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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『【天流】玄信』

 キッルを討伐? した5人は、建造物の前で一時的に解散するかどうかを話し合っていた。

 コチラの時間換算五時間、流石に疲弊が目立って来たことが原因として挙げられる。

 

「今は5時ですか……、次は明朝9時でどうです?」

「現実換算六時間の休憩って訳か、悪かねぇ。ちっとばっか儂も用事があってな、急ぎじゃねぇがここで終わらせんのも有りか。」

「ハイハイハイハイ!! 俺も賛成!! ぶっ続けで十時間以上やってんだ!! 良い加減休みてぇ!!」

「うむ!! 余もオレンジジュース飲みたい!!」


 ロッソは何も言わないが、賛成を示している。

 ならばと、ヴィヴィアンは休憩することに決定した。

 だが、ログアウトする人員が出ている以上ここでハイ、解散というわけにはいかない。

 ヴィヴィアンがいくつかのアイテムを取り出し簡易的な結界を作成しようとしたところで、ロッソが横からアイテムを投げつけた。


「……、なんでしょう?」

「アンタのその粗雑極まりない術式を見たく無いのよ、これを使いなさい?」

「はぁ? 巫山戯て居るのです? 私の理論は完璧で有り、貴方のものを使うまでも有りませんが? まぁ、渡されたモノを試すというのもまた上に立つものの定め、業腹ですが是非とも有効活用して差し上げましょう。」

「はぁぁああ? 私の作った物が気に食わないっていうのかしら? なるほど……、よし!! 殺す!!」


 瞬間、二つの極大魔術が展開され螺旋を描き魔力は収束させ、森羅を読み解く万象の魔女が放つ一撃が成立する。

 簡略詠唱、ソレも黒狼が扱えない高等な魔術でソレを成立させていた。

 あまりに圧倒的なソレを見ながら黒狼は咄嗟に体を滑り込ませる。


「はいストップー、喧嘩は良く無いぞ? 両成敗だぞ? 具体的に言えば三竦みの戦いになるぞ?」

「一対一対二の戦いか、悪るかねぇ。上等だ、今すぐやるかい?」

「喧嘩はダメだぞ!! 泥臭いし何より映えがない!! ……うむ、少し待て劇場を開くのでな!!」

「「すいませんでした!!!」」


 止めるのがめんどくさくなった黒狼と村正はどっちも切り倒すため剣を抜き、ネロはより楽しもうと心象世界を開こうとする。

 その冗談の通じなさを体感した2人は慌てて謝ることにした。

 というか、劇場まで開き戦うとなればソレは喧嘩ではすまない。

 一種の決闘、もしくは愉悦や娯楽のための闘争になってしまう。

 この魔法陣の展開は所詮魔術師のとして、何より魔女としての尊厳の現れでありプライドとエゴのぶつけ合いでしかない。

 つまり、他人に迷惑がかかるこの状況でソレを行うに値する理由はないのだ。

 

「む? 争わないのか? しょうもない……。」

「争わない方が何倍も良いだろ? と、いうかソレ何?」

「え? これ? セーフティーポイントよ? これを設置して登録したら一定時間の間この一帯にリスポーンすることができるのよ。魔法陣を刻むだけで作れる便利な代物よ?」

「……閃いた!! なぁ、その場でリスポンできるアイテムとか作れない? 時間は1分……、いや30秒でいい。」


 と、交渉をされたタジタジとなるロッソを横目にヴィヴィアンはセーフティーポイントを作成し魔杖から魔力を込める。

 村正はその杖を訝しげに睨みつつ、金槌を取り出した。

 

「簡易結界なら儂に任せやがれ、手前の魔杖なら魔力は足りんだろ? なぁ、裏切りの魔女さんよ?」

「酷いですね、私は()()裏切っていませんよ?」

「笑わせてくれる、裏切る気満々の奴が吐くセリフじゃねぇ。」

「……まぁ良いでしょう、剣に宿った特殊アーツ……。いえ、この場合は概念ですか。まぁ、ソレを応用し相乗効果を起こすモノですね? なるほど、私たちでは再現できません。これはまた一つの魔術の到達点ですか。」


