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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー4『エルフ』

 まずは傭兵、『伯牙』

 もしくは盟主、『白の盟主(ブラン)

 あるいは……。


「否、関係のない話か。」

「どうしたんですか? もしかして……。」

「安心しろ、戦闘行為は一切ない。お前も知覚している通りに、な? あの場で黒鎧をまとったあの騎士は私に手出しをしていないとも。」

「そう、ですか。それは安心しました、レオトール。」


 その言葉を言い切るとともにゾンビ一号は洞窟を抜けきった。

 そう、其処は洞窟。

 暗く暗く、黒狼の幾度かの死によってたどり着いた洞窟。

 その入り口にして出口に二人は立っていた。


「二度と来たくはないな、あの騎士と対面するのはもう御免だ。」

「やっぱり強いのですか? いえ、強いのですよね? どれほど強いのですか、良ければぜひ教えて……。」

「竜を知っているか? 空を飛ぶ竜。翼竜(ワイバーン)とは比較にもならない遥か天空を支配するこの世界の支配者とでもいうべき存在。」

「噂だけは……、数年前エルフが住むとされている森のほうから進行してきて『グランド・アルビオン』の全勢力が手を組み撃退したというレイドボス……。」


 その言葉にかぶせ、それと同じぐらいだとレオトールは告げ地上に出る。

 ここは山間、谷間の外れであり新緑が望める場所。

 グランド・アルビオン王国が持つ自然の砦にして彼の国家の歴史が古い最大の理由。

 それこそが黒狼がたどり着いた洞窟の上に潜むものだった。


「やはり地上は良い、こうして絶景を望めるからな?」

「……はぁ。私にはよくわからないものです、太陽は。」

「そんなモノだろう、吸血種に進化したとはいえ依然太陽を苦手とすることには変わりないだろうしな?」

「そうなんですか? いえ、そうなんでしょうね。」


 会話は底で止まり、もしくはそこで止めゾンビ一号は一歩前に出る。

 反対にレオトールは水晶剣から手を放しインベントリからポーションを取り出した。

 水晶大陸、その反動が残っている。

 一時的にステータスを10倍加する効果を得た結果、反動として莫大な量のステータスの低下が発生していた。

 とはいえ三日も経過し、そのデメリットはそこそこ軽減されている。

 完全な回復には28日を要求されるとはいえ、最初の二日を過ぎれば命に別状がないことが確実と経験で知りえた。

 それを知りえるだけの回数は彼もその切り札を用いた。


「敵襲ではないのですか、彼らは。」

「知り合い、とするにはいささか親しすぎる隣人だ。あまり警戒するのも毒だぞ? お前の魂がそうさせないのは分かるが多少は気を抜け。」

「それでもあなたがその状態であれば、私は気を抜けません。」

「長期戦闘には耐えられないが瞬間的な実力はお前も超える、過剰に気を張るな。」


 そういって現れた人影に手を上げる、そしてインベントリから取り出したアイテムをその人影に投げ渡した。

 その人影は投げられたアイテムを受け取り、その中身を見る。

 何度かレオトールとその中身を見比べると人影はため息を吐き、木陰から姿を出した。

 その人物は耳がとがっており、セミロングの髪をした女性エルフだ。


「お久、『伯牙』。」

「今は傭兵家業をやめていてな、是非レオトールと呼んでくれ。」

「そう、レオトール。そして何の用? 居場所を隠していたのに今度は『征服王』に会いたいなんて。」

「そろそろ力不足を感じてな? いい加減、私の武装を取り戻したいのだ。」


 レオトールの武装、そう聞くと水晶剣や数多くの武器をイメージするだろうが……。

 それは間違いともいえる。

 彼の全力を発揮するための武装、彼が幾度とない戦いで得た素材を用いて作成させた彼にしか扱えない武器の数々。

 それらこそが、彼の持つ最上の武装だ。


「逃げ出したとき、残念なことに偶々持ち歩いていたのは予備武器しかなく火力不足などが不足していると感じたのが一つ。そして黒狼(友人)は必ずこの先に眠る準古代兵器を求めるだろう、なれば最上の武装は必須だ。」

