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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『スキル』

「俺!! 参上!!」


 大声を出しながらログインする黒狼。

 そして、地割れし切った大地を見て暫く黙る。


「……へぇ? どうなってんだよ。」


 明らかな急展開を見て暫く黙る。

 状況把握が追いつかない、現状を理解できていない。

 だが間違いなく言えるのは……。


「コレ、出遅れた感じ?」


 半笑い、もしくは薄笑い。

 この異常な現状を正確に捉えられずとも、おおよその現状を察することはできる。

 即座に、自分の状態を確認。

 変なバットステータスや通知がないことを確認しクランの掲示板に『誰かログインしていないか?』という文言を入力。

 他に複数のプレイヤーが参加している掲示板でおおよその情報を収集し……。


「なるほど? ワームか竜か、そんな感じのバケモンが地震と共に描かれた巨大な魔法陣によって現れ強制的にレイド戦が発生したってところか。」


 情報をまとめた黒狼は、通知が届いたクラン掲示板を確認する。

 そこにはネロは例の建物にいるという情報と、そしてロッソは誕生したレイドボスの周辺で隠れていると言った内容が記載されていた。

 反面、未だ通知がない村正とヴィヴィアン。

 そのことを不安に思いつつ、とりあえずネロと合流することを決意した。


「そうと決まれば、この刀を借りたいな……。」


 黒狼の武器は錬金金属で作成された槍剣杖、だがヘラクレス戦にて酷使したことによりその武器としての強さは大きく弱体化している。

 具体的に言えば本来付属効果として発生していた魔術攻撃微増強が消失し、バッドステータスとして攻撃力減衰が記載されているのだ。

 また本来用いていた洞窟蜘蛛の足も激戦に激戦を重ねたことで大きく破損しており見た目こそ多少はマシであれどその実態はボロボロもいいところ。

 元より攻撃性能には期待しておらず、序盤の突破力として武器を用いていたがコレほど破損していれば序盤の突破力にもなり得ないのがありありと分かる。


「うーん、結界としての役割もあるしなぁ……。一旦諦めるか!!」


 そう言いつつ錬金金属から洞窟蜘蛛の足を外す。

 長柄の武器として重宝していたのだが、ここまで破損しているのならば錬金金属を錬金術スキルを用いて常に形を変容させる使い方の方が優秀に思えたのだ。

 それを行うのに蜘蛛の足は余分な要素でしかない。


 蜘蛛の足や骸の頭蓋などをインベントリに放り込み、腕に錬金金属を纏わせそこにネメアの獅子皮を装備する。

 そしてさらに錬金金属を伸ばし爪状に造形を行い盾&鍵爪といった籠手に変化させる。

 余った金属はそのまま剣の留め具として利用、元々槍と鞘と杖部分に利用していた金属量が多くその留め具の利用でもまだ余ったためさらにナイフを作成した。


「魔術系の補正は乗らない代わりにそこそこ優秀な防具になったんじゃねぇかな? 理想系はあの化け物の戦い方!! なんつって!!」


 若干笑いながらそう言いつつ、森の中を進む。何気なしに振り回したナイフは研がれていないため周囲を切り裂くには至らないもののそれでもちょっとしたアイテムとしては十分だ。

