()()()()。つまり、だ。」


 例え、肉体が壊れたとしても即座にHPを回復すれば復活可能だと。

 黒狼は、悪辣な笑みを浮かべそう告げたのだ。


 仕様の矛盾、己の存在をうまく使った作戦。

 他の人間ならばステータスを数値として捉え、その意味を考えないからこそ成し得ず。

 黒狼はその意味まで考えたからこそ編み出した作戦。

 異常者故に見つけられた正常の穴。

 

 深淵の底で彼は笑う。


「『極剣一閃(グラム)』」


 直後ヘラクレスを襲う最強の初手。

 全身を粉砕され、その体躯を大きく弱らせたヘラクレスはその一撃で死を迎える。


「お前の敗因はただ一つ、四肢欠損すら治るその蘇生に身を委ねたことだ。」


 ニヤリと笑い、全身から蒸気を激らせ立ち上がらんとするヘラクレスを見下ろす。

 もし、黒狼の顔が骨でなければ悪辣な笑みを浮かべていたことだろう。

 未だ5回、だが後2回殺す方法は用意している。

 たった2回、されど2回。


 今、黒狼はこれ以上なく楽しんでいるのだ。

 可能性はfifty-fifty、どちらも黒狼の手の中にある。

 ならば負けない、負けられない、負けられるはずがない。


「さて、ダイスのビチクソ。テメェが振る賽でクリティカルを出してやるよ。」


 そう言って、スキルを発動した。

口が悪い主人公こと黒狼くん!! 君のセリフが修正される可能性は8割だ!!

とは言え、クトゥルフプレイヤーなら割といいますよね?(偏見)


黒狼くんが12回復活すると考えた理由は人の身では成し得ないⅫの難行を達成したヘラクレスは死後神となった→神は不死であり殺せない、だから殺しても復活する→だがゲームである以上何らかの制限があるはず→12回不可能と思える偉業を達成したのならソレに因んで12個の命を持ってるのでは?


と言った感じですね。

今回は運良く当たっていたみたいです。

ついでに、黒狼が何故10秒で戻って来れたのかは死んだ時に放たれた攻撃が打撃属性であったため脆弱系スキルの効果でリスポーン時間が極度に短くなった感じです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 詰将棋に似通ったものを感じる [気になる点] 精神汚染とかって復讐の対象足り得ないんですかね? [一言] ダイスの女神はクソビッチ。偶にデレる時にダイスを振れるかだけが、攻略法のゴミです(…
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