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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー4『排曇の者供』

 レオトールがインベントリを開き、剣を一本取り出すと多少スキルを発動しそれを殴りつける。

 剣が落下するより早く、剣の柄を殴りつけつつレオトールは小さく呟く。


「『八極拳』改め『絶技:貫掌底』」


 地面が捲り上がるほど力強い踏み込み、地鳴りが起こり魔力が荒ぶる。

 荒ぶった魔力はスキルを介して、レオトールの意のままに流れとなり収束。

 掌底に収束し、そして剣を叩くことで爆発する。


 比喩として行うのならば、ソレは銃とも言える。

 剣を弾丸、魔力を火薬とした銃。

 一度放たれれば制御不能の、一直線に進む鈍色の閃光。


「なッ!? 助力か!! 誰だ!!」

「名乗りは後で構いませんか? 私も決して強くないので。」

「ーーーー、確かにそうだな。」


 迫った一撃、ワイバーンという竜の首に突き刺さった剣を見てリーダー格の人間は叫ぶ。

 だが、その叫びに対するゾンビ一号の返答で一気に冷静さを取り戻した男は剣を構えなおした。

 

 ワイバーン、通称として劣化竜。

 ドラゴンと言われる存在には遠く及ばず、だがソレ以外のモンスターと比べるにしてはあまりにも強すぎる。

 まさしく劣化竜、低空域の支配者そのもの。

 その強さは舐めてかかれるものではない。


「『八極拳』『掌底』!! おい、嬢ちゃん!! 邪魔するんじゃねぇぞ!!」

「『収束し反発しろ【エアブラスト】』、協力者だぞ!? 邪険に扱うんじゃない!!」

「全く、貴方たちって人は!! 喧嘩しないで戦いなさいよ!! 『ゴールデンラッシュ』!!!」

「静かに戦えよ、余裕はあるけどなぁ!! 『インパクト』!!」


 レオトールの一撃、ソレにより一気に攻勢に移った傭兵ども。

 総数は13人ほど、そこにゾンビ一号が加わりワイバーンを順調に抑えていく。

 空へと逃さず、的確に翼ん付け根を狙った攻撃。

 時間にして僅か10分、後半は半ば作業と化して居たが順調にワイバーンを切り伏せ倒しきった。


 後方で腕を組みながら、その様子を見守っていたレオトールだが倒し切った様子を見て彼らに近づいていく。

 十三人の傭兵は、倒したんどから気を抜いたのか。

 もしくは別の理由なのか、レオトールが近づいてくるのに気が付かず……。


「所属は『灰の盟主(アッシュ)』か、なるほど。」

「ッ『スラッシュ』!!」

「良い反応速度、だ。」


 レオトールが声を上げた瞬間に、全員が初めて知覚する。

 スキルによる隠密? いいや、純粋にレオトールが悪戯心で気配を薄めていただけだが。

 だがその程度の児戯に誰も気づけず、だがソレでも声が聞こえた瞬間に敵と判断したリーダー格は剣を振った。

 その剣は正確に、精密に、緻密にレオトールの首を狙う。

 傭兵らしい、殺意のみの剣術。

 殺すことを目的とした、無駄のない攻撃。

 だが、レオトールはその一撃を。

 スキルを用いて発動されたその一撃を、あっさりと魔力を纏わせた右手で防ぐ。


「中々、といったところか。」

「何モンだ、テメェ……!!」

「背後を狙う強かさもある、さすがブライダーの配下だな。」

「なんて恥知らず!! ブラスト様をそのように呼ぶなんて!!」


 全員が殺気立ち、それぞれの得手物を握る。

 この世界、というのは言い過ぎかもしれないのでレオトーうの出身地である北方と限定しようか。

 北方では他人を呼ぶ時、下の名前で呼ぶのは相当に失礼とされている。

 レオトールの場合、レオトール・リーコスなのでリーコス。

 今回の対象である『灰の盟主(アッシュ)』はブラスト・ブライダーなのでブライダーと呼ぶのが禁句といった具合に。

 

