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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー4『ポン・クラッシュ・クラッシュ』

 例えば、黒狼が悪役を意識しなかったとする。

 例えば、黒狼がアンデットを選んでいなかったとする。

 例えば、黒狼がレオトールと出会ってなかったとする。


 そして、彼の掲げる正義が自由では無かったとする。


 その真実がもしあるとするのならば、黒狼はどのような存在になったか。

 その答えは、神のみぞ知る。

 だが、確かにソレは黒狼と酷似していた。


*ーーー*


 三人の動きは迅速で、例えるならば嵐だった。

 片手に極光、片手に深淵をたたえた黒き神は一気にヒュドラの頭部へ接近する。


『ーーーーー(選別だ、受け取れ)』


 黒き神、その活動時間はわずか一分。

 その極僅かな時間で男は明確な成果を残す。

 両腕に極光、転じて太陽を掲げ片腕に世界転じて漆黒を持ち男はそれを融合させる。

 第一の太陽、その権能の真価を理解できたのは此処に存在した中では2人だけだった。


「驚くべきです、これが自死程度で召喚されていいのですか!?」

「術式の拡張!? あの魔法陣はファイルだった訳!? それなら魔力が足りないのも納得よ!!」


 黒狼が発動していた『第一の太陽此処に降臨せり』、その正確な術式の発動を目の当たりにし2人は驚愕に顔を歪める。

 そして、目の前でそれに対抗する化け物をあらためて評価した。

 まさしく神話の戦いが如き一局。

 だが不完全な状態で召喚された神と、長らく封じられ弱体化した九頭竜の勝負でしかない。

 その事実をひどく残念に思いながら2人は早速得た知見を利用しようと頭を回す。


 ジャガーマン、そして黒狼が扱うその魔術は。

 『第一の太陽』もしくは『第一の太陽此処に降臨せり』は魔術であり権能だ。

 そして、人類が再現可能な奇跡とも言える。

 それはなぜか? 語るには権能を紐解かなければならない。

 権能とは何か? 一言で言えば権能とは圧縮ファイルだ。

 圧縮ファイルとは、圧縮アルゴリズムを用いることにより元データの実質的な内容を変えずにサイズが縮小されたファイルを指す。

 これはプログラミングでは当たり前で常識的な話であり、それで一般でも大きく知られている話でもある。

 神の権能とは、それぞれの神が用意したアルゴリズムを利用してそのシステムを圧縮したものを指す。

 故に人間は本来、その権能を扱うことは不可能とされる。

 だが、ないごとにも例外が存在するようにこの神に関しても同様と言える。

 そう、例外。

 

「理解することすら烏滸がましい、そんな狂ったような魔術をこの神は人間に扱えるようにしたのですか!? 本来ならば秘匿すべき秘蹟を!?」

「解析が終わらない……!! どれだけの情報で組み込んでいるのよ!!」


 例外、だ。

 深淵の神が1人、その黒き神は自分の有利を捨ててまで人類に教えたのだ。

 本来ならば途方も無い情報量を保有し、人類では到底理解できない情報量を孕む其れをこの神は丁寧に紐ほどき人類でも理解できるようにそのアルゴリズムを単純化した。

 黒狼はそれを理解できず、魔力を注ぎ込むことで無理矢理解凍し擬似的な再現を図っていたが本来の神はその権能を正しく扱う。

 その手段と方法、そして理解を得た2人はその情報量に驚く。

 有能で実績ある科学者とも言える2人は現実にあり得ながらもこういうことしかできない。


「「不可能だ……、できるはずが無い!!」」


 さて、アーサー・C・クラークが発言した三原則を思い出して見よう。

 一つ目、十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。

 二つ目、可能性の限界を測る唯一の方法は、その限界を少しだけ超越するまで挑戦することである。

 そして三つ目、高名で年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。


 名高く、年配では無いが有能な科学者。

 もしくはそれに匹敵し、上回るレベルの魔術という秘蹟を解析する魔女の2人は可能で合うことの証明に他ならない。

 此処に、かのSF作家の言葉は立証されてしまった。

 

『ーーーーー(神は賽を手放す、今度はお前らが振れ)』


 神は言葉を残し、両腕を接着させる。

 漆黒と極光、互いにぶつかり合った其々は相反する現実で現実を崩壊させヒュドラのブレスをかき消した。

 

 ーーーーーーーーーーAaaaaaaaaarrrrrrrrRRRRRRRRRRR!!!!!!!!


