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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『探求会』

 村正たち一行は森の中を進み、結果として巨大な結界に阻まれることとなった。


「結界、ソレも相当厄介なタイプですね。」

「意地でも儂らを通したくないと見える、一応壊せねぇことはねぇが……。」

「とりあえず、最大出力をぶつけますか?」

「貴方のガラティーンは周囲一帯が灰塵に帰すのでダメです。」


 そういうと、べディヴィエールは諦めたように溜息を吐きガウェインと話し始める。

 どうやら、一旦帰るかどうかの話し合いらしい。

 ソレに対して村正は、インベントリを覗き一つの刀剣を取り出すか悩み始める。

 

「どうしたのだ? 村正よ?」

「何、無理矢理突破してやろうかと悩んでるところだ。」

「行けるのならやって仕舞えば良いではないか?」

「そうも行かねぇ、まずまず常道で突破できねぇのなら相応の理由がある。その理由を無視してまで突破する理由がねぇ。」

「では帰ったらいいのではないのか?」

「みすみす目の前の謎を見逃せと? 笑わせてくれる。」


 そう言いながら悩むようにいくつか武器を取り出し仕舞う。

 どれも華美な装飾が施された宝刀、魔刀の類であり触れるのも躊躇う威圧感を醸し出している。

 ネロも空気を読み一切触ろうとしない。


「よし、やめておくか。最低限はこなしてる、これで文句を言われたら離反してもいいぐらいにはな?」

「裏切るのではないぞ? 村正。」

「さて、な?」


 意味深にそう言い笑うと、荷造りをする。

 そして村正はネロを連れると村正は森を出た。


*ーーー*


 一方、そのころ。

 ヴィヴィアン、ロッソ、黒狼は街中へと侵入して居た。

 とは言っても、別に犯罪を犯そうと言うわけではない。

 其れどころか、村正達と違い明確な目的がないと言っても過言ではない。

 あくまで、郊外より街中の方が話しやすいと言う理由。

 特に思考を張り巡らせたとかそう言うことは一切ない。


「ヴィヴィアン!! ロッソ!! 頼む!! 魔術を教えてくれ!!」


 では何故話しやすい場所に移動したのか? その理由は黒狼が二人に魔術を教えてほしいと依頼したからだ。

 黒狼は今まで碌に魔術を習っていない。

 レオトールから基礎知識は教わったが、その後はスキル頼りに変質させたり単純な魔法陣で攻撃したりと魔術の利点を潰すような使い方しかできていない。

 だからこそ、先ほどの戦闘で黒狼とは比べ物にならないほどの魔術を展開した二人にそう頼み込んだのだ。


「だーかーらー!! 私は嫌よ!! なんでイベントの真っ只中でそんなめんどくさい事しなきゃいけないの? そもそも、私教えるの向いてないわよ!!」

「私は教えたいのは山々ですが、いかんせんやることが多すぎます。そもそも私、邪道ですし?」

「コイツ……、むかつく!!」


 そう言いつつロッソは届いたコーヒーを飲む。

 ヴィヴィアンは注文した紅茶を不味そうに嚥下していた。

 常日頃から質のよい紅茶を飲んでいる彼女にとって所詮店で売られて居る程度の品では満足出来ないのだろう。

 

「邪道でも常道でも教えられないのか?」

「邪道を進むのにも常道を知らなければなりません、其れに邪道には邪道なりの理由があります。」

「ま、そう言うこと。諦めてね?」


 がっくり肩を落としながらも黒狼は諦めた様子はない、とは言え現時点ではどうしようもないことが分かったのか彼にしてはあっさり手を引いた。

 駄々を捏ねるとは少し違うが、何時もならもう少し小言の多い黒狼も今回ばかりは出しゃばりを控えた様だ。

 