「……、ッ!? いや、まさか……。」

「どうした? 何か気になることでも?」

「……どちらにせよ、ブラスト様に対する不遜は相応の代償で償え。」

「そうか、では来るといい。」


 その言葉告げるが早いか、放たれた10の攻撃を一回転しながら切り伏せる。

 そのまま続け様に行った袖から放つナイフの一撃、ソレをリーダー格の男は腕ではじき紋章を視認して。

 攻撃を止めるように、周囲に告げた。


「ーーーーーー、先に所属をいえ。お前はどこの傭兵だ?」

「殺気立つな、剣が血を欲するだろう。」

「血塗れの剣で、何を切り伏せる?」

「すべては、誇り高い牙の元に。」


 質問に対する伝統か、もしくは古臭い返答。

 ソレに対する定型文を聞き、そして全員が剣を下げた。

 正体が判明した、その思いが充満している。

 だが、ソレでも彼らの盟主に対する不敬を許せないと怒る人物もおる中……。

 リーダー格は次にレオトールの剣を見て、その姿を確認しその正体に思い至った。


「『白の盟主(ブラン)』、か。」

「ああ、『白の盟主(ブラン)』にして『伯牙』。詰まるところ、貴様らの盟主と同格の存在だ。」


 レオトールの言葉、ソレに場の雰囲気が一瞬で凍りつく。

 盟主、その意味合いは恐ろしく強い。

 十二人の盟主は、征服王直属の部下でもあり最高位の貴族と同じ権限を持っていると言い換えてもいい。

 つまり、ここで攻撃をした人間は最高位の貴族に剣を向けて殺そうとしたことになり……。


「ーーーーーーー、ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! そんな登場やめてください!! 盟主相手に剣を向けるなんて場合によっては処刑ものですが!!」 


 リーダー格である彼が、息を吐きながらそう叫ぶのも無理のない話だった。

 というか、盟主ということを知って顔を青くし吐きそうになっている者もいる。

 ソレほどまでに盟主という立場は重く、高く重要なのだ。

 ソレでも全員が敬礼の姿勢をとったのは、さすが征服王の元に集う傭兵たちなのだろう。


「ハハハ、すまないな。とはいえ、こうして気軽に尋ねることは後にも先にも二度とない。このような悪戯をして見たくなるのも、人生というものだ。」

「人の命がかかっているのです、本当にお辞めください……。」

「あ、えーと。」

「そ、そういえばコチラの方は一体……? 見たところ伯牙の剣術でもなかったようですし……。」


 ゾンビ一号を手で示しながら、敬礼の姿勢を崩さず彼はそう言葉を続ける。

 おそらく、現れたタイミングやソレに準ずる行動で判断したのだろう。

 至極真当な疑問と言える。


「彼女か? 私の連れだ、友人から預かっていてな?」

「了解いたしました!! ……、彼女のお名前は?」

「名乗りを求めるのであれば、自分から名乗るのが礼儀だろう?」

「失礼いたしました、私は『排曇の者供(スチーム・スイート)』のダンシェルと申します。」


 名乗りを聞く、排曇の者供などという傭兵団の構成員。

 その名前を反芻しながら、ゾンビ一号は彼らの強さを図る。

 恐ろしく強い、とは感じなかった。

 確かに強い、得意分野での実力ではゾンビ一号など簡単に凌駕するだろう。

 スクァートの記憶が正しければ、一人一人がグランド・アルビオンに所属する上位の騎士に匹敵するやもしれない。

 一つの国家の、その中でも上位とされる人間に。

 こんな十人と少しという人数で、これだけの戦果を出すほどの人材というのはソレに迫るのだ。

 もしソレほどの人物でなくとも、ワイバーンの殺害ということを達成するのならば質も量も一流の人間を要求される。

 そもそもゾンビ一号が参加したのは最後10分であり、彼らの実力を図るには不足が過ぎていた。

 

