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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online 間話『レオトールの魔術講義』

最初に言っておきます、時系列はこれからの話の途中です。

 優雅に紅茶を飲みながら、レオトールは己のステータスを見ていた。

 山場は超えた、そう半確信に至る状況であるからこそ呑気に過ごしているのでもある。

 そんな中、波乱を呼ぶかのように急に部屋の雰囲気が変化した。


「おい、レオトール!! 魔術教えてくれ!!」

「全く、その前に一言言うべきことがあるのではないか?」


 扉を蹴破って訪れた黒狼に、レオトールは文句を告げると肩を竦めた。

 目の前の男の性格はよくわかっている、そう言わんばかりに肩を竦めステータスを閉じ。

 ため息を吐く、レオトールは改めて訪れた目の前の骨に向けて問いかける。


「此処は一応借家だぞ? 何か言うことはあるのではないか?」

「大丈夫だ、問題ない。退去するときに取り壊してくれって言われてる家だからな、うん」

「何処に良い要素がある、戯け!! 全く後の始末を考えろと言うものだ。それに、私の部屋でもあるのだぞ。とのない部屋でどう過ごせと?」

「まぁまぁ、落ち着けって」


 黒狼がレオトールを諭す、これではどちらが悪いのか責任の所在の追求もできやしない。

 激昂というほど怒っているわけではないが、とはいえ怒っていないわけではない。

 呆れと共にため息を出すと、そのまま欠伸する黒狼を半眼で睨む。


「で? 魔術の教授と行った話だったな? ……あのモルガン嬢の方がいいのではないか? 私に魔術や魔法の類が使えないのは重々承知の筈だ」

「ソレはそうなんだけどな、俺の直感が言ってるんだよ。あと、もう一つ。お前、魔術が使えないだけで魔力に関してはモルガンやロッソと比較にならないほど上手いだろ」

「何故そう思う?」

「カン」


 面倒な相手だ、レオトールはそう言いたげに息を吐き正解だと返す。

 まさか見破られるとは、そう言いたげに眉を顰めたレオトールは目の前の男の評価を少し上げた。

 ぶっちゃけ、人間としての評価は割と高い。

 命を救った、その報酬を先に渡されたのだ。

 まずまず低いはずなどない、低くすれば誇りがない。

 だが、その人間性は好ましいとは思えない。

 自由にして、混沌。

 気まぐれの具現、だがしかしその根っこには化け物じみた執念と意思が存在する。

 理解、できる。

 何処までも何処までも、レオトールと黒狼の生き様は平行線上にしか存在せず交わることがないからこそレオトールはその全てを理解した。


「隠していた気はないが、全く呆れる話だ。戦闘時以外では体内で魔力を循環させ、身体機能の維持や回復に努めていたはずなのだが……」

「一応、ロッソも触診した時に疑ってたぞ。ただ魔術も使えない人間が自分以上の魔力操作を行えるわけがない、とか言ってた」

「ふむ、先に察するのはモルガン嬢だと思っていたが。なるほど、魔力の精密制御性ではロッソ嬢の方が上回るのか」

「やっぱり? モルガンは精密というより魔力量で多彩に見せてる気がしてたんだけどな、けどソレならなんでモルガンの方が早く気づくと思ってたんだ?」


 黒狼の疑問、それにレオトールはなんのことはないと切り出した。

 曰く、水晶大陸のデメリット検証の時に何度か意図的に魔力で干渉されたそうだ。

 その結果として、自身の魔力制御能力を見破られたかと思っていたらしい。


「おそらくは無意識的な、あるいは肉体的な性能が非常に高いのだろう。あの肉体、有する潜在能力では私を上回る可能性もある。しかし、それ以上に警戒すべきものもある。ソレは魔杖『ルビラックス』だ、あの杖に内在する機構はおそらく先史の遺産だろう。あれと肩を並べられる代物は……、王の軍でも数少ない。少なくとも、現代では素材の質で無理を通さねばあれほどの品は作成できん」

