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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『ファーザー・ガスコンロ』

 はっきり言おう、黒狼は依然劣勢のままであると。

 あくまで黒狼は、数段先の領域にいるトッププレイヤーに手をかけられるようになっただけ。

 敗北が必至の状況から、勝ち筋と逆転の目を獲得しただけに過ぎない。


「『ストライク』」

「『受流』」


 万全に動けない体を酷使して、黒狼は何度も攻撃を弾く。

 黒狼の攻撃は最初の一度以外ヒットすらしていない、脳筋という名前のくせに間違いなくその超絶技巧は健在であるが故。

 焦りを微塵も隠さず、しかして丁寧に親父の攻撃を弾く黒狼はソレと同時に自分の新能力への理解を深める。

 まずは『刀術』、ステータスを見ればLv.10で獲得しているスキル。

 内包するパッシブ、アクティブスキルは『抜刀』『納刀』『残心』『居合』『受流』『袈裟斬り』『真向切り』『一文字切り』『逆袈裟斬り』『左袈裟斬り』『左一文字切り』『左逆袈裟斬り』『諸手突き』となる。

 その数、13と非常に多い。

 だがその全ては基本的動作、もしくはソレに準えられたものであり理解するのはそうそう難くない。

 また刀を進化に組み込んだ影響で自ずとLv.が10となっているのも黒狼に取っては酷く好都合だ。

 同時に『蟻刀:顎蟻』に目を通す、このスキルもその効果を推測するのはそこまで難しくない。

 『蟻刀:顎蟻』、ソレは黒狼と一体化したことによりスキルとかした特殊アーツだ。

 その効果は単純に、切りつけた部位への継続的な微小ダメージと回復阻害。

 傷が消えれば効果は続かなくなるらしいが、回復阻害があるのを考えれば相当なものだろう。


 次は少々特殊な『外骨甲冑』、強靭な骨が消え失せた直接的原因のスキル。

 その効果は黒狼の身に纏う骨の鎧の直接的強化である。

 このスキルはスケルトン系統の種族に共通するVITの低さ、および肉体の脆さを局所的に対処できるスキルだ。

 その効果はパッシブで外骨格となる甲冑を肉体の一部でありながらHPなどに寄与しない、つまり自己バフが通用するアイテムとして扱うこと。

 破損してもポーションや魔法、魔術で回復する上にこの骨の部分が壊されてもダメージが発生しない装甲となるのだ。

 またこのスキルにはアクティブ効果もある。

 そのアクティブ効果は、VIT値を10%上昇させるというもの。

 スケルトン族の脆さを鑑みても規格外のスキル、ソレが進化で手に入ったと考えればどれほど良い進化だったのかよくわかるだろう。


 また『骨子芯固』も強度に関連するスキルだ。

 このスキルはパッシブ効果しかないが、根本的な骨の硬さが底上げされるというもの。

 流石に神父のような圧倒的パワーを保有する存在の攻撃を受ければひとたまりもないが、STRが100程度の存在の攻撃ならば骨が折れることなく受けられるだろう。

 この二つは黒狼が思うスキルの中でも相当な恩恵をもたらすスキルだ、今までみたいに狙った攻撃で一撃死することが難しい程度の敵の攻撃力と自分のステータスがある以上そもそも受けが強くなり継続戦闘を続けられるのであれば何の問題もない。


 また『第一の太陽』はその実態を把握できない。

 当然のように文字が伏せ字になっているのだ、だがソレでもおおよその効果は推測できる。

 『第一の太陽』、何とも聞き覚えのある名前だ。

 何せ黒狼の(自分が死ぬという意味で)必殺技である『始まりの黒き太陽(ファースト・サン)』、その詠唱に入っている『第一の太陽ここに降臨せり』という文言。

 そこから推測できるのはあの魔術を発動する時に必ず発生する『深淵』スキル、その奥から行われるナニカの干渉。

 その存在の干渉が黒狼のスキルにも及んでいるのではないかと彼は推測した。

 だが、それだけではないはずだ。

 それだけの筈がない、他にもっと。

 根本的なナニカがある、そう思いながらもソレを検証している暇がない。


(クッソ、厄介極まりない!! モルガンからの連絡? このタイミングでだと!! 内容もヒュドラがレイドボスとして降臨しただと!! レイドボスコールが発生していないことからそこまで接近してないって予想できるが、ソレでもふざけんなよ!? ヒュドラってあの毒九頭竜(ヒュドラ)なら、ここで神父を早く倒さないと不味すぎる!!)