 ヒュドラは絶叫をあげ、ブレスを防御として展開した。

 だからこそ、その攻撃は()()だけ防御可能となった。


「ック!!!!?」

「肉が焼ける!!?」


 騎士王は鎧の防御結界を展開直後に破壊され、ゾンビ一号は肉体と精神の乖離が発生しない純粋な極悪の極光を受けて肉が焼かれる感覚を味わう。

 ヒュドラは、ブレスの防御を展開しその暴発を防いだがそれでも一瞬の防御しかできず本体の肉を大きく削がれる。

 頭上に存在しているHPバーが一瞬で大きく削れ、胴体のゲージの半分まで消え去った。

 だが、そこまでだった。

 

 この九頭竜はヘラクレスのような単体のゲージが何度も復活するタイプのボス……、ではない。

 むしろ、それならばよかっただろう。

 この九頭竜の最も恐ろしいところは、部位ごとにゲージが存在していることだ。

 この九頭竜は過去の描写から分かるように、首を破壊すればブレスのため行動の後に増殖し再生する。

 そして六頭竜の時に発生した頭部のゲージを全て破棄すれば胴体のゲージが発生し、七頭竜のゲージを全て破壊すれば尾のゲージが解放される。

 最終的に九つの頭部と胴体、そして尾を破壊しなければ殺すことが不可能な化け物が完成する。

 

