Deviance World Online ストーリー3『オーク・キラー』
飛来する火の魔法、襲い掛かるその魔術を村正は切り裂きそのまま前方にローリングする。
直後、頭上を吹き飛ぶ炎の魔術。
そのまま、前方のモンスターに。
いや、ファイア・ウルフに炎が当たり大きくふき飛ばされる。
直後、村正が立ち上がるように刀を逆袈裟に切り上げファイア・ウルフの腹を切りさばく。
そのまま吹き飛ばしたファイア・ウルフに追撃を行うように接近。
一気に地面を抉るように踏み込み、ファイア・ウルフの腹を殴りつけた。
「退きなさい!! 危ないわよ? 『フレア・インパクト』!!」
「『炎を飲み込み力と成しやがれ!! 【火焔村正】!!』」
「うわ!? 見た事ない魔術? いえ、特殊アーツに詠唱ってつけれたの!? 驚いたわ……。」
「あぁん? ちと魔術とは違うが……。まぁ、そんなもんだ。黒狼には向くだろうが……、手前らには合わねぇよ。」
そう言って、解体スキルを用い倒したファイア・ウルフから素材を剥ぐ。
刀を扱うだけあり、解体も得意らしく手際よく内臓・皮・前足・後脚などに分解し最後に心臓を取り出し内部にあった魔石を回収した。
少々グロい様相にはなったが、付着した血液は村正がスキルを用いたことにより一瞬にして消えた。
そして、ニヤリと笑いながらまた次の標的を定める。
夜となりモンスターが大量に発生している、いくら数多のプレイヤーが活躍していようがそれ以上のモンスターが存在している。
新たな標的を発見した村正は間髪いれず、インベントリを開く。
「『投擲』!! ヘイトは儂が惹きつけらァ!!」
「『ファイア・バレッド・ダンシング』、ハイハイ。ポーションは足りるかしら? 足りなかったら言いなさいよ? 私は回復魔法使えないんだからね!!」
「儂がダメージを受けるとでも? 存分に切り裂いてやるよ!!」
インベントリから現れた武器を掴み、そのまま投げつける。
直後に銃弾が展開、踊るようにモンスターを撃ち抜く。
即座に炎上するモンスター、そこに鑑定を行い村正はモンスター名を把握する。
モンスター名、『グレート・ゴブリン』。
ゴブリンの上位種であり、その耐久能力は決して侮れない。
だが村正は、そのゴブリンに接近したかと思うと軽く腕を斬り飛ばした。
ギャァっぁぁああああああああああああアアアアア!!!????!?!?
「るっせぇ!! ちったぁ、静かにしやがれ!!」
狂気的な、野生み溢れる激動の笑みを浮かべそのまま体を捻りゴブリンの頭部に蹴りを叩き込む。
慈悲はない、経験値になるだけの存在にそこまで気をかける理由もない。
プレイヤーの一般的思考をもとに、村正は意識的に加速しそのまま切り付ける。
弱い、脆い、脆弱すぎる。
そう思う気持ちは、殺戮という興奮にかき消される。
否、もとより現代人にそんな感情は欠如しているのだ。
VRCが現代に普及した今、そこから齎された影響は計り知れない。
だが、その影響は正き影響だけでなく悪の影響も大きく齎された。
現代社会に身を置かず、各々が望む仮想世界に自由に逃避することができる現在。
社会的問題として挙げられたのはやはり、倫理観の欠如だった。
他者を害することに躊躇いのない、他者を救うことに意義を見出さない。
そんな人間が、社会的常識を他者と関わることの少なさゆえに欠如してしまった人間が多数いる。
50年ほど前ならそれは社会的問題として大々的に取り上げられたのだろう、だがもうこの時代それは既に社会的常識となりつつあった。
意味として、必要以外ではその意味を正確に認識できない人間が多く現れた。
室外を歩くときに、金属製は当然としプラスチック製やモノによっては筆記用具ですら持ち歩きを禁止している地区すらある。
凶悪事件の発生率は20年前と比べ世界規模で1%上昇し、死傷率もそれに比例するように伸びていた。
だが、大半の人間はこの事件を必要な犠牲と割り切っており、騒ぐ一部の人間ですらVRCなしでは生活できないほどに生活に密着してしまっている。
「『強斬撃』!! 『バックステップ』!!」
「『ファイア・バレット』、『フレア・ランス』!!」
発展しすぎた世界、行き着くところまで人類が進化すればその先には感情の欠如と言う人間らしさが損なわれた結果のみが残る世界が完成する。
それを防ぐために実用化されているのがVRCであり、仮想現実であり、DWOのようなゲームなのだ。
