Deviance World Online ストーリー3『最強降臨』
ネロの黄金劇場、それが展開された事により足場が安定しプレイヤー全体に多量のバフが撒かれた。
また、『黒獣傭兵団』の構成員により近場のプレイヤーはポーションを受け回復を行う。
ネロの黄金の劇場のお陰で、それだけの猶予が発生した。
だが、以前劣勢な事には違いはない。
「チッ、雑魚共の相手をしていたらァ回復される臭いぞ!!」
視線を上に向け、HPを確認していたダーディスが眉を顰めつつそう叫ぶ。
元より膨大なHPを持つエキドナ、その体力はレイドボスらしく規格外に違いない。
そんな化け物が少し目を離した隙に最低でも確認できるレベルで回復したのだ。
「……無法かよ!? オイオイオイオイ、そりゃねぇだろが!! 俺のファースト・サンを体内で暴発させて漸く1割なのに!!」
「不味いなー、放射系の攻撃はほぼ無理だぞー!?」
「とりあえず皆さん、回復をお願いします!! 特に前衛の皆さんは結構厳しい状態でしょう!!」
黒狼とシャルが軽く会話を行い、プロキオンの指示を聞く。
とはいえ、プロキオンの指示を聞いていない者も多い。
特に『脳筋神父』などはその最もたる例だろう。
ネロの帷が晴れた瞬間に地面を蹴りつけ、その大きなメイスを振り回していた。
「流石の神父様ね、まさに脳筋。黒狼もアレぐらい動かないかしら?」
「阿呆いうな、俺のVITとHPはゴミカスだぞ?」
「ジョークよ、ジョーク。本当に求めているわけないじゃない? 貴方はそのまま自爆特攻して置いて。」
「どちらにしろ、酷いことには変わりないな。『夜の風、夜の空、北天に大地、眠る黒曜。』」
再度詠唱を再開し、太陽を降臨させようとする黒狼。
魔法陣が発生し、魔力が収束する様子を見ながらロッソも魔術を展開する。
他のプレイヤーも『脳筋神父』に続いて攻撃を始めたものは多い。
ある者は刃に炎を纏わせ、あるものは水の槍を連射し、あるものは2丁拳銃ならぬ二丁ライフルで鉛玉を打ち込んでいる。
それによってエキドナの回復量を超えるだけのダメージを再度叩き出すことには成功していたが……。
「バイオ装甲が回復してるな、一瞬手を止めただけでここまで行動を無に帰させてくるか。」
「それに問題は劇場外のミ=ゴね、数が爆増した影響で対処が遅れているみたい。」
「マジで厄介だな、レイドボス。これで完全回復とか蘇生とかしてきたら泣くぞ?」
そう、バイオ装甲の回復に雑魚敵と化したミ=ゴの襲来。
ボスであるエキドナを相手にするだけでは不十分でしかない状況なのだ。
戦力が足りない、ここにきて最初の順調な状況から予想もつかなかった戦力不足が目の前に現れ出した。
現代の戦いの定説として、戦いとは数だ。
数が多ければ多いほど、その陣営が強いというのは常識だろう。
そしてエキドナは大量のミ=ゴを発生させる。
こうなるのは、火を見るより明らかだ。
「雑魚を一掃しに向かうか、エキドナにダメージを与え続けるか。悩むところだな……。」
「周囲への影響が大きいから今はエキドナにダメージを与えるべきね、雑魚を倒すのにプレイヤーを巻き込んでたら意味がないわよ。」
「確かに、な。」
そういうと再度走りながら詠唱を開始した。
今回はファースト・サンではなく、エクスカリバー・アコーロンを用いている。
ファースト・サンは結局全方位へ無差別に莫大な熱を放射するだけの魔術だ。
それに対してエクスカリバー・アコーロンは、直線上に莫大なエネルギーを発射する。
であることから、ファースト・サンを用いてバイオ装甲を剥がした後は内部に穴を開けてエクスカリバー・アコーロンで焼いた方が効率的なのだ。
更に言えば、最初に開けた穴は肉が蜂起し半ば完全に回復している。