 そう言いつつ、莫大な魔力を村正の指示する刀に魔力を流し込みソレを感じた村正は結界を展開する。

 結界硬度はバイオ結界に劣るとも勝らないモノ、間違いなく生半可な攻撃では破壊されない。

 これ以上の結界となれば持続性を大幅に捨てねばならぬ程に難解かつ神秘的な代物だ。

 だが、ヴィヴィアンはソレを一眼見るなり即座に術式を書き足し結界の魔力ロスを大幅に減らしたのだ。


「この場合はこの魔術式を付け加えるべきでしょう、持続時間が半時間ほど伸びます。」

「……汎用性はないわね、術式としては二流の代物かしら?」

「効力が重要でしょう? 再現性より実益です。」

「実益のみを追求しても意味はないわ!! 重要なのは再現性と応用能力よ!!」


 バッチバチに睨み合う2人だが、ソレを無視して黒狼は登録をするとログアウトを行った。

 ソレに続きネロもログアウト処理を行う、残ったのはヴィヴィアンとロッソ。

 そして村正の3人だけだった。


「喧嘩両成敗ってな? 問答無用で切るぞ?」

「「すいませんでした!!」」


 明らかにヤバそうな妖刀を取り出した村正がドスの効いた声でそう告げると、流石に諸々の危険を感じたのかロッソとヴィヴィアンは即座に謝る。

 若干だが、力関係が構築され始めたようだ。


「さて、儂は用事があるから一旦ここを離れる。あー、ロッソ。ついてこれるか?」

「え? なんで? まぁ、私もまだまだ研究する予定だったから時間はあるけど……。」

「語るまでもねぇだろ、手前ら二人の雁首付き合わせりゃぁ即座に喧嘩しやがる。ついでに手前と話をしたいんでなぁ? つーか、隠したいんならもう少し上手くやれや、ヴィヴィアン。」

「あの二人は気づいていない様子ですが? まぁ、私の変装がひどく幼稚なのは認めざるを得ませんが……。」


 ブツブツと文句を言いつつ、ヴィヴィアンは椅子と机を出し紅茶を作り始める。

 ソレを見たロッソは羨ましそうに彼女が出した酒を見ると、大人しく自前のコーヒーを飲み始めた。

 と言うか、白銀の魔導銀で彩られた彩色豊かなガラス瓶の中に入っている数少ない黄金色の蒸留酒を羨ましがらない大人は少ないだろう。


「渡しませんよ? 最大限に縁を繋いで得てる代物ですから。」

「まさか、貴方から施しを受けるなんて……。ねぇ?」

「儂の方を見るな、儂の方を。」


 そう言うと、村正は幾つかの小道具を取り出し装備した。

 先程までは若年の侍装束である風来坊に見える様相だったのが、一度小道具をつければ若年であれど油断ならない老獪な雰囲気を醸し出す。

 雰囲気がお遊びから変化した。


「いくぞ? ロッソ。向こうさんにはもう、一報入れたしな。」

「へぇ? 誰? その人って。と言うか、私がついて行っても大丈夫なの?」

「問題ねぇよ、柳生のばーさんが一々そんなことで怒りゃぁせんさ。」

「やよい……、柳生!? 『剣聖』の!? 彼女の刀も貴方が担当してるの!? あの人間国宝の!?」


 うるさそうに顔を顰め、手で鬱陶しそうに追い払う動作をしつつ村正はその言葉に同意する。

 この時代における人間国宝、その価値は非常に高く全人類が1000億を上回っている中人間国宝に選ばれた人物は非常に少ない。

 その中で、その刀術のみで人間国宝となった人物。

 ソレが柳生と呼ばれた人物だ。


「このゲームの広告塔の一人なのは知ってたけど……、貴方と知り合いなのは意外だったわ。」

「彼方でも雇われているんでねぇ?」

「……貴方、何者?」

「っは!! 多少名が知れているだけのしがない刀工だよ。」


 それだけ告げると、村正は森の中に入りゆく。

 その背中を慌てて追いかけるロッソ、その後姿を眺めつつ唇を紅茶で濡らす。


「私的にはしがない刀工がこれほどの刀を作れるとは思えないのですが……、まぁ良いでしょう。現実の詮索は無粋でしかありません、ソレによる不和は私の望むところではありませんしね? ホント、彼らにとって私がリーダーというのは少々力不足なのでしょうか?」