「しっかしどうすっかなー? 流石に俺の持ってる魔術じゃ戦力外もいいとこだぞ?」

「戦力外? 先程の戦闘では十分な活躍をしたと思われますが……。」

「あー、一見すればそうかもな? ただ別に俺はそこまで強くはねぇよ。種族特性を活かせるだけ」

「其れも十分な強みじゃないの? 少なくとも私はそう思うわ?」


 黒狼の謙遜にそう言うロッソだったが、反面ヴィヴィアンは黒狼の言い分に納得したような表情を浮かべる。

 ゲームが開始してリアル時間一週間も達成していない、その中で種族特性に頼るほどに戦い方を確立させてしまっている現状。

 表面だけ見れば十分すごい話ではあるが、深く踏み込めばこれ以上の成長の余地がないと言うことだ。


「うーん、仕方ない。進化するかぁー。」

「はい、ちょっと待ちなさい。進化? 何々? 人種以外は進化しやすいの?」

「探求会で売っていますよ? 進化難易度は反転系と言うより、デメリットが重いスキルを種族特性として多く得ている種族ほど進化しやすいはずです。」


 驚いたようにヴィヴィアンを見るロッソ、同時にひどく納得したように黒狼は頷く。

 確かに相応のデメリットを抱えていたゾンビ一号の進化速度は早かった。

 そして黒狼も既に進化条件は達成している。

 と言うよりあの12回の難行を経験して得た莫大な経験値で、進化しないと言うことはほとんどないだろう。

 レオトールみたいに既に完成している存在でもなければまずまず進化できる。

 

「どこか隠れられるところはない?」

「では探求会に行きましょうか? あそこならば多少の情報を払えば部屋ぐらい貸してくれるでしょう。」

「情報? って言うことは監視されるのか?」

「そうなりますね。」


 その言葉を聞き明らかに嫌そうに顔を顰める黒狼、おそらく現状でも通常の進化系統から外れているのだ。

 異常を他人に悟らせるのはひどく嫌だ、しかも話を聞く限りでは情報を売り買いすることを生業とする商人。

 下手に隙を晒せば己のスキル構成すら丸裸にされかねない、そんな形なき恐怖心が黒狼を襲う。


「そこまで嫌な顔をしないでください、悪い人物ではありません。」

「其れを決めるのは俺だ、ヴィヴィアン。」

「捻くれてるわね、もう少し他人の好意に素直になったら? まぁ、会ったばかりの私が言っても何も響かないんでしょうけど。」


 と、言いつつ3人は立ち上がる。

 文句を言った黒狼だが、探求会に赴かない理由はない。

 確かに手の内がバレるのは嫌だ、だがぶっちゃけそこまで重要と思えるスキルは無い。

 精々が蛇呪や深淵、適応系のモノでありその性能を十全に引き出せて居ない現状別にバレたところでと言う話でしかないわけだ。


「では行きましょう、代金は私が払いましょうか?」

「え!? いいの!? じゃぁ、まだまだ注文するからちょっと待って!!」

「アホか? と言うか食い意地を張るなよ。っと、自分の分は自分で払うさ。500Gぐらいで十分かな?」

「お釣りは20ですね。はい、どうぞ。」


 黒狼に殴られ涙目になりながら慌ててコーヒーを飲み込むロッソを尻目に、黒狼とヴィヴィアンは店員のプレイヤーに金を支払う。

 そして、舌を火傷しながら店を出る二人に慌てて追いつく。

 こうして探求会のクランに3人は赴くことにした。


 さて説明と行こう。

 血盟(クラン)『探求会』、それはこのゲームの中でも屈指の情報クランでありそして最大手の商売系クランでもある。

 さまざまなプレイヤーに情報を売り、ゲーム攻略wikiなども作成している故にプレイヤーにとって居なくてはならない存在とまで言わしめるクラン。

 所属人数は多く、トップとされる血盟(クラン)『キャメロット』そして血盟(クラン)『黒獣同盟』に次ぐ第三勢力でもある。

 構成する人員の殆どは戦闘に向かないプレイヤーだが、戦闘以外の支援に関しては他の追随を許さず下部組織の商会は、クランの恩恵を受け様々な代物を扱う。

 その影響力は計り知れず、そしてそんな彼らを纏め上げる豪傑。

 其れが『インフォメーション教授』なのである。


 と、説明はこれぐらいにして情景描写に移ろう。

 イベント専用……、なのかは不明だがこの特殊MAPにおける最初の街。

 その中心部に血盟『探求会』のイベント用の本部があった。

 簡素な建物だが大きさは大きく中には物品の買取や販売、情報の買取や販売といった場所が真っ先に目につく。

 だが其れ以外にもパーティーの成立のための派遣サービスや、武器の手入れのための一時預かり所。

 従属(テイム)モンスターの回復や、ステータスを底上げするための設備有料提供などなど。

 様々な設備が整っており、また同時に様々なプレイヤーが忙しなく蠢き各々が目的をもって行動している。

 

