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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章下編『一切の望みを捨てよ』

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Deviance World Online ストーリー5『征服王 イスカンダル』

 『黄の盟主』が死んだ、その事実を認識するよりも早く剣客の一撃がギルガメッシュを襲う。

 『橙の盟主』である、蜜・影廊だ。

 彼の刃はギルガメッシュの喉元に迫り、だが防がれた。


「剣客、嫌いではないぞ?」


 余裕満々の顔に現れた笑み、其れを崩すために放たれた二の手。

 鋭い一撃が、ギルガメッシュを襲う。


 勿論、当たらない。


 剣の速度は影廊ですら認識できないほど、千と幾何かのINTでも認識できない速度を持つ一撃。

 そのはずなのに、ギルガメッシュに当たらない。

 一歩後退する、そして改めて構えた。


「何故当たらん、そう言いたげな顔をしているな? ククク、そう逃げるな。詰まらん戦いはしたくない、どうだ? 剣での切り合いでもしてやろう」


 ギルガメッシュは空間に手を伸ばす、そうすると彼の手には一振りの神刀が握られていた。

 長さは180cmほど、全体がやや湾曲しながら簡素にも装飾があり。

 特に異様に目を引くのは、その巨大な鈴。

 リン、少し動かすたびにそう鳴り響き魔力が周囲を震わせる。


「『布都斯魂剣(ふつしみたまのつるぎ)』、舞い踊ると良い」


 ギルガメッシュが、その神刀を落とす。

 そうすれば、その刀は一回転しそして影廊の剣を弾いた。


 一瞬、影廊の顔が歪む。


 受ける手ごたえが異常に強い、其れこそまるで壁を。

 否、岩盤を切ったかのような。


「流石は、英雄の王」

「事実を確認したとて、乗り越えられる道理はあるまい?」


 一瞬、一瞬きの間に幾千幾万の攻防が行われる。

 使い手の居ない剣が、剣客を往なす。

 まるで児戯だと、嘲るように。


 当然、といえば当然だ。

 神刀『布都斯魂剣(ふつしみたまのつるぎ)』、それは在る神が用いた刀。

 現代の規格に落とし込めば、準古代兵器に相当する代物。

 かつての偉業として、大国『ヤマト』を征服したという。

 その偉業は風化し、かつての遍く国々が滅んだとはいえ。

 その力、衰えること知らず。


「『抜刀』」


 だからと言って、現代の人間が劣るという話でもない。

 むしろ、劣るというのがおかしな話だ。

 人類は進歩し、時代は進む。

 当然、かつての戦士より現代に生きる戦士の方が強いのが道理。


 常識の埒外、規格の裏側、万象を織りなす否定の理。

 『破壊者』ギルガメッシュが、相手でなければ。


「『神霧散枚(かみきりざんまい)』」


 納刀、直後に振るわれた一閃。

 北方にいる『剣至』と言われた怪物たちとも、あるいは比類し得るその一撃は。

 しかしながら、返す刃にて免れる。


 切っ先は確かにギルガメッシュを捉えていた、神刀との打ち合いを欺瞞とし。

 たしかに、英雄の王を殺す一撃の刃となっていた。


「切り合いを、してやると言っただろう?」


 彼の手に握られる、その刃がなければ。

 たしかに、然りと届いていたことだろう。


 妖刀、或いは御物の太刀。

 その銘を『吉光』、天下三作が一振り。

 真贋問わず、歩んだ年月こそが本物であり。

 そして魔力に慣らされたその刃は、偉業無き刃の性質を。

 つまりは、振るった時点で決着がついているという逆算的結果を齎す。


 ギルガメッシュがこの刃を握った時点で、決着は成していた。

 

