Deviance World Online ストーリー2『連射、掃射、誘導弾』
四方八方、絶え間なく襲いかかってくる女蛮戦士達。
それぞれの強さは黒狼とは比較できず、一人で相対すれば成すすべなく殺戮されるだろう。
だが、黒狼独りではない。
戦っているところは違えどレオトールがいる。
同じ程度の強さとはいえどゾンビ一号がいる。
ならば、敗北はあり得ない。
「『ダークシールド』!! こっちに来てるのは3人程度か!?」
「『パリィ』!! クッ、強い!! 援護を、黒狼!!」
「わかってる!! 『インパクト』!!」
木々を縫うように撃たれる矢、近接戦闘で翻弄するアマゾネス。
常に魔法を展開しながらも、槍剣杖を両手にしながら黒狼は対処する。
基本的に近接系は全てゾンビ一号に任せている、だがしかし技量の差というのは非常に大きく任せられる程度の強さではない。
故に、黒狼も前衛として戦いながら魔法を敷かねばならずさらに魔力の管理をしなければならないという三重苦に陥っているのだ。
ここ数日は特に後衛に回っていた事もあり、黒狼はかなりの負担を強いられている。
だが、ソレはゾンビ一号も同じだ。
まず第一に敵の強さ、半端な攻撃では怯む事もなくスキルを併用した攻撃で漸く有効打。
致命傷を与えるには余程の隙を誘発させなければならず、その技量は今現在ではゾンビ一号は持ち合わせていない。
それどころか、種族特有の動きの慢性さが仇となり何発か有効打を貰っている始末だ。
その上で、遠距離から放たれる矢を常に警戒しなければならない。
黒狼のダークシールドによって防げるとはいえ、ソレは最初の一発限り。
再度展開し直すまでは自力で避けなければならないのだ。
満足に戦える環境でない以上、かなり精神をすり減らすこととなる。
一瞬の間、後に剣戟が行われる。
現状を変えうる一手は、無い。
このままではジリ貧で黒狼の敗北だ。
「と思ってるな? アマゾネス。」
ニヤリと、愉悦を以て笑う。
余裕? あるわけ無い。
残っているのは精々、心理的有利。
敗北が目の前に存在しながらも勝ちを確信している異常さだけ。
いや、勝利を確信しているのでは無い。
敗北条件を満たす、ソレが考えられないと言った顔だ。
直後、腹に強烈な一撃を貰う。
アマゾネスが持つ大型ナイフ、刃肉がたっぷりと乗っており薪でも肉でも骨すら切れるであろうソレ。
ソレを敢えて食らう。
その攻撃はダークシールドの耐久値を容易く超え、黒狼の肋骨を粉砕する。
しなやかながら体重が乗った攻撃は、明確に黒狼の腹部を抉り取る。
「ッ!!」
「グッハッ!!」
大袈裟に、芝居がかった様子で背後に飛ばされる。
ソレを見たアマゾネスは手応えの薄さを認識しながらも、背面から襲いかかるもう一人の存在に対処する。
「今、オレに攻撃したな? 『復讐法典:悪』!!」
満身創痍? 間違えるな。
満身創痍というのは、復讐の前座だ。
身勝手で自己勝手でいながら、正当性が認められる。
そんな復讐の前座である。
条件は整った、復讐は訪れる。
罪には罰を、目には目を、歯には歯を。
そして、骨折には骨折を。
「「「ぐぁぁぁぁぁあああ!?!!!??????」」」
悲鳴が上がった、四箇所から。
同時に、木々から何かが。
ちょうど、人と同じぐらいの重さの何かが落ちてくる音も聞こえる。
ソレもそうだろう、人体の内部で骨が急に砕けたのだ。
矢によって曲がった骨が、剣により粉砕した骨が。
内臓に突き刺さるのだ。
痛く無いはずがない、のたうち回らないはずがない。
下手をすれば……、いや下手をしなくとも死にかねないのだ。
生存本能が声高く叫び出し、体が恐怖で震え、弱きモノが途端に恐怖の象徴となる。
「『ペネトレイト』!! 安心して気絶してください、今は殺しませんから。」