 そんな思いを持ちつつ例の建築物まで辿り着く。

 近づけば近づくほど世界観にそぐわないメタリックな輝きを放つソレ、遠くから見ればまだなんらかの建造物にも見えたが近づけばはっきりわかる。

 流体的なボディ、大きさは高さ10メートル程度であり縦の長さは15メートル、横は8メートル程度。

 二階建ての建造物程度の大きさであり、確かに大きいが周りの木々も軒並み相応に大きいため大きすぎるという印象は受けづらい。


 そんな船には円状に焼ききれた跡があり、誰かがそこから侵入したことを匂わせる。

 まぁまず間違いなくネロだろう、少なくとも現状の状況を鑑みればそうとしか思えない。

 穴に片足をかけ、一気に乗り込む。

 内部は明るく、ダークシールドを展開していなければアンデットである黒狼はダメージを受けていただろう。

 まぁ、そんなことを言いだせば太陽の下で展開していなければ普通に死ねる話だし今更と言った感じでもある。


「む!! ようやく来たのか? 遅いであるぞ!!」

「遅いって責められてもなぁ……、集合時刻は9:00で今は8:45だぞ? むしろ早いぐらいだろ。」

「むぅ……、正論を言うでない!! 屁理屈が通らないであろう!!」

「屁理屈を通すんじゃねぇ……。」


 若干呆れた様にそう言い放ち、周囲の乱雑な状況を見る。

 どうやら目の前の彼女が黒狼が来るまでの暇つぶしとしてそこに置かれていた様々なものを見ていたようだ。


「何か、めぼしいものはあったか?」

「少なくとも余の専門からは大きく外れるものばかりである!! 面白そうなのはこの無限エネルギー作成の内容が書かれたモノだが……。」


 そう言い、手元にあった板を畳んだようなものを黒狼に手渡す。

 黒狼はそれを開き、書かれていた余りに被人道的な内容に顔を顰めた。


 言語スキルによって解読された内容、そこに書かれていたのは『魔力を用いて理論上無制限に魔力を作成する方法』と言うタイトルとそれをもとにした世界への考察。

 世界への考察こそ興味はないが、無限エネルギーには少しばかり興味深い記載があった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 『無限エネルギー作成方法について』

 結論から言うと、魔力の事実上無制限の作成は可能でありこの星ではその現象が確認されている。

 ただし方法については不明瞭なことが多いため別紙にて観測されたモノを記載する。

 可能とされる方法は二つ、一つ目は書き込む内容から星間規模の大規模な魔法陣を作成し前述した宇宙という永久機関を作成すること。だがこの方法はその規模から現実的でなく私としてはこの方法を推奨しない。

 二つ目は知的生命体が発する存在に必要不可欠なエネルギーを用いること。

 前述の通り、知的生命体の精神構造は一種の宇宙であり永久機関という様に仮定することが可能である。(この知的生命体が保有する永久機関を次からは小宇宙と記載する。)

 実際、目撃例は少ないが『心象世界』という己の精神構造を宇宙に見立てこの宇宙に小宇宙を展開することが散見された。

 そのため何体かの生物を用いて複数の薬物投与により強制的にその小世界を展開させそのエネルギーを強奪した所、2〜3日程度は存続したものの最終的に本体の精神性が崩壊し存続不可能な状態となったり、そもそも小世界を保つだけのエネルギーすら生成出来なくなった、もしくは上記二つを防ぐため自意識を奪った場合最低限の生命活動も行えなくなったなど複数の問題が散見されたためこちらも現実性がないとして非推奨という事となった。

 以下は私見だが、第二案の最大の問題は知的生命体が生存していることだと思われる。

 先ほども述べたように小世界は精神が特殊エネルギー(この星では魔力と称されて居るため私も合わせて魔力と呼称する)によって我々が認識する世界を上書きし存在している。

 そのため、おおよそだがかなり莫大なエネルギーを使用しているのではないかと愚考した。

 であれば、その小世界を開かせなければ世界に存在させる必要がなくなり途中で閉じるなどのイレギュラーが発生しないのではないか? と考える。

 だがコレにはいくつもの課題点があり、一つ目として小世界を展開させない方法が不明なこと。

 二つ目として小世界が開ける状況であるのに開いていないと言う状態は精神が外部的影響によって抑圧された状態と定義できその状態では自己を守るため強制的に中断しかねないと言う可能性がある。

 コレらの課題を解決できれば、我々はより大きく進歩するだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……、胸糞悪い。特に後半だ、まるで生き物を道具としか見てないのが気持ち悪いな。」

「む? けど有用ではあろう? この内容、きっとヴィヴィアンやロッソに渡せば面白いことが起こるとは思えないか!?」

「まぁ、思うけどさ……。」


 軽く言葉を交わしつつ、船内の資料を集める。

 とは言っても量は多くない、推測にしかならないが本当に重要な研究内容はもう既に残ってはいないのではないだろうか?