 全身を切り裂かれ、地面に崩れる影廊。

 笑みを浮かべながら剣を空に放り投げる、そうすれば空間がそれらの剣を飲み込み収納する。

 次に襲い掛かってきた盟主を見て、ギルガメッシュはこう呟く。


「大地を味方に付けた程度で、烏滸がましいにもほどがあろう?」


 指を鉄砲の形にし、バンと囁けばギルガメッシュの眼前に広がっていた巨大な土塊が消失した。

 魔力の構築の甘さ、術式の展開の脆弱性、常識の範疇で測ればそんなものなど存在するはずがない攻撃。

 しかし空に浮いた、其の岩石を土塊にするほどに。

 圧倒的に、技量の差異がある。


「『デンドバラクスの神槌』」


 空を握り、襲い掛かってきた『茶の盟主』。

 デッド・ラットの攻撃をはじき返す、いつの間にか握られていた槌で。


 空気が震え、雷鳴がとどろき、雷を纏う。

 ただ振るうだけで、十分以上の力を見せつけてくる。


 デッド・ラットは即座に思考を切り替えた、回避ではなく防御へと。

 回避という行動の無意味さ、指向性を持った雷という不可避の付加効果。

 連続的に発生するダメージを、スキル『食いしばり』で無理矢理耐える。

 直後に襲い掛かる槌の一撃を、右手の籠手で滑らせ。

 デッド・ラットは、忍ばせた短剣を投げつけた。


「万策窮したか? 小男」

「違げぇねぇ」


 直後、デッド・ラットは拳を突き出した。

 先ほどの攻撃、籠手の上を滑らせ躱したとはいえその余波でもはやHPが尽きていた。

 今こうして動いているのは、スキル『死兵(しのつわもの)』の効果でしかない。

 この一瞬、この一秒だけでも。

 あるいは、其れよりも短くてもかまわない。

 それだけの時間を稼ぐために、万策尽きた次の策を練る。


 もはや、死んでいる。

 だが、死んでも負けているわけではない。

 自分の次、次の盟主、次の次へ。

 王が至るべき、最後の一刀まで繋げれば。

 この戦いの末に、この死は価値あるモノへと昇華される。


「『磁極拳』ッ!!!」


 叫ぶ、スキルを。

 この体躯が動く、その瞬間が終えるまで。

 その瞬間まで動かし、だがしかし。


 拳は、当たる事無くポリゴン片へと変換される。


 空を切る、ギルガメッシュの胸の直前で。

 光となり、世界に消えていく。

 ある種冷めた表情でソレをみて、ギルガメッシュは自らが召喚した槌を空に投げ捨てた。


「世の理も変わりつつあるな、フム。次は、こういう趣向で行こうとしよう」


 表情が抜け落ちた貌、だが笑みは浮かんでいる。

 デッド・ラットの死に様から、何かを思いついたらしい。

 世界に目を向け、宣言する。

 迫りくる攻撃を、避けもせずに。


「認めよ、『環境親和:深緑』」

「なッ!!?」


 直後、迫っていた攻撃。

 大樹が槍となり、成長しながら迫っていた一撃がギルガメッシュの眼前で止まる。

 そのままその樹木は消失し、魔力へと変化した。


 『桃の盟主』は、彼女は、クリシア・ピーチは驚愕する。


 そんなスキルなど、『環境親和』などというスキルなどは存在しない。

 少なくとも、数千年以上にわたる北方の歴史や叡智の中でそんなスキルが構築されるはずがないと示されていた。

 もしも存在したところで、すでに発生した魔術を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 狼狽、狼狽え、驚愕、何でもいい。

 目の前の規格外さは知っていたが、ステータスシステムに存在しないはずのスキルを構築するなど理解の領外。

 驚愕交じりの困惑、困惑交じりの驚愕。


「ふむ、出来が悪い。やはり取り消せ、面白みもない故に」


 無法、絶対的な無法。

 法の下に存在せず、法の上にも存在していない。

 彼自身が、(ルール)である。


 笑みは崩さず、だが飽きたように。

 少し思考して、そのまま迫る攻撃を弾く。

 環境という名前の、攻撃そのものを。


「スキルを作るのは良いが、我の基準では少し強くなりすぎる癖がある。これでは詰まらないだろう、故にだ。低位のスキル一つで相手してやろう、それぐらいで丁度よい」


 周囲に無数の植物が乱立し、猛毒や極熱などが成し得る樹海が現れる。

 ギルガメッシュの城にして神殿、ジグラットが深緑に包まれ。

 その中央で、なおも威光に陰り無く。

 満面の笑みを浮かべながら、ギルガメッシュは笑う。


「コレが良いな、『鑑定』。レベルは1で構わん、どうせ結末は変わらんのだから」


 ギルガメッシュの目が一瞬妖しく輝いた、次の瞬間には構築された樹海が破壊しつくされる。

 再生など間に合わない、彼が視界にとらえた領域が次々と破壊されてゆく。

 『鑑定』というスキルに、其れほどの効果は無い筈だ。

 そう考えるクリシアに、ギルガメッシュは回答を与える。


「『鑑定』というスキルは元来、魔力を用いた分析だ。レベルはその分析を詳細化させるだけに過ぎん、故に本来ならば情報を表示させるだけに留まるのだがだ。一つの言葉に一つの解釈しかないわけがないように、一つのスキルに一つの効果しか宿っているわけでもない。『鑑定』という言葉の側面を見ればう『占い』という意味に接続する、さらに発展すれば裏無い。つまりは裏がないという効果にも発展するわけだ。そうなれば裏がある魔術など容易く壊せる、単純な話であるだろう?」


