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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『前夜祭』

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Deviance World Online ストーリー6『ワルキューレ』

 ワイルドハントにとって、血盟(クラン)『キャメロット』ひいてはアルトリウスに対して牽制出来るというのはこれ以上ないエサである。

 本当なら一も二もなく飛びつきたい、しかも相手はキャメロットを倒そうとしている本気の集団だ。

 アルトリウスを始めとした一部の猛者や有象無象のプレイヤーが拠点を中心として活動していない以上はその時点でワイルドハント率いる血盟(クラン)『黄金鹿の船団』と同じ程度の実力のはずだろう。

 だからこそ黒狼らという、少なくともその極々少人数でレイドボス『黒騎士』あるいは『月光のペルカルド』を撃破した存在の力があれば勝てるというのは確信としてある。

 そう呼んで交渉を仕掛けたが、少し煽りすぎたらしい。


「うわぁ、すっげぇ。テーマパークに来たみたいダァ……、死ぬよね? コレ」

「真面目に話すか、死ぬか。選ばせてあげるよ、どっちが良いかい?」

「助けろー、モルガンー。ロッソに村正ー、何ならネロでも良い」

「「「「うん、嫌」」」」


 清々しい返事だ、そういう訳で流れを説明しよう。

 前回の煽りのあと暫く考えた『ワイルドハント』は暫く考えてから黒狼を縄で拘束した、縛りプレイって奴だ。

 そして今、船の上から一本伸ばした板の上に吊るされている。

 ちなみに魔法攻撃その他諸々は全てモルガンによって解除されており、本気で抜け出そうとしても黒狼単独ではほぼほぼ不可能になっていたりもしていた。

 色々酷いが、結局は自業自得だというヤツだ。


「わかったよ、煽りはナシだ。実際のところ、俺はお前を認めてるよ。服従にしろ、その選択は正解に他ならない。正直言って、俺の敵対の提案は到底飲み込めるもんじゃないだろ? 『ワイルドハント』ドレイクというロールを被ったお前は『黄金鹿の船団』のリーダーなんだから」