人類の精神の停滞、植物化を防ぐための社会機構。
そしてその社会機構は、結局のところ人類に倫理の欠如をもたらした。
どうしようもない、社会問題なのだ。
「ちっ!! うまく合わせてきやがったか!! な!? 『パリィ』!!」
「人型なだけあって、相応に難易度が高いわね!? 射線が通らないんだけど!!」
「そろそろ決めに入りてぇな? 『千切り』」
カウンターからのスキルを用いた攻撃、その斬撃はゴブリンが行った回避スキルによって避けられた。
直後、ロッソは魔法を放つがそれは武器を盾にし防ぐ。
所詮ゴブリン、たかがゴブリン。
されどゴブリンだ、進化したモンスターの強さは未進化の存在の数倍は厄介であると言える。
「うー!! 元がゴブリン種なだけあって相当厄介なんですけど!!」
「分かりきってる話だろうがよ、援護の手を止めんじゃねぇぞ!!」
そう言って、村正はさらに切り掛かる。
二人での行動、気遣うような手間がない以上動きはより精錬されている、実際ゴブリンに与えているダメージは大きい。
だが、与えているダメージが如何様に大きくともゴブリンはそれに対しある程度のスキルを用いて回復を行なっている。
苦戦ではないが、少々遊びを含んだこの戦闘では対戦するには荷が重い敵であった。
「まー、しゃーない。そろそろ殺すか、いくぜ? ロッソ。」
「退いてくれるのなら私が一撃で片付けるのだけれど?」
「遊びにそいつは少々無粋ってもんだ。」
「私もそう思うわ、というわけで早く終わらせなさい。そろそろ鬱陶しくなったしね?」
命令するなというように視線を向けつつ、刀を握りしめ一気に懐に踏み込むと殺すために刀を振るう。
まごうことなき、殺傷剣。
生き死にを分つ、殺人剣。
振るわれた技術は、まごうことなくゴブリンの首を捉えた。
「『断頭』」
そのまま勢いのまま横一線に刀を加速させ、首を落とす。
断罪ゆえの断頭ではなく、殺すための断頭。
皮一枚残す必要はない、そのまま完全に切り裂かれた首はゆっくり地面に落ちていく。
バスケットボールのように、地面に触れ少しの変形と共にゆっくりと少し浮き上がりそのまま二、三度バウンドしつつポリゴン片に変化する。
その様子を見ながら、冷ややかなめでそれを見下ろしながら残心を行い、そのまま視線っをロッソに向けた村正は次にインベントリを確認しハァ、とため息を吐く。
「ロッソ、そろそろいいのか? あと十分程度で120分だが?」
「あー、もうそんな時間? あれー? 少し遊びすぎたわね、もう一戦ぐらいと思ったのだけど。」
「10分でもう一戦と洒落込むにゃぁ、やや少くねぇな。せっかくの後衛職、それも一流の人材が居て儂としてももう少ししたいとこだが……、今日はここまでってところか。」
「あら? 存外高評価、嬉しいわね。」
そう言って、彼女はログアウト処理を行うとそのまま退場した。
村正は後日、この埋め合わせを行おうと思いながら次の獲物を見つける。
次の獲物はまたゴブリンだ、しかも複数。
しかし、村正はそんな複数の敵に臆することなく今手に持っていた刀を納刀しインベントリにしまうと着ている着物を着崩す。
村正は真っ当な剣士でないために、その戦い方は少々亜型だ。
特にこの世界ではスケルトンやスライムの次に弱いゴブリンという姿で生誕したため、暗器や仕込みを使うことに抵抗はない。
とはいえ、真っ当な戦い方ができないわけでもない。
先程などの通常の戦闘では多少見栄を張るため、真っ当な戦い方を心掛けるが個人で戦うのであれば見栄を張る必要もない。
「『転装』、っと。少しばかり本気でいかせてもらうか。」
スキルによって装備を一気に増加させる。
草履は下駄になり、白色の靴下は黒色で硬質な具足に変化し、両腰には計四本の刀が刺さる。
着崩された肝の中には斜めに皮帯が巻かれそこには複数の鍛治道具がかかり、腕には手甲が装備された。
「儂の勘がよく騒ぐ、そろそろ本気を出さなきゃならん雰囲気があるんでなぁ? 前座にもなりゃしないと思うが、準備に付き合えや。」
左右の腰から刀を抜刀する。
どちらも村正お気に入りの刀だ、その性能は他の刀と比べ一段勝る。
魔刀『白屍』、剛刀『阿修羅威』、正刀『法華』、駄刀『堕駄羅』。
その全てに特異的な特殊アーツが宿っており、単純に抜刀するだけでもその脅威を知らしめるだろう。
ギャアアアア!!