 それこそ、ここにプレイヤーが来ることを予見して。


「んで? ここには誰もいなかったのか? それこそモンスターとか。」

「余が倒した!! 褒めるがいい!! 余の頭を撫でる栄誉をくれてやろう!!」

「はいはい、頑張ったなー。」


 なでなでと黄金の髪を撫でサラサラとした感触を楽しみ、彼女の満足そうな顔で癒される。

 なんか知らないが黒狼は彼女から好かれたらしい、スケルトンという奇異な姿をしていたからだろうか?


 とまぁ、そんなほっこりとした一幕は記憶の彼方に放り投げ船内を探索する。

 探索とは言っても人体構造が違う生物の棲家であり、人体の規格が違うため基本的な扉は力技……。

 もとい、ネロのフランベルジュによって扉をバターのように切り裂き突破した。

 

「いや、すげぇな。そんなことが出来るんなら敵を倒すのも楽じゃねぇの?」

「余の剣はすごいだろう!! 単純な障害物ならあっという間に切り裂けるのだ!! とは言っても動物とかにはただの剣だし余は戦闘が得意でないからな!! この剣を持つので精いっぱいなのだ!!」

「確かにその細い腕だったら剣なんて持てないよな……、その剣って俺にも使える?」

「無理!!」


 若干悲しそうな顔をしつつ各部屋を探索していく。

 缶が大量に置かれた部屋、何かよくわかんない造形物がある部屋等々。

 なんらかの研究部屋だったり保管部屋であることはわかっても、それが何であるのかは分からない。

 例えば、ゴッホの向日葵を見たとしても一般人の感性では凄い絵でしかないのと同じだ。

 何かすごいことはわかるが、何がどのように凄いのかは理解できない。

 

「先鋭的な芸術、って言う感じだな。うん、何がどう凄いのか全然わかんねぇ。」

「コレを壊すの楽しいぞ!! 余の剣で切りつければ一斉にバラバラになる!! 貴様もどうだ!? 黒狼よ!!」

「遠慮するっていうか、勝手に壊すんじゃねぇよ!? もしかしたら物凄いアイテムかもしれないぞ!?」

「むぅぅぅ!! 余の行動を諌めると言うのか!!」


 暴君ここに極まれり、だが見た目は童女なのでひどく可愛らしいが。

 だが手に持つ武器は凶悪そうなのも事実だ、ただそれで殴られるだけでも相応のダメージを負うだろう。

 それに仲間内での仲が悪いのはあまり良くない。


 そう考えた黒狼は彼女に対して頭を下げ謝罪を行う、その行動で気を良くしたのかネロはそのまま一気に上機嫌となり鼻歌でも歌い出すかのようなテンションでスキップを始めた。