「まだ油断するな!! 骨がひん曲がってようが襲いかかってくる可能性がある!! 一番重症なそいつは置いとけ!! 他を回収、拘束するぞ!!」
「レオトールに援護は?」
「俺が持たねぇ、魔力がこれですっからかんだ。」
「了解しました、で? 隠れられる場所は?」
「レオトールが森を破壊しながら戦闘してる、多分相手の注目もあっちに向いてるだろうからその間に俺たちはずらかるぞ。」
「つまり、無策上等ってわけですね? 後で殴らせてもらいますよ。」
「御託はいいからさっさと片付けるぞ!!」
そういうと、黒狼は音が聞こえた方向に走り出す。
ゾンビ一号は呆れたようにため息を吐くと、別の方向に走り出した。
無策と指摘され、若干拗ねている黒狼を思い浮かべながら。
*ーーー*
レオトールは存外にも苦戦していた。
彼にとってアマゾネス達は決して強いわけではない、タイマンならば軽く圧倒できる。
では何故、存外に苦戦しているのか。
答えは、単純に数が多いからだ。
相手1人1人は大した強さではない、ソレこそ爪楊枝程度であり折ろうと思えば容易く折れる。
だが、ソレが二本三本と増えていけば。
ましてや、その総数が馬鹿にならないほど多ければ流石のレオトールとて苦戦は必須。
今認識出来るだけでその総数は凡そ50、それらが絶え間なくレオトールに攻撃を仕掛けているのだ。
なまじ、森林を大規模に破壊したせいでレオトールは格好の的となっている。
勿論、成すすべなく敗北するレオトールではない。
というより、知覚した瞬間即座に『極剣一閃』を発動。
斬撃という特性を保有したエフェクトをぶつけ、相手に裂傷を負わせている程だ。
だが、やはり致命傷には程遠い。
「ふむ、困ったな。」
焦りながらもそう呟く、慢心しているとも言える。
直後、360度全方向から矢が飛来し即座に剣で切り飛ばす。
単騎撃破で強行もいいが、あまりにも時間がかかりすぎる。
そして、時間が経てば経つほど敵の数は増えるだろう。
流石のレオトールとはいえ、血の海を好んで作りたいわけではない。
……、必要ならば実行するが。
「とりあえず、見せ物は終わりか? アマゾネス共よ。ソレとも、私の眼前に立って打ち合う気概はないのか?」
軽く挑発しながら、インベントリを開きポーションを一気飲みする。
直後に喉、股、腹、心臓を狙った投擲攻撃や近接攻撃が行われるが……。
その全てを、続け様に出した槍、剣、鎌、盾で防ぎ反撃し近接攻撃を行った者はそのまま殺す。
直後、その矢と人の影に隠れて魔獣が襲いかかってきた。
それぞれ風や炎を纏っている、それを一目見た途端にレオトールはスキルを発動した。
「『極剣一閃』」
極線が煌めくと同時に、目の前にいた魔物は切断された。
直後反転、背面に存在するアマゾネスの顔面を裏拳で粉砕。
そのまま体を回転させ、左脚で蹴り飛ばす。
流れは変えず、飛んできた矢をそのまま避ける。
再度インベントリが開く、不要なアイテムは仕舞われ再度別の武器武装が現れた。
それぞれ遠距離武器、ボウガンなどの弓の延長線上にあるタイプの武器だ。
ソレを2丁、手に持つ剣を地面に刺すように落とし二つを構えると一気に連射した。
「『連射』『掃射』『魔力矢生成』『誘導弾』」
口早くそう呟き、本来ならばあり得ぬ機能である連射を行う。
発射された矢は本来ならば有り得ない軌道を描きながら次々と木々や地面、アマゾネス達に突き刺さる。
1分弱、本来ならばそういう運用を前提に考えられていないボウガンで連射を行ったためその短時間で擦り減り壊れた。
「チッ、二桁も殺せんか。」
憎々しげにそう呟き、レオトールは再度インベントリを開いた。
レオトールのスペックを話していたらやはりコイツ最強過ぎるという結論に至りました。
そして、アマゾネス達。
強い(確信)
(以下同文)
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