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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『混沌』

 さて、ここからの展開を説明するためにはいくつかの事前説明が必要となる。

 その説明を行うために、少しイベントの詳細を語ろう。


 イベント名、『チキチキ!! 森林海洋お宝探し!!』

 このイベントの本当の目的は、他種族プレイヤーと手を組み合い広大なイベントマップ。

 もとい、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で様々なアイテムを探すと言うもの。

 そのため原則プレイヤーは島の中央に存在する草原にスポーンするがそれ以降は自由にどんな場所でも探索でき、アップ上に存在するアイテムを取得するのが運営の意図でありプレイヤーに伝えられた認識だった。

 黒狼はそもそもそんな文章を読んでいないので知る由もない話だったが……。


 そして、このイベントには他にも続きがある。

 このイベントでは特殊な魔石がモンスターからドロップすることがあり、それは公式でイベントオーブと称されている。

 そのイベントオーブを入手しただけでは意味はないが、そのオーブを特定の手段を用いて加工し武器に付与するとこのマップ内に存在するモンスターに対して従来の武器よりもはるかに高い攻撃力を発揮する。

 だが、同時に欠陥もありその武器を用いれば剣の耐久性が大きく減ることも確認されていた。

 つまりイベント内限定武器となる代わりに、普通の戦闘よりも楽に戦えると言うことだ。

 

