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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『前夜』

 ロッソが工房を簡易的に展開したその時、黒狼も黒狼で予々考えていたことを実行しようとしていた。

 その策とは、一言で言えば最強の再現。

 即ち、レオトールの模倣である。


(何も難しい話はない、むしろ酷く簡単だ。レオトールは物理特化型の化け物、あいつが行使する魔術は外部のアイテムに依存していた。つまり、あの強さは再現性があるということ!! 少し言いすぎたな、うん。再現できねぇよ、時速数百キロを通常の移動速度にしておきながらスタミナ切れが発生しない化け物のどこに再現性があるんだ? 何なんだよあの化け物……、まぁ親友だけどさ。)


 其処まで考え、前方から飛んでくる蟻を避ける。

 羽が生えた個体が散見され、超高速での突進攻撃が行われているこの現状。

 気合いで避けゲーをしている黒狼だったが、本人のAGIは決して高くない。

 

(さて、あの化け物ことレオトールに近づく方法だけど本格的にどうしようか? 基本的に俺は魔術でのアプローチが最善だとは思うけど……、やっぱりあの『極剣一閃(グラム)』は再現したいよなぁ。剣に魔力を流すだけででいるものではなさそうだし……、どういう理屈なのかは結構気になる。エフェクトにダメージ判定が発生させる方法……、待て? 深く考える必要はないんじゃないか? こういうのはノリと勢いで……。)


 錬金金属の剣を投げつけつつ、黒い剣を片手で掴む。

 イメージするのは、常に最強のアイツ。

 あまりにも圧倒的な武力、人智を逸したと過言でもないその強さ。

 ソレの、模倣。


極限一閃(擬)(グラム)


 イメージしろ、イメージするんだ。

 その様に自分に言い聞かせ、そして黒い剣が一瞬。

 氷の様に溶けるイメージをする。

 それだけで剣の表面に黒い水滴の様な、黒い霧の様なものが発生しその勢いのままに蟻に飛んでいった。

 そのままに、そのエフェクト。

 もしくは闇は蟻に衝突し、ダメージを発生させる。


「……、結果を見れば失敗か? こりゃ。」


 だがその結果は黒狼にとって、最強足りうる初手ではなかった。

 

 何故か?

 完璧な模倣ではないから? 違う。

 ダメージが低いから? 違う。


 もっと根本的で、単純な問題。


「剣が使え無くなるのは、流石に想定外にも程がある。」


 そう、エフェクト。

 いや、先ほど放った闇の分だけ剣の体積が削れていたのだ。

 確かに考えれば分かる話、この攻撃は闇の剣を削って放った攻撃だ。

 当然、その分だけ体積が削れるのは至極当然当たり前の話だろう。

 再度詠唱しつつ、蟻に接近し剣を引き抜いた黒狼はそのままその1匹を倒すと途方に暮れる。

 最強の模倣とはそう簡単にはいかないらしい。

 最も多用した技の模倣ですらコレなのだ、彼が魅せてきた数々の技能の再現には一体どれほど時間がかかるのだろう?


「マジでアレが化け物じみてるのがよく分かる。」


 はぁ、と息を吐く。

 蟻の硬さはマチマチ、Ⅻの難行に出てきた大体の化け物より弱い。

 そもそも急所に攻撃を当てずに倒せる時点で弱い、弱すぎるのだ。

 ならば、黒狼たちが苦戦するその横でバターの様にソレを切り裂いたレオトールは一体どれほどの化け物なのか? 考えられないし、考えたくもない。


(真面目に考えてアイツのスキルレベルとかどうなってんだよ、俺も結構上がってきてるつもりだけど背中すら見えねぇし。)


 五里霧中、その中を突き進んでいる錯覚に襲われつつ慣れ始めた処理を軽く行う。

 戦い方や動きは常に変えている、型にハマった戦い方は今の黒狼に相応しくない。

 

