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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『前夜祭』

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Deviance World Online エピソード6 『見る』

 そんなやり取りがあった後に、私は彼とダンジョンに入った。




 ん?


「え、何で来てるんですか?」

「お前が誘ってきたんじゃねぇか」

「確かに?」


 いや、それでもさっきの流れでついてきますか!?

 なんで堂々と着いて来れるのか……、信じらんない……。

 とは言え、感謝もある。

 手伝ってくれると言うのなら手伝ってもらおう、人間性は好めないが人としては悪い人ではないし。

 それに自分から頼んだのだ、そんな身勝手はダメだろう。


「じゃ早速っと、最初のフィールドは安牌にゴブリンか」


 強くはない、だけど私程度なら油断していれば負ける。

 気を引き締めて戦う、ただそれだけをすれば良い。


 地面をける、『超越思考加速(マルティネス)』は使わない。

 アレは、身体にかかる負荷が大きすぎる。

 こんな雑魚相手に使えば、すぐにガス欠してしまうだろう。

 ゆっくりと、慎重に。


「『大切断』っ!!」

「いいねー、その調子ー」


 一体、切り伏せる。

 だがその最中に後ろからもう一体が襲ってきた、慌てて左手の小盾で受けるが衝撃まではかき消せない。

 軽く怯みながら、追撃を行う。


「へいへい、そいつは悪手だぜ? 踏み込みすぎだ」


 直後、背後から迫る刃があった。

 あった、けれどもアンさんが直前でその刃を阻む。


 巧い、おちゃらけた雰囲気を持つのに遊撃としてはこれ以上なく優秀だ。

 盤面を半歩引いて見ており、カバーが早い。

 そして明らかにステータスが、相当ある。


「『エンチャント:腕』」


 剣で刺し貫く、そのまま重心を傾け回転蹴り。

 剣を引き抜けばそのまま蹴りを軽く見舞う、それだけでゴブリンが死ぬ。

 異端的な戦闘技能、一撃一撃の速さが段違いだ。

 そのうえでステータスが高いのだろうか、不自然なほどにダメージを与えている。


「『連続突き』、からの『理を綴る、影は即ち剣となろう【舞い踊る黒剣】』」


 スキルの展開、そのまま詠唱を挟みこんで魔術で形作られた剣を用いる。

 一歩踏み出せばそのまま地面を抉り、滑り込んできたゴブリンに刃を当てて。

 弾かせないように連続で打ち込みながら、二刀流で攻撃する。


 なるほど、理解した。

 戦い、より正確に言えばこのゲームの戦いは一種のターン制ゲームだ。

 一気に攻め立てるのも、大人しく待つにしろ。

 私も、それを真似ればいい。


「『騎士の決意』」


 20秒間の攻撃力加算、物理的な破壊力は決して高くないが当たれば相応以上のダメージを与えられるだろう。

 頭などの急所に当てればそのダメージは跳ね上がる、だが必ずソレを連続的にできるわけじゃない。

 アンさんは平然と連続攻撃をしているが、それは彼のステータスがあってのことだろう。


 私にはできない、なら私にできるやり方を考えればいい。


 攻撃を急所に当てる、それは達人の道理だ。

 私みたいな凡人にはできはしない、だから当てやすい胴体や腕に攻撃する。

 一見脅威足りえない攻撃だからこそ、十分な衝撃がない攻撃だからこそ。

 ゴブリンは必ず、腕で受ける……!!


 ギ、ぎィ?