 実際、其れは実現可能ではある。

 確かに黒狼も似たような芸当を行っていた、故にこそギルガメッシュの言葉は嘘ではない。

 だが同時に、普通はできないに決まっている。


 ギルガメッシュが言っている内容は、棒でも握れば剣と同じと言う様な話。

 確かに一側面だけ見ればそれは正しいかもしれない、だが普通にとらえれば其れは間違っているに決まっている。

 そして、この世界は其の間違いを許容するほどに優しくない。

 あくまでも、ギルガメッシュの詐術があってこその話であり。

 間違っても、彼以外が使える技術ではない。


 だが、其れをクリシアが知る事もない。

 なにせ、ギルガメッシュの解説が終わった瞬間にはポリゴン片に変化しているのだから。

 彼女が口を開く間もなく、彼女は鑑定スキルによって死んだ。

 如何なる攻撃か、認識する間もなく。


「さて、未来視を持つ小娘。我が与えた如何なる未来を見て、泡を吹いておる? 如何なる先を視た? 一億年か? 百億年か? 一兆年か? いずれにせよ、良い目ではあるが茹った脳では使い物にはならんだろう?」


 次の攻撃は到来しない、ギルガメッシュの言葉が届くよりも早く。

 『紫の盟主』、ファテ・ファルトゥーナは脳髄をまき散らす。

 圧倒的な情報の濁流、数千から数億を超える未来という情報を魔眼経由で叩き込まれたのだ。

 如何にステータスが高く、如何にINTがあれども。

 生物規格として、それだけの情報を処理する能力は人間には存在しえない。


 攻撃する前に、敗北した。


 事実それだけ、未来という領域でどれほどの事が行われていようとも。

 その結末、その事実だけは如何なる手段を用いても変化のしようがない。

 情報の濁流により、彼女は成すすべなく敗北したのだ。


「無礼講と言えども、首に刃を押し当てるなど王に対する敬意が足らんな?」

「ッ!!」

「クハハハ、この領域から気配を消したと言えども。我が目には映っていたぞ、下郎。名無し如きで、我が首に刃を突き立てれるなど烏滸がましいにもほどがあろう」


 『鉛の盟主』がギルガメッシュの手により引き釣り出され、地面に叩きつけられた。

 地面をバウンドしながら、転がる。

 忍び装束が乱れ、その顔に髪が露わとなて。

 それすらも、愉悦混じりの笑みで踏みにじる。


「それ以上の芸当は無いのか、下郎? ああ、語る訳も必要ない。もはや知りえた、王を殺したのちに殺すとしよう」


 そういって、視線を改めた。

 自分の喉元に迫る刃、征服王の。

 イスカンダルの一撃、イスカンダルの攻撃。

 ソレを余裕をもって交わし、そのまま右こぶしを突き出す。


「フン、下郎と言えども忠義はあるか」

「よもや、ここまで見事な蹂躙とは」


 イスカンダルの返答、目の前でギルガメッシュの攻撃を防ぐ『鉛の盟主』の姿がある。

 一瞬の早業、目にも止まらぬ速度でギルガメッシュとイスカンダルの間に割って入ったのだ。

 腹を貫かれながら、ポリゴン片に変化するその姿を一瞥し。

 イスカンダルは、一歩踏み出す。


「その見え見えな刃で、如何に我が首を切ろうというのだ?」


 勿論、その攻撃が届くはずもない。

 ギルガメッシュが空を握り、宝剣とともにイスカンダルの首を切り落とす。


 地面で一度跳ね返り、そのまま転がるイスカンダルの頭。

 鮮血をまき散らしながら、地面に染みを作っていく。

 征服王は、イスカンダルは、成すすべなく敗北するしかない。

 一矢報いる、ことすら能わず。




 まさか、






 まさか、そんなわけがあるはずない。








***


 声が響いている、この領域に。

 歓喜の慟哭が、世界に木霊する。


