Deviance World Online ストーリー3『騎士王 アルトリウス』
正義、ソレは何を以て定義されるものか。
遥か太古より永遠と語られてきた議題、ソレに答えが出ることは無いだろう。
ただ、この男は正義をこう定義する。
『人が死なず、安寧に生きれること』
これこそが、この世界での正義の体現者。
二人目の『騎士王』、異邦人アルトリウスが掲げる信念である。
ーーーこれは、正義を示す戦いだーーー
「レイドボス……!? ソレも二体目なのか!?」
「落ち着いてください、アルトリウス。このイベントでは一体しかレイドボスは存在していませんよ?」
「いや……、だが……!! 確かに『魔獣胎母』はレイドボス級ボスだったが!!」
「ソレに、ここまでの人的被害が出ることは許容済みです。プレイヤーですから、いくら死んでも構わないでしょう?」
モルガンの報告……、モルガン・ル・フェからの報告に顔を歪めるアルトリウス。
確かに彼女の言うことは正しい、正解だ。
異邦人、プレイヤーである以上は人的被害など有って無い様なもの。
だが、ソレでも。
「ソレでもだ!! 人が死ぬのなら、ソレはあってはいけないことだろう!! とりあえず、近くにいるはずのサー・ガウェインとサー・ランスロット!! 他に誰がいる!?」
「他に、サー・ヴェディヴィエールとサー・モードレッドが……。」
「可能なら即座に向かわせてくれ、僕も至急向かう。これなら、都市部にいた方がよかったじゃないか……。クソッ!! なんでこんなに間が悪いんだ!!」
「落ち着いてください、サー・アルトリウス。私の転移魔術を使えば十分戻れます、今は彼ら四人を捨て駒とし情報を収集することを優先すべき……。ハァ、聞くに値しない意見ですか。そうですか、そうですか。では、急ぎ開くとしましょう。」
モルガン・ル・フェがそう話し、ため息と同時に転移魔術を発動する。
空間に穴が開き、その先では崩壊し始めている市街地が見えた。
「これ以上近くに開けば毒が蝕んできます、ステータスが高く耐性がある十三円卓ならば兎も角ですが他の騎士ではまず死ぬでしょう。ヒュドラの毒はレアリティにもよりますが、古くから王家の人間を屠ってきた典型的な猛毒。少しでも体内に入れればそのまま絶死を迎えることになる。」
「分かっている、だけどこの鎧が……。『真銀の騎士鎧』があれば大抵の毒は無効化できる、ソレに他にも装飾で耐性を持ってる。飲み込んでも多少は耐えられるはずだ……、と思う。」
「ソレでも侮らぬ方が良いかと、サー・アルトリウス。あなたは確かに『プレイヤー最強』ですが、ソレは『最強』には程遠いことも自覚してください。」
「僕が名乗ったモノじゃ無いんだけど……、だけど分かってる。慢心も、侮りもしないさ。」
アルトリウスはそう告げ、聖剣の柄を握る。
恐怖と共に、重厚な責任感がアルトリウスの背中に伸し掛かり押し潰そうとした。
だが、それを彼は正面から受け止めその上で目を細めた。
「『聖剣、抜刀』」
転移が開始する、空間を乗り越える。
正常なる騎士の王、最強の一角。
彼は聖剣の中の聖剣、王権の象徴、プレイヤーが観測した唯一の準古代兵器。
『聖剣』Excaliburを抜刀した、同時に光が乱舞する。
精霊が祝福しているのだ、王の参戦を。
世界がこの異邦人を祝福してるのだ、唯一の聖剣の担い手を。
光が満ち溢れ、神々しく輝き、そのままにアルトリウスを強化する。
そのまま遥か先に存在する化け物、『毒九頭竜』を睨む。
自らの正義に反する存在、それ以上に無辜の民を殺戮するその化け物を。
斃さなければならない、騎士王という守護者として。
「『騎士は疾風の如く』」
スキルを発動する、スキルはアルトリウスの足をより早くする。
障害物を破壊し、全てを追い抜くほどの速さで。
アルトリウスは加速する。
「『騎士は剣に誓いを』」
剣が一層輝く、バフが掛かりアルトリウスを強化する。
一瞬の停滞も許さず、一瞬の遅れも許さない。
己が最強だから? 違う。
誰かを救えないという後悔を、したく無いから。
騎士王は、そのために銀の流星となる。
「『騎士は誇りを胸に』」
ステータスが再度上昇する、もし周囲に仲間がいたなら彼らにもバフが発生していただろう。
あと100メートル、ソレを1秒程度で走り抜けアルトリウスは地面を蹴り上げる。
空を跳び、聖剣の魔力を発露させ、最強の一撃を放たんとする。
視界にはただ一匹の竜だけ、ソレを斃す事しか彼の思考にはない。
いや、他にも思考は巡っている。
だがソレもほぼ全てが、何かを救うことにのみ傾いていた。
弱きを救い、強きを挫く。
仲間と共に、切磋琢磨し巨悪を倒す。
「『エクス」
世界は喝采を上げる、世界は恋慕を向ける。
祝福に包まれた『最強』、規格外の異邦人。
「カリバー』」
さあ、瞠目しろ。
さあ、驚愕しろ。