だが、その脅威を感じないゴブリンどもは臆することもなく、村正に襲いかかってきた。
それを冷笑し、そのまま迫り来る1匹目を拳で粉砕する。
村正の筋力、すなわちSTRは非常に高い。
当然のように武器を使うまでもなく、村正はただの拳でゴブリンを殴り殺す。
「『威圧』、『筋力強化(炎)』っと。刀を抜くまでもなさそうだな?」
目の前で死んだゴブリン、だがその仲間は殴り殺した時にうまれた隙を見て好奇とばかりに襲い掛かる。
だが、その攻撃は軽く防御の構えを取った村正に防がれた。
そしてカウンターとばかりに行われる村正のボディーブロー、腹を抉るようにして放たれた拳はゴブリンを大きく吹き飛ばす。
そして、背後に迫っていたもう一体に向けて大きく踏み込みスキルを発動した。
「『八極拳』、『発勁』!!」
地面がえぐれるほどの踏み込み、そこから繰り出される肘の打撃。
踏み込んだエネルギーを余すことなく伝わせ、その胸部を粉砕する。
その攻撃が胸部に抉れめり込み、そのまま体の穴から血流が逆噴射した。
返り血を浴び、生ぬるい暖かさに包まれながら先程殴りつけ、起きあがろうとしている一体に胸に連ねていた鍛治道具を掴む。
鍛治士、しかも鍛造を生業とする人間にとっては必須の道具。
金槌、その柄を掴み下から上に振り上げ脳震盪を発生させた。
ゴブリンの手からこぼれ落ちる棍棒、それを蹴り飛ばし積極的に戦闘に参加せず自分以外がやられたことで逃げようとしたゴブリンの足に上手く当てる。
そのまま抜刀術のアクティブスキルである舜歩を用い、急接近すると『白屍』を抜刀し背後から袈裟斬りとした。
ぱっくりと割れた背中、そこからあ溢れ出るはずの血液は白い砂となり肉体は即座に朽ち果て、白骨のみとなる。
魔刀の名に恥じぬ効果を見せつけられた村正はニヤリと笑い調子を確かめた。
「まぁ、上々ってとこか。刀に頼ってるわけでなし、殴る蹴るの格闘でほとんど仕留めたのは完璧だな。」
そう言いつつ、刀を懐から取り出した布で拭いそのまま納刀する。
そして今だ生存している1匹のゴブリンの頭部を踏み潰し、ザクロのように潰れた其れを見て鼻で笑うと新たな敵を探す。
負けない、負けるはずがない。
そもそもこの程度の雑魚的に苦戦する程度の弱さではないのだ。
それこそ森の深部に入り込み強敵との接敵を望むのなら話は別だが……。
「あー、やめやめ。戦闘系クランが素材回収に勤しんでんならわしの出る幕にゃぁねぇな。」
掲示板を見てそう呟く、そもそも村正は戦闘特化な人間ではない。
近接にこそ多少の腕の覚えがあるが、総合力では普通に戦闘系上位には及ばないのだ。
それこそ低レベル帯の雑魚を何度も狩るぐらいが丁度いいぐらいには。
もちろん無理をすれば多少難易度が高い敵にも挑める。
だが無理をする理由がない以上、安定した狩場に居たいと思うのは間違いだろうか?
いや、間違いであるはずがない。
「ほーん、基本的に『黒獅子団』と『キャメロット』の二強ねぇ? 一応、『十二勇士』と『探求会』も動いてるらしいが……、人数的になぁ? と言うか、キャメロットの連中はあの結界の方を注視していると思ってたんだが別段そういうわけでもなさそうだ。んで、敵は……。ほうほう、昆虫族に植物族がメインってとこか。相性わりーねぇ? いや、森に生息する動物族も結構な数がいると考えりゃぁ、悪くはないか?」
実際戦うことを想像しながら皮算用を行う村正、実際に戦おうとしないのは身の程を弁えているのかチキンなだけなのか。
どちらにせよ、戦う気がない村正は少しスレッドを閲覧したあとそのまま閉じる。
そのまま、インベントリから取り出した塩づけ肉を齧り敵を睨む。
敵はオーク、個体によっては合計ステータスが1000を超えている存在でも多少は苦戦を強いられる程度に強い相手。
相手をするには少々骨が折れそうだが……。
「ふーん、いいねぇ? やってやろうじゃねぇか。」
逆に村正にはそれが燃えた。
ゴブリン程度なら弱すぎて戦いごたえがないのだ。
多少強い相手、もしかしたら負けるかもしれないと言う緊張感。
そんな戦闘の醍醐味を感じれそうな相手を前に村正は抜刀した。
もう既に塩ずけ肉は平らげている、さっと抜き去った刀は月光を反射し煌めいて居た。
ブモォォォォオオオオ!!!!
怒りの咆哮をあげ、オークは手にもていた肉切り包丁を持ち上げる。
それに対し、月光に照らされた村正は四本のうち一本を抜刀し戦う準備を整えた。
「こいよ、三下。儂が相手だ、存分に力をふるえや。」
ブゥゥウウウ!!!!
静かに、唸るようにして村正の声に応えるオーク。
鑑定を発動すればその殆どのステータスは見えず、ただ見えるのは種族名のみ。
種族、オーク・キラー。
村正にとっては初見の敵だが、嫌でも感じるこの威圧はこの初心者フィールドのボスであることを感じさせた。
「『抜き身』」
ブオン!!
互いにスキルを発動する。
抜刀術、その基本的なアクティブスキル『抜き身』。
その効果は納刀するまでの間、基本的な攻撃力の向上。
それを発動した村正に対し、オークは『筋力強化Ⅱ』を発動する。
ジリジリと、もしくは大胆に二人の距離が詰まり緊迫感はより一層高まった。
そしてその緊迫感が最高点を超え、決壊した時二人の得手物が激突した。
おかしい、主人公の活躍がないぞ?
(以下定型文)
お読みいただきありがとうございます。
コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』 の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!
また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね
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