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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『精神汚染』

残酷な描写があります。

「なんだそりゃぁ……? まるで………、山を消し飛ばし海を蒸発させたみたいじゃねぇか………」

「まるで、ではありません。言葉通り、山を消し飛ばし海を蒸発させています。」


 先ほど語られた偉業、ソレが『準古代兵器』の本領とすれば……。

 果たして、そんな武器を一個人が保有していていいのか? そう思わされる内容に、村正は慄く。

 そんなモノ、そんなモノがあってしまったら……。


「兵法とか関係ねぇぞ!! そんなモノがありゃ、戦争の!! 戦の常識が変わる!!」

「ですから!! そう言っているではないですか!! 先代とでも称しましょう、先代『騎士王』アーサー・ペンドラゴンはその能力を人類のために用いたとされています!! 善悪の貴賎なく、己が信ずる正義のために!! ですが、今代『騎士王』アルトリウスは善悪を己の尺度で測り、彼が掲げる正義を盲目的に執行する異邦人なのですよ!?」


 山を消し、海を蒸発させたと言われる聖剣『エクスカリバー』。

 もし、その言葉が間違いなければ戦争など。

 ありとあらゆる争いは、次元が変わる。

 

 夢に焼かれていた村正は、その事実を認識し恐怖する。

 1000年以上前における核兵器、ソレと同じなのだ。

 『準古代兵器』という代物は。


「彼の正義はこの世界に殉じたモノではありません、彼の掲げる正義とは彼から見た正義でしかない!! 村正!! 貴方はこの世界に生きる無辜の民草を見たことがありますか!? ゲームのNPCとしてではなく、一人の個人として。答えるまでもない、()()()()()()()()()()()()()()()()!! 我々はこの世界をゲームとして漫遊する異邦人なのだから!! だから、だからこそ!! 私は『キャメロット』を打倒するのです!! あの正義という毛皮を被った獣を!! 実態なき正義を掲げる逆賊どもを、私は義正(ぎせい)を以て倒さねばならないのです!!」

「黙りやがれ!!!!!」


 その正しさを掲げるヴィヴィアンの発言を、村正は遮る。

 まるで人が変わったかのように、堰を切ったように言葉を紡ぐヴィヴィアンを制止しなければならなかった。

 静かに、だが然りと話す。


「手前の言いたいことはわかった、準古代兵器とやらの質の悪さも分かった。だが!! その言葉は手前が言っていいもんじゃねぇ!! 善だ悪だ正義だ義正だ、儂にゃぁ手前の考えを察することしかできねぇ!! だがな、当事者でねぇからこそ言わせてもらうが……、其れ今する話か?」

「……は?」


 今度はヴィヴィアンが驚愕する番だった。

 普通ならここでヴィヴィアンを制止するモノだろう、だが村正が言った言葉はそんなモノ知らんと言わんばかりの話だ。

 なぜ? そんな疑問がヴィヴィアンの脳裏を巡る。


 なぜ? なぜ? なぜ彼はそんな言葉を告げた?

 理解できないモノ、理解できないナニカ。

 脳が理解を拒絶する、そんな風に恐怖を感じ始めた直前。

 彼女は、一つの結論に思い至る。


「まさか、貴方は……。そもそも、この世界に、()()()()()?」

「さてな? 少なくとも儂はどっちもどっちだ。最高の刀を作れそうだから儂はここにいるが……、不可能と判断したら、即刻去る程度の興味だ。」

「…………ふふふ、ははは、あははははは!!! なるほど? そういうことですか!! では確かに、今話す話しではありませんでしたね? 貴方にとって善や悪はそもそも話す課題ではないのですか。重要なのはその欲求を満たせるかどうか、ならば私の正義など当事者として物事が起きるまで興味はなく今ここで話す話題になり得る必然性がない。そうですよね?」