「ハン、何が狙いだ?」

「お前の常識をぶち壊してやる、俺に付いてこい。最低の面白さをお前に与えてやるよ、だから今は俺の手を取れ」


 黒狼とは、すなわち悪意だ。

 これ以上なくわかりやすい悪意であり、どうしようもなく甘露な悪意でもある。

 もしくはこう言いかえるのも良いかもしれない、いつしか自分の中にある願望を投影してしまう様な存在だと。

 無意識化の意識、思考することのない民衆の悪意の具現こそ黒狼なのだ。

 だからこそ、欲するモノにはこれ以上なく魅力的に見えてしまう。


「……もしも負ければ、IFの可能性は十分にある。勝ってもリターンは決して大きくないんだ、負ければ」

「その思考こそ、弱者の証明だぜ? 気楽に()ろう。お前は強く、だが決して自由になんかなれてないんだからよ」


 かけてみる価値は、ある。

 どうしようも気に食わないが、心の奥底で燻っていたナニカに火がついてしまった。

 海を駆ける海の覇者が、こんな不自由であってたまるかという矜持が動く。

 或いは憧憬したのかもしれない、我が物顔で成功を語るこの男に。


「いいだろう、この一瞬だけはアタシはアンタの下に付いてやるよ」

「じゃぁまずこの縄、解いてくれない?」

「野郎ども!! アタシぁしばらく抜ける!! 絶対に船を盗らせるんじゃないよ、戻ってきたときに不甲斐ない姿を魅せれば次に打ち殺すのはアンタたちだからね!!」





「「「「「「「サー、イエッサー!!」」」」」」」




 さぁ、戦おう。

 海の覇者と、不死の王で。

 天空のイベントボスに、地上のキャメロットに。


* * *


 波乱し、伝播する。

 高揚に等しい興奮は、激情に足りうる演劇は。

 世界はそのように出来ている、だから世界はそういうモノであるのだ。


「戦いだぜ? さぁ、やろうか」

「人数を絞らせたんだ、勝てなきゃアンタも殺すよ」


 魔法陣を山のように書き込んだ魔導書を片手に、もう片方に緑色に胎動する剣を握った黒狼は。

 マスケット銃を二挺手に持ち、歯を剥き出しに笑う海賊をチラリと見る。


 黄金か、黒か。


 掲げる色は随分と違うが、方向性は割と似通っていた。

 我を通す、たとえ道に何物が阻んでいようとも。

 悪意の象徴は悪行の具現と共に同じ船に登った、つまりは盤面は整ったというわけか。


「宣戦布告は不要だな?」

「モンスター風情、何するものぞと言うわけだね?」


 ()は、我が手にあり。


 次の瞬間、紫電が弾けた。

 光が飽和し、戦いの銅鑼を鳴らす。

 嫌なほどに笑顔が飽和し、これ以上無い戦いが。


「警告、領域審判者8名。これより進行した場合、実力行使をo「火ぃ吹け、『パイルバンカー』!! ま、プロトタイプだが」

「『小径過壊』『ポインター』、ぶち壊せ!! 『黄金鹿の銃(ゴールデン・ハント)』」


 互いの、最高火力が飛び出てくる。

 単純なまでの暴力だ、最速の攻撃手段であり最悪の暴力そのものだ。

 普通ならば受けなど出来ない、破壊そのもの。


 同時に粉砕された右腕を、あるいはひしゃげた銃身を捨てながら2人は静かに舌打ちする。

 言い方は悪いが結果は見え透いていた、ワルキューレは即座に再生しミスリル銀の槍を持っていた。

 つまりは、コレすら有効打足り得ない。


「な訳、ねぇだろうが」


 いや、有効だ。

 肉体の再結合に時間が掛かっている、互いの必殺は確かにワルキューレの肉体を削り完全性を伴う再生を阻害していた。

 もとより完全復活のカラクリは肉体の分裂と再結合にある。

 今の2人の攻撃は再結合が不可能になるほどの部分ダメージを叩き出せる、プレイヤーの中でも数少ない4ケタ攻撃。

 万全とは、言わせない。


「『超速再生』、チッ。『魔力操作Ⅰ』、一応は対処するが暫くは片腕か」

「なるほどね、アンタみたいな野郎が協力を申し込むわけだ」

「戯言は後でにしましょう、攻撃。来ます、防御を」

「『魔力炉稼働、隔壁展開』『対象エネルギー選定、防御術式を蜂起』ッ!!【インスタントバリア】」


 直後、空を飛ぶ船。

 ワルプルギスが、揺れた。


 ロッソの展開した術式が次々に破壊されていく、さすがはボス格のNPC。

 その実力はプレイヤーを遥かに飛び越えた、ある種超抜的な神秘に等しい。

 生半可な防御は突破されて必然、されどここに居るロッソもまた超抜的な力を持つ規格外。


「馬鹿ね、二度も見たんだから防ぐわよ」

「そう言うわけだ、『居合』『抜刀』『蜻蛉切り村正』」


 迫る攻撃は、鋭さを伴った破壊そのもの。

 鋭さに勝る破壊性能はない、全てを切り裂くのは究極の鋭さに他ならなければ。

 抜かれた刃が一気に刺さる、そのまま全身を真っ二つに切り裂いた。

 さらに一歩踏み出し、目にも止まらない速度で刃が振るわれる。

 剣聖の剣技の遥か劣化だ、けれども剣聖が創り上げた剣技の頂を垣間見えるほどには頂きに迫っており。

 一瞬にして斬撃が叩き込まれる、回避などさせない。


「流石ァ!! 『シルバーラッシュ』、からのォ!! 『ダーク・ランス・オーバーレイン』」


 体なぞ壊せば良し、相手を殺せるのならば手段を選ぶ必要はない。

 高火力でなくとも復活を防げるのならばパーツを全力で殴り飛ばそう。

 ソレに、今の攻撃で見えた。


「核、有るな?」


 ワイルドハントの銃撃、黒狼の攻撃に村正の斬撃。

 再生復活のカラクリからも予想は出来たがやはり、魔力を制御し生成する炉心がある。

 破壊することでも撃破できる、かもしれない。

 そうならば益々ワイルドハントを呼んだ意味があったと言うことだ、何せ黒狼らだけでは核の破壊なぞ不可能なのだから。

 

 高火力を出せるのは黒狼かモルガンだけ、村正も被害を見れば高火力に見えるかもしれないが本質的に村正はデバッファー。

 ロッソはアイテムによるサポーターという側面がある以上、2人ともが4桁ダメージを出すのは難しい話となる。

 つまりは火力不足、そう言うわけだ。


「さて、そろそろだろ?」

「zz───、〈機能再生、攻撃目標を選定〉」

「いよいよ本番だねぇ、覚悟しなァ!!」

「〈殲滅、開始します〉」


 ラグナロクは遠い昔に過ぎ去っている、時代遅れのワルキューレには。

 ぜひともお帰り願おう、冥府の底へ。

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