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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー4『酒盛り』

ちょっとした言及と雑談です。

ぶっちゃけ本編に関係ない……、いやゼロではないけども。

 VRCを外し黒前……、黒前真狼はため息を吐く。

 そして視界の端で揺れる何かを見つけたので取り敢えず全力でビンタした。


「ひっどいなぁ!! ボクを殴るなんて人間のやることじゃない!!」

「ソウダナー」

「そんな冷たいところも大好き!! さっすが黒前きゅん!!」


 そんな遣り取りを行いつつ、黒前は喉を潤すため機械に注文を行う。

 即座に出てきた液体、それを喉に流した黒前は一息ついた。


 そして、目の前の不法侵入者をもう一発叩く。

 あひん!? という声と共に若干飛び上がり、黒前にのしかかっていた彼女はそのまま飛び退いた。

 三発目は流石に嫌らしい。


「で、何でここにいる? 鍵は確かに渡してるけど勝手に入っていいなんて言ってないぞ。」

「まさか、ただの暇つぶしだよ。黒前きゅんの顔を見てると……、こう……、何というか……、興奮……、しちゃいましてね?」

「うわ、キッショ。」


 不法侵入者はどうやら変質者のようだ。

 相当冷えた目で見られ、泣きながら肩を震わしている彼女を見る。

 可哀想だと思う事なかれ、黒前の部屋の匂いで興奮し肩を震わしているだけなのだから。


「あ、そうそう。風の噂で聞いたよ、どうやらイベントで暴れ回ってるらしいねぇ〜。」

「アッソ」

「何やら有名二つ名プレイヤーの金魚のフンになってるらしいね!! さすが悪役、有名人を背後から操ってこの世界を支配しようとしているわけか!!」

「うん、ちょっと待て!? そっちの意味で有名なの!? 完全に悪名じゃねぇか!!」


 完全に全てを理解した(してない)黒前は、慌ててコンピューターを操作し掲示板などを見る。

 そこには確かに黒前が噂されていた、虎の威を借る狐として。


 ガックリと肩を落とす、結構本人も動いて色々している分、こうした噂をされるのはメンタルにくるようだ。

 首を傾げ、ニヤニヤと眺めている目の前の不法侵入者を蹴り付けると黒前は起き上がった。


「全部俺の実力に決まってんだろ、ざけんな。」

「ボクに言われても困るんですけど?」

「黙れ、逆転野郎。ついでの不法侵入者、酒飲ませろ。」

「ざーんねん、今日は持ってきてないしね?」


 眉間に皺を寄せ、起き上がった黒前は再度飲み者を注文し、受け取った途端に飲み干す。

 口が自然と悪くなるのと、声を張り上げたせいで喉を痛めた気がしたからだ。

 それを差し引いても数日振りの会話だ、満足に話すには少しキツイ。


「はぁ、コレをするにも時間がかかるし。どうだ? 世間話でもするか?」

「ボクは黒前きゅんの冒険譚を聴きたいな〜? どうせ、面白いことをしたんだろ?」

「そうか、聴きたいかー。じゃぁ、酒とつまみを家からもってこい!! いまなら不法侵入も無効にしてやるよ!!」

「さっすがー、黒前きゅんサイコー!! いますぐ持ってくるね!!」


 ドタバタと走って消えていく彼女を見送った黒狼は戸締りを行うと、脳内で湧き上がっている疑問を整理し始める。


(このイベント、海方面に関して俺は触れていないがさっきの掲示板で別のプレイヤーたちが活躍してるという情報があったな。『ワイルドハント』、だったか? 面白い、是非とも会ってみたいところだ。)


 黒狼達が一切触れていない海方面、なぜ触れていないかというと戦闘が困難な立地であるから。

 最低でも小型船舶が必要らしく、しかも雑魚だが倒しにくいモンスターが相応数湧いたという話を見た。

 その関係もあり、『ワイルドハント』と呼ばれているプレイヤーの独壇場だったらしい。


(しかも海系のモンスターはドロップ品のレア度が総じて高い、是非とも見たかった気持ちはあるな。俺も軍艦とか作って海にも侵攻したかった〜、まぁ無理だししゃーない。そこは切り替えよう、はいはい切り替え切り替え。)