「お前にソレほど言わせるって……、いや。追求したら藪蛇になりそうだな、うん」

「そんな事などさして重要ではなかろう、魔力操作だったな? 我流になるが一つ指南と行こうか。一先ず、お前は魔力をどのように扱っている?」

「そりゃ、こう……。こんな感じで、現象化させてな?」


 指先に光を灯しながら、黒狼は魔法陣を手早く描く。

 その様子を見たレオトールは、軽く頷くとレオトールも魔力を放出し出した。

 一瞬で空間の、部屋の魔力密度が上昇する。

 半端とはいえ魔力視を使用できるようになり出した黒狼、だがその目でもレオトールの魔力を観測することはできない。

 威圧感のみが、魔力という不実在のエネルギーによる威圧感が徐々に膨れ上がっている。


「何をした?」

「これが、極まった魔力操作だ。行っていることはお前と大して変わらん、精々指先から一分にも満たぬ魔力を垂れ流しているだけだ。では何処がお前と違うのか、ソレは放出後にこの世界に満ち満ちている属性と融合しないよう制御していることのみ」

「属性と融合……?」

「ああ、融合だ。基本的に無色透明の魔力は世界に放たれた時点で無属性に変化する、その後にそれぞれの環境に即した属性へと変貌していくわけだ。操作を誤れば、ほれこの通りとなる」


 レオトールの言葉が言い切られる一瞬前、黒狼は魔力視の使用を取りやめたことを正解だと理解した。

 一瞬で空間の色が変化する、部屋の中が極彩色で彩られていく。

 魔術や魔法の使用など一切行われていない、目の前の男はその行動を行うことができない。

 ではこれは何か、簡単だ。

 これは、レオトールが放出した無色透明の魔力が自然的な要素で勝手に色付いただけに過ぎない。


「化け物かよ、お前。色がキツ過ぎて目が潰れそうだ、全く」

「慣れれば容易い、だが慣れるまでは至難の道ではある。そしてこの鍛錬には近道はない、つまりは単調な鍛錬を極めるしかないということだ」

「化け物じゃったか、というかこれだけの魔力を軽く放出してくるって……。お前、実はモルガンよりも最大使用魔力量が多いな?」

「ククク、バレてしまっては仕方ないな。とはいえ、最初から隠すつもりなど毛頭なかったがな? 隠したところで私は魔術師の真似事ができん。あまりメリットがないのだよ、本当に」