「そう思いたいのなら、そうなんじゃねぇか? 儂にとってはどちらでも良い。少なくとも儂にとって手前の話は今する必要があるとは思えねぇし、聞きたいとも思わねぇよ。」


 そう言って互いに顔を無にする。

 結論が出た以上、これ以上この話を話し合う必要はない。

 村正は『準古代兵器』というこの世界の最高峰の武器について興味があり、ソレに驚愕した。

 ヴィヴィアンはその話を行い、そして己が目標を語った。

 ソレで良いのだ、ソレで。


「ではこの話は貴方が当事者となったときに行いましょう。そうであれば貴方も否応なく聞かざるを得ないでしょう?」

「まずまず、手前のいう化け物みたいな兵器とやり合わないことを祈っておくがね?」


 そういうと、二人は無表情の顔のまま。

 いや、親密なモノにしかわから亜ないほど微細な笑顔を浮かべたまま。


 彼ら彼女らが保有する警報系スキル。

 ソレから放たれた警報を聞き、そのまま()()()()()()()()()()()()()()


 事態は、急展開を迎える。


*ーーー*


 さて、この事態の説明を行うため少し時を遡り舞台を少し変更しよう。

 ここは、プレイヤーが作成した都市……、を中心として発生していたミ=ゴのコロニー。

 その中でもヴィヴィアンらが最初に訪ねたコロニーだった。


やれやれ、全く(ーーーーーーー)……。」


 声ではなく、ソレは意志を伝達するテレパシーの電波のようなもの。

 ソレに込められた意志は、もう誰もその音声を聞くことがないとわかっていながらも呟かざるを得ない弔いの言葉だった。


「道半ばにして折れるとは……、とはいえ安心してくれ。我らが同志よ、我らが究明は今この時を以て達成する。」


 多くが死んだ、遊戯として。

 ソレがわかってしまう、解ってしまうほどに知性が発達した彼らは。

 だがそんな現状に怒りなどは湧き上がらない。

 湧くのは落胆だけ、『運営』という外なる神が描いたシナリオに贖えなかったという落胆のみ。

 だが、その落胆もいよいよこれまでだ。


「漸く、だ。漸く我らはこの(せかい)の機構を解析した。完璧とは言えぬまでも、ソレでも我らは解明した。」


 ここまでは、最後に一人だけ残るというシナリオまでは見えていた。

 この世界に干渉した跡がくっきりとソコにはあった。

 だがここから先はない、だがここから未来はない。


「起動しろ、この星に適応した新たな我等の同胞を産む我らが作りし『魔胴胎母』。」


 コロニーから魔力の線が発生する、各地に置いた石板に魔力の線が繋がる。

 生物が生誕する、化け物が生誕する。

 レイドボスが、誕生する。


 本来はステータスシステムなどの影響を受けない、そんな生物であったミ=ゴ。

 そんな彼らが『魔胴胎母』から産み落とされた一子の末から逆算し作り上げたステータスシステムに対応したミ=ゴを産むモンスター。


〈ーーレイドボス級が生誕しましたーー〉


〈ーーレイドボス級名:エキドナーー〉


〈ーーレイド、開始しますーー〉


 同時に地震が発生する。

 大地が崩壊し、レイドボスであるエキドナの胎蔵を作り出すための台地とするため。

 彼らが異星より持ち込んでいた地震採掘機を起動する。

 ここを起点とし、この星の謎を解くため。


「始めよう、生存競争を。」