「そう、勝てるとは思えないけど応援するわ。で、そちらの坊やは?」

「坊や、って……。」

「寿命が長すぎる種族ゆえの弊害だ、彼女らにとっては我々なぞ唯の子供同然。」


 ゾンビ一号の独り言にそう返し、レオトールは軽く経緯と詳細を告げた。

 すこし顔をゆがめ驚き、そのまま黙り込んだエルフを見ながらレオトールは再度ポーションを飲む。

 そして折れた感触があった肋骨の周辺をさすりながら立ち上がる。


「案内してくれるか? 隠れ里へ。ポーションも買い足したいし、彼女の装備も整えねば。」

「まぁ、いい。里長も文句は言わないだろうし、ついてくれば?」


 その言葉を聞き立ち上がったレオトールはゾンビ一号を手招きしながら森の中を進んでいく。

 彼らが付いて行っているのはゾンビ一号よりも頭身の低い、所謂ロリエルフだ。

 彼女は革の狩人装束を着て弓を背負いながら、独特な形状のナイフを以て森を素早く移動している。

 その速度を再現するのはレオトールでも難しい、エルフらしい特徴だ。

 この特徴を成立させているのは『環境適応:森林』というスキル。

 環境に適応した種族だからこそ森林の中での機動力は脅威になる。


「(彼女って何歳ぐらいなんですか?)」

「(知らん、興味もない。軽く100は越えているだろうが、淑女に年齢を聞くのは駄目なものだ。)」

「(それもそうですね。)」

「聞こえてる。」


 肩を竦めて振り返ったエルフへの回答とするレオトール。

 見た目は13~15歳程度の少女だが、その中身は成熟しきった女性だ。

 多くを口にせずともわかるだろうというばかりにその動きを行い、エルフの彼女も無口なままにずんずんと進んでいく。

 そのまま歩き続け数十分、何かの違和感を感じたゾンビ一号は急に立ち止まった。


「どうした? ……ああそうか。結界をお前は初めて超えるのだったな?」

「結界……? 今超えたんですよね?」

「ああ、余り遅れるなよ。」


 それだけで会話を切り上げる、がそれでも彼女は気になり少し振り返りながら進んでいく。

 結界、エルフの隠れ里を隠している結界。

 隠匿結界とも言い換えていいだろう、その結界は内と外を魔力的に分断している。

 故に内部は外よりやや濃く魔力が満ちており、ゾンビ一号はその魔力を肌で感じてしまったという話だ。

 ただ、ソレと同時に結界を変えたという事実を魔力濃度以外で判断できなかった。

 その事実が故にゾンビ一号は振り返り、本当に結界があったのかを驚きながら確認しているというわけだ。


「しかし、何度見ても素晴らしい結界だ。対防に優れていないとはいえ、破壊するにしても一苦労はする。そもそも広範囲爆撃でもしない限り発見自体が無理だろう。」

「何年モノの結界だと思う? ソレが答え。」

「噂によれば数千年、だがソレは境界線側のエルフの話のはず。こちらのエルフの詳細までは知り得ないのでな? 許せ。」

「フン。」


 そこで会話は終わり、森が開け始める。

 そこにあったのは、美男美女が集う桃源郷のような隠れ里だった。

 中には警戒し、弓を向ける者もいる。

 その中を威風堂々と歩き、気にも留めないレオトールと。

 その中を萎縮しながら歩き、居た堪れなさを感じるゾンビ一号。

 何度訪れたかの違いだろう。


「ん、ようこそ。エルフの隠れ里へ、とは言っても移動拠点なのだけど。」

「数十年は止まっているのだろう? ならば立派な一拠点だ。」

「本物はこんなのよりもっと多いから。」

「此処より……? 此処も相当なものですが……。」


 周囲を見渡し、そう呟くゾンビ一号に対してレオトールは軽く相槌を打つ。

 直径1キロに広がる大都市、鬱蒼とした森林と共存した種族。

