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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章上編『忘却されたⅫの栄光』

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Deviance World Online ストーリー2『Ⅻの難行』

 極剣一閃が煌めき、ヘラクレスの胸を薄く切り裂く。

 直後、インベントリから取り出していた槍で突き刺すとレオトールはスキルを発動した。


「『串刺し(カズィクル)』!!」


 油断は、無い。

 突き刺さった槍の穂先、そこから魔力で形作られた杭が内臓を蹂躙する。

 レオトールが保有する最も簡単な()()()()()

 並大抵の相手ならば即座に死ぬ、目の前の男も同様で動きが止まった。


「……、ナニ?」


 HPバーにもそのHPが全損していることが示されている、明確に即死コンボが決まったことが示されている。

 目の前の英雄は死んだ、なのに何故()()()()()()()()

 何故威圧感が、何故恐怖が。


「『錬金術』!!」


 慌てて叫び、黒狼は目の前の男の脈動から逃れようとする。

 全身の血管が赤黒く発光している、レオトールも一瞬遅れソレに気づいた。

 全身から蒸気が噴き出し、男は死んだはずの肉体を動かす。

 手から巨大な斧剣が離れ、大きな鉄弓が握られる。

 

 史実において、Ⅻの難行を乗り越えた末にヘラクレスは神の座の末席に加えられた。

 この世界に置いても、彼はⅫの難行をクリアしたと言うのは同じだ。

 

 違うのはその後。


 その難行を突破した末に、目の前の大英雄は『不老不死』を手に入れた。

 この世で最も残酷な不老不死を手に入れた。


 パリン、と。


 ガラスが壊れるような音と共に、大英雄は蒸気を放ちながら金に発光する双眼を3人に向ける。

 不老不死、その正体はスキルでありその名は『Ⅻの栄光』。

 再生する命のストック、その上限は12。

 そのストックを再生させるにはその記憶と記録を代償にせねばならず……。


「『    (ヒュドラ)』」


 されど、その身に染みついた経験は一切消えない。

 間違いなく、この際最強の難行が今始まった。


*ーーー*


(即死からの再生だとッ!? ソレに先程の魔力で生まれた杭は消えている……、通常の再生能力とは別物か!!)


 レオトールはそこまで判断すると即座に壁際まで下がる。

 得手物の変化、体の重心が剣を扱っていた時とは大きく違う。

 咄嗟の判断としては上々、だがその手はこの状況に限って言えば下策も下策であった。


「なッッッツツツ!!?」


 一本、矢が飛んでくる。

 感覚がソレを告げ、避けようとした先。

 そこにレオトールの本能が最大限の危険信号を鳴らした。

 

 降り注ぐ数十本の矢、ソレら全てに妙に毒々しいエフェクトが発生している。

 その全てはレオトールを確実に殺すためだけに。


「『急式、転身乱舞』」


 初めて、Ⅻの難行が始まって以来初めて回避用のスキルを使用した。

 DEX2000、その最高速度は音速にも匹敵し生半可な攻撃ならば視認した後にでも回避できる。

 システムに依存するスキルを使用するなど、本来ならば致命的な隙を生むモノ。


 だがそのシステムを使わなければならないほど、この矢が脅威であると認識したのだ。

 冷や汗が背筋を伝う、スキル発生の硬直の瞬間を狙いさらに追撃がおこなわれる。

 

「『解式、流水転体』」


 スキルの硬直、そのタイミングで放たれる矢。

 ソレを防ぐため、同様に回避用スキルを使用。

 0.01秒以下の硬直時間をさらに削り一瞬の差でその矢を全て避ける。

 初撃、いやあえて1回目と言おうか。

 1回目は、目覚めた直後と黒狼の奇策により即死コンボを放つことができた。

 だが、今は。

 2回目はそうは行かない。

 遠距離からばら撒かれるその矢、接近するにはあまりにも嫌な予感が止まらない。

 いくつかの警報スキルも全力で警笛を鳴らしていることからまず間違い無いだろう。

 そして、遠距離合戦をするにはあまりに決め手に欠ける。

 DWOにおいて、弓とは武器の性能がモノを言う。

 一定以上の技量があれば攻撃性能に大差はつかない、だからこそ武器の性能が決定だとなる。

 

