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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『前夜祭』

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Deviance World Online エピソード6 『ガウェイン』

更新が遅れて申し訳ないです。

 息を吐く、状況は良い。

 だが相手が悪い、今度は自分を騙すことすらせずにはっきりと敵を見据えた。

 キャメロット、僅か13人で構成される円卓の騎士。

 その中でアルトリウスに次ぐ最強の座足りえる双璧の騎士、ランスロットとガウェイン。

 真正面から打ち勝つ、と言うのは難しい話だろう。


「初手から全力で、だ」


 直後に、黒狼は拳銃を向けた。

 軽い引き金を軽く引く、射出された弾丸は正確にランスロットの眉間に向かい。

 けれども無意味に切り裂かれた、その聖剣で。


 聖剣、加えればアルトリウスの保有する聖剣『エクスカリバー』を系譜とする聖剣のうち一つ。

 遥か昔に『月湖』と呼ばれた騎士が携えた剣の一つであり、その名前の由来となったヴィヴィアンの湖にて祝福を与えられた至高の一品。

 目眩むような昏き光は、さながら黄昏が反射した湖の光に見える。


 ただの攻撃が、通用するわけがない。


 残念にも悔しくも思わず、スナイパーライフルを取り出し狙いを定めた。

 雑に放たれた一撃はランスロットではなくガウェインへと迫り、その背中を打ち据える。

 胸を貫く、なんてものすごい一撃ではない。

 だが無視できるダメージではないだろう、せき込みながら睨むガウェインを嘲笑い冷静に考えてゆく。


「すまない、防げなかった」

「いえ、大丈夫です。しかしよくもまぁ、危機感知が反応するより早く目標を変え狙い撃ちましたね……」

「感知系スキルも万能じゃないねぇ? となりゃ、アルトリウスのは完全な自前か。ゼロフレパイルは通用してほしいが……、いや先にコッチだな」

「油断するんじゃねぇぞ、相手は円卓だ」


 刀を構える村正と、いまだに自然体で銃身が拉げたライフルを捨てる黒狼。

 関心半分に警戒し睨むように構えをとるガウェインと、一歩踏み出し今すぐにでも攻撃をしようとするランスロット。

 だがまだ拮抗状態が続く、理由は村正だ。


「案外、誘ってもこねぇもんだな? 意外だぜ」

「柳生殿の道場を訪れた際に見ました、地の構えですね? 受けに回る構えであり地面の重さを力とする。最速の抜刀を警戒し鈍重な一撃を放てば、重く鋭い一撃のカウンターが来る」