『この戦列こそ、私の心象』


 三千を超える、北方を統一した末に死んだ仲間たちまで。

 この地点に来るまでに、死んでいったすべての存在がこの領域に存在し。

 そして、眼前の輝ける黄金の王を倒すために。

 彼らという、イスカンダルが率いた古今東西全ての英傑が。

 声をそろえ、叫んでいる。


『この生涯こそ、私の誉』


 ただ一撃、ただ一矢。

 いずれでも構わない、何れでも。

 誇り高き死を、誇り高き契約を、誇り高き盟約を結んだ彼らが。

 死して、それでも王のために叫ぶ。

 彼女を通じて、叫んでいる。

 今この一度、今この虚構であっても。

 使い潰せと、己という存在を。


『私は影、私の姿は王、王の形を象る激情』


 独笑、ギルガメッシュの声が木霊し。

 荒野に、無数の人間が影として現れる。

 黒という色彩で作られた、北方の傭兵が。

 イスカンダルが率いた、『王の軍(ヘタイロイ)』が。


『名前など要らず、されど賜ったこの名こそ私の領域』


 此れこそ、この領域の名前。

 この心象の全て、この心象の本質にして。

 彼女という存在の、肯定そのもの。


「『声を上げろ、此処こそは【王の影(へファイスティオン)】』」


 イスカンダルが乗るべき軍馬、イスカンダルが乗るべき戦車。

 イスカンダルが持つべき刃を握り、声を上げる。

 その座に居座る彼女こそ、『透の盟主』たるへファイスティオン。

 この心象の主にして、この心象の全て。

 彼女という存在そのものこそが、この領域。


「クハ、クハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 全ては一瞬で崩れ去る、全ては一時の幻に等しい。

 だからこそ、ギルガメッシュは高らかに笑う。

 この領域を攻略すること、それ即ち。

 イスカンダルの一撃を、受け入れるという事に外ならないと理解したからこそ。


 この心象こそ、先ほど殺されたイスカンダル(へファイスティオン)のソレ。

 この心象世界こそ、彼女の存在証明。

 この領域がある限り、イスカンダルは死んでおらず。

 この領域内が存在する限り、現実の体は動かせない。


「ああ、良い余興であった」


 ギルガメッシュはそう告げる、目の前に広がる。

 遍く広がる傭兵たちの攻撃を、その眼に映しながら。

 ギルガメッシュは、大いに笑う。


「これほどの余興は最早見ることもあるまい、見事という言葉しかないわけだ」


 一万八千九百五十六回、そのすべてがギルガメッシュに向けて放たれた攻撃であり。

 そして、僅か一回。


 それだけが、ギルガメッシュに血を流させた攻撃である。


 結局、へファイスティオンの心象がギルガメッシュに通用することはなかった。

 今までの戦い、今までの蹂躙の再演にしかならなかったのだ。

 再びの戦いは、確かにへファイスティオンの敗北で終了した。


「だが、儂が一撃。確かに首に届けたぞ、ギルガメッシュッッツツツ!!!!」

「そう耳元で騒ぐな、言わずとも見ればわかる」


 イスカンダルの雄たけび、叫びのような慟哭。

 あるいは、誇りと共にもたらされた敗北という名の勝利。


 ギルガメッシュの刃に、彼が手に持つ刃に、彼の現実という刃で構築されたアヌ=エアに貫かれながら。


 イスカンダルは、絶叫する。

 己がもたらした、僅かばかりの一矢を以て。

 流れる血流を気にもせず、イスカンダルは叫ぶ。


「クハ、クハハハハハハハハハ!!!!!!!!!! 嗚呼、良い目覚めの余興であったわ。征服王、イスカンダル。王を名乗る輩かと思えば、確かにその刃。真の王たる我に届けた、紛うことなく我が眠りの時を収めた一時の王に相応い」