 そう言い、再度唇を濡らすと艶かしく指を舐めログアウトした。


*ーーー*


 ところ変わってここは森の中、村正とロッソは森の中を歩いていた。

 森の中、風情を楽しむ村正にとって本来ならば静かに歩みたい場所。

 だが驚愕と衝撃に興奮するロッソによってその儚い思いは脆く砕け散っていた。


「ちょちょちょ!? 説明しなさいよ!? ()()人間国宝よ!? 余の有名度合いにファンだけでクラン結成されてるレベルなのよ!? なんで平然と彼女と会えるのよ!?」

「本人曰く、『右腕は信頼できる鍛治士じゃないとね』らしい。八十越えの岩窟婆なんかしらねぇが無駄なこだわりがあるらしいな、あんな婆にゃぁなりたかねぇ。」

「ソレを言うならジジイでしょうが!? と言うか良くあの柳生にいえるわね!?」

「古い付き合いなんでな、親父の代から関わりがあるし。」


 そう言い捨てると村正は腰につけていた刀を鞘から引き抜き、襲いかかってきた猿を両断する。

 ソレを見て気づいたロッソは、流れるように現れた2匹目の猿を杖の上部で叩き落とし下部で刺し殺した。

 返り血を浴び、ヨシ!! と言っているロッソを見てドン引く村正。

 しかも殺す時に解体スキルを用いて肉体がポリゴン片にならないようにしていることから、そこまで残忍な人間だったのかと村正は震えた。(なお、無表情)


「やっぱり杖で殴るのは良いわね!! 魔術なんてコストが高いし面倒くさいし噛むしクソだわ!!」

「いや、仮にでも魔術師が其れを言って良いのかよ?」

「魔術スレじゃみんな言ってるわよ? まー、魔法使いが多い理由の一つでもあるし。ただ実際極めれば強いのは圧倒的にこっちだし……。まぁ、私は炎に絞って習得してるから程々には極めてるけどね?」

「嗚呼、だから杖の名前が緋陽秘妃(ひひひひ)の杖なのか。いや、訳わかんねぇが?」


 大きな赤色の魔石が杖の上部に取り付けられているその杖を見ながら呆れ、ため息をつく。

 名前があまりにもふざけ過ぎている、そのくせ炎に関してはかなりの補助効果と耐性をもたらす効果を知ることができてしまったのだ。

 村正が持つ当たり前の感性ではあきれる事しかできない、黒狼ならば興奮したかも知れないが。


「うーむ、面倒くせぇ。転移の結晶とか使えりゃ便利なんだあがなぁ……。」

「課金をしたら……、あーそういう? そもそも登録してないのね?」

「そっちが持ってんならありがたく利用させてもらうが?」

「残念、私持ってないのよ。」


 そう言って彼女は笑い、そのまま背後に現れたゴブリンを殴殺する。

 今度は解体スキルを用いてないのか普通にポリゴン片に変化した。

 

