Deviance World Online ストーリー3『進化2』
(さて、まず儂はどう動くべきだ?)
前方で展開された魔法から逃れながら、村正は思考する。
手に持った刀は村正の自己認識的には凡庸なモノだが、放つ斬撃は全て高火力極まりない。
故に、目の前の敵を倒すのは大して苦労もないが……。
「村正!! 水出せるか!?」
「まさか……、あの馬鹿野郎共!! 延焼考えてねぇのか!?」
「はぁ!? 私のコト、バカにしたのかしら!?」
「もちろん、対策済みですよ? ええ、勿論です。私が対策を考えないわけないでしょう?」
明らかに黒狼と村正から視線を逸らした二人は、即座に魔法で炎を消す。
だが、ソレが原因で一斉にモンスターが強化された。
理由は一目瞭然、一切にモンスターの肉体が大きく膨れ上がりその体に張り巡らされている根がより太く強靭になったからだ。
「巫山戯るなぁー!!? クソがぁぁぁぁあああ!! なんで火を消して強化されるんだよ!?」
「初見殺しとは良い度胸だ、喉元掻っ切って殺してやらぁ!!」
ブチギレた近接の二人組は、即座に沸騰するとスキルを発動して強化されたモンスターをバッタバッタと切り断ち突き刺さす。
一刀を軽く振るい血飛沫が上がる中、華麗に舞う村正。
槍剣杖を鈍臭いながらも振るい、確実に一人ずつ倒しきる黒狼。
20余りの強化された敵といえど、二人にとって対処は容易い。
「退きなさい、私が魔術で殺します。」
「私が殺るわ!! 邪魔よ!!」
「「うるせぇ!!」」
背後からかけられた声を切り捨て、村正と黒狼は半数に減った敵を怒りに任せて殺すのを再開した。
また、ほぼ同時に隠蔽を施していた刀を引き抜く黒狼。
直後に、方向感覚が狂う感覚に襲われるがソレを歯を食いしばり耐える。
「俺は状態異常無効を持っているから状態異常を喰らう訳がねぇよなぁ!!」
「(え、これって肉体に作用するのではなく空間に作用するモノでは……? 肉体に発生するモノでなければ状態異常無効なんかのスキルは効果を発揮しないはずでは……?)」
「……は?」
「はん!! そんなスキルを保有しているのであらぁ最初から解いとけ!! 馬鹿野郎!!」
何言ってんだコイツ? という顔をする後衛二人組。
ソレに対して、脳筋的な理論で納得する前衛二人組。
思考の方向性がよくわかる話だ。
「『スラッシュ』ッッッッッツツツツ!! 刀でも使えるのかよ!?」
「剣術だから当たり前だろ!! 刀も斧も剣の内ってなぁ!?」
「いや、斧は違うやろ!?」
ツッコミを入れる黒狼は持っていた槍剣杖を、操られているアークの脳天に投げ捨てると剣を足で蹴り飛ばし近くにいたゴブリンを刺す。
そして、右足を軸に360度回転してゴブリンとオークを切り捨てた。
「うん、刀も悪くないな。特に切れ味がサイコーだ、やはりジャパニーズSA・MU・RA・Iが使う刀ってやつは良いな。」
「日本か? いいぞ、あの国は。今度実家に帰るのも悪かねぇ。」
「お? 日本出身? ラノベ大国の話を今度聞かせてくれよ。」
「儂はラノベが好きじゃないんでねぇ。とはいえ、暇なら今度知り合いを紹介してやらぁ、っと。此奴で最後だ!!」
雑魚をバッタバッタと倒した黒狼と村正、最後の一匹は村正が首を切り落として雑魚狩りは終わり残るはボスのトレントのみ。
黒狼はさらにもう一本刀を引き抜くと、二刀流になりトレントに一気に接近する。
「死にやがれ!!」
そう叫びながら、振るった二刀はトレントが振るう根によりうけ止められる。
その威力は凄まじく、また同時に繊細さには欠けていた。
平行に並べた二刀の斬撃は、トレントの体躯に多少の傷を負わせるに留まる。
ダメージは微々たるもの、だがその行動は決して無駄ではない。
黒狼の攻撃、その一瞬後。
村正が刀を振りかぶり一気に接近し、特殊アーツを発動したからだ。
「呻け、『鈍』!!」
発動された特殊アーツは、村正の発声とともに効果を表し刀から黒い霧が上がる。
発生した霧は、即座にトレントに絡みつきデバフを発生させた。
「弱体化が入った!! 一気に攻めやがれ!!」
「言われずとも!!」
互いに声を掛け合い、黒狼は跳躍を行う。
その跳躍は本来の黒狼が可能な高さを優に超えた大跳躍、2メートルは飛ぼうかといったレベルの一飛び。
絡繰は簡単だ、黒狼が履いている靴。
それはダンジョンで入手した浮足のブーツであり、その効果は不安定な場所でも問題なく動けると言うもの。
だが、ソレだけでは大跳躍をした理由にはならない。
何故、黒狼は大跳躍できたのか? その答えは靴に魔力を流したからだ。
浮足のブーツの名称から分かる通り、その効果を発揮するために若干地面から浮く。
このことについさっき気づいた黒狼は、魔力を一気に流し大跳躍を行ったのだ。
遥か高くから二刀の鋒をトレントに向け、全体重をかけて突き刺す黒狼。
瞬間、『鈍』と告げた刀を振るう村正の斬撃が黒狼を掠めながらトレントを抉り切った。