 黒狼は知っている、あの環境を作成する化け物を。

 Ⅻの難行、その中でも倒すことを前提として存在していない例外中の例外なボス。

 レオトールすら逃げることしかしなかったあのヒュドラ。

 ソレがレイドボス、つまり倒す敵として登場すれば……。

 ここで消耗してる暇などない、だがここを乗り切るには全てを出し切らなければならない。

 神父の大ぶりな攻撃、その合間を縫うように放たれた技巧の研鑽によって作られた素早い一撃を避けきれず受け止め背後に吹き飛ぶ。

 黄金の劇場、その中でもミ=ゴと違い大きな弱体化を受けていない神父。

 その厄介さと自分の弱さを噛み締め剣を握り直す。


 スキルの理解を進めなければ、その思いとともに深淵関連と思われる『ヨワリ・エエカトル』の説明を見る。

 そこに刻まれている説明文はそのほとんどが伏せ字であり見ることは叶わない、だが読める文字が少しだけあった。

 書かれている文字はただの一文、『対価は受け取っている故に望め願え我が名を唱えろ、一度だけ力を貸してやる』とだけ書かれていた。

 意味や意図は分からない、だが力を貸してくれるというのならば敵ではないだろう。

 であれば大一番で使うしかない。


「神は考える葦を見捨てない、ってことか? 笑わせてくれる。」

「神は肉体に宿るもの、己が鍛え信奉し邁進するからこその信仰です。」

「話は通じねぇくせに、ヤバい一撃をサラッと放ってくんのやめねぇか!? 俺の命が持たない!!」


 知ったことかと、そのまま続けて攻撃を放つ神父に怯えつつそのまま次のスキルに目を通す。

 絶対的なまでに今回および今後の主役級スキル『死生流転(しじょうるてん)』、その効果は語った通りなので省略する。

 おそらくは死の間際、というか死亡している存在の死亡という矛盾に等しい状況での進化。

 これによって得たスキルであると予想しているが、その効果もやはり規格外だ。

 アンデッドのみにしか使えないという欠陥を除けば再現性すらあるだろう、ある意味一番の規格外スキル。

 文字からもわかるとおり、死と生を流転させ死者であり生命力が肉体に宿らない存在の生死を生命力で判断するという運営の頭を疑うスキル。

 いや、運営というかクリエイターはAIなのでそんなもの関係ないのだが。

 欠陥は黒狼の最大弱点である光の克服が不可能な点、これは黒狼が光でダメージを受ける要因として『明確にする』や『明らかにする』という意味や属性。

 もしくはそういう解釈が可能な権能を光が持っている関係で、アンデッドが『死して生きる』という矛盾を明らかにするという性質が存在してしまっている。

 こればかりは肉体が関係ないので、『死生流転』でも防ぐことはできない。

 また他にこのスキルにはクールタイムが存在する。

 このゲームにはひどく珍しいクールタイムがあるスキル、クールタイムの時間は30分。

 これは死亡してもリセットされないタイプの、非常に厄介な物である。


 これにて全てのスキルの確認を終えた黒狼は、改めて神父を見た。

 背後では村正が神父へと攻撃を浴びせている姿も見えるが、やはり強靭な筋肉によって大きく阻まれている。

 とはいえ、その状況は黒狼よりマシだろう。

 神父の興味は全て黒狼に注がれている、故に村正の攻撃は碌に避けてすら居ない。

 精々が『白屍』などの特殊攻撃かつ、まともに受ければ大ダメージが確定する攻撃のみ避けるか弾くかしている程度だ。

 まさしく『脳筋神父』の諡に相応しいだけの姿である。


「だが、気圧されてる暇はねぇ。『外骨甲冑』!!  『逆袈裟斬り』!!」


 防御を固め、一気に接近すると同時にその服を切り裂く。

 スキルを乗せた一撃、防具としても成立するその服だが流石に村正制作の妖刀にプラスしてスキルを加えた一撃を防ぐことはできなかったようだ。

 腹筋まで届いた斬撃は、だが微々たるダメージしか与えらていない事を悟り苦渋に顔を顰める。

 