 そう言って思考をリセットし、次の議題を思い浮かべる。

 Ⅻの難行も気になるところだが、それ以上に黒狼はレオトールの実力に疑問を持っていた。


 普通に考えても可笑しいのだ、どう控えめに見ても『プレイヤー最強』と揶揄されるアルトリウスがレオトールに勝てる未来が見えない。

 レオトールに気づかれず聖剣、『エクスカリバー』の射程範囲内に入り奇襲を仕掛けて漸くタイマンができる実力となるだろう。


(そんなの可笑しいだろ、いくらNPCといえどもそれだけの実力が罷り通るのは可笑しい。其れに再現したからこそわかるが、あの『極剣一閃(グラム)』というアーツ? 本来はあれだけ応用が効く技じゃないだろ。他にスタミナという概念、レオトールは一切の休憩なく戦闘を続けていた。レオトールを除きあそこにいたのはアンデッドである俺とゾンビ一号のみ、つまりスタミナという概念が存在しない二人だけ。なのになぜ、レオトールは休憩を挟まず常に戦い続けていた?)


 考えられない、そんな常識を捨てたから黒狼はレオトールの異常さを再認識する。

 多少の休憩はあったが殆どノンストップで戦い続けた、例外的に長期的に休んだことはあったがそれだけ……。


「まさか、そういう事か?」


 黒狼は一つの可能性に思い至る、レオトールのスタミナが長時間の戦闘を行なっても問題ないほどに莫大である可能性に。

 それは、現在すべてのプレイヤーよりも遥か高みに至っているという事実と同義だ。


(笑えねぇ、何度でも死ねるプレイヤーよりもはるか高みだと? それはつまり常人では考えられないほどの死線を潜り抜けてる訳で……。思ったよりこのゲーム、作り込まれてるな。モブかどうかはわからないが俺があそこに到達しなければほぼ確実に死んでいたレオトールにこれほどの背景情報があるのは異常と言っても良い。)


 人間の脳の容量は一説によれば17.5TBと言われている。

 だがこれも決して正しくはない、VRCを開発した脳神経外科の第一人者でああるハワードは後にこう語っている。


『人間の脳はこの世界という空間に情報を保存し記録する機構を持つブラックボックスだ、そこは未知の世界。一つの世界と言っても過言ではない、私が発見したカスルブレホード波というのはそのブラックボックスから発せられる【何か】に特殊な手段で干渉しているだけだ。』


 その言葉はVRCを使用している人間全員が最低でも一度は聞いたことがある話だ、この世界で最も有名な話と言っても過言ではない。

 現代の技術を持ってしてもやはりVRCの根本原理は不明とされている、黒狼は何かしらの意図で隠されているのではないかと疑っているがそこから先を見る気はない。

 だが、どうしても黒狼は疑ってしまう。


(もしこのゲームが、あの世界がこの現実を限りなく忠実に再現しているのならば……。いや、そうじゃない。再現っていうレベルじゃない、アレは……。最近のAIの技術発達? にしても四半世紀は早い、レオトールっていう人間の人生をトレースしてるのはあり得ない。其れに通信技術……。)


 思考が回る、物理的に可笑しい矛盾点が明確に見え始める。

 DWOの運営が何を考え、何を行い、何を目的としているのか?