此れほどの再生能力は、流石の黒狼でも舌を巻く。
「決断すれば、行動は早いのね……。って、私もそうは言ってられないか。魔術のダメージは2割私ってところよね? 本当、手を抜けないわ。」
そう呟きつつ、ロッソはまた魔術を展開する。
攻撃は全部火系統、ミ=ゴのバイオ装甲の再展開を防ぎつつダメージも着実に与えていた。
黒狼の自爆を見て再復活までの時間、再生を阻害するように魔術を用いている。
そのまま、ポーションを飲み込むと黒狼が復活したのを確認し再度魔法を発動した。
「『ファイアーレイン』、魔法は楽でいいわねぇ……。早くヴィヴィアン復活してくれないかしら? 自分用のポーションも目減りしてるのだけど。」
「俺に言われてもしらねぇよ、というか復活場所が何で毎度お前の横なの? 広域にリスポーンする場合もう少しランダマイザが働くもんじゃね?」
「パーティー組んでるからじゃない? MMOだし復活したら仲間の近いところに復活できるような運営の配慮じゃないかしら? まぁ、普通は三時間後だから関係ないけど。」
「こういう弱い種族に配慮されてる感がある……、今度村正に聞くか。さて、『夜の風、夜の空、北天に大地、眠る黒曜。』」
詠唱を始めた黒狼を見て、その周囲の雑魚敵もといミ=ゴを吹き飛ばすロッソ。
切り札のバーゲンセール状態の黒狼は片手でグッドを作るとそのままダッシュした。
再度、バイオ装甲が復活し始めたエキドナだったが黒狼のファースト・サンで再度剥がされる。
さっきならばこういうことがなかった時点で、ダメージソースが少数に依存していることが窺い知れた。
実際、さっきまでエキドナを相手にしていたシャルは襲いくるミ=ゴを相手にし聖剣に炎を纏わせバッサバッサと切り伏せていたりダーディスは防御無視攻撃や拳に火属性を纏わせ殴っていたりしている。
もしこれでエキドナ本体が直接戦闘を得意とするモンスターならば、もうすでに敗北していてもおかしくない。
「助力に来ました、どちらを対処すれば?」
だが、そんな劣勢も多少はマシになるようだ。
そんな予感と共に現れた彼女は、そうプロキオンに問い詰める。
二つ名持ちプレイヤー、血盟『MIND』の盟主。
『アイアンウーマン』ポッツが、最初の休憩地点を離れ到着したからだ。
*ーーー*
赤銅色の髪をはためかせ、合金で作成された己の鎧を威風堂々と翳し東條した彼女は戦況を見るなり即座にこの場の長であるプロキオンの元へ向かう。
プロキオンは再度電気銃の装填にかかりきりでいるが、この場に集う十名余りのプレイヤーの行動も把握していた。
見た目は幼くとも行動は熟達した人間のソレ、そこに関心しつつ彼に声をかける。
「助力に来ました、どちらを対処すれば?」
「ポッツ!? 持ち場は……、聞くまでもないですか。『キャメロット』の状況は?」
「残念ながら未だ復活してません、私が持ち場を離れたのもミ=ゴの数が大きく減少したのと私がいなくても問題ないと判断できる程度にはプレイヤーが復活し始めているからです。」
「それは残念ですね、他のプレイヤーが来る予定は……。掲示板を見るになさそうかな? そうですね、エキドナ本体への攻撃をお願いします。あのアンデッドのお陰でバイオ装甲自体は常に剥がれているような状況なので思いっきり最大火力をぶつけてください!!」
了解、と短くプロキオンに告げたポッツはそのまま地面を一気に蹴る。
黄金劇場の石畳が一気に罅に塗れ、直後に粉塵が舞った。
二つ名持ちプレイヤー、その中でも戦闘特化の人間の行動は基本的に人外に等しくなる。
一踏みで数メートルを跳び上がり、初速で人類最速を振り切る速さを誇り、低レベルの人間が放つ剣や弓を肌で弾く。
その戦闘は、ステータスの合計値が1000に届かない人間では戦いにならないほどだ。