「『理を紐解く、その形容は影の剣』『動きたまえ、我が意のままに【舞い踊る黒剣】』」


 もう一本黒い剣を出し、魔力の残量を確認しながらため息を吐く。

 維持にはさして魔力を要求されないのは利点だが、リス地が近ければ使うことなどないだろう。

 ぶっちゃけ、『ファースト・サン』の方が死亡という利点のみで使い易い。

 切れ味は錬金金属の剣より高い黒い剣を、自由自在に操作しつつ『ファースト・サン』の使い道を考える。

 熱の発露、ただソレをだけを発生させる魔術だったはずだがいつの間にか擬似太陽を作成していたあの魔術。

 黒狼にとっての使い道は上々だが、まぁ碌なモノでは無い。

 そもそもあんなモノ、まともに使えば味方ごと巻き込むただの自爆テロだ。

 当然、方向こそ定められても威力や微調整ができない『エクスカリバー・アコーロン』もさして大差はない。

 

「まともな攻撃手段がいい加減欲しいなぁ、真面目に。」


 軽口を叩きつつ、黒い剣を操作し次々に撃破していく。

 勿論、解体スキルを使用することも忘れない。

 

「村正、一応聞くけど其方はどう?」

「どうもこうもあるか、見ての通り苦戦も苦戦だ。」

「だよなぁ……、どうすっか。」


 黒狼はそう言いつつ悩み、だが根本的な処理速度が上がらないことではどう足掻いても無理だという結論に辿り着く。

 そして幾ばくか悩んだ後に黒狼は三人に告げた。



「ある程度倒したら逃げるべきだと思うぜー? 勝てないし!!」

「所詮ボスと思って舐めてたけどこれは確かにそうね? 数が多すぎたわ……!!」

「ソレでもいいが、最低限の素材は回収しやがれ!!」


 黒狼の言葉に賛同する二人、いい加減数が多すぎて対処できなくなってきたのは黒狼だけでは無いらしい。

 最初から結構な苦戦をしていた村正を筆頭とし、他二人も撤退する準備を行う。

 

 だが、そのせいで攻撃の手が緩んだのは問題だった。


 一瞬にして蟻が盛り返してくる。

 蟻がこの状況を読んでいたかと思わせるほどの劣勢具合、三人が三人ともその数に押され始めた。

 ロッソは魔術を発動しながらポーションの作成も並行していたため、MP切れなどもまだまだ無いが黒狼はそうもいかない。

 黒狼の魔力の値は309、プレイヤーとしてその値は決して低くなどない。

 だが、回復を考慮せず好き勝手に使えば結局そこまで大量でも無いのだ。

 特に黒狼は常にダークシールドを展開しなければならない。

 その消費込みで考えた場合、長期戦闘で十分に使える値は200程度まで減少する。

 MPが目減りしていく中、撤退までも考えた場合少し足りないという結論を弾き出した黒狼は仕方ないとばかりにHP回復ポーションを取り出す。

 

「とりあえず、まずは死体をゲットしないとな!!」


 そう言って襲いかかってくる蟻に対処しつつ、適当な敵を切り裂きながら突破できそうな箇所を探す。

 数が増え、押されているとは言ったが背後にまで回り込まれた訳では無い。

 上手く動けば十分逃げ切れるだろう。

 死体をインベントリに仕舞いそのまま、全力で森の中に走る黒狼。

 その黒狼に釣られ、10匹以上の蟻も動く。

 

