Deviance World Online ストーリー2『Ⅻの難ー、天支の難行』
黒狼がゲーム内に戻ってきた数分後、レオトールはようやく目覚めた。
軽く頭を振り、インベントリから気付薬を嗅ぐと立ち上がりインベントリに椅子を仕舞う。
「……随分と眠っていたみたいだな、申し訳ない。」
「俺もついでに休憩してたから丁度いいぐらいだ、どうだ? 体の調子は。」
「存分に休めたお陰で元気抜群と言った具合だ、ゾンビ一号の方はどうなんだ? 彼女も寝ているみたいだが。」
「目が覚めたら起こせって書かれてるからそろそろ起こすか、若干申し訳ないけど。」
「此処を攻略し終えた暁には宝石か何かを買ってやるか。」
「なんで宝石?」
「む? 女性とは光物が好きではないのか?」
「否定しずらいな。」
そう言いつつ、黒狼は優しく揺さぶりゾンビ一号を起こす。
ソレを焦ったそうに見たレオトールは、手に持つ気付薬をゾンビ一号の口元に近づけた。
数秒、ゾンビ一号の鼻腔がヒクヒクと動き表情が険しくなり始める。
そして、30秒程度経った時に絶叫しながら飛び起きた。
「やはり感覚系統はやや薄いか。」
「アンデットの特徴だな、肉体が腐ってるから」
「くっさァァァァアアアア!! もう少しマシな起こし方は無かったんですか!!」
その言葉に顔を見合わせた2人は無言でそれぞれの得手物を見る。
ソレを見たゾンビ一号はその行動の意図を察し、顔を青くしながら最悪を想定し始めた。
もしや、と。
そう思いながら恐る恐る言葉を紡ぐ。
「え、剣で叩こうとしてました?」
「ハハハ、マサカソンナコトー。」
「まぁ、一瞬考えたな。」
「……、本当によかった。」
思わず安堵の声を上げるゾンビ一号。
黒狼は元より、レオトールも全体的に殺意が高い。
実力主義のレオトール、悪巫山戯の黒狼。
2人合わされば相乗効果で短絡的かつ悪意増し増しの悪戯が行われる。
分かりやすく言えば、ツッコミ役がいないのだ。
「ま、さっさと行こうぜ?」
「あ、私の準備だけさせてもらえませんか?」
「早く済ませるといい、ソレと黒狼コレを受け取れ。」
「了k……、え? 多くね? しかもコレ、全部ポーション?」
「大体20だ、今後もし分断されるようなことがあったら困るのでな。」
「なんで最初っから渡さなかったし……。」
「最初から渡していれば精神的余裕が生まれすぎるのでな、多少縛りとして良いと思ったのだが……。流石に前回のしでかしがあるからな。そういえば、宝箱の中身はなんだったんだ?」
「一つはスキルオーブで黒狼が使いましたね。もう一つはいくつかの素材でした、黒狼が開け忘れてたので私が開けたんですけど碌なものは入ってませんでしたよ……。」
そういうと、ゾンビ一号は黒狼に回収したのかと尋ね黒狼は回収したとジェスチャーで示す。
ソレを理解したゾンビ一号は骨剣を確認すると、ポーションを一つ取りレオトールに近づいていった。
レオトールは最初その行動を理解できなかったが、骨剣を鑑定した瞬間に察しインベントリを確認する。
「ゾンビ一号、一応聞くがその剣。どれぐらい壊れてる?」
「もう使い物になりませんよ、コレ。今の私のステータスなら軽すぎますし。」
「え!? そうなの!? 錬金術で対応できないのか?」
「無理だろう、刃毀れなどは兎も角そもそもステータスに追いついていない。貴様のソレは金属製だからしばらくは問題ないだろうがな。」
「金属を追加しても……、いやソレするぐらいならレオトールの持ってるヤツを渡した方が良いのか。」
「と、言いたいところだが……。」
そう言ってざっと10本ぐらいの刀剣を出すレオトール。
ソレら全ては特別な飾りなどもなく、精々が魔法陣が書かれた代物だろう。
だが、ソレを見た瞬間にゾンビ一号はヒッと叫び顔を青褪めさせる。
そう、あまりにも高価すぎるのだ。
ゾンビ一号の中にある生前の知識、ソレを使って目の前の武器がどれぐらいの代物なのか?