 イベントで資源を多く採集し、その中から選りすぐりのアイテムを持ち帰って戦力増強に繋げる。

 プレイヤーだけの空間でプレイヤー全体の一体感を高め、より横の繋がりを強固にしていく。

 これがイベントの目的だった。


 だが、この目的は半ば達成されながら半ば崩れ去っている。

 運営の誤算は3つ。

 一つ目は血盟(クラン)『キャメロット』の存在。

 このゲームにおける選りすぐりの最前線クラン、彼らはあまりにも強すぎた。

 一日目で近隣の安全を確保し、モルガンを主力とした魔術師の軍団で一瞬にして都市を作成。

 そのまま先頭を得意とするメンバーは林中の敵を殲滅しながらマップを作成し、黒狼たちの次にミ=ゴの拠点を発見した。

 彼らの半数が戦闘前のイベントで死亡したエキドナ戦でも、遅れてやってきたにも関わらず『騎士王』アルトリウスが黒狼を凌ぐ活躍をしたことをみればそれも明らかだろう。

 二つ目は『魔獣母胎(エキドナ)』、本来アレはここで登場する存在などではなかった。

 アレはこの大地に訪れていたミ=ゴという異星の侵略者がとある生物をベースに作成した、彼らがステータスシステムに適応する為の母体だ。

 運営はあの化け物が未完成であると誤解し、レイドボスになり得ないと判断したためにこのイベントの障害となると予想していなかった。

 そして、三つ目。

 運営はDWOの中でも最も特異な生き方をしている黒狼の存在を知らない。

 彼がどのように生き、どのような経緯を辿り、どのようにしてこのイベントにいるのかを知らない。

 それが、運営にとって最大の誤算となる。


*ーーー*


「さて、モルガン。申開きはあるか?」

「ねえ? 殴っていいわよね? こいつ、あんなリーダー顔して計画を碌に組んでいないとか私キレてもいいわよね?」

「落ち着け、ロッソ。手前の言い分はわかるが、何かしらの思惑があるかも知れねぇ。」

「私の能力があれば万全な計画など不要です、目的と手段となるものさえあれば存分に対応できるでしょう?」


 何を言っているのか? というように冷ややかに見下すモルガンを目の前にして黒狼はため息を吐く。

 そして、これは筋金入りだというように天を仰ぎそのまま今にも殴り掛からんとしているロッソを村正とともに止める。

 元々無計画な感じがあったが、ここで彼女が完全に無計画なことが判明したのだ。

 全く、酷い話だろう。


「ドウドウ、落ち着けロッソ。はい、深呼吸〜。息を吸ってー、吐いてー。」

「ひっひっふー、ひっひっふー。」

「其奴はちと違うんじゃねぇか?」

「子宝は至宝なのだぞ!!」


 かなりズレた事を言い、黒狼たちを戸惑わせるネロ。

 だが、この数日間の付き合いで対して意味がないという事を悟った二人はそのまま無視を決め込む。


「全くどういう話なのよ!? 計画の全貌が子供の語る未来図程度のものじゃない!? 良くそんなので一人でキャメロットに潜入して欲しい情報を引き出せたわね!?」

「私に問題があるはずがないでしょう? 当然です、私は天才ですので。」

「この性格が最大の問題じゃないか?」

「言っても無駄だろ? そんなことより、イベント終了までこっち換算で凡そ20時間だぞ? こんな降らない言い争いをしてる暇はあんのかねぇ?」


 村正の言葉に、全員が動きを止める。

 確かに言い争いをしている暇はないかも知れない。

 イベント最終日、大規模クランの重鎮に限らず全てのプレイヤーが忙しく八面六臂の活躍を求められる。

 こんな零細クランにキャメロットの重鎮であるはずの彼女がこれるのも、他者の目が大きく減ると言った側面がある為だ。


「とりあえず封印されてるっぽいナンカの回収は必須だろ? あと個人的に、ネロを捕まえた料理人にお礼参りをしたい。」

「同意、だな。特にネロにやったあの行いには腑が煮え繰り返ってんだ、そこはきっちりと同じだけの苦痛を味わわせてやりてぇな。」

「武器に関しては私とモルガンで大丈夫そうよね? いえ、大丈夫じゃなかったわ。一発殴らせなさい?」

「どうぞ? 殴れるものでしたら。『ダークシールド』」


 背後で諍いを起こす二人を無視し、黒狼はネロを背負う。

 ネロは不思議な顔のまま、黒狼に背負われるがそのまま言葉を紡ぐ。


「なぜ余を背負うのだ? 報復に意味はなかろう? 余は寛大であるがゆえな!! あの程度ならば許してやろう!!」

「報復じゃない、身勝手で好き勝手な復讐だ。いや、復讐でもないな。道楽と享楽が混じった遊びだよ、意味や理由なんか求めんな。自由を好き勝手にしてるだけなのだから。」