「ダメージは、消えてない!!」


 消える、不自然に脱力したかと思えば体の端っこからポリゴン片に変化してゆく。

 一撃必殺、そんな強者の思考は捨て置くべきだ。

 手数を稼ぎ、ダメージを与え実直に殺す。

 それこそが、私の目指す戦い方(ビルド)そのもの。


 驚いて消えるゴブリンの背後から迫るもう一体にも同じように攻撃する、一撃一撃に重さは無く速さもない。

 言い換えればスタミナ消費も決して多くない、だけどもダメージは蓄積させる。

 何度も何度も重さも早さもない攻撃を繰り出し、ターン性バトルと言い換えていいこのゲームでの戦いを()()()()()()()で完結させてゆく。

 相手に反撃させる暇など与えない、私だけのターンのみ。


「ナイスー、ggって感じか。途中から戦い方も変わってたな、結構面白い戦い方を思いついた感じか?」

「アンさんの戦い方をみて考え付いたんです、相手に何もさせず自分だけが攻撃を続けるようにすれば簡単に勝てるんじゃないかって」

「……いい考え方じゃねぇか、うん。俺は相手にしたくないケド、参考にしたい戦い方だな」


 あれ、性格悪いってオブラートに包んで言ってる?

 言っとくけどアンさんの戦い方よりは、多分マシだから!!

 アンさんの戦い方ってトリックスター過ぎて読めないし、さっき見てる感じ視覚外からの攻撃がメインに見せかけて普通に即死級の攻撃も繰り出してるよね?

 俺のターンは終わったけど俺のターンは終わってないぜ、みたいな感じの戦い方を途中からし始めたよね?


「なんだ? 冷たい目で見てきて、言っとくけどガチ最強の戦い方を参考にしてるだけだからな!!」

「え、アルトリウスさんの戦い方は動画で見たけどそんな感じじゃなかったですよ?」

「あんな奴の戦い方なんて参考にできるかよ、バカスカ聖剣砲を撃てるからできる戦い方だよアンナモン」

「じゃぁ誰の?」


 誤魔化してくる、なんだこの人。

 普通に答えればいいのに、言いたくないのなら言いたくないって言えばいいだけだし。

 なんなんだ、この人。


「ささ、次のマップに行こうぜ。へいへい!! どうせ死んでも明日には生き返ってるしな」

「何でそんなに命の価値が軽いんですか、アンさん。復活できるとはいえ、ですよ? 普通は」

「逆に現実でも数十億とか数百億とかあるのに何で大切にするのかねぇ、一割ぐらいなくなってもなんとも思わんだろ。あ、コレはオフレコね」

「その一割の中にあなたがいる可能性もあるんですけど?」


 私の言葉を聞いてか聞いていないのか、現れた門をくぐり次のマップへ進んでいった。

 同じように門をくぐる、一瞬だけ視界の総てが白く包まれ次の瞬間にはまた新しいマップへ……。


 っ!? 危ない!!?


 急に現れた獣人系のモンスターに、私は咄嗟の対応が遅れる。

 一歩後ろへ? できない、体の反応速度が。

 どう、すれば……? いや。

 いや対応できる、私は対応できるちからを………。


「いっ、たい!!」

「こりゃ、予想外。ポーションがあるなら下がれ、ヘイトは稼ぐ」

「は、はい……!!」


 切り付けられた腕を庇いながら後ろに下がる、対応できる力はあったはずだ……。

 対応できたはずの攻撃なのだ、けれど実際には対応し切れていない。

 私の素の反応速度が遅いんだ、だからスキルの展開まで時間がかかる。


「いッ……、ポーションが沁みる……」

「すぐに復帰は無理そうだな、どうせだ。見取り稽古と、いこうじゃねぇか」

「見取り稽古……? どういうものですか、ソレは」

「簡単だ、俺の動きを見て勉強するんだよ」


 そう言い合えれば、アンさんは武器を構え直す。

 婉曲に私は怪我人だから戦わなくて良い、と言われた気がする。

 少しムカつくけど、実際にアンさんは強いし見ているだけで学べる部分が沢山あるのは事実な気がする。

 実際にチラリと見ただけで私の戦い方も段違いになったし、バカにできるわけじゃ無い。


「さ、やり合おうぜ? そっちも戦いたくてウズウズしてんだろ?」


 その宣言、符牒を合わせたように同時に動き出す。

 二人の剣が交差し、互いに互いを削ぎ合う。

 そんな戦いが、始まった。

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