「で、そっちの猿はどうすんだ? 残したってことは素材なんだろうが……。」

「ん? 一応初遭遇だからね、薬液に浸けて保存しようと。」

「怖ぁ……、手前ってそんなキャラだったか?」

「元からこんなもんよ? 私は。短い時間だったから気づかなかっただけじゃない?」


 そう言って、ロッソは死体となった猿に何個かのポーションをかけて状態保存を行いインベントリに仕舞う。

 しかも鼻歌を歌いながら……。

 村正は恐怖した、かの邪智暴虐の魔女に恐怖した……。

 具体的にいえば満面の笑みで楽しそうに他生物をホルマリン漬け……、とはいかないものの薬液漬けにするロッソに全力で恐怖した。


「……せめて笑わないでくれねぇか? 不気味すぎる。」

「え? 私笑ってた?」

「無自覚かよ、おっかねぇ……。」


 そう言って、森を再度歩く。

 バイオ結界があった周囲から離れれば離れるほどモンスターの量が増量していき、強よさはソレほどでも無いものの厄介さがより増す。

 強敵がいないのは幸いだが雑魚の多さには辟易としており必然、集中力を切らせない現状では疲労も溜まる。


「今日は森が……、風が騒いでるわね……。」

「文学的表現はいいが実情はどうだかね? と言うか、あんな不気味な結界がある以上騒ついていない方が相当に珍しいと思うんだがそこんとこどう思う?」

「ハイハイ、言い返す言葉がないわよ。」

「じゃ、風が止む前に急ごうぜ? くく……。」


 ネタで呟いたロッソの呟きに全力で煽り返す村正。

 ソレに落ち込むロッソだったが、最後の言葉を聞いた瞬間一瞬で激昂する。

 目の前の男はわかってて揶揄ったからである。

 ロッソは恥ずかしさと怒りを混ぜ合わせたなんとも言えない感情を杖に乗せ村正を叩き、悶絶させフン!! と鼻を鳴らすと村正を置いて先に進む。


 とまぁ、こんな一幕もありつつ案外近接もこなせるロッソの助力も有り、難あれど問題はなく森を三時間程度で抜けた。

 森を抜ければ街はすぐであり、そこからは特になんの問題もなく進むことができ村正の予定よりかは少々遅かったが無事町に到着することとなる。

 

「あー、ばーさんもういるのか。」

「え? なんでわかるの? 地図スキルじゃ、フレの位置までは出なかったはず……。」

「いや、普通にそこに玄信(はるのぶ)がいるんだよ。ほら、『天流』の。」

「『天流』? ああ、あのファンクランの特別相談役の?」


 ソレに村正が頷くと同時に、玄信が村正に気づいたようで手を振って近づいてくる。

 腰には刀が三本、まとめて差されておりソレに気づいたロッソはただの剣士でないと察した。


「よぉ、久しぶり。依頼の代物持ってきたからばーさんに会わせやがれ。」

「あの人は今樽酒を懸けて闘技場でバトロワをしてますよ……、っと其方の方とは初めましてですね。『天流』玄信と申します、とても可愛らしい顔をしていますね? 是非ともこの後お茶を……。」

「え? あ、どうも。私は『ウィッチクラフト』のロッソよ? 魔術的な道具が欲しければ是非言ってね? 後お茶は……、ちょっと……。」

「口説くな口説くな、ばーさんから鉄拳が見舞われるぞ?」


 そう言いつつ二人の距離を物理的に開けると、村正は肩をすくめる。

 口説いた玄信はテヘペロというように舌をちょっと出しており、ロッソはまんざらでも無さそうに顔を赤らめていた。

 実際、ロッソはそういう類の経験が少ないのだろう。

 村正はこんな調子で大丈夫か? と内心で思いつつ、玄信の首根っこを掴むとそのまま歩き出す。


「ちょちょちょ!!! 引きずってる引きずってる!!? あなた身長高いんですから!?」

「口説くやつが悪い、闘技場はどこだ? さっさと案内しやがれ。」

「というか、最初は誰もいなかったはずなのにこんなに賑わうなんて……。すごいわね、人間の情熱って。」

「そりゃ、そうよ。」


 そう雑談をしつつ、10分程度で村正達は闘技場に到着したのだった。

和風プレイヤーのお通りよー。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
"余"を"あまり"か"余り"にした方がいいと思う 特に一人称が"余"の人がいたばっかだし普通に誤字脱字だと思った 量が増量も避けた方がいい気がする
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