 一気に踏み込み、そのままの勢いでメイスを振る神父。

 黒狼は踏み込みの時点で急接近し、メイスの間合いの内側に潜り込んでいた。

 頭を剛腕が掠めながら、次に襲いかかってくるメイスの柄を見る。

 一瞬の思考の隙もなく、即座に飛び退く黒狼。

 防げないと判断した黒狼の思考は正しくそのままに劇場の端まで吹き飛ばされた。

 歯を噛み締め、だが飛び退いたことで衝撃を軽減できたと安堵下も束の間。

 神父は光の玉を作成すると、バッティングの要領で黒狼に打ち付けてきた。


「脳筋がァァアアア!!!」


 即座に立ち上がり、そのまま走り始める。

 光属性でも即時復活は叶うが、『死生流転』の効果がきれクールタイムが発生してしまう。

 爆速かつ連続で飛んでくる光の玉を必死で避けながら、黒狼も負けじと『ダークバレッド』で対抗する。

 移動しながら行う魔術合戦、否そんな言葉で収めるわけにはいかない。

 無秩序に周囲に作成し、黒狼に向かってそれを打ち出す神父。

 これを魔術合戦というのであれば、ロッソやモルガンがブチ切れるだろう。

 

「クソッタレめ!! ソレが神父のやる事かよ!!」

「まだまだ速度を上げますよ? この程度で死なないで欲しいものですね?」

「儂が魔術を蹴散らす!! 手前は首を狙え!!」

「OK、了解!! 頼んだぞ!!」


 黒狼が叫び、村正が光の玉の乱舞を食い止めると同時に突貫する。

 展開された光の玉、それを一気に切り裂き糸を用いたアーツで神父の動きを一瞬食い止めた。

 直後、黒狼が刀でスキルを使った全力の突きを行い一気に神父を貫き弾き飛ばす。

 大きく体勢が崩れた神父。

 二、三歩後退しながらもまだメイスを抱えている。

 未だ健在、刀が刺さったというのにどれほどタフなのかと呆れ。

 だがそのタフさの底が見え始めたと黒狼は笑う、先ほどまでの攻撃では微塵も意に介さなかった黒狼の攻撃で後退したのだから。

 おそらくはスタミナが少ないのだろう、下手をすれば村正程度かもしれない。

 それなのに190に迫る巨体であれだけの重量のメイスを振るえばスタミナが消えるのは、まさしく必然の理でしかないのだ。


「スタミナ切れか? 脳筋め!!」

「その程度で動けなくなる程度では……、ありませんよ!!」


 一気に踊りかかった黒狼。

 刀を逆手に、両手でもち突き刺そうとする。

 だがそれを一瞬遅れで弾き、そのまま地面を踏み鳴らした。

 地震のように地面が脈動する、黒狼は恐れ慄いた。

 未だこんな余力があるなど聞いていない、予想できない。

 だが、そんな泣き言は吐く訳にはいかない。

 

「まぁぁぁああああああ、けぇぇぇぇええええ、るぅぅぅううううう、かぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」