「では、私らも名乗ろうか。私は『伯牙』のレオトール、彼女はゾンビ一号といってな? ふざけた名前だがまぁ、構わんだろう。」

「……アンデッド、ですか。殺しても?」

「連れ、といっているだろう。あまりそう殺気立つな、我々の敵にはなりえない。ともに戦って感じただろう? そう強くないと。」

「まぁ、最悪殺せる程度ですが……。死人が生きているというのは、ファフセリック神の教えに背くのでは?」


 その言葉を聞き、レオトールは困ったように眉を顰めた。

 レオトールは基本的に無神論者、というか神の存在は否定しないが偶像に縋ったりするタイプの人間ではない。

 故に彼の故郷で広く広がっていた教義もすべて暗記はしているが、公的な場において行わなければならないということ以外では従う気にはない訳だ。

 だが、武芸者というのは縁を気にする人間でもあり同時に信仰を重視している人間も多い。

 そして、ソレは為政者でない人物にほど多く普遍的に存在している。

 こういう場においてアンデッドなどの教義に反する存在を処さない場合、普通ならレオトールの発言力は大きく下がることだろう。

 普通で考えれば。


「ソレが如何した? ソレに今の私はフリーランスであり、今回も『白の盟主』という立場を正式に返上するために訪れている。些細な事とはいえ、失点を狙い主の立場向上を狙うのは流石だがもうすでに意味はないぞ。」

「なッ!? いえ、立場を返上!?」

「ああ、私が殺されかけ事実上の追放を受けた話は出回っていないのか?」

「い、いえ。何分、我々は最下位に位置するというのもあり……。しかし、その話は事実なので? まさか、盟主を追放するなど常識として考えられない事ですよ!?」


 常識の埒外、常道では考えられない愚行だという批判。

 だが、レオトールはソレがどうしたと冷たい目で見る。

 ソレは外野の意見、客観的な視点を持った人間がその考えを述べているに過ぎない。

 確かに常識としては考えられない、だがソレをするに足りうるだけの理由がある筈だ。

 そう信じているレオトールにとって、その批判は聞き届けられない物であった。


「ソレは私と、そして征服王が判断することだ。」

「……ハッ!! 出すぎた真似をしました。」

「別にいい、ソレより灰の本隊はどこにいる? 『灰の盟主(アッシュ)』と話がしたい。」

「ご案内いたします、おい!! 聞いてたよな? 全員一度もどるぞ!!」


 ダンシェルの号令、ソレに従い彼ら傭兵は手早く動く。

 機敏な動き、傭兵というイメージからかけ離れた連携の取れるその様子はまさしく眼を疑う。

 戦いは各々が自由に動くゲリラ戦といった表現がベストだろうが、ここは規律の取れる軍隊という印象が強い。

 さすが、その一言しかないとゾンビ一号は考える。


「しっかし、どぉすっかなぁ……。どうやってワイバーンを運ぼうか……、ミスって解体スキルでトドメを刺しちまったぞ?」

「言いたいことがあるならばハッキリ言え、そういう態度をとってこちらを見て来るな。」

「へい、と言うわけで『白の盟主(ブラン)』って大容量のインベントリを持っていらっしゃいますよね? このぐらいは入りやしませんか?」

「最初からそう言え、馬鹿ども。一応形だけとはいえ今の私は、白の盟主だぞ? 敬えとは言わんが、そんな面倒なことをするな。気後れするのはわかるが、そんな風にしていると嫌われるぞ。」


 半眼で睨みながら、レオトールはそのワイバーンをインベントリに仕舞い込みそう愚痴る。

 周りくどい、その一言で済む話をここまで面倒に語るのはレオトールの気質ではなく水晶大陸のデメリットが未だ体を蝕んでおり少し気が立っているからだろうか?