 星間という莫大な距離を1秒のラグすらなく情報を伝達し出力しているなど、あり得てはいけない。

 それは物理的常識を覆しt……。


「おーい!! 開けてー!! ボクを締め出さないで〜!!」

「あ、帰ってきた。」


 面倒くさい奴が帰ってきたと顔を顰めつつ、同時に安堵する。

 これ以上考えるのは、駄目だ。

 黒前真狼として、日常生活を送るのであればこの世界の何かに気付いてはいけない。

 それは、自らの平穏と安寧を壊しかねない。

 自由を尊重するのは彼方だけで十分だ、その自由を現実にまで持ち込めば……。


「馬鹿らしい、あくまで俺は黒前だ。」


 現実は現実、空想は空想。

 その境界線を見極めなければ、現実に空想を持ち込み自分の我儘を罷り通そうとする。

 レオトールの理解者であることも、ゾンビ一号の作成者であることも、モルガンの協力者であることも事実だ。

 だがそれは、黒前真狼と関係性は存在しない。

 あくまでプレイしている中の人物というだけで、それ以上の価値を持ってはいけない。

 現実と錯覚するほどに完成度が高いゲームだからこそ、その線引きは重要だ。


「黒前きゅん!! 全くなんてことをするんだ!!」

「知るか、酒飲ませろ。」


 思考を紛らわすために酒を要求する黒前、だが確かにそれは正解だった

 高揚感は思考を掻き乱し、美女の皮を被った接待もある。

 思考はすぐに切り替わった。


「んで、黒前きゅんはどんなふうにゲームをプレイしてたの?」

「……そうだな、その説明をする前に一つ聞きたいことがある。」

「なんだい?」

「お前は、最強をどう思う?」


 黒前の問いに彼女は少し顔を傾げ、考えこむ。

 最強をどう思うか、その問いは彼女を悩ませるのに十分な問いだった。

 だからこそ、出した回答はいかにも彼女らしい回答でもある。


「物語をブチ壊さない限りは、ボクは好きだよ? 最強、いいじゃないか!! 心がおどる!! ギリシャ神話のヘラクレスだってアキレウスだってそうだ!! ケルト神話のクーフーリンなんかもいいね、無双やチートには興味ないけどやっぱり物語のアクセントとして最強は必要だとボクは思うさ!!」

「そうか、そうだな? じゃ、説明をしようか。最初の物語は……、そうだな。俺と、俺が見た最強の人間。そして俺が作ったアンデッドの話を。」

「おおー!! パチパチパチパチーー!! 早速聞かせて!!」



 黒狼は口を開く。

 Ⅻの難行、その前から。

 黒狼が見た最強の話を。


「まずは最初だな、俺は色々悩んだ末にアンデッドのスケルトンっていう種族を選んだんだよ。そしてゲームお開始したら……、即座に死んだ。なんでか分かるか?」

「アンデッド、あるあるでいえば光に弱いとかあるね。もしかして太陽光で死んだ?」

「正解、まぁそういう理由で何度も死んでランダムリスポーンで漸く俺は死なない場所に辿り着いた。その場所っていうのが光が届かない洞窟だったんだよ、そこで色々駆け回りつつ俺は八面六臂の活躍をしたのさ。」

「あっさりしてるね、案外。」


 彼女の心無いセリフに存外グサッときた黒前はコップの酒を煽ると、部屋に一つの映像を投影した。

 それは黒狼のゲーム風景だ、黒狼がDWOに降り立った時の映像がソコに投影されていた。


「まぁ、最初はアンデッドっていう以外特に特徴は……。いや、あるな。現地人、まぁNPCって言えばいいか。NPCで自分をレベル100って呼称する存在に出会ったんだよ。」

「100? カンストってこと?」

「違うと思う、100っていうのはモノの例えじゃないか? ほら、区切りがいい大きな数字って100とかだし。」

「あー、そういうこと? 確かにボクも大きな数字を表現する時100とかを口にすることが多いかも?」


 実際、黒狼は一時期レベルが80を超えていたことがある。

 その時の強化率は凄まじいもので合計の値が3000に迫るほどだった、だがその状態でもヘラクレス戦ではお荷物であり守られる側の存在でしかない。

 進化システムを加味しても、やはりレベル100というのは一種の区切りでしかなくその上が存在するとしか思えない。


「まぁ、その存在。『黒騎士』っていうんだけど、そいつから色々聞きつつゲームを楽しんでたんだ。そんな時に出会ったのが、俺が知りうる『最強』ことレオトール。そいつは化け物みたいに強いんだよ!! 最初は弱かった……、というか今思えばあの時全身の骨が常に砕けるような状態だったんだろうな? そんな状態で俺と出会ったんだけど、数日休めばそんな状態を想わせないほどカッコいい活躍をしてた。マジですげぇんだぜ? 俺が倒すのに何時間もかかった敵をたった二撃で倒したんだ。それも、腕試しだとか言いながら。」