地面を滑るように赤銅の流星が通り抜ける、たなびく髪と端正なその顔はひどく美しい。
だがその顔に感情は見られず、確かに鉄の女という諡を得るに相応しい人間だ。
劇場から大きく跳躍し、両腕をクロスさせそのまま小さくスキルを発動する。
『騎士の心得』、騎士系スキルとも呼ばれる中で汎用性の高いその効果は単純なVITの上昇。
そして付属効果として、敵が強大であればあるほど。
使用者は強化される。
「なかなかの強化率、悪くない。『重戦士』『重装行軍』『脚力強化Ⅲ』『筋力強化Ⅱ』、まずはこれぐらいで。」
足が地面についた瞬間、ポッツは更に跳び上がり剣を切り上げた。
彼女が持つ剣は両手でも片手でも扱えるバスターソード。
それを両手で握り込み一気に、そして連続して切り刻む。
何度も何度も、何度も何度も何度も何度も。
血を噴き出させ、肉を抉り骨まで到達せんかというように切り刻む。
その様も、無表情で。
まるで心が鉄でできているかのように、淡々と作業のように切り刻む。
『アイアンウーマン』
その名に相応しい戦い方で、その諱を贈られるに相応しい強さを誇ったのだ。
自爆特攻を繰り返す黒狼の目にもその血飛沫は目に入る。
同時に、その血飛沫の狭間で見える合金鎧の女騎士も。
「強い、な。」
ポツリと呟き、黒狼は再度詠唱を開始する。
他者が来ても結局やることに変わりはない、自爆特攻を行うだけ。
緊迫感も変化はしない、結局そこに変化など生じないのだ。
それが変化するのであれば、状況が一変したタイミングでしかない。
再度リスポーンした黒狼が、その思考に辿り着く。
少なくとも、個人的な熱意がない以上それ以上に思考する気がないようだ。
「『強靭な骨』、ってヤベェ!?」
「『ファイア・アロー』、気をつけなさい!! 『瞑想』、MPも目減りしてるわね。これ以上の長期戦はあんまり期待できないかも?」
「やばいやばいやばいやばい!!? 助けてロッソさ〜ん!! ミ=ゴに囲まれたぁ!?」
「止まって、狙うわ。『緋色に橙を、橙には青を。【フレイムダンシング】』」
詠唱と共に侵入していたミ=ゴを焼き尽くすロッソ。
アストルの髪が若干焦げたのはご愛嬌だ。
「あっつーい!? けどありがとう!! って、ボクはネロを守らなくちゃ!!」
「頑張りなさい、黄金劇場が途絶えると一気にミ=ゴが入ってくるわよ。」
「わかってるって〜、安心して!! プロキオンさんにも言われたから!!」
そう言ってヒポグリフに乗りつつ走り抜けるアストルを呆れ笑いで眺めたロッソはそのままポッツの方へと視線を移した。
さすが、と呟きその実力を改めて見直すロッソ。
バスターソードを片手に黄金劇場に退避した彼女はまた別のバフを自らにかけて居る様だ。
単純なダメージソースとしてはおそらく脳筋神父の方が上をいくだろうが、それは単騎での強さでしかない。
彼女の場合、退避する際に他のプレイヤーが突破できる様に道を開いている。
その結果、彼女のスタミナが尽き休憩している現在でもシャルなどの近接プレイヤーが代わりに戦えているのだ。
先程みたいにミ=ゴを適当に対応しながら、可能ならば本体であるエキドナを叩くという様な真似をしなくて済んでいる。
この事実だけで、戦況が一気に纏った。
「このままいけば、勝てる……!!」
誰の言葉だろうか? いや誰の言葉でもないだろう。
みんなの共通意識としてその思いがあった、そんな油断があった。
ネロの黄金劇場を展開し、ポッツが合流したことで戦況自体が整い戦い自治が優勢となっている。
その事実が、見たくもない現実から目を逸らさせた。
ローランが切り込み、シャルが補助をしている。
もちろん、その逆もあるだろう。