「まだまだァァァアアア!!」
そう叫びつ、黒狼は手に持つ二刀を乱雑に振り回しトレントを切り続ける。
その横では村正が舞う様な演舞にてトレントの枝葉による攻撃を防ぐ。
安定感はなくとも、その連携は間違いなく最低限に完成されたものであり互いの長所を潰すことがない。
ソレ故に2人の連携は明確にトレントを追い詰め、そして数分もしないうちにトレントのHPは全損する事となった。
*ーーー*
「一丁上がり!! ふぅ、疲れた。」
「おう、疲れとけ疲れとけ。あの3人組よかぁ働いたからな?」
嫌味を軽く言いながら刀を拭うと村正は静かに黒狼から刀を引ったくる。
ひったくられた黒狼は、驚いた顔をしながらも大人しく手を引きトレントのドロップ品を回収した。
「木の枝、か。杖の素材に使えるっぽいな。」
「トレントの素材は上質な魔術道具によく使われると聞きます、ぜひ道具を作ってみては?」
「ふーん、素材さえ揃えば作ってみるか。って、しれっと独り言に割り込むな!! ソレをするぐらいならさっきの戦闘で手助けしろよ!?」
「火消しで、忙しかったのですので……。」
若干申し訳なさそうにそう告げたヴィヴィアンはそう言う、その言葉に半眼を向けた黒狼だったがまあ良いと言わんばかりに顔を背けるといくつかある枝の数本をそれぞれに分けていく。
生憎と5で割れる数字で無かったため黒狼は、自身と村正の分量を多めに配分しソレ以外は均等に渡す。
流石のこの配分に文句を言う者はおらず全員が大人しくそれぞれの分を受け取った。
「そう言えば、黒狼。進化はしないのですか? ほら、ちょうどこの辺であれば他者からも見られにくいでしょうし。」
「……じゃ、せっかくだしそうするか。」
ヴィヴィアンの意見を聞き入れた黒狼は早速と言わんばかりにステータスを操作し進化を始める。
未だ二度めとは言えその手付きは非常に慣れたものでありスムーズに操作した後、ひとつのアナウンスを耳にする。
ピコン♪
『ーー限定アナウンス、種族進化が行われました。固有スキルの増減、および変化が発生しますーー』
「へぇ?」
「これが、進化……。興味深いわね?」
「元の骨の色は確か黒でしたよね? 今はそれが白色に近くなっています。……色々と興味深い、良い研究対象ができました。」
「むっ!? さっきより禍々しく成っておる!? 白色なのに何故!!」
四者四様の感想を口に出しながら黒狼の進化を観測した。
ヴィヴィアンが告げたように黒狼の体は全体的に黒から白へ、骨として本来の色味である白色となっている。
だが、不気味さは黒色であった時より明確に色濃く出ておりその禍々しさは何かを冒涜する様でもあった。
また同時に体に刻印されていた蛇の刺青のような物も変化している。
蛇の背中、その一部から翼の様なものが描かれているのだ。
その他にも一見すると認識しずらいが、骨自体がより強靭となり簡単には折れないように内部組織が変化し、ひとつ一つの関節の間に魔力で形成されたクッションが形作られ運動性能の向上なども見込まれる。
個として、そして生物として階位が上がったような、まさに進化としか言い表せないような変化が黒狼に発生したのだ。
「『ステータス』」
一言告げた黒狼、そして視界には詳細な数値まで書き込まれた新たな己のステータスが降臨する。
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*ステータス*
名前:黒狼 Lv.1
性別:男
種族:アークスケルトン(深淵)
職業:屍操師 Lv.8
称号:進化の先駆者 不死者 劣悪を望まぬ者 Ⅻの難業の踏破者 深淵の黒豹を招いた者 英雄殺し
生命力:ー(なし)
耐久力:119 *種族特性です
魔力:194
STR:187
VIT:138
DEX:226
AGI:233
INT:309
スキル
光耐性(反転)Lv.6 *種族特性です
打撃耐性(反転)Lv.8 *種族特性です
魔力視 Lv.10 *種族特性です
魔力眼 Lv.3 *種族特性です (New)
状態異常無効 Lv.ー(上限) *種族特性です
錬金術 Lv.1
調合 Lv.1
闇魔法 Lv.7
光魔法 Lv.4
魔力操作 Lv.6
魔力活性 Lv.3
解体 Lv.1
鑑定 Lv.5
暴走 Lv.3
棒術 Lv.1
槍術 Lv.3
棍術 Lv.2
言語 Lv.5
跳躍力増強I Lv.3
腕力強化I Lv.3
視覚強化I Lv.2
インベントリ Lv.2
地図 Lv.1
火魔法 Lv.2
造形 Lv.5
加工I Lv.1
石工 Lv.2
筋力強化(幽) Lv.3
投擲 Lv.5
書籍集 Lv.1
剣術 Lv.6
魔法陣解読 Lv.6
呪術 Lv.4
深淵 Lv.5
環境適応(迷宮) Lv.2
自然破棄 Lv.2
環境強化(迷宮) Lv.1
汚染強化(深淵) Lv.1