 冗談めかして言いながら、騒ぎながら部屋を蹴破ってきた魔女2名を軽く一瞥。

 淑女としてどうなのかと嗜めた後、レオトールは再度黒狼と向き合った。

 なお二人は仲良く喧嘩しながら、謎に外で競い合っている。


「全く、あの二人は犬猿の仲というか。もう少し冷静に動けないものかねぇ? まじで」

「無理だろう、ソレができるのならば建造計画の目処は建っておらん」

「……、ホント。嫌になる、盤面が嫌に俺の予想通りになってるのもな」

「世が世ならばお前は名将となっていたな、もしくは豪商か豪貴か。テンションが乗っていれば、お前は最強だろうよ」


 レオトールの評価を黒狼は否定する、偶然だったと。

 レオトールはソレを、黒狼の才能だと返した。

 黒狼は幸運を惹きつける、もしくは悪運が強いというべきか。

 故に、レオトールはソレを才能と称した。

 この男は致命的な状況でも、手元にジョーカーを呼び出す才能がある才能があると。


「まぁ、そんなことはどうでもいいだろ? 早く教えてくれ」

「あまり焦るな、逸るな。どうせ、時間は待ってくれん。私が教える魔力操作は一朝一夕で会得し、使いこなせるものではないのだ」

「けど、早いに越したことはないだろ?」

「全く、口だけは達者な奴め。しかし本格的に教えるとなれば、一旦外へ出た方が良さそうだ」


 心配する黒狼の言葉に、レオトールは問題ないと返す。

 水晶大陸を使用したダメージはもうほとんんど回復しており、ステータスは1800台へと上昇しつつある。

 ここから完全回復するのが長いわけだが、ソレでも激しく動いて骨が折れ続けるという状況は脱しているのだ。


「それに、私も斧剣を使い熟しておきたい。あの剣は癖が強すぎる、正しく稀代の大英雄の得手物だ。あの剣を使えば使うほど、何故勝てたのか分からなくなってくるとも」

「村正も言ってたな、あの剣は魔剣の域を超えているって。どんな代物だよ、あの大英雄ヤバかったんだな」

「兵装を除けば万全とも言える状況、そこで水晶大陸まで切らされたのだ。逆にあの盤面でお前らが生き残ったことこそが奇跡の類であろう」

「ま、俺は何度か死んだけどな?」


 黒狼の冗談に、レオトールは冗談で返す。

 死人が死ぬ事などあり得ない、と。

 黒狼も正しくその通り、と相槌を打ち部屋を出る。

 外は草原、そこで黒狼は刀を生成した。


「肉体ある限り、死なぬ死不兵。極めつけには規格外にも通ずる自爆とは、全く相手にしたくないな。HPが少なければややこしい手段を持っていても問答無用で消しとばす、盟主の中でもここまで厄介な奴はいまいだろう」

「だけど、純粋に規格外なのが盟主なんだろ? アイツが受け持つとか言ってたが本当に大丈夫か? お前の戦闘を見てる限り、一切安心出来ねぇんだが」

「知らん、だが結末は見えている。ほれ、指導を行うぞ」


 レオトールの言葉に黒狼は構える、斬り合いをするわけではないが構えた方が気が引き締まるのだ。

 そんな黒狼を傍目に飄々と己が体格を上回る斧剣を持ったレオトールは、ソレを片手で持ち上げる。

 理違いの腕力、無色透明さながらの魔力は黒狼の魔力視を以ってしても観測するのは不可能だ。

 だが、観測せずともわかる。

 その斧を持った瞬間に、レオトールの全身から魔力が溢れ出したという事実を。


「難儀な剣だ、だが魔力の操作を説明するのならばこれだけ溢れ出した方がわかりやすかろう。よく見ておけ、これが私の魔力操作を学んだ方法だ」



 言葉と共に、何も告げず剣を一閃する。

 直後、爆風と共にエフェクトが発生し極剣一閃(グラム)が発動した。

 否、発動しているのではない。

 発動させられているのだ、あまりに卓越した魔力操作。

 原子を観測し操作するかのような精密性を持ってして行われたその一閃は、極剣を顕現させている。


「……、何が起こった……?」

「何が、と聞かれれば剣を振っただけに過ぎん。それ以上でも、以下もない。ただコレの特異性を説明するのならば、剣の先の先まで身体と一体化させ理性と本能の二つで技の理知を極めた結果に起こる魔力操作の極みといえよう」

「……つまり、剣を振るだけってことか」

「ただ剣を振るだけでは辿り着けん、それにこれには実戦では扱えん代物だ。武芸者の小手先芸に過ぎん、謂わば魔技剣だな。昔は偶然でしか使えなかったが、今では容易く発生させられる」


 レオトールの言葉を半分も理解できなかった黒狼だが、やらせたい事は理解した。

 つまり、棒振りを極めろという事らしい。

 剣を振り上げ、レオトールの真似をしようとする。

 そのために、様々なスキルを起動させ。


「まて、スキルは用いるな。確かに、スキルを使えば簡単だろう。だが駄目だ、ソレで辿り着くのは魔力の支配であり私がお前に望んでいる魔力の操作には到底辿り着く事はない」

「支配と操作、同じじゃないのか?」

「違う、これは『青の盟主』の発言ではあるが。魔術は魔力を隷属させ支配する、しかしソレでは100の力しか発揮できん。100以上を望むのならば、魔力を支配するのではなく魔力を操作するべきだ。彼曰く私の魔力操作は、魔力を支配しているのではないらしい。剣を振り続けることで至った最初の魔力操作は、魔力が剣に合わせて勝手に動いた結果。つまり、私自身の魔力消費は一切存在しない。あの盟主は確かに、そう発言していた。そして、あの男は明確に実践もしていた。故に、お前にもソレを取得させる。魔力を見ず、支配せず。明鏡止水のように凪いだ精神で剣を振り、魔力を動かせ」