 レイドボス:毒九頭竜(ヒュドラ)の殺害に要求される殺害条件だ。


 この事実を把握していたのは、この中ではゾンビ一号とジャガーマンのみ。

 一つ首の時点で全ての部位を完全に破壊できる能力を有していない以上、全ての頭部を破壊し続けるという手段しか取れない。

 その判断を行ったからこそ、2人は九頭竜の首を破壊し続けた。

 結果として、ヒュドラが本格的に起動する八つ首までの状態に1分で持って行けたのだ。

 もちろん、そこにプレイヤー最強の助力とプレイヤー最上の鍛治士が作成した至上の刀がなければ成立し得ない話だったが。

 確かに、全てを解放させジャガーマンは最後にヒュドラの胴体のHP。

 その半分を削った。

 その事実は、彼らを勝利に導く礎となる。


「『暗き深淵、深き湖、湖の精霊は孤独に笑う』」

「『魔力よ渦巻け、祖は炎!! 燃え盛る演舞の原型なり!!』」


 モルガンとロッソが同時に魔術を発動する。

 その背後から、円卓の騎士が。

 太陽の騎士と湖の騎士が躍り出る。


「『聖剣、解放』!!」

「『聖剣、展開』!!」


 2人は同時に、アロンダイトを展開しガラティーンを相方する。

 莫大な熱量が大きく広がり、大いなる湖が刀身に力をかざす。

 円卓の騎士、十三円卓。

 戦闘特化の中でも最強格、先ほどの戦いには参戦できなかったが。

 それでも、円卓の最優と太陽は剣を振り上げる。


「『我が名を以て告げる、我が器の名はヴィヴィアン・ル・フェ!! これは即ち湖の乙女(精霊)の真名である。』」

「『魔の坩堝より形成されよ、それは魔女の技能。黄金の薔薇は幾何学を描き紡ぐ!!」


 二者二様、その2人の魔術はこの一瞬でより最適化された。

 神の魔術を見た結果、彼女たち2人は既存の概念の上に登った。

 過去に作成し続けた魔術を圧縮し、神の権能に近づくためにこの一瞬で最適化させた。

 秀才に見える天才と、天才の中の天才は同時に同じ領域にたどり着く。

 全く別の手段を用いて。


 モルガンがこの一瞬で増殖した。

 彼女の肉体に宿る権能を扱ったのだ、その数はおよそ10。

 その十体のモルガンは全員が別々の魔術を同じ詠唱で展開する。


 ロッソはこの一瞬で増殖させた。

 彼女は己が作成した炎をより強固に単純に複雑にするための魔法陣を10個ほど展開した。

 その全ての魔術は最初に発動するただ一つを強力にするためだけに。


「『ガラティーン』!!!!」

「『アロンダイト』!!」


 太陽と、湖が降臨する。

 極熱を帯びた聖剣はヒュドラが放とうとしていたのブレスを消失させ、湖を湛えた聖剣はそのヒュドラの首を正面から切断した。

 奇声と共に大きく唸り叫び声を上げるヒュドラ、他の首が2人を殺害しようと一斉に動く。


「させるかァッ!! 『クラレント』!!」

「守り給え!! 『ナイト・オブ・シールド』!!」


 円卓を構えた騎士と、狂叛を掲げる騎士が割り込む。

 2人は襲いかかってくるヒュドラの首を、片方は円卓という盾で防ぎ同時に大きく弾かれた。

 その猶予を見逃さず、2人の魔女は魔術を展開する。


「『いざ仰げ、それは偉大なる大精霊の祝福なり!! 【降臨する十の魔槍(ツェーン・ローン)】』」

「『極魔、照準制定!! 発射しなさい!! 【炎は極線となる(レヴァテイン)】』」


 二つの魔術が殺到し、二つの九頭竜の首を破壊する。

 だが、そのカウンターとしてヒュドラは残った首でブレスを放った。

 五本のブレス、プレイヤーの中でそれを防げる人物は……。


「『開け、【黄金の劇場(ドゥムス・アウレア)】よ!!』」


 存在する、黄金童女の心象世界ならばその攻撃を防ぐことが可能だ。

 いくら竜とはいえ、そのブレスは流石に一つの世界を破壊することは不可能だ。

 ネロが前線に躍り出て、一気に展開したその究極極限魔術。

 それはブレスを防ぎ切り、ゾンビ一号が動く隙を与えた。


「『極剣一閃(グラム)』」


 ゾンビ一号が放った最強の初手は、一気にその首の内一つを地面に叩きつけた。

 そのまま連続して斬撃属性は宿ったエフェクトが叩きつけられ表皮と鱗を破壊する。


「『壊毒の剣』、『血の魔性』」


 剣が毒毒しく輝き、それを差し込んだ後に魅了系スキルを発動した。

 毒を制するには毒? いいや、違う。

 毒に毒を混ぜても、その結果はより強い毒が食らい尽くすだけだ。

 少なくとも魔法要素が絡んでくるこの世界において、その事実は常識として知れ渡っている。

 

 だからこそ、ゾンビ一号はスキルを利用する。

 血の魔性、上位に値する吸血鬼ならば全員が保有する一般的なスキル。

 そのスキルを発動することで彼女はヒュドラの抵抗力を大きく下げた。


AaaaaaarrrrrrrRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!