精神汚染(深淵) Lv.3
環境汚染(迷宮) Lv.1
強靭な骨 Lv.4(New)
女神寵愛(闇) Lv.1 (New)
屍従属 Lv.2 (New)
指揮 Lv.1 (New)
弓術 Lv.1 (New)
蛇呪 Lv.3 (New)
環境適応(猛毒) Lv.10 (New)
魔術 Lv.2 (New)
水魔法 Lv.1 (New)
翼ある蛇 Lv.1 (New)
英雄の雛 Lv.1 (New)
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また一段と長くなったステータス。
ソレをみて黒狼は軽く息を吐く。
とは言え、何度も確認したステータスでもあるため大きく変わった所は少ない。
ただ進化で変化したことは幾つもある。
特に称号、強敵殺しが消え英雄殺しになり変わっていたり他にも深淵の黒豹を招いたモノやⅫの難行の踏破者が増えていた。
同様にスキルも増えている。
幾つもスキルが増加していることは去ることながら、進化により新たに会得したスキルが二つ増えた。
そう、『翼ある蛇』と『英雄の雛』だ。
翼ある蛇、字面の通り受け取れば東洋のドラゴン。
もしくは、遥か古代に存在したとされる恐竜のうちの翼竜を連想するだろう。
そして、英雄の雛。
これは字面の通りにしか受け取れずそれで居ながら、何故ソレを得たのか? と言う謎は明確にある。
その原因を究明するため、黒狼は鑑定スキルを発動し疑惑と苛立ちを声に出した。
「はぁ? 今回新規に得たスキル詳細見れないんだが!? 一応こちとら鑑定スキル5だぞ!!」
「ん? 何? そんな事あんのか?」
「……無くはないでしょう、ですが稀有な事例です。その類のスキルはキャメロットでも数人しか保有していませんので。」
「む? 余も持っておるぞ!! 余の鑑定スキルのレベルは2だから参考にはならんだろうが!!」
全くもって参考にならないことを話すネロを放置し、黒狼と村正やヴィヴィアンはあーでもないこーでもないと何故鑑定できないスキルが発生するのか究明を行う。
大前提としてスキルレベルが足りないことは当然だが、それにしても自己が保有するスキルの詳細が判明できないと言うのは明らかにおかしな話だ。
言うなれば己の腕が動かないようなモノ、特別な事情が無ければ動かないのはおかしい。
故にその原因を、特別な理由の究明を行おうと簡単に話った3人だったが……。
「無駄、ですね。情報が足りなさすぎます、もう少し確信に迫る何かがあれば……。最低でも貴方のスキル構成と称号、およびステータスの値と職業を確認できれば……。」
「阿呆、それは規則違反だろうが!! 其れにそこまで詳細に調べなきゃ結論は出ん、無駄だ無駄。こんだけ知恵を振り絞って出なきゃ後でやがるのは知恵熱のみだ。」
「と言うことだし、流石に俺も持つ手札の全てを曝け出す訳にはいかないんだ。ま、緊急の内容でもないし一旦諦めて貰ってもいいか?」
「うむ、ソレが良かろう!! 余、何の話か知らんけど!!」
一ミリも役に立たないネロの戯言はさておき、3人の話し合った結果この現象を納得できる説明は行えないと言う結論に至った。
それにいい加減ロッソが謎のキノコを頬張ろうとしている、流石に止めなければならないと言う危機感を持った3人は話を切り上げることを決定した。
キノコを頬張ろうとするロッソを慌てて止め、各々が呆れたようにため息をつきつつ各々の武器を仕舞う。
最も、村正は刀を軽く手入れしてから仕舞っていたが……。
「で、村正。先程来た時にはこんなギミックありましたか?」
「ある訳ねぇだろう、わかり切った質問をすんじゃねぇ……、いやただの確認か?」
「ええ、念のための確認です。しかし……、どうしましょうか? やはり推測通りこの周辺にモンスターが多量に発生するようになっていますね? 多量の魔力の収束などを観測していましたが……、実際推論どおりとなると珍しい。」
「まー、どちらにせよ。速攻で向かおうぜ? これ以上近寄れなくなる前にさ。ソレに目的地は変らない訳だし。」
黒狼がそう告げ、村正も賛同する。
今後の方針が決定したと認識したヴィヴィアンは、再度マップを開き目的地を確認した。
ようやく2回目の進化……、いや遅くない? キミ、Ⅻの難行に挑む時点で進化できたよね!?
(以下定型文)
お読みいただきありがとうございます。
コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』 の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!
また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね
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