「……、全く期待が重いぜ? 北方最強」


 ニヤリと笑い、そう返した黒狼は目を瞑って剣を振る。

 上げて、振る。

 横で暴れ回っているレオトールの雰囲気を感じつつ、剣を振る。


 そして10分、黒狼は全て投げ出した。

 何も分からない、というか剣を振るのが魔術に応用できるのかすら分からない。

 横で上下左右前後全てを使い暴れ回っている、正しくファンタジーな戦い方をしてるバカの横で真面目に剣を振るっているのはいかにもおかしい話だろう。

 というか、何であっさり空を飛んでいる? その疑問を掲げ半眼で睨んでいると仕舞いにと言うように地面に斧を叩きつけ地割れを起こしたレオトールがいい鍛錬になったと言わんばかりに額を拭い出した。


「おい、レオトール。これで本当に成長するのかよ、いや真面目に」

「半年ほど続ければできるだろう、私は才能が。ああ、魔術を使うという意味でな? その才能がないから恐ろしく時間が掛かったがお前はソレがあるだろう? ならばできるさ」

「期待が重いな、全く」

「現実的な話だ、問題ない」


 そう言って、剣を振らせてくるのを待っていた。

 諦めて、黒狼は剣を振る。

 だが今度は、すぐにレオトールに静止された。


「……、少し待て。ふむ、説明が難しいな。お前は今、ただ剣を振っているだけだろう? ソレでは私の考えている結末に至る事はないかもしれない。いや、至るだろうが恐ろしく時間がかかる。となれば……、そうだな。この剣を手に持って振ってみろ、恐らくそっちの方が感覚を掴みやすい」


 インベントリを開き、レオトールは黒狼に剣を手渡す。

 その剣は禍々しい装飾が施された宝剣のようだ、ソレを手に持った黒狼は異様に疲れる感覚を感じる。

 何だこれ、そう言うふうに尋ねようとした黒狼だったがもうすでにレオトールは再度斧剣を振り回していた。

 どうやら何か手応えを感じたようらしい、動きは加速しているが明確に停滞もしている。


「仕方ない、これを頑張って振り続けるか」


 呆れ、その思いとともにその剣を振っていく。

 妙な脱力感は振り続ければ増していくが、同時に何かが動いている感覚も増し続けている。

 達成感を抱えながら、黒狼は日が沈むまで振り続けた。


 なお、レオトールが渡した剣。

 否、魔剣の効果。

 それは、精神崩壊を招き宿主に寄生する魔剣だった。

 のちに、村正に看破され黒狼に詰問されたレオトールはこう答えたという。


『別に問題ないだろう、屈服させておいたし最悪乗っ取られても殺してしまえば元に戻ろう?』


 なお、ブチギレた黒狼が殴りかかりそのまま軽く相手されたのは言うまでもない。

 この話の教訓は、報連相の重要性だろうか。

魔剣『パラサイト・クイーン』

 滅んだ大国の墓所に存在した剣、レイドボスを倒した帰りに発見し簒奪した。

 元々は王剣の類、だが国を滅ぼした女王の妄執により変質した。

 魔剣の望みは単純で亡国の再興、しかしレオトールの余りの圧で心をへし折られて戦う気をなくしている。

 なお紆余曲折の後、黒狼のインベントリに収まっている。

 村正が打ち直したいと騒いだのは別の話。


レオトールが魔術的なことを教えるのは難しいので魔力操作に関した話を行いました。

望んだ話とは少し違うかもしれませんが、これが作者の限界です……orz

これにて人気投票のキャラクターの間話を終わりにしようかと思いますね。

では今後もよろしくお願いします。

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