「へ、へぇー。それは……、ゲームとしてバランス調整大丈夫なのかな?」

「知らね、俺はNPCやプレイヤーの平均を知らないし。ただ、一つ思うのはあの世界でも頭数個分飛び抜けて強い存在なのがレオトールなんだと思うけどな。」

「……まぁ、一人二人の規格外は大丈夫かな? いや、大丈夫じゃない……。まぁ、運営がよしとしてるならいっか!!」


 彼女は少し悩んだ末にそんな結論を弾き出すと、彼女も酒を煽る。

 安酒、ではない。

 かなり高級な嗜好品、現代価格にして数百万は下らないだろう。

 だがそれを惜しげもなく安酒のように二人は飲む、ただ美味いという事実は認識しながら。


「まぁ、そいつと色んなことをしながら戦ったんだが……。あいつはマジで強いわ、前に話していたヘラクレスってやつ。このゲームにもそんなボスがいたんだけど、そいつと競り合ってたんだよ。むしろ競り勝ってたか? このヘラクレスは12回の完全蘇生とか蘇生されるたびに部位を取り出したりとか規格外のことっをやってたんだが、それを手に取らせないように立ち回りながら着実に削ってた、俺も多少は協力したがほとんど活躍できなかったな。」

「黒狼きゅんはそのレオトールって人が大好きなんだねぇ、少し妬けちゃうな〜。」

「キッショ」

「なんで!!?」


 寄りかかり胸元を開く彼女を押し除け、酒を飲む。

 味覚は庶民寄りの黒狼だが、この酒が酷く美味しいことはわかった。

 アルコールが回りだし、思考がまとまらなくなり始めていることを自覚しつつ黒狼は気分が赴くままに話す。

 口から出てくるのはレオトールのことが大半だ、あの世界において黒前の骨子を作成した人物だからこそやはり黒前にとっても印象深い。

 だがそれに負けず出てくる人物もいる、そうゾンビ一号だ。

 黒前にとってレオトールは仲間でも同胞でもない理解者だ。

 互いに交わらない道と誇りを掲げ、交わらないからこそ互いを理解している理解者だ。

 だがゾンビ一号は違う、彼にとって彼女は仲間であり友でありそして道具でもある。

 だからこそ、彼女に対してはレオトール以上に入れ込んでいる節があった。


 そんな胸中の思いを吐き出していたからだろう、もともと酒に強い訳でもなかった黒前はコップ3杯程度飲んだところで呂律が死に、5杯飲み終わったタイミングで意識を喪失してしまった。

 つまり、寝てしまったのだ。

 その姿を見てやれやれと彼女は肩をすくめ、はぁと息をはく。

 そしてポツリとこう呟いた。


「今日もお預けかー、久々にできると思ったんだけどなー。」


 残念、と言い残し彼女は黒前に自分の着ていた上着を被せるとそのまま花を摘む。

 彼女も彼女で相応に酒を飲んでおり、排尿しようとする生理反応が起こったのだ。

 彼を起こさないように静かに動くと、彼女はトイレに向かいそのまま彼の横で眠りにつく。

 どうやら、今日はいい夢が見れそうだ。

読者ァ!何故黒前がレオトールに対して、色々考察していたのか。何故VRCを疑い出したのか。何故本編を進めずに酒盛りしているのかァ!その答えばただ一つ・・・ハァ・・・。読者ァ!私が、この世界で初めて、登場した生きた人間を再度登場させたくなったからだぁーっははははっひゃーはははははは!!


つまり、箸休めです。

ここから後編を始めるにあたりやっておきたかった考察(ほぼ愚痴のような雑談)を入れるタイミングとしてはちょうど良かった感じですね。

皆さんもぜひ考察してください。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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