そして、無理難題に咽び泣け。
これが、『不死王』黒狼の最大の敵。
『騎士王』アルトリウスの、実力だ。
*ーーー*
キャメロットの大進撃はまだまだ止まらない、むしろここからが彼らの実力だろう。
先ほどの一撃でヒュドラの表皮を焼き焦がし、そのまま追撃の姿勢に移ったアルトリウス。
彼に続くように他の八人の騎士も続く。
「トリスタン卿!! どれほどの距離からその『空撃ち』をできますか!?」
「落ち着いてください、サー・ギャラハッド。どちらにせよ、ここからでは届きません。それに私はDEXを高めている関係上STRやAGIが低い、狙撃ポイントを作成しなければーー」
「そうです、そうです!! 盾役の貴方が真っ先に行ってアルトリウス卿の補佐をしなければ!!」
「わかっています、わかっていますよ!! ただ、最悪を想定した場合トリスタン卿の補佐にまわなければそのままロストしてしまうかもしれないのですよ!? そこを心配するのは当然では無いですか!!」
大きく取り乱しながらも、非常に大きな盾を持つ男。
その横で糸目の男が弓を鳴らす、同時に糸の様なものが一瞬見えると空間が爆発し障害物として迫っていた瓦礫が細切れとなる。
少し後ろを走っていたドリルのような槍を持つ少女の騎士はソレを見て驚き、歓声を上げる。
「う、もう毒が蔓延しています。ここから先は厳しいでしょう、サー・ギャラハッド。あとは頼みます、私は遠距離から障害物をーー、いえソレではダメですね。どうしたものか……。」
「とりあえず、私は先に進んでおきますね!! トリスタン卿!! ギャラハッド卿!!」
「先に進んでて下さい、サー・ガレス。サー・ギャラハッドも、早く。ここで私の補佐をしていても戦果に影響がありません、モルガン殿の魔術が完成するまでは私はここで秘策の準備を行いますーー」
「ッ!! 了解しました、トリスタン卿。」
ご武運を、そう告げるトリスタンの言葉を背にうけ他二人は先に進む。
キャメロットの中の十三円卓、その中で唯一遠距離に特化しているトリスタンは顔を困らせつつ再度弓を鳴らす。
ポロロン、その音が鳴り直後五人の騎士が現れた。
「サー・ケイ、お気をつけを。この先からヒュドラの毒が蔓延しています、貴方たちならば問題はないでしょうがーー」
「忠告、感謝する。卿はここで待機かな?」
「そうなります、モルガン殿の魔術の完成を待つことになるでしょうーー」
「そうか、ソレでは仕方ない。」
それだけ告げると、ケイと呼ばれた騎士はそのまま進む。
ソレに連なるように、他の騎士も続いていった。
「残念だ、優秀な後衛がいなくなるのは。」
「そうも言ってられません、ケイ卿。あれは必要な選択です、気に止む必要はないかと。」
「そういう話ではない、サー・パーシヴァル。卿も単独で活躍することが多いから気づかんのだろうが、優秀な後衛職が一人抜けたというのは優秀な前衛職が一人抜けたのと同じ意味ではない。」
そう言うケイだが、速度は一切弛まず衰えない。
残念にこそ思っていても、切り替えは済んでいるようだ。
この集団、この五人の紹介をしよう。
まずはケイ、十三円卓の中で最も年長のプレイヤー。
堅実な攻めと、硬い守りを中心とした戦い方を基盤としており、前衛が多い円卓の騎士では珍しく様々な技能に長けている。
次にパーシヴァル、円卓の中では騎馬戦を最も得意としたプレイヤー。
メイン武器を聖槍とし、身長が190にも届かん巨体で槍を振り回す。
彼の騎馬と共にあれば古今無双の活躍を見せてくれる、単騎での戦闘力は4番手を誇るが単独での制圧力に関しては右手に出る者はいない。
次にボールス、円卓の中で最も無骨な騎士。
彼は指揮官としては能力不足だが、部隊を率いる存在としては非常に優秀だ。
単純な戦闘力では他の十三円卓に劣るところがあるものの、生還能力は高く危険が高いイベントにはほぼ必ずと言っていいほど呼ばれる。
そしてアグラウェイン、円卓の中で最も謎が多い騎士。
表立っての行動は少なく、明確に表で活躍することはほとんど存在しない。
だがDWOのPKからは最も恐れるべき騎士や、邪悪の騎士と呼ばれている。
他にラモラック、円卓の中で魔法を主とする騎士。
練度や能力は魔法特化型のプレイヤーに引けを取らない、モルガンですら彼女の実力は非凡ではないと太鼓判を押している。
その上で近接能力も他の騎士と引けを取らず、魔術を織り交ぜた近接戦は華やかさも素晴らしい。
「どうする? 毒の成分が……、不味い!!」
「アグラウェイン卿!? どうし、そうか!! 毒のブレス、ラモラック卿!! 防御を!!」
「少し待って!! 『敵意ある攻撃を阻害しろ【清浄なる隔壁】』!!」
一瞬遅れで、ブレスが訪れる。
爆音と共に猛毒が防御結界が大きく揺れる、ソレどころか罅すら入った。
だが、ブレスは一瞬で別の方向へ向く。