 エルフ、彼等の住処がそこにあった。


「素晴らしく広いですね……、アルビオンの王都と同じぐらいでは?」

「ああ、彼処か。純粋な比較は無駄だろう、アレの外にもある程度は広がっているしな?」

「此処はほとんど森、ソレに人口自体は少ない。」

「長命種故の性という奴か、見た目に反して数百もおらんのではないか?」


 レオトールの問いかけに否定とも肯定とも付かない返事を返しつつ、コッチと呼びかけ何処かへ向かう。

 ソレに大人しく着いていくレオトールとゾンビ一号。

 彼女に着いていけば街並みは森から都市というふうに如実に変化していき、更にはチラホラと疎ながらにエルフ以外の種族見えてきた。


「ドワーフもいるのですか……、仲が悪いとお聞きしたのですがそんなこともないのですね。」

「ん、そんな事はない。此処は交易とかも盛んだからいるだけ、エルフ的には森を破壊するドワーフは嫌い。」

「まぁ、鉄を叩くには恐ろしい量の薪が必要だからな。環境を破壊される要因の一つを嫌うのは通りというわけだな。」

「ん、よく喋る? 『伯牙』。前はそこまで饒舌じゃなかった。」


 エルフの問いかけに曖昧に微笑みながら返すと、目線をチラリと背後に向ける。

 視線を感じた、見定めるような視線が。

 その視線の主を探るように一瞬だけ目を向け、看破し呆れて息を吐く。


「またか、シャリエア。」

「またとも、伯牙。北方最強と名高い貴殿と、是非一戦願いたい。」

「見ての通り、今の私は弱っている。弱者を嬲って楽しいか? シャリエア。」

「ソレに今は族長に会いにいく用事がある、今は辞めて。」

「おお、それはそれは。族長めに会いにいくのであればデュアの名に連なるファフリア殿の邪魔は出来まい、だが会いに行った後は暇であろう? 是非、是非とも一戦を!!」


 酷く美しい、もしくはエルフ特有の美形を晒しながら押し掛けてくるシャリエアというエルフ。

 面倒臭そうに手で追い払いながらレオトールも少女エルフもといファフリアも歩く。

 その二人に若干遅れながらゾンビ一号も追随し、そしてシャリエアに肩を掴まれた。


「貴殿も強そうだな? 妖精が集っている。ぜひ此処で一戦交えないか!? 無論、少しで良い。少しだけで良いのだ、ぜひとも戦わないか? ああ!! 装備が見窄らしいな? ならば私も合わせよう。鎧を剥いだ状態で一度戦おうではないか!!」

「え、えぇ?」

「辞めろ、邪魔だ。」

「むぅ、本格的に連れないな? 伯牙。ただの美女の願いであろう、ソレを無視するとは世が世なら男どもに殺されるぞ?」


 2度も答えはしない、言葉を放つことすら無駄と感じたレオトールは掴んでいる手を手刀で外しそのままゾンビ一号の体勢を崩して姫のように抱き上げる。

 その状況についていけず、赤面しながら困惑するゾンビ一号。

 そしてまぁ、と言いながら口を覆い笑いを堪えるシャリエア。


「お前は押しに弱いな、全く。ああいう手合いは無視しておけ、関わるだけ時間の無駄だ。おい、馬鹿(シャリエア)。後で一戦だけしてやるから今は関わるな、面倒だ。」

「え、い、あ……。はぃ……。」

「ん、時間の無駄。早くいく、あとこれ以上関わったら戦うまで終わらない。」

「言ったな!? 伯牙!! ククク、此処最近は骨無し竿無しの雑魚どもしか相手していないのだ。全力で挑ませてもらおうとも!!」


 ハハハハハハハ、と笑い声を上げながら駆け出していく長身のエルフを見ながら三人は息を吐き呆れを隠さない。

 森の中では無類の強さを誇る種族でもあるエルフは全員が相応以上に強く、だが同時に戦いを好まない特性もある。

 だが何事にも例外があるように、戦いを好む血生臭いエルフも多少は存在しており彼女は数少ないその例だ。

 