「強いていうなら、こんな少女……? まぁ、人間を生きたままケーキにするっていう行為に腹が立つだけだ。儂はそれを許容するほど悪人じゃねぇ。」

「つまり遊びであるな!! 仕方ない、余は寛大であるが故にその遊びを許してやろう!! ついでに参加させてくれても良いんだぞ?」


 その言葉に対して、笑いながらお前が主役だと突っ込む二人。

 こちらは背後の魔女二人より断然仲が良さそうだ。

 三人は魔女どもを放置して仮の拠点から出る、いまだ月光が煌めく丑三時。

 世界は暗黒と言う名のヴェールに包まれている。

 だが喧騒はいまだ続き、時には怒号すら飛び交っていた。

 その夜街を歩く三人。


「出店もポーションや武器の系統が多いな、こりゃ探すのに一苦労しそう。」

「苦労も糞も減ったくれもねぇだろ、大体の居場所は割れてやがる。じゃねぇのか? 黒狼。」

「うぉい!? なぜバレた!?」

「やっぱりか、昨日の素材の減少量を見てりゃわかるさ。いつもは阿呆みたいに納品してくる量が昨日は程々だった、どうせ化け狐に化かされたんだろ?」


 呆れ半分で言われた黒狼は、そのまま頭を掻き顔を逸らす。

 二度も言わなくて良いとは思うが、黒狼はたまたま出会った陽炎と交渉をしてすでに『マッシャー料理人』の居場所を突き止めていたのだ。

 ぶっちゃけ、本人の功績でも何でもなくただの棚ぼたでしか無い事実があるしかなり素材をボラれているので損利で言えば損が近い。


「と言うわけどここら辺にいることが多いらしい、と言うわけで全力で商売の邪魔をしてやろうZE!!」

「人間性終わってんな、見つかったら手配者だぞ?」

「人間性終わってんのはこのクランのお前を除いた全員だろ? 笑わせんな。」

「儂も手前らと大差ねぇよ、ただ取り繕えるだけ……。嗚呼、確かにそう言う意味ならそうだわな。」


 そうボヤきつつ、三人は適当な露天でポーションを買う。

 ポーション、と言うよりは火炎瓶だが攻撃性が高ければ火炎瓶であろうとRPGであろうと鍋であろうと関係はない。

 黒狼は火力イズ、ジャスティスのアメリカンな精神で戦う戦士なのだ。

 この作品でもヘリは毎度落ちて、最強武器は無限ロケランになるのだろうか?


「で、どこに向かってんだ?」

「拠点に一直線、住んでるかは知らないけどお前の魔術ならトラップ型の嫌がらせは強いだろ?」

「他力本願か? 嫌われるぞ?」

「信頼ってやつだ、よく言えばな?」


 黒狼の性格を正しく理解し始めている村正は、やれやれと肩をすくめつつ可能である事を告げる。

 その回答に満面の笑みを向けた黒狼は、そのまま火炎瓶の用意を始めた。


「仕組みは単純に発火、できれば隔離も入れて欲しいな。」

「どっちも容易いな、店への打撃と逃亡の禁止か。」

「いや、自分の成果物が燃える様を直に見せたかっただけだけど?」

「手前最悪だな? 割と本気で。」


 全力のサイコパス発言をする黒狼に、全力で引く村正。

 とはいえ、それだけのフラストレーションが溜まっているのかも知れない。

 十中八九、ただの気まぐれとはいえそう言うことにしておこうと勝手に思った村正は表情を引き締める。

 黒狼がとある建築物の前で止まったからだ。


「ここだな、仕掛け切るまでに何分かかる?」

「40秒で支度してやらぁ」

「十分だ、俺は家の中にいるのかを確認……。話を聞かずに結界を仕掛けに行ったな、アイツ……。」

「余に仕事はあるのか? 無い? 酷いではないか!! 余も動きたかった!!」


 無駄にうるさいネロをハイハイと言い受け流し、黒狼は中に人がいないか息を潜めて観察する。

 とは言え、数秒も経てば中で調理を行う音が聞こえてきたためいることは確信できたが。


「うん、いいね。最高だ、悪くない。」

「中に人がいるのは確認できたわけだな? その様子じゃ。」

「本人かは不明だけど。」

「いや、十中八九本人だろう。店舗のマークが彼奴の物だったし、それに……。」


 村正が何か言い切る前に、急に窓が開いてゴーレムが現れる。

 姿勢を低くし、そのゴーレムの視界から逃れる。

 ナイフが飛んで来たら溜まったものではない。


「アレおかしいですね、人がいると思ったのでしたが。」

「(ヒィィィ、スリル満点だなぁ!!)」

「(興奮するな、見つかったらどうする!?)」

「(別に見つかっても問題はなく無いか? 奇襲は困るけど。)」


 窓の下でコソコソと話す二人。

 気分はまさしくミッションインポッシブル、内容はまさしく不法侵入テロ野郎。

 どちらにせよ、違法行為でしかない。

 