ヴィオラのバフによって『脳筋神父』ことガスコンロ神父が前線で出張り、『アイアンウーマン』ポッツが他のプレイヤーをそこまで導く。
リナルドにオリビエ、テュルにマラッジがそれぞれの攻撃手段でミ=ゴの数を減らし、ライラプスとプロキオンが全体の指示を執りながらビリー・ザ・ガールと共に電気銃にエネルギーを貯める。
完璧だった、順調だった。
だからこそ、落とし穴に気づかなかった。
「電気銃の充填が完了しました!!」
プロキオンが声を上げ、即座に退避させる。
「退避が終わったぞー!!」
シャルがそう告げ、本人も大きく飛び退く。
「うむ、これを浴びせればHPの半分を削り終えるであろう!!」
ネロがそう叫び、その一瞬後に電気銃の放電が始まった。
圧縮された魔力が放射され莫大な量の電気が流れる、一瞬にしてスパークを放ちながら球状のエネルギー弾を発射しそのままエキドナに衝突した。
エキドナに衝突したエネルギーはそのまま放電し、エキドナの体を大きく痺れさせる。
それどころか内部の肉を焼き裂き、大きく痙攣させその巨大な体躯を大地に引き摺り出した。
そして、エキドナは大きく変体する。
今の放電でブヨブヨでミミズを思わせるその体躯が内部から裂けた。
贅肉が、少なくともそう表現するしかない肉が削ぎ落とされ中にあった真体が顕になる。
まるで女、巨大で大きく翼の生えた女。
そう表現するしかないバケモノ、その姿が顕になる。
その化け物は天空に一声、大きくうねりを上げた。
その瞬間、エキドナから生産されていたミ=ゴの全てが大きく変貌し様々な種族、生物、モンスターを模した存在に変貌する。
『魔獣胎母』エキドナ
そこにいたプレイヤーはその名前の意味を強く思い知らされる。
その名前、その様相、その脅威を。
一瞬にして劇場に満ち溢れていた熱は消え、目の前の脅威を認識する。
たった一瞬、されど一瞬。
その一瞬は、プレイヤーたちを追い詰める決定打となった。
エキドナが手を振るい、劇場に向けて多種多様なモンスターが殺到する。
それどころか、エキドナ本体もそのまま歩みを進め劇場を上から見下ろし未だミミズのような気色の悪い体躯の尾で劇場を破壊しようと動き出した。
全ては一瞬の内、されどその一瞬は全てを飲み込む。
場をリセットする様な、そんな行動は黒狼をただただ見守ることしかできない。
抗う術がない、そんな無力さと共に拳を握りしめせめてもの抵抗として、その大敵の攻撃より先に魔術を発動できないか。
詠唱を始めようとしたその瞬間、奇跡は起きた。
「『エクス」
邪悪を許さず、弱きを助け強きを挫く。
絶対正義の権化、物語の英雄、勇者と言えるその勇ましさ。
輝く聖剣を携え、煌めく甲冑を纏ったその男は実にポッツから五分遅れて登場する。
その名は、
「カリバー』!!!!」
血盟『キャメロット』の盟主にして『騎士王』
『プレイヤー最強』ことアルトリウス。
レイドバトル開始から3時間2分遅れで、彼は駆けつけたのだ。
実質この物語のもう一人の主人公にして、プレイヤー最強のキャラクター。
黒狼の最大のライバルにして黒狼が超えるべき壁、『騎士王』アルトリウスさんです、みんな拍手を!!
(以下定型文)
お読みいただきありがとうございます。
コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』 の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!
また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね
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