 ヴィヴィアンを殺したミ=ゴは虫のような体躯を動かし、そう告げこの大地からプレイヤーと呼ばれる異邦人が作り上げた都市を完全に破壊したことを確認する。

 『魔胴胎母』が完全に起動したことも確認した。


 故に背後から迫ってきた存在をゆっくりと見る、その虫のような貌の表情は不明だが……。

 その不気味さはえも言えぬモノであり、気が弱い人間ならば発狂してもおかしくはない。


「うむ!! 早めに戻って探索をしてやろうと思ったら面白いことになっているではないか!!」


 だがソコにいるのは、狂人だ。

 狂った、狂気を孕んだ人間だ。


「貴様は……、敵だな? 殺しても問題ないな!? 余の演劇の敵役であるな!!」


 会話する言葉はない、そもそもこのミ=ゴはこの星の言語を話せない。

 故に語る言葉はなく、問答無用で襲い掛かる。

 目の前の、敵に。


「余の情熱を抱いて、燃えよ!! 我が『トラゴエディア・フーリア』よ!!」


 人間ほどもある虫のような体躯から、想像を絶するだけの速さで突っ込む

 標的はネロ、攻撃手段は手にある鍵爪を用いたモノ。

 それを用いた攻撃は、ネロの首を襲い……。


 常に引きずるようにして持っていた彼女のフランベルジュによって防がれた。


「(スキル……、この反応は『心操剣術』か。)」

「如何にも不思議だが、余の剣は勝手に動く!! 余を殺したくばこの剣を超えていけ!! なんちって。」


 そのまま、流れるようにミ=ゴは金属塊のようにも見える銃を掴むと発砲する。

 若干気の抜けたような、だが間違いなく凶悪なその電気を弾丸とする銃の発砲はネロに届く。


「アバババババババ!!!? 痛いではないか!! 可愛らしい乙女に攻撃をするなど言語道断であるぞ!? そんな貴様には説教が必要だな? 『スピーカー』『声音増大Ⅲ』『オリンピアへ響け』、余の歌を聞けぇぇい!!!」

「(ーーーーーーッ!! バイオ装甲で完全に肉体を、いや!? 意味がない!! この攻撃は音なのか!? それも、()()()()()()()()()!?)」


 ソレは、戦いではない。

 彼女にとって、ソレは戦いではなく演劇に他ならない。

 歌い踊り舞い、黄金に彩られた赤いドレスを振り回し。

 童女らしい顔で、柔かな笑顔のまま。

 だが、暴君のように全てを燃やす。


 『トラゴエディア・フーリア』はネロに炎を振り撒きその動きをより現実離れしたものに魅せ、醜悪な化け物であるミ=ゴを嘲笑うかのようにそのバイオ装甲を炎上させる。

 バイオ装甲は通常発火しない、だがそんなもの知らないとばかりに情熱が焔となった炎はバイオ装甲を焼き尽くす。

 黄色と赤が混じった炎は、ネロという一人の童女を讃え喝采し祝福する。


「輝く夜空と余の黄金劇場〜♪ 響くは数多の観客の声〜♬」

「(なんだ!? なんなのだ!? コレは!!? なんだこの聞くに堪えない醜悪な歌は!!?)」


 目を見開き、体をうねらせ、金切り声を上げる。

 発狂する、その醜悪な化け物は発狂しているのだ!!

 

 なぜ? 答えはネロが音痴すぎるから!!

 そもそもがネロは前衛職ではなく、ヴィヴィアンと同じように戦闘は得手としていない。

 必然、基礎的なステータスは上昇しない。


 では何故、彼女は合計ステータス値が1000を超えていたのか? 戦闘行為を行わず、どうやってそのステータスを確保したのか?

 