本来はアルトリウスに向けられていたものらしい、彼が移動したことでブレスも彼を追うように動いたのだ。
円卓の騎士、その五人は一先ず助かったことに安堵しそして他のプレイヤーが死んでいったことを残念に思う。
この毒の空気に耐えられる稀有なプレイヤー、その中でもブレスから逃げられなかったプレイヤーが数人死んだのを確認したのだ。
決して望ましい話ではない、戦力が減るのは当然総合的な弱体化となる。
だからこそ、少し顔を歪め残念そうにする。
ソレでも、足を止めるわけにはいかない。
むしろ、そうであるからこそ足を止めるわけにはいかない。
犠牲を減らすために、彼らは進まなければならない。
数十秒後、五人はすでに戦っている三人と合流し戦いを始める。
「みんな!? そうか、もう着いたのか。」
「一人で突っ走りすぎだ、サー・アルトリウス。」
ケイがそう告げ、そのままアルトリウスに続くように剣を握る。
そのまま一瞬空気が止まったような、短くも長い時間が流れケイはスキルを発動した。
「『騎士の誇り』」
特殊なスキル、スキルオーブでしか獲得できない騎士系スキルの中でも最も有用なスキル。
その効果は、純粋にヘイトの集中に防御力の上昇。
ヘイトの集中に関しては特に目を見張るものがある、Ⅻの難行ではレオトールという死神がいたからこそ十全に効果が発揮されなかったが今回は違う。
使い手はこの中でも上振れ、そして敵は一体。
そのヘイトを一挙にケイが集める。
「来るか? 来るだろうな。」
ニヤリと顔を歪める、ヒュドラは口の中で溜めていたブレスを思わずケイに向かって吐き出した。
莫大な量の毒のブレスがケイを襲う、だがソレでもケイは動かない。
その量のブレスがケイに直撃する直前、見事な連携でギャラハッドがブレスを防ぐ。
「流石、円卓随一の守護者だ。」
「危険な真似をッ!! しないで下さいッ!!!!」
ブレスを盾で防ぐギャラハッド、彼が持つ盾は円卓とも言われている。
守護において右に並ぶモノがない、最強の守護。
ケイはギャラハッドを信頼しているため測ったのだ、ヒュドラの攻撃がどれほどの物かを。
「触れれば絶死、大きな問題はない。ただソレでも恐ろしい、速度も中々だ。」
剣をそのままに、一気に横に滑りだす。
ヒュドラのブレスもそのまま追随する、紙一重で死にかねない。
もし、一瞬でも触れれば死ぬ。
ここで一人死ぬのは相当な損失となる。
本来は五十人以上を引き連れ戦うレイド戦、それを20名以下で行おうとしている異常事態。
一人の死が、決定的な敗北を招きかねない。
紙一重で襲いかかってくるブレスから上手く逃げながら、ケイはスキルを発動する。
全て、挑発系のスキルだ。
ヘイトのレベルは決して高くないが、ソレでも無意味であるはずがない。。
ただの一度も攻撃を与えられていないケイに、最大級のダメージを与えてくるアルトリウスを無視してブレスを浴びせ続ける。
「再生速度が速いぞ!! サー・ガウェイン!! 一気に攻撃を叩き込め!!」
「言われずともわかっています!! サー・ランスロット!!」
最優の騎士と太陽の騎士が言葉を交わし、聖剣を解放する。
互いの剣が、真紅と濃紺を描き光かがやく。
同時にアルトリウスも、聖剣を解放した。
ケイが惹きつけているうちに、キャメロットの他のメンバーがヘイトを買っているうちに。
最大最強の一撃を、叩き込む
モルガンは魔術を展開して、ヒュドラの首を固定した。
基本的に生物というのは首を破壊すれば死ぬ、ソレが摂理であるのだから。
モルガンが固定した首、漸く吐き終わったブレス。
ソレを黒狼が環境適応にて回収、キャメロットの面々が殺到できるように動く。
モードレットの攻撃手段はカウンター、だからこそここで加わるのは得策ではない。
故に、固定された首から離れヒュドラの右足を狙いに行く。
ケイはギャラハッドとパーシヴァルと共にヒュドラの口を狙う。
毒のブレスをはかれ動いて攻撃がそれれば、待つのは敗北のみ。
首を狙い、未だのたうつヒュドラの顎を攻撃し始めた。
ヒュドラの首、ソレを落とす。
その覚悟とともに、アルトリウスやガウェイン。
そしてランスロットの三人で剣を解放した。
全員が叫ぶように剣に魔力を回す。
そして、全員が一斉にヒュドラを攻撃した。
書くのむずい。
(以下定型文)
お読みいただきありがとうございます。
コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』 の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!
また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね
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