「おっきく動いたわね!? 悪化したらどうするつもりなのよ!!」

「後で説教しなきゃなぁ!! もう少し周りを気遣え!!」


 黒狼の奔放さに協力プレイとしてどうなんだ? と疑問を呈する二人だが、何も考えなくこうした訳では無い。

 蟻を引き連れ黒狼が森に消えて数十秒後、今度は村正のところに黒狼が登場したのだ。

 しかも蟻を引き連れずに。


「なんできやがった!? 蟻はどうした?」

「倒したに決まってんだろ? あの程度……、って馬鹿にはできないけど数こそ多いけど森で高低差があるなら簡単に倒せるさ。」

「逃げた訳じゃねぇのか、ならいい!! 儂もその手で一旦逃れるべきだな?」

「私はまだ増えても問題ないわ!! というか、そういう目的なら最初に言いなさい!! 嫌われるわよ!!」


 口調こそ強いが優しく諭したロッソに謝りつつ、村正にも謝罪するとそのまま一旦逃げることに専念する。

 さっきは一人、今度は二人という差はあれど難易度は大きく上がらない。

 あっさり森の中に消え、ついてきた蟻を処理した二人は最後にロッソの元へと向かい黒狼はネロを背負いつつ蟻塚から一気に離れた。


*ーーー*


「予想外に手に入れたなぁ? これならついでに程々の物は作れそうだ。」

「程々? 結構あるように見えるけどソレでも程々しか作れないのか……。」

「何だ? 文句があるっていうのか?」

「いや、文句っていうほどでも無いけど。ただ軽く見ても20はあるぞ?」


 そう言って広がってる死体を指差す。

 確かにそこには山のように蟻の死体が転がっており、ロッソが解体作業に勤しんでいる。


「ぴゃぁぁあ〜!! 蟻酸が大量だわ!! 鉄との分離で使えそう!! メッキ方面でも流用できるかしら!? 最高〜!!」

「……20程度じゃぁ所詮だ、手前が思う以上に鍛治ってもんは難儀なんだよ。」

「……、そうか。うーん、レベルももう少し足りないから狩って来る代わりに上等なヤツ作れない?」

「流石に金取るぞ?」


 割とガチ目に睨まれてタジタジになる黒狼。

 とは言え、その目もすぐ緩んだので冗談の類では無いにしろ言いたい気持ちは理解できたらしい。


「まぁ、男に二言はねぇ。作るからにゃぁ、手は抜かんさ。とは言え、時間は掛かる。凡そ三日ってところか?」

「イベント最終日手前ぐらいにならないか? 今からなら。」

「んにゃぁ、そうなるな。」

「じゃ、俺は他に……。待てよ?」


 黒狼がそう呟き、何か忘れているような錯覚に襲われる。

 例えるならば、一番最初に敢えて建てていなかったフラグを忘れているかのような……。

 そんな錯覚。


「……、忘れてるもんってあったか? 儂も記憶にねぇが……。」

「なんか……、頭の中に封印とかいう言葉がちらつくんだが……? なんかあったような……、無かったような……? おーい、ロッソ!!」

「ふひっ、ふひひひ……。って、見た!? 見てない? 見てないわよね? そう言いなさい!! で、何の話? あー、なんか忘れてる事がある……? アレじゃない、封印のやつ?」


 ロッソが何がなく告げた言葉、ソレで全部思い出したのか黒狼がソレだ!! と叫ぶ。

 そして早速取りに行こうと叫ぶ黒狼を諌めるように村正が木の棒でその頭を殴った。

 地面を転がり痛がる黒狼、半目で若干睨みつつ文句を告げる。

 だが、続く村正の言葉に納得しないわけには行かないのかそのお喋りも一旦止まった。


「モルガンが居なけりゃどうやって取り出す? 魔力の揺らぎとやらは儂にも見えんぞ?」

「あー、うん。一応俺が見えるけど……。確かに取り出し方はわからないな。」

「多分私はできるわよ? けど問題は……、魔力が足りない感じかしら? 多分だけどあの魔女は適正量以上の魔力を注ぎ込んで隠れている場所に綻びを作ろうとしたんでしょうし?」


 ロッソがそう言い、黒狼が残念そうに首を振る。

 魔力が足りない、つまりステータス不足であるという事。

 