 ヘラクレス、大英雄から放たれるその矢は当たれば絶死の気配を感じさせるモノだ。

 持ってる鉄弓、レオトールであろうがソレを引くのは酷く難しいだろう。

 ソレを容易く引き、何十本も矢を放つ。

 そんな相手と弓の撃ち合いをするなど、愚昧極まる。


「チッ、化け物かッ!! 『虎口にて』!!」


 自己バフを用いて、剣を超高速で振りはじめた。

 それによって、次々と飛んでくる矢を切り払う。

 だが、ソレができるのも一瞬だけ。

 即座に打ち方のタイミングが変わり、レオトールの剣技を縫うように矢が飛んでくる。

 一瞬、タイミングがずらされた事により一手遅れ矢がレオトールに刺さ……。


「『スケープゴート』!!」

「ッ!? ヒュドラか!!」


 刺さらない。

 ゾンビ一号が無理矢理矢の雨の中に突入し庇ったのだ。

 

 同時に、レオトールも矢に何故あそこまで警戒していたのか理解する。

 ゾンビ一号が問題ないと突入した、つまり生者には効き死者には効かない。

 肉体が関連するソレ、思い至る答えは一つのみ。

 猛毒、ソレもかなりの。

 そして、今現在レオトールが即死しかねない猛毒は彼が把握する限りヒュドラの猛毒以外ない。

 

「それでは触れられん訳だ……!!」


 眉間に皺を寄せ、焦りを隠さずゾンビ一号を盾にする。

 ゾンビ一号がいくら進化したとは言え元が死体である以上、HPが全損しない限り滅多に死なない。

 そして、回復手段は割とある……!!


 ゾンビ一号を盾にしながら高級ポーションを浴びせる。

 勝つために手段は選ばない、勝てば官軍負ければ賊軍。

 プライド? そんなモノ犬にでも食わせてしまえ。

 勝利条件を満たすためならば、あらゆるモノを利用しよう。


「死ぬなよ? ゾンビ一号!!」

「盾にされるとは思いませんでしたよ!?」


 インベントリから出した鎖と大盾でゾンビ一号を盾に括り付けたレオトールは、襲い掛かる矢を防ぎながら無理矢理強行する。

 飛んでくる矢は全て固く鋭く早い、ゾンビ一号を無理矢理回復させているとは言えすぐにその手段は使えなくなるだろう。

だが、一回殺すだけならば。


「『壊殺陣盤(ザバーニーヤ)』」


 剣を煌めかせ、漆黒のスキルエフェクトを輝かせる。

 即死攻撃、レオトールが保有する一撃必殺のスキルの一つ。

 どんなゲームにもほぼ必ず存在する即死攻撃、レオトールが保有する【業火へ追いやるモノ】の名を冠するスキルはその効果を内包する。

 作成者は不明、レオトールがこのアーツを保有しているのは偶然にもその担い手と出会ったから。

 そして、このアーツの意味を知った。


 即死攻撃、ソレを発動するにはいくつもの条件がある。

 その中でも、最も難易度が高いスキル『壊殺陣盤(ザバーニーヤ)

 レオトールですら滅多に扱えないソレ、この攻撃の条件は。


「蠱毒の坩堝で溺れ死ね。」


 ソレ以外のアーツによる絶死の経験。

 勿論、経験するのは全て一瞬であり時間は経過しない。

 だが間違いなく、死の経験が記憶とは言えそこにある。


 レオトールは時間に変換できない一瞬の間に18回の絶死を経験し


「さて、まだ生き返るか。」


 そう言いながら、冷や汗が流れる手で剣を握り込んだ。

黒狼はゲームなのとVRCの保護機能でデスポーンしても精神状態が大きく崩れることはないですがレオトールはそれ無しで18回死ぬ経験をするんですよねぇ〜。


いや、かなりやばいな。

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