 ギルガメッシュは一歩後ろへ下がる、この言葉こそが彼の勝利宣言であり敗北を認めたという事実。

 高らかに笑い声をあげ、首の傷跡を指で撫でる。

 それだけで、北方の傭兵という彼らが与えた決死の一撃が消え去る。

 先程までと同様に、一切の傷など無かったという様に。


「一つだけ望みを叶えよう、何が良い? 誰かを蘇らせるのも、その国家に永久の安寧を齎すのも良い。何でもよい、一つだけ望みを叶えてやろう」


 ギルガメッシュがそう告げ、今にも目から光を失わんとしているイスカンダルは首を上げた。

 少しの思考、徐々に消えゆく思考をかき集め。

 イスカンダルは、少しだけ笑いながら。

 ギルガメッシュへ、言葉を投げる。


「ならば、ならばへファイスティオンを蘇生してくれ。そして伝言を、儂が敗北したという言葉を北方へと。儂が国へと、届けさせてくれ」

「ほう? その軍を蘇らせるなどとは言わんのだな?」

「ハァ……はっはっ、冗談が巧い。その蘇りに、如何なる誇りがある?」


 言葉は其れだけ、イスカンダルはそう言い捨て。

 そして、目から光を消す。


 3秒、僅か3秒。


 そののちに、彼の前身はポリゴン片へと変化し。

 そして彼が生きているという事実は、この世界から消失していく。

 余りにも儚く、そして一つの時代を築いた王の終わりにしては。

 余りにも寂しい、その一時。


「……良い前座、良い余興であった。もはや二度と忘れることもあるまい、この剣が我が蔵にある限り我はこの勝利を脳裏に刻むとしよう。弱者との戦いの中で、もはや二度もあるまい戦いであった」


 ギルガメッシュはそれだけ告げると、手を軽く振りへファイスティオンを生き返らせ。

 そして、地面に落ちていたその剣を手に取って空に置く。

 それだけで、イスカンダルの持っていた刃は解けるように消え。


「さて、旧き約定の終わりを視ようか」


 その言葉と共に、ギルガメッシュも姿を消す。

 空間の中へ、揺らぐように。

少し駆け足になりましたが、コレにて征服王およびギルガメッシュの話は終わりになります。

細かい補足は恐らく北方編になるであろう3章にて解禁されますが、それまでは質問がなければ解禁されないと思ってください。


という訳で、一部補足です。

前話で死んだという表現を使い、フェードアウトしたヘファさんが何で生きているのかという疑問があると思います。

あとついでに、何でギルガメッシュがヘファさんの心象を認識できていなかったのかなど。

そこら辺の解説をして、この話を締めさせていただきます。


まず最初に、ヘファさんの心象世界。

王の影(へファイスティオン)』ですが、この能力の効果としては『自分をイスカンダルとする』効果です。

そのため、イスカンダルが死んでいない限り原則ヘファさんが死ぬことはありませんし。

ヘファさんが死んでいない限り、イスカンダルが死ぬこともないです。


ですが、当然本編でイスカンダルが死にヘファさんも死んだ以上はこの心象世界にも欠陥があります。

その欠陥とは、一言で言えば『心象世界を展開すること』ですね。


心象世界の効果と、心象世界の展開は別々の意味を持ちます。

分かり易くすれば、前者は海の水であり後者は海そのもの。

心象世界の効果は心象世界そのものの一部しか引き出していない状況であり、心象世界の展開とは他者を自分ルールの世界に引きずり込むことを言います。


ヘファさんの心象世界の力、より厳密に言えば展開された心象世界で発生している事象は『死んだ王の軍の軍勢を影として召喚する』という事であり。

敵対象の魂を心象世界に強制的に徴収することで、内部で死んだ征服王の軍勢と対象との戦闘を強制させることとなります。

その上でヘファさんが死ねば、心象世界は解除されヘファさんも死ぬという訳ですね。

前話で割とあっさり死んだ『黄の盟主』、パプリオ・デザイアさんの役割は其の心象をギルガメッシュに気付かせないことであり。

同時にそれは成功したため、ギルガメッシュはヘファさんに気付かず戦闘を進めたという事です。


ちなみに、176話Deviance World Online ストーリー4『王』でレオトールが発言した「一刀にて二の首を落とすことなど容易い、たとえ直後に我が首が落とされようとも。」というのはこの心象世界を知った上での発言であり。

王の影(へファイスティオン)』を展開されたら勝ち目はないけど、同時或いはほぼ同時に首を落としたらどうなるか分かんないよねという脅しです。

だからこそヘファさんは足を止めなきゃいけなかったという話です、ついでにレオトールの首を切る手段が豊富過ぎてアーツによる即死などを叩き込まれた場合も不明でしたし。





という訳で、次回は最終決戦の後半戦の中盤戦。

(ギルガメッシュという最強とかそういう領域を超越した化け物を排除した上で思考した場合の)

最強キャラことレオトールの数少ない戦闘です。

ぜひ、楽しみにしてくださいという訳で。

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