「(どうする? 奇襲を仕掛ける?)」

「(どれも悪かねぇな、早速仕掛けるか?)」

「(そうと決まれば、な!!)」


 と言うわけで、勢いよく骨の姿で姿を見せる黒狼。

 正面には無駄に大きなゴーレムと、まさに料理人と言える姿をしているプレイヤーがいた。

 現れた黒狼が全力で脅かそうと、おおよそ人間の言語では無い言葉を発したがどうにもこのプレイヤーは驚いてすらいない様子だ。


「……、『言霊』『成立しやがれ、四方結界刃』」

「無言に耐えかねて結界を成立させたのにはムカつくけどまぁいいさ、お前が『クラッシャー料理人』だな?」

「……そうですが、何のようですか? あいにくと個別依頼は承っていませんが?」

「個別依頼? なら依頼してやろうか。お前の命を素材として寄越せ、ってなあ!!」


 直後、黒狼が火炎瓶をばら撒き店を燃やす。

 咄嗟にクラッシャー料理人が慌てて水魔法を発生させるが、そこに村正の刀が飛んできて魔術を妨害した。


「お礼参りってわけだ、気に食わんので死んでくれや?」

「ますます不可解……、その後ろの女性? まさか!! ネロですか!! 鴨葱ですね!? わかります!! ありがとうございます!!」

「『ダークシールド』、何コイツこわぁ」


 早速狂気が混じっている彼女を見ながら、黒狼はそのまま剣を振る。

 剣に力を込め、一気に振り抜かれた錬金金属の剣。

 それは弱いながらにも明確に彼女の首を狙い……。


「防御、開始。」

「——————」

「まじか、思った以上に戦闘慣れしてそう。」

「『白屍』、助力だ。手ぇ、抜くなよ?」


 ゴーレムが防いだ。

 鈍重に見えて俊敏なその動き、侮れるものでないと認識し直した黒狼は即座に距離を取る。

 前回は対面での戦いではなかった、前回は直接対面などはせず遠隔でモンスターと戦っただけ。

 だがそこでもレベルの高さを、何より戦闘経験の豊富さを思わせるその練度。

 同じテイム系職業を持っている黒狼も、その動きを参考にしつつ目の前の敵の対応に頭を動かす。


「『スラッシュ』!! ゴーレムだし硬いな、無視したい。」

「ちっ、本体も弱いわけじゃねぇか。」

「舐められてますね、そう言うことですか。復讐ですね、良いでしょう。」

「復讐? 違うね、道楽だ!! 復讐なんぞと同じにしてもらったら困るね!! ハァ!!」


 思いっきり煽り倒す黒狼、そのくせ本人は復讐を題したスキルを常用するのだからタチが悪い。

 まさしく無駄、自由を語る理不尽の権化。

 

「道楽で人を襲うなんて酷く無いですか?」

「誰がどの口で言ってるんだよ!?」

「まぁ、襲いかかったのですから美味しく調理しますけど。」

「調理されるのは手前だ!!」


 そのまま店内にも連れ込み戦闘になる。

 一番周囲への被害がひどいのは村正だ、村正が振るう刀『白屍』の効果で生鮮食品は全て白い灰へ変換され建物の基礎が崩されていく。

 次に黒狼、闇属性の魔術を用いて次々とゴーレムを翻弄し、嫌がらせの限りを行っているのだ。


「あ、ああ!! レア食材が次々と!! こんな事をして良いと思っているのですか!? 食材に感謝と言う心はないのですか!?」

「無くは無いけど、所詮ゲームなんだよヴァァァァアアアアカ!!」

「うぜぇ、手前……。最悪だな、人間性が‘。」

「正当な報復ですぅ〜!!」


 味方にも喧嘩を売らんばかりの勢いで黒狼は煽り倒しながら店内のオブジェクトもついでに破壊していく。

 結構な趣味の良さで整えられた店内は一瞬のうちに地獄絵図となり、マッシャー料理人の顔がどんどん青くなって言っている。

 それもそうだ、用意されてる調度品は決して安くないのだから……。


「恨むのなら俺の目についた事を恨むんだな、ヒャッハー!! ゲラゲラゲラゲラ!!!」

「最悪ーーーーー!!」


 混沌が生まれた。

人間のクズだな、黒狼。

軽蔑しました(by作者)


あと、サブタイトルについている「Deviance World Online ストーリー⚪︎」の部分ですが消すにしても着けたままにするにしてもそこそこ悩んだのでとりあえず一章中編が完全に終わるまでは着けたままにします。

時々Twitter(X)で言っていたとは思うのですが一章中編が終わったらフラグとか設定を再度見直す関係もあり全部推敲する予定があるので……。

読みずらいと思っている方には大変申し訳ありませんが、一度このままで続行するつもりです。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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