「少なくとも一朝一夕でどうにかなる話じゃなさそうだし、おとなしくモルガン……、ヴィヴィアンが暇になるまで待つか。ナニ、最終日まで時間はあるしな?」

「ソレが一番、って言いたいところね、これからどうする? 自由行動でいいなら私はポーションを売り捌きたいのだけれど? 手伝ってくれればバイト代ぐらいは渡すわ。」

「儂も素材を早速、鍛えたい所だ。早めに感覚を掴んでおけば後が楽だろう? 手前にも簡単に素材を提供できやがる。」

「とりあえず、落ち合う拠点を探さないか? じゃないと再集合とか面倒だしさ。」


 黒狼の発言に、納得した二人は寝てるネロを連れて街へと向かう。

 復興中の町、活気は下手をすれば壊れる前よりもあるかもしれない。

 街中では露店が出回り結構な人間が、いや魔物の異様をしたプレイヤーも含めた人々が出回り様々な商いをしている。

 このイベントで最大の賑わいを見せていると言っても過言ではない。

 むしろ、そうとしか言いようがないだろう。


 その中で黒狼たちはまだ復旧前かつ、街の郊外に位置する場所に赴く。

 このゲームでは土地の占有を良しとしている場所と、そうでない場所がある。

 基本的に大規模クランが中心となっている区域は占有をした場合、村八分といった状況になりかねないが小規模や個人がひしめくいわばスラムであれば勝手に占領しようと大きな文句は出てこない。

 とはいえ、先住者がいればそこは避けるのをマナーとされているが……。


「ここら辺がちょうどいいわね? 早速、土の魔術で簡単な家を建てるわよ?」

「おう、好きにしてくれ。儂は裏手に鍛冶場を作ってくらぁ。やはり移動できる鍛冶場っていうのは便利だな、儂は好かんが。」

「おーいネロ? 起きろ〜、いい加減重いぞ〜。」

「むにゃむにゃ、余は完璧で究極のアイドルなのだ……。むにゃむにゃ……。」


 四者四様の動きを見せつつ、各々ができる事をする。

 とは言え、黒狼とネロはできることなどないため邪魔にならないところでゆっくり見ているだけだが。

 時間にして三分、それだけで簡単な建築物が出来上がる。

 中には三つの部屋があり、そのうちの一つは村正の鍛冶場。

 もう一つは素材置き場で、最後の一箇所はロッソの調合場所だ。

 外には露店販売をするための場所があり、現在そこではネロが昼寝をしている。

 

「なんか、クラフト系のゲームみたいね。」

「クラフト系? わからん事もねぇがちょいと違うんじゃねぇか?」

「まぁ、伝わるなら何でもいいんじゃ? いやそうでもないか……。いやどっちでもいいよな?」


 面倒くさい自問自答をしつつ、各々やりたいことを好き勝手に……。

 とまでは行かないが、結構自由に行いだす。

 村正は早速刀の制作、というより蟻の素材を叩き鍛え質を向上化させ。

 ロッソは蟻酸を用いて様々なポーションと組み合わせ、何やら作っている様子だ。

 黒狼? 彼はそもそもここでできる事がないためおとなしく街の外でモンスターを狩っている。

 大人しく、とはいってもちょくちょく戻ってきていることから何度か自爆しているのは考えるまでもない。

 そんなこんなでイベントの日数は経過していき……。


 「お久しぶりです、黒狼? ソレに村正とロッソ、ネロもいますね。」


 ヴィヴィアン改め、『黒の魔女』モルガン。

 彼女がようやく、黒狼たちと再会する。


「ああ、久しぶり。モルガン? 相変わらずヘッタクソな変装だな。」

「遅かったじゃない、もう少し遅れていれば無視するところだったわ。」

「ん? 来たのか? 茶菓子の一つも出せやしねぇが……。まぁ、入れや?」

「うむ!! 余の家に入れる栄誉を与えよう!!」


 四人の言葉を聞き嬉しそうに、もしくは姦計を巡らせるように笑うと彼女も中にはいった。

いつも使っているタブレットが壊れたので更新が大きく遅れかねません。

エタった訳ではないのでご安心を。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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