 肉が爛れ、崩壊し始める。

 純粋な激毒であれば、毒に対する完全耐性を保有するヒュドラに効くはずがない。

 だがこの毒は、孤独(蠱毒)の死骸から形成されたウイルスだ。

 血肉を喰らい、肉体を蝕む毒だ。

 普通でああればヒュドラの毒で滅菌されるはずのその毒は……、一気にヒュドラの体表を壊死させる。


「『銀剣』」


 だがそれだけでは殺せない、だからこそそのスキルを使うしかない。

 このスキルは、ゾンビ一号を形成する魂に刻まれたスキル。

 その諱を昇華させたスキル、その攻撃は元々『銀剣』と呼ばれた人物の代名詞でもあるただの一振り。

 自己存在を揺るがすはずのその攻撃、だがゾンビ一号はそれを躊躇いもなく使用する。

 全ては、黒狼の望みのために。


 緑色の剣に銀が混じり、その剣に1人の男の手が添えられる。

 その動きと同時に一気に振り下ろされた剣は、銀が煌めきヒュドラの頭部が落ちた。


「やはり、首が多くなると硬くなりますね。」


 ボソリ、そう呟いた途端に上からブレスが襲ってくる。

 それをチラリと見て、ヒュドラの血液を操作しそのブレスを防ぐ。

 そのまま飛び散った血液を矢のように変化して、一気に首を拘束した。


「『飾弓』『穿槍』」


 その拘束を解かず、そのまま周囲の血液を変換しヒュドラの首に打ち込んだ。

 そのまま、ヒュドラの背後から放たれる極光を見て回避行動する。


「『エクスカリバー』」


 背後の極光は、ヒュドラの首をつぶす。

 流星のごとくそのまま地面に着地したアルトリウスは、直後剣を地面に向けエクスカリバーを発射した。

 直後、ブレスが空間を薙ぎ払い一瞬前までアルトリウスが存在していた空間を薙ぎ払う。


「アルトリウス卿!! ここは私にお任せを!!」


 槍を振るう女性騎士は、ガレスという騎士は槍をブレスを放つ首に投げつけそう叫ぶと地面を蹴る。

 目線だけで任せたという意思を伝えたアルトリウスは即座に聖剣を放ち、方向転換を行った。


「『槍術』『横回転』!!」


 その言葉と同時に槍が回転する。

 その姿はまさしくドリル、スキル『魔技槍術』に内包されるスキルでしか見られない面白い技だ。

 それがヒュドラの首をえぐり、そのまま自壊し暴発。

 大ダメージを与えた。


「あ、ヤバいですぅ?」


 言い方を変えれば、暴走しオーバーヒートし自分の得て物が壊れたということ。

 この状況でその一瞬のためらいは致命的だ。

 先ほどまで攻撃していた首が一瞬でガレスのほうを向き、ブレスを放つ。

 その一瞬で彼女は蒸発する、だがその消耗を気にせず無表情で追撃を行う騎士がいた。


「『ショット』」


 銃口から硝煙が立ち上りヒュドラの首から血肉がはじける音が聞こえる。

 アグラウェイン、彼が銃を発砲したのだ。

 そのままインベントリから手榴弾を取り出し、ヒュドラの口に投げ込む。


「味わえ、鉄錆を。」


 瞬間、炸裂する。

 ヒュドラの口内で爆発したのだ、彼が放った手榴弾が。

 アグラウェインは持っていた銃を投げインベントリにしまうと、そのまま剣に持ち替え首に接近する。

 

「『暴走』『自爆』『炸裂』」


 スキル発動、同時に剣を投げつけ彼は走る。

 剣からジェット機構が露出し、推進力を得た剣はまさしく水を得た魚のように動き喉に剣が刺さる。

 アグラウェインは鎧の中にしまっていたワイヤーを発射しその剣と接続した。


「『ワイヤーアクション』」


 その一言でワイヤーが光り、アグラウェインはワイヤーを操作して空中を舞う。

 そしてインベントリを開き、マシンガンを取り出して首に鉛球を叩き込んだ。


 ダダダッダダダッダダダッダダダッ!!!!!


 銃音が鳴り響き、首が半分落ちかける。それを把握したアグラウェインは魔力を流すと剣を爆発させる。

 そのままワイヤーをしまいつつ地面に着地し、爆音を背景に目の前から迫る首を冷たく観測したアグラウェインはインベントリを開きつぶやく。


「爆発しろ。」


 瞬間、インベントリから取り出されたあらゆるアイテムがアグラウェインごと起爆されヒュドラの首が消し飛ぶ。

 これにて、八頭竜は九頭竜となる。

 完全体のヒュドラが顕現する。

 

 戦闘は最終章へと到達した。

何処の世界に火薬と弾薬をばらまきワイヤーアクションをする騎士がいるんだ?


ア、ココノ世界カ……。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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