 答えは、プレイヤーを殺していたのだ。

 その殺人級に、いや実際に人を殺せるその歌声で。


「ふきわたる余の歌〜♪ 澄み渡る星々〜♩」

「(逃げなければ、逃げなければここで死んでしまう!? ここで死ねば、あの胎母は暴走をッ!?)」


 一気に重圧がかかる。

 歌といえばバフ、そしてバフと言えばデバフ。

 彼女の歌はダメージが発生する、だが歌の本領は仲間を強化し敵を弱体化させるモノ。

 発狂しそうなほどに下手な歌、ソレはミ=ゴの脳を焼き狂わせながら、その体躯を慢性とさせ動かせなくしていく。

 『黄金童女』ネロ・クラウディア、彼女の本質は究極なまでに自己本位な施政者である。

 ソレが故、彼女から見て敵ならば彼女にとって最も尊いもので改心を願い彼女にとって味方ならばあの女が最も尊いと思えるもので励ます。

 そうした結果として敵味方全てが死に絶える、ソレこそがネロ・クラウディアという少女なのだ。


「(逃げられん!!!! 逃げてはいけない!!!! 死ぬ前に殺す!!!! この素晴らしき肥溜めのような歌を聞かないようにするために!!!!!!!)」


 引き金を引く、フランベルジュがその行為を防ぐ。

 ソレの繰り返し、泥沼の演劇、栄えなき戦い。

 耐久戦だ、まるでそのようにも見える。

 他者が見ればこの戦いはこの世で最も栄えのない戦いというだろう。

 

 聞くに堪えない音が響き、見るに堪えない泥沼の戦闘が行われている。

 見ていられない、聴いていられない。

 一刻も早くここから目を背けたい。


「む? どうだ!? 余の歌は!! 素晴らしいだろう!!?」

「(素晴らしい!! 最高!!! 素敵!!!!!! 違う!! そんなわけが!!? 思考汚染か!? 何が起こって!!!? 素晴らしい歌だ!! あなたは素敵だ!!!! 早く殺せェェェェエエエエ!!!!!! この思考が汚染され切る前に!!!!!!!!)」


 もし、ここに他人がいたのならこの現状を嘲笑するか恐れ慄くだろう。

 泥沼? 有効打がない? いいや、違う。

 栄えのない戦いだと言った、何せこの戦いはネロの望んだように物事が展開しているのだから。

 栄えなど、そもそも戦いなどと言えるものか。

 こんなものは戦いではない、戦いというにはあまりにも醜悪で最悪で気持ち悪い。

 正々堂々などはない、卑劣上等ですらない。


 思考を捻じ曲げ、逃げることすら許さず、ただただ己が快楽のままに場を進める。

 こんな戦いが、あっていいものか。


「うむ!! 声は聞こえぬが素晴らしいと!! そういう声が聞こえるようだぞ!! 余の歌に感服したか? 惚れ込んだのか? なぁなぁ? どうなのだ? 貴様にとって、余はどうなのだ!?」

「(ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!! やめろやめろやめろぉぉぉぉおおおお!!!! 近づくな!! 思考を奪うな!! やめろ!!!! 我らが同胞の至高の目的を!!!!! 我らが生命体の素晴らしき知性を私から奪うなぁああああああああああああああ!!!!!!)」

「聞こえる!! 聞こえるぞ!! 余の歌を聴きながら殺してほしいという声が!! うむ!! うむ!! では、『トラゴエディア・フーリア』よ!! 其奴の首を落とすが良い!!」


 A….a…….aaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!


 絶叫し、こんな死に方は嫌だと、こんなふうに殺されたくないと叫ぶ。

 まるで自分から死を望む様に、幕引きのために殺させる役者のように。

 フランベルジュが、ゆっくりと首に食い込む。

 主役であるネロを讃える、そのためだけに用意された演劇のように。


 ミ=ゴの首は、ノコギリのように前後に動くフランベルジュによって切り落とされた。

ネロは精神汚染を行うため知的生命体に強いです。

なお、他のプレイヤーやNPCにはコレを再現することができないため完全ネロの固有技ですね、ハイ。

また、これを行う場合もいくつか条件を満たさなければならなかったり汚染仕切る前に殺したりすれば問題なく倒せるのでクソ性能ではありますが簡単に攻略できます。

ミ=ゴさんが攻略できなかった理由は……、まぁ普通に電気銃の火力が弱かったからですね。

何発も打てば話は変わっていましたが彼女のフランベルジュで防がれましたしね〜、いやホント初手で殺せず長期戦になったらクソキャラになるのがネロなんだよなぁ……。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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