ソレを考えただけで、ゾンビ一号は普通に怯えた。
その剣一つで一財産となるだろう、少なくとも数ヶ月は贅沢しても尽きることはないだろう。
ソレほどの価値の刀剣を軽く10本程度出したのだ。
「生憎と、恐らく彼女では適切に扱えないだろう。」
「ハァ? 俺にはバンバン渡したじゃねーか。」
「まともに扱っていない癖に何を言う?」
「……、確かに。」
「……一応なのですが。コレって何でできてます?」
「ん? ああ、殆どが魔鉄とミスリル銀の合金だろうな。」
「……、そっちでは安いんですか?」
「まさか、多少は安くとも大きくは変わらんだろう。コレらも傭兵業の傍ら相手から奪った品だ。」
「蛮族かよ。」
「武器は摩耗が激しいからな、優秀なモノがあれば奪うのも常道だろう。」
そう言いながら他に弓や、槍などと言った基本的な武器を取り出す。
どんどん顔を青褪めるゾンビ一号、逆を言えばそれだけ優秀な武器が彼のインベントリには無数にストックされているとも言える。
レオトールからしてみればソレらはタダで入手した武器でしかないため、ゾンビ一号に共感することはできないのだが。
「とりあえず、コレを使え。程々に重いが……、問題無かろう?」
「えっと……、重さより金額がガガガガ……。」
「気にするな、良い武器を使わず死なれた方が寝覚めが悪い。」
そう言い、鞘ごと渡す。
骨剣を黒狼に渡した彼女は、その剣を抜刀し刀身を見る。
薄く緑に輝く剣、骨剣よりも重さがあるソレを見ながら彼女は覚悟を持つ。
そして、骨剣の代わりに相当な重さがあるソレを腰に下げレオトールに礼を述べた。
「ありがとうございます、レオトール。この剣は大切に使います。」
「構わん、構わん。所詮スカーレットにもなっていない鎧緑林熊の鉄から作り出した武器だ、替えが効かない代物でもない。」
「……、本当に大切に使わせていただきます。」
そう言って剣を……、緑剣を鞘に収めたゾンビ一号はいよいよ覚悟を決める。
ソレを見た黒狼は槍剣杖を手に持ち、レオトールは出しに出した武器群を仕舞う。
ようやく次の難行、11個目の難行に挑む時が来た。
果てなき試練の終わりが見えた、完全制覇はとても近い。
次の試練も、次の難行も困難極めるだろう。
だが、それでも。
「Are you ready? 2人とも。終わりは近いぜ? もちろん、十分に休んだよな?」
「当然!! レオトールから剣を貰いましたしさっさと終わらせましょう!!」
「まぁ、私が主力なのは変わらんだろうが。」
「許せ、レオトール。流石に最大戦力を遊ばせるわけにはいかない、足を引っ張るのは2人で十分だ。」
「……、本当に申し訳ないです。せめて生前の技能とステータスさえあれば……。」
「本気にするな、冗談だ。」
「冗談に本気で返してるだけだよ。」
そう告げ、快活に笑うと黒狼は叫ぶ。
満面の笑みと、最高の精神状態で。
例え、どれほどキツかろうが絶対に攻略するという覚悟を持ち。
男は声高らかに叫ぶ。
「相手は未知の迷宮、戦力は雑魚と雑魚と最強!! 目標は全員生還!! 征くぞ、友よ!! 我らは此処に!! 覚悟はいいか!!」
「「勿論。」」
2人を引き連れた黒狼は、早速門に突入した。
いよいよラスト二つ、休憩は終わったので腹を括り挑もう的な感じで最後の言葉を叫んでます。
ついでにレオトールが渡した剣を日本円にすると大体100万円ですね。
他用語は……、感想などでの質問がなければ追々本編で語られる……かなぁ?
(以下同文)
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