 ガウェインの言葉に笑顔で正解と告げる村正、直後に背後から黒狼の槍が到達する。

 涼しい顔でその槍を避け、弧を描く様に足を回し剣を振りぬけば刀身から炎が放たれた。

 周囲数メートルを一気に焼き払う、決して恐ろしい攻撃ではないが太陽属性を伴った一撃。

 同属性を用いる黒狼は嫌そうな顔をしながら、ダークシールドで防ぎつつ。

 外套の影に隠していた槍を一瞬にして突き出し、アーツを発動する。


「『カズィクル』」

「『鉄壁』」

「へぇ、『二連突き』」

「『カウンター』」


 競り負けたのは、黒狼だった。

 槍をあっさりと砕かれる、武器の品質が『劣』だったがゆえに耐久度を削りきられたのだ。

 たっぷりとため息を吐きつつ、生産者への恨みを心の中で述べながらマンティスブレードを装備する。

 おおよそ動きは読めた、神の一手は互いに放てない。

 瞬間で首筋にまで迫ると、一気に斬撃を叩きこ。


「『鎧は茨のごとく』」

「チッ、アーツか!!」

「『ペネトレイト』」


 触れない、近寄れない。

 鎧に仮想の当たり判定を付与し接触した相手へダメージを与えるアーツ、なんともいやらしいアーツだ。

 かつての黒狼ならばソレすら無視し突撃しただろう、だが人間として存在している黒狼ではソレを実行できない。

 いや、実行してもいいが……。


「流石は騎士サマ、退路を塞いできやがる。『無敵』」


 背後から迫る、聖剣の一撃がその行動を否定させた。

 バッサリと背中から切り裂かれる、湖の聖剣による一撃。

 村正ではランスロットをとどめることが出来なかった、ゆえにコストが重いスキルを発動する。


 黒狼が弱体化している理由の8割は人間になったこと、残る2割は手段が増えすぎた事。

 昔ならば死なば諸共での特攻をしていただろうし、相手の攻撃を受けるより先に攻撃をしていた。

 だが手段が増え画一的な戦い方からより複雑化した戦いへと変化したことで、黒狼の中には受けの選択が浮かび上がってしまっている。

 つまりは、迷いが。


「思ったよりも弱いな、『騎士の一撃』」

「そうかよ? その割には有効打を与えてこねぇな。『辻斬り』『竜巻旋風』『釜井達』」

「『発光』、『クラッシュ』」


 光を遮るため咄嗟に出した腕が粉砕された、誘導も上手い。

 パッシブで発動している超速再生が働き腕を再生したが……、今はそうして欲しくなかったと心の中でボヤく。

 魔力消費が通常の再生でも重いというのに、超速再生となればその重さは嫌がらせレベルだ。

 ただの腕一本に魔力の8%が消し飛ばされた、今はまだワルプルギスが近くにあるので回復できるがもう少し離れて仕舞えば魔力補充が出来なくなる。


「『騎士の決意』『騎士の構え』『大切断』」


 猛攻は凌ぎきれない、武器を盾としマンティスブレードが砕かれるのも厭わずに防御する。

 堅実すぎて面白くないが、そのホンモノと言える実力には舌を巻く他なし。

 最上位の武器を惜しみなく使えるのならば負ける気はしないが、こうして当たれば砕ける武器だけでは戦いと言える戦いにはならない。

 いい加減、恋しくなってくる。

 毀れずの水晶、最強が翳した剣が。


「『八極拳』改めて『八極剣:斜陽の段』」


 まぁ、無いものは仕方ない。

 新たに取り出した剣を、一気に振り抜く。

 宛ら演舞、蝶さながらに舞い踊り。

 蜂さながらに、突き刺し殺す。


「不味いか、『サンライト』」

「からの『八鏡剣』、ってな?」

「まっ、クッ。『無敵』!!」

「攻略法は単純だぜ? 村正ァ!!」


 一気に、潜り込む。

 刀身を鏡とし、太陽の聖剣の反射を返した。

 そうガウェインが操る太陽の聖剣の、その光を。

 太陽の輝きだ、ただの刃から放たれる光と言えども目を焼くだろう。

 必然、返された光も同じく。


 大きく踏み込み、放った拳の一撃。

 スキル『無敵』は特定の攻撃を一定時間無効化するスキル、2人からのほぼ同時攻撃は防げない。

 そしてガウェインに、ソレを防ぐだけの能力も無い。


 黒狼の剣と村正の刃は殆ど同時に当たる、ただし黒狼が僅かばかりに早く。

 剣が弾かれた反発する手応えの先に、青ざめたガウェインの顔がある。

 残念、ペッとおちゃらけた様に舌を出しながら黒狼は手を構え一言告げた。

 死をもたらす一撃を、その詠唱を。


「『抜刀』『紫電空切朝凪雨』」

「『闇より出て光と成り果てろ【ダーク・フレイム・バーン】』」


 一瞬にして迫る一撃は、さらに黒狼の魔術で強化される。

 決して鋭くは無い、ただ的確に放たれた攻撃は正しく殺す刃となり聖剣での防御を許さないほどの確実性を孕んでいた。

 鎧の隙間に差し込まれた刃から、一気に雷が溢れ出て。

 黒狼の一撃はその顔面を抉り壊した、一切の抵抗を許さず。


「まぁ、生きてるよな? だからこうする。『ミートクラッシュ』」


 しかしHPはまだ存在する、ならばもう一撃ほど加えるのみ。

 インベントリから取り出したメイスを両手で確かに握りしめれば、一気に振り下ろした。

 残るHPはゼロ、勝ったという勝利の余韻を口にしつつ。

 迫るランスロットの一撃に、黒狼は笑いかける。


「まだ終わりじゃ無い、ってか?」

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