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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章下編『一切の望みを捨てよ』

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Deviance World Online エピソード6あるいは0 『ワールドエンド』

短いです。

「やったか!?」


 万雷の声が聞こえる。

 其の全てはただ立ち向かう一つに。


「いや、まだだ!!」


 其の中で、唯一アルトリウスだけは其の視線を背後に向けてそう結論づける。

 未だ山々に張り巡らされた、『毀れずの絶世(デュウリンダナ)』による結界は解けていない。


 詰まるところ、最大の難敵は未だ健在だと言う事だ。


 問題は、どのようにして生きているのかだ。

 致命傷を得ているのならば問題ない。

 運良く完全な回避をしたのでも、まだ問題ない。


「違う、安易に考えるな……!!」


 幸運を考えるな、最悪を想定しろ。

 極光の先の土煙が腫れ出す。

 答えは、そこに在る。


 たかが数秒、されど数秒。

 其の刹那を無駄にするまいと先に地面を蹴る。

 剣には再度、極光を貯めて。

 起き上がりざまに、もう一度最大の一撃をくれてやらんと。


 故に、否。

 だからこそ、足を止めざるを得なかった。


 ゆっくりと、されど素早く土煙が晴れる。


 そこにいたのは、有ったのは水晶で包まれたレオトールの姿だった。

 一目見れば自滅のように思える。

 少し考えたところでただ、全力の防御を行なっただけのようにしか思えない。

 だが、アルトリウスは確信を持って違うと認識した。

 最大の難敵である目の前の男は未だ自由を保ち生きていると。

 その誇り高き牙は未だ騎士王の喉元に突きつけられていると。

 

 未知に慄かず、震える心を押さえつけ一歩前に向かったのは英断だろう。

 刹那で魔力を限界まで貯め、アルトリウスが可能とする最強を放とうとしたところまでは英断なのだろう。

 数多のスキルが極限の警笛を鳴らし、本能が叫ぶ恐怖を抑え込めたのはアルトリウスだからこそ。

 

「『エクスッッツツ」


 あと10センチ。

 刃と水晶の距離があと10センチ。


 ガギ……。


 何かが軋む音が聞こえる。

 だが、それを意識に入れる余裕はない。

 目の前の存在を倒すには自分の全てを賭けてもまだ足りない。

 そう予感させる敵相手に、些細な音など聞き取れない。


 ガギガキ……。


 あと数ミリ、されど気は抜けない。

 コレを食らわせれば勝てると言う保証すらない。

 エネルギーを放射するのではなく圧縮し、線状に展開した極限の一撃が意味を成すのかも。


「カリ、ヴァァァァァアアアア』!!!」


 ガキガキガキガキガッキーンッッッツツ!!


 同時に音が響く。

 刃が水晶に触れた瞬間、水晶があっさり砕け散る。


 まるでダイヤモンドダストのように粉末状になった水晶が光を乱反射する。

 

「しくじったッ!!」


 水晶はアルトリウスの刃で砕け散ったのか? 答えは否。

 内側から、砕かれたのだ。


 氷のような心を持つとまで持て囃された王が絶叫しながらもう一歩踏み込む。

 まだ、エネルギーは残っている。

 コレさえ、レオトールに当てれば致命傷は免れない。


 その確信と共に、刃を血眼で振るう。


 その様子は正に激凍心火。

 凍てついた心に激しい炎が宿っているよう。

 死闘の最後に相応しい渾身かつ全霊の一撃を見舞う。




〈ーーレイドボスが誕生しましたーー〉




 だからこそ、水晶の乱反射の中に佇む男を真っ先に見た。

 背中に八本の水晶の足が生えた一人の男を。




〈ーーレイドボス名:繝ャ繧ェ繝医?繝ォーー〉




 背中に生えた八本の足が男を包み込み、その鎧となる。

 その手には先程まで持っていた盾と槍はない。




〈ーー訂正します。ーー〉




 鎧の表面から水晶が生えてくる。

 そして、その頭部も完全に覆う。

 その姿は近未来と称すべき鎧にしか見えない。




〈ーーワールドエンドボスが誕生しましたーー〉




 ゆっくりと、刹那の間に顔をあげアルトリウスを標的と定める。




〈ーー全プレイヤーに伝達します、全プレイヤーに警告しますーー〉




 瞬間、その手には水晶の剣が生成され次の瞬間にはアルトリウスを迎撃した。




〈ーー『ワールドエンドボス名:レオトール』が誕生しました。死力を以て抹消してくださいーー〉




「旧き、名を名乗ろうか。」




 迎撃して、たっぷりと含みを持たせそう告げる。




〈ーー達成不可能な場合、この世界の人類が消失する可能性がありますーー〉




「我が名は『白の盟主』にして、『伯牙(誇り高き牙)』。そして、我々一族に残された古き名を」


 デュウリンダナが解除された。

 当然だ、それを発動するための武具はレオトールの手にないのだから。


 だからこそ、その有った範囲を水晶の城壁で覆う。

 今度は物理的に塞ぐ。


「我が忌み名にして古き名は『死なずの英雄ナインライブズ』、貴様らに相手が務まるかな?」


 顔は覆われておりその表情は窺えない。

 ただ一つ言えるのは、最大の難敵が最悪の形でそこに佇んでいると言う事だけだ。

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