 だがそのデメリットもだいぶ改善されている、巫山戯た力の代償そのものである巫山戯た対価だが生活に支障を及ぼすレベルは通り過ぎ本格的な骨折はだいぶ治まってきた。

 

「さて、どの辺に存在する? あまりに遠いと、少し考えさせてもらうかもしれんがな?」

「いえいえ、遠くに存在するわけではありやしませんよ。精々、数キロってレベルです。」

「ん? 存外近いな? 私が知っている範囲では決戦時まで身を潜めておけと言う指令だが?」

「ええ、そいつですが数日前に撤回されやした。王の友から『一月廻る後、決戦を始める。総員本体が拠点とするドリグロスなるファフシスタへ集結せよ。』と連絡が。」


 レオトールの顔が歪み、いくつかのスキルを発動。

 あまりにも鬼気迫るその様子に、ゾンビ一号も他も全員が一気に周囲に警戒を行う。

 なんだなんだと騒ぐ全員、だがしばらく何かを考えたのちにレオトールは全てのスキルの発動を止め一つの答えを導き出した。


「なるほど、これは不味いかもしれんぞ? ヤツの答え次第では……、いやアイツならば間違いなく敵対する。征服王の目的を考えれば……、互いのためにもゆっくりと移動することは出来なさそうか……。」

「ど、どうしたんですか? レオトール。何か……、大きな問題でも?」

「大きな問題など基からいくらでもある、だがそれ以上に厄介な内容が判明した。不味ったな、これでは私も身振りを早めに決めなければ。ゾンビ一号、観光ついでのつもりだったが気を引き締めろ。我々は今から最大にして最上の敵地の潜り込むことになるかもしれん。」

「は、はぁ!?」


 ゾンビ一号の叫び、だがその叫びも納得できる。

 レオトールの様子からして敵地に潜り込む心構えはあったが、実際こうして彼を知る傭兵団と邂逅した時に比較的歓迎されていると捉えてよい対応をされている以上心配は無用かとゾンビ一号は思っていた。

 なのに、ソレが覆る? 最大の敵地へ飛び込む? 巫山戯るなと言う話だ。


「な、なぜです!?」

「お前には征服王の目的を言ってなかったな、アッシュに属する貴様らは知っているか? ヤツの目的を。」

「確か、グランドなんとかが保有する準古代兵器『エクスカリバー』『鞘』『音響装置』の三つを奪うことでしたよね? 敵が準古代兵器を持っているのは珍しいですし生半可な戦いにはならないだろうと言う話も聞いています。」

「え!? まさか……!?」


 準古代兵器、その驚異性は先にも述べた通りだ。

 超究極的な、戦略級兵器。

 運用次第ではソレ単体で、国家のパワーバランスを変えうるという巫山戯た代物。


「黒狼ならば、あの兵器の存在を知っているとしたらどうすると思う? ゾンビ一号。」

「ーーーーー、確かにどちらも敵地になり得ますね。」

「え? は? 我々は敵を案内することになると? 流石に抵抗しますよ? 笑えない冗談はよしてください……。」

「今は敵ではない、ソレに害されなくば害する気もない。そこは安心しろ、ソレに私も万全でない状態で灰の盟主(アッシュ)と戦うのは避けたいしな。」


 そう告げつつ、脂汗を流すレオトール。

 思いの外、厄介な話になってきたと考えだしたからだ。

 黒狼とレオトールは互いに互いの思考を理解する事はできない、別人であると言う事実以上に互いのスタンスや信念の形が違いすぎるからだ。

 いわば、絶対に交わることのない線。

 ソレこそがレオトールと黒狼の関係性。

 だが、絶対に交わることがないからこそ理由のない確信。

 言葉にできない親友としての行動結果の理解ができる、出来てしまう。


 そして、だからこそレオトールは確信した。

 黒狼ならば、未だ誰も所持し得ない準古代兵器を手に入れるように考えると。

 興味本位で、もしそのような話を知れば必ず乗ってくると。

 その確信があり、だからこそ彼は冷や汗を垂らす。


「下手をすれば、あの黄金の王まで巻き込むぞ……? あの馬鹿者は。」


 その呟きの真意は、きっと後にわかることであり。

 同時に、その警戒は恐ろしく正しかったと言う事実もわかることだろう。

さて200話までに情報はできるのだろうか……?


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレからのレオトールとゾンビ一号の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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