「良い加減あの手合いをどうにかはしてくれんか? 厄介で仕方ない。」

「ん、無理。エルフとしても積極的戦力は稀有、潜在的に強くても攻めなきゃ意味がない。」

「事情を理解せんこともないが……、その対応は悪手ではないか? その通りを貫くのならば彼女らはより幅を効かせることとなるぞ?」

「んぅ、言う通り。お喋りは此処まで、着いた。」


 図星を刺され、少し唸りながら到着した場所を指差す。

 そこは巨木の空とでも言うべき場所、くり抜かれ成立した大きな居住地。

 その扉に彼女は手をかけ開く。

 ソレをみてレオトールはゾンビ一号を地面に下ろした。


「伯牙の事だから無いとは思うけど、気は損ねないように。」

「信頼はありがたい、な。さて、行くぞゾンビ一号。お前の処遇は此処で決定されるのだから、な?」

「処遇!? え、殺されたりでも……。」

「阿呆、な訳あるか。まぁ、行けば分かるさ。行けばな?」


 悪戯っ子の様な笑みを、黒狼が見せる雰囲気に良く似た笑みを浮かべツカツカと建物の内部に入っていく。

 中は華美では無いが自然的な装飾が成されており、大自然に抱かれている様な感覚を味わうかもしれない。

 もしくは、大自然に呑まれている様な感覚だろうか。

 威勢堂々と肩で風を切る様に、堂々と歩くレオトール。

 そんな彼の、彼の背中に隠れる様に歩くゾンビ一号。


「怯える事はない、確かに環境が濃いがヒュドラの毒沼と比べれば大差あるまい。」

「環境が濃い? どう言う意味ですか?」

「ん? ああ、そういやお前は生まれたばかりだったな。見た目が見た目故に既知だと思っていた、これは済まない。環境が濃い、と形容したが正確に言うならば非適応の環境に晒されていると言う意味だ。」

「……? 環境適応のスキルと関連があると考えても良いんですよね?」


 その答えにニッコリと笑いながらレオトールは魔力を放出する。

 魔力視を保有するゾンビ一号はその魔力が純白であり、無色透明な透き通る魔力。

 すなわち凡ゆる魔術及び魔法的属性を帯びていない類のものだと分かるだろう。

 そして、同時にその魔力が変色し森という属性に染まっているのも分かるはずだ。


「環境が濃い、即ち此処は私やお前の種族が本来的に生きられる環境ではないという事だ。そうなれば当然生物的に適応していない以上、森林に関する環境適応スキルでも持たない限り此処では息苦しく感じるのも当然の話となる。」

「つまり……?」

「少し遠回しの説明をしてしまったか、では簡潔にしよう。直接的に言えば此処に長期滞在すれば肉体に不調が発生するという事だ、環境が濃いというのは。そういう意味では、あの毒九頭竜の沼など最もたる例だろう。此処では食事などを行い体内に取り込まなければ明確な影響は無いだろうが、あそこは違う。あそこはその場に生きているだけで寿命を削られ天命を消し去る事になる。」

「なる、ほど? とりあえず環境が濃いと言うのは私自身がこの環境? この家の様な場所から拒絶されていると考えれば良いでしょうか?」


 ゾンビ一号の問いかけにそんな物だ、と曖昧な返答をしつつ廊下を先に先にと進んでいく。

 エルフの、彼女の案内はない。

 扉を開けた時点で何処かへ行ってしまった。


 そのまま通路をまっすぐ進み、上階へ階段を用い進む。

 時偶にレオトールは己にポーションを振り掛け、体に入った軋みを直しつつ一つの部屋の前にたどり着く。


「この部屋だ、な。少し、覚悟しろよ? ゾンビ一号。」

「わ、分かりました……!!」

「はは、気張るな。別に怖い相手ではない、殺し合いでもなければな。」


 その言葉と共に両開きの扉を片手で開け、部屋の中を見る。

 大きな机が一つ、そして椅子に姿勢悪く座り笑みを浮かべゾンビ一月の瞳を覗き込む耳長の人物。

 転じて、エルフの長老がそこにはいた。


「やぁ? 伯牙。そして、混ざり物め。」


 笑いを堪える様な吐いたその言葉、彼とも彼女とも言えるその人物は椅子から立ち上がると一瞬にしてレオトールに迫り。


「生憎と、此奴の命は未だ枯れてやるつもりはないのだ。」


 レオトールの水晶剣がエルフの首元に。

 同時にエルフの持っていたナイフがレオトールの首元に突きつけられる。


「流石に、弱ったとは言え流石の『伯牙』。北方最強と名高い『白の盟主』の名は伊達ではないな。」


 そして、示し合わせたように互いに得手物を首から引いた。

エルフどもの属性が濃いんだよ……。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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