 叫びながら、接近しそのまま刀を振るう。

 最大の一撃を見舞うなら、このスタミナが尽きているタイミングのみ。

 使える手段は全て使う、その意思のままに黒狼は無我夢中で神父を切りつけた。

 最初は筋肉に阻まれ碌に通用しなかった攻撃が、一気に加速的に神父に通用する。

 微々たる量のダメージだった筈なのに、黒狼の気迫に応えるようにダメージは加速的に増す。

 同時に特殊アーツも発動した、切りつけていた傷口は回復せず一気に鮮血が溢れ出る。


 だが、それでも。

 神父はまだ生きている。


 どれほど切りつけられようと、どれほど厳しい戦いを経ようと。

 神父の筋肉への信奉は止まることを知らない。

 目の前の男は、筋肉なき身で筋肉の権化である己を超えんとしている。

 その事実だけで神父は戦えるのだ、今の自分を超える意味があるのだ。

 もはや、難敵(とも)に遠慮は不要。

 己が最強のスキルを発動するのみ。

 全身に力を込め、昂り荒ぶる魂をそのままに興奮を隠さず一つのスキルを発動する。


「『筋肉こそは宇宙なり(マッスルギャラクシー)』」


 その言葉を聞いた時、そこで戦っていた三人の脳内は宇宙で包まれる。

 ネロ、黒狼、、村正の三人は一瞬動きを止める

 その声に驚いたのではない、もっと単純に神父の上着が裂けたからであった。


 上着が裂け、筋肉の塊が露出する。

 肩にちっさいトラックでも乗せているのか、そうとしか例えようのない筋肉の塊を見せつけつつ真っ赤に上気した体を露わにして神父は叫びをあげた。

 怒号が響く、神父の声が響き渡る。

 そして、メイスを軽く振り回すと神父は地面を蹴った。

 土煙が上がる、爆発音と共に黒狼を振り切り村正の元へと接近する。

 口から蒸気がこぼれ落ち、目は白目を剥く。

 

「『身っ、変わり』!!!!!!」


 忍術、その中でも最も回避に向いたスキルで緊急的に離脱する。

 その瞬間、身代わりとなったインベントリにしまっていたアイテムである丸太が粉砕され木片が飛び散った。

 おおよそ現実とは思えない、架空の話にしか思えない現象が目の前で起こり村正は顔を歪める。

 スキルもアーツも用いないただの殴り、それでこんな現象が起きるはずがない。

 そんな言葉が喉まで痞え、だが現実であると考え直し刀を構える。

 狂戦士、などでは生ぬるい。

 そんな在り来たりな言葉で例えるのならば、この男に失礼だ。

 そう例えるならば、血に乾いた獣、絶望と形容する狂気、災厄そのもの。

 生半可な心持ちではその精神を叩き潰される、そんな思いと共に黒狼は虚の目を見開く。

 ここを乗り越えなければ未来はない、だがここを超えられる未来は見えない。

 進化をしてもなお、届かないのか? 絶望の象徴はやはり倒せないのか?


 まさか、そんなわけがない。

 可能性がどれだけ低くとも、倒せない敵など存在しない。


 少なくとも、ここが現実に限りなく近しい限り。

 この世界に奇跡は満ち溢れ、勝利の女神はその顔を歪めるに決まっている。

 黒狼は理性を保ち、神父(難敵)はそれを捨てた。

 なれば勝利の女神はどちらに微笑むか? そんなもの決まりきっている。


 襲いかかる獣、それを正眼に受け止め黒狼は刀を握り込む。

 狙うは一瞬、求むは絶死。

 掛けたチップに、勝利を願う。


「勝つのは、俺だ。」


 神父のメイスが振り下ろされる直前、その圧倒的な暴風が黒狼を襲う直前。

 黒狼はその体躯を一瞬にして動かし、神父の心の臓目掛け剣を突き立てた。

まぁ私、某死にゲーをやったことはないんですけど。

リメイク版とか出たらやりたいんですが……、やりたいんですよねぇ。


あと『筋肉こそは宇宙なり』に関してですが、こんな雑に処理されてますが結構やばい効果をしています。

その効果を解説すると、基本的にステータスには肉体の筋肉量はあんまり関わらないんですよね。

ですけどその筋肉量が一定を超えた場合、筋肉系のスキルを獲得するんですが。

その中でもえげつない筋肉量をした人間に贈られるスキルが『筋肉こそは宇宙なり』です。

そのパッシブ効果はステータスに反映されていない分の筋肉をSTRとして反映するものであり、アクティブ効果は全身の筋肉を活性化させてバカみたいな力を振るうようにすることです。

デメリットは筋肉細胞の過度な断裂ですね、つまり酷い筋肉痛です。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお凄い、力(筋肉)の入り方が違う。 [一言] 全ての作品と更新に感謝を込めて、この話数分を既読しました、ご縁がありましたらまた会いましょう。(意訳◇更新ありがとな、また読みに来たぜ、じゃ…
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