 それを見て女心ってわからねー、と心の中で愚痴る黒狼。

 安心してくれ、ネロの行動など同じ女性でもわかるはずがないのだから。


「とは言っても、それを壊すのは一旦やめてくれないか? ロッソと合流するために先に移動したい。」

「むぅ、まぁいいであろう!! 余は寛大だからな!!」

「……はぁ、んじゃ森の中を一気に進むぞ? 動けるか?」

「無理に決まっておろう!!」


 このお転婆娘をヴィヴィアンはどうやって制していたのか? それが気になり始めた黒狼だったがその疑問は口からこぼさない。

 口にだせばまた拗ねるだろう、そうなれば面倒臭い。

 彼は頭を下げることには抵抗は無いが、その行動の労力を支払うのは怠いと認識している。

 言い換えれば労力が発生しないのであれば多少の屈辱でも受け入れる、この男はどれだけプライドがない人間なのだろうか。


「しっかし、急展開を迎えてるな。コレ、運営のシナリオ通りなのかねぇ?」

「余に尋ねているのなら知らんぞ? あとおんぶしてくれ!! 歩くの疲れた!!」

「全く……、我儘なガキだな……。ほら、乗って乗って。」


 存外優しさに溢れている黒狼はネロを背負うとそのまま足速に森を走り始める。

 森林、地形としては素人では走りながら移動など困難極まりない場所だがそこそこの距離を一回歩いた経験やその他の己の優秀さを発揮しノリと勢いと気合いで一気に強行する。

 

 言うならばこれは環境適応だ。

 肉体を変質させる形での環境の適応ではなく、経験則から最善の行動を行う環境適応。

 それはまさしく人間の、知的生命体の特権だ。


 足を踏み出す、地面に骨が当たる感触を経る。

 力を入れる、地面を抉りながら前に重心が傾く。

 地面から飛び上がる、そのまま重心を動かし片足を地面につける。

 体が沈み込む、背中の重さを感じる。

 木の根を踏んだ、バランスがやや崩れる。

 学習する。

 学習する。

 学習する。

 ()()()()()()()()()()()()()()、不要な処理を削除する。

 木の幹を視認する、()()()()()()()()()()()()

 足を踏み出す、地面に骨が当たる感触を経る。

 力を斜めに入れる、地面を抉りながら加速し重心を保つ。

 地面から飛び上がる、そのまま重心を動かさず片足を地面につける。

 体が沈み込み前傾姿勢となる、背中の重さを前方に向ける。

 木の根を避けたが地面の起伏に足を取られる。

 経験する。

 経験する。

 経験する。


 疲弊することのない肉体、摩耗することのない肉体。

 筋力は魔力で代用し、その動きを補助する。

 学習は、止まらない。

 より効率的に、より環境に沿って。

 肉体の感覚はVRCを通じて脳に経験を送る、脳に送られた経験はVRCを通じて技術として肉体に出力される。

 現実と遜色ない、いや疲弊しない肉体がある以上現実以上の能力を行うことができてしまう。

 

「ああ、そう言うこと? 『筋力強化(幽)』」


 加速する、より早くより巧く。

 スキル、つまり経験や訓練などによって身につけた技術。

 この世界ではそれをシステムから与えられる。

 普通はそれでいい、普通ならばそれで構わない。

 だが、それ以上を求めるなら?


(スキルっていうのは手本であり教科書、スキルを使いこなすのは言うなれば教科書を見ながら問題を解くようなモノ。)


 地面が揺れる感覚が流入する、さまざまな経験が募る。

 意識を以て、与えられたスキルを制する。

 そもそも、このアバターが黒狼の。

 この体躯が、黒狼の意志の通りに動くのならば。


(想像するのは、最強の自分。まさにレオトールの言う通りだ、スキルは教科書。教科書通りの行動をしている自分が最強の自分か? そんなわけがない。)


 思い出す、最強が語った強くなる近道を。

 意識も感情も、感無量に膨れ上がる。

 分かった、解った、理解した。


(イメージしろ、今この瞬間思い浮かべる理想の動きを。無意識を意識で制しろ!!)


 感動は学習を加速させ、学習は快感を増幅し、快感は集中力を増加させ、集中力は新たな境地を切り拓き、新たな境地は感動を呼び起こす。

 いつの間にか黒狼は、深い森林を駆け抜けひび割れ中央で得体の知れない化け物が蠢く大地に侵入していた。

いつも通りの雑なクオリティ、そして久々の主人公の復活です。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
やっぱり黒狼の単純的な思考とか突拍子のない閃きが狂人でも魅力的なキャラとして書かれていて好き
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