「私は別で用事があるため少し別のところに赴きます、10分程度でしょうか?」

「じゃ、私はここらへんで待っておくわね。」

「ホイホイ。」


 冗談混じりに返事をしながら黒狼は、特に空いている場所へと向かう。

 そこの上には共通言語で『その他』と書かれており、部屋を貸してほしいという依頼をするにはここが一番最適だと感じさせた。

 というわけで受付で一番近い受付に入る。

 そこには探求会の制服を着た一人の女性がいた。


「すみません、部屋を貸してくれるサービスをしていると聞いたのですが……。」

「部屋を貸して欲しい? イベント開始直後でそう言う場所もまだ整ってないんですよね……。すみません!! また今度ならどうにかできるとは思うのですが……。」

「いや、元々ダメ元っていうとこだし全然かまいませんよ。」


 そう黒狼は返しながら、黒狼は「はぁ……」とため息を吐く。

 可及的速やかに、というほどでもない以上急ぎで進化してしまいたいと思っている黒狼がこのことを残念に思うのも仕方ないだろう。

 とはいえ、別に進化をここでしなければならない理由もないので多少残念に思う程度でしかない。

 受付から大人しく離れ、ロッソの元に赴く。

 即座に気づいたロッソは黒狼に手を振ると呼び寄せた。

 其れを見た黒狼は、少々暗い顔のままロッソに近づくと口を開く。

 

「さて、じゃ森に行くか。」

「……、黒狼って敬語使えたのね。意外だわ?」

「失礼な!! 俺だって敬語ぐらい使えるよ。普段はかったりぃから使わないけど。」

「へー、あれ? ヴィヴィアンは? 遅くないかしら?」


 キョロキョロと周囲を見るロッソだがヴィヴィアンを発見したのかまた手を振って呼び寄せる。

 黒狼と違い彼女は目的を果たしたのかホクホクの笑顔で戻ってきた。


「その様子ならば部屋は借りれなかったようですね?」

「ああ、というわけで森に行こうか。」

「森ですか、ならば村正達と合流することにしましょう。彼らも先程目的地に着いたようですし。」

「ふーん? 予想は当たってたのかしら? ぜひ聞きたいわね。」


 そう言いつつ、黒狼たちは一旦街を出る。

 街といっても殆ど商店街しかない代物であり住居はない。

 当然だ、プレイヤーはこの世界に在住しているわけではなく異邦の人間として一時的に存在しているだけなのだ。

 一部の宗教、具体的な名前を挙げると『黄衣の会』や『星の知恵』などといった宗教はこの仮想空間こそ我々人類が生きるべき世界であるという主張もあるが一般的な話ではない。


「互いに予想は外れていましたよ、少なくとも聞いた話では。」

「お? 流石のヴィヴィアン様でも間違えることはあるのかぁ〜?」

「失礼ですね、間違えることなど日常茶飯事です。重要なのは間違いを如何に是正するか、そうでしょう?」


 そんな風に煽り合いをしながら森へ進む。

 時間経過で徐々に遠慮がなくなったようであり、黒狼も相当に相手の神経を逆撫でする発言をしているがヴィヴィアンは其れに対し、たいした反応を返すことなく淡々と答える。

 ロッソは呆れた様子で二人の会話を聞きながら、武器を掴んだ。


「会話はいいけど、もうすでにバトルフィールドにでてるのよ?」

「気づいてるよ、安心しろ。」

「支援は必要でしょうか? いえ、あの程度なら一瞬ですね。」


 ロッソが見たもの、其れはバッファローのようなモンスターだ。

 森に向かう牧歌的な平原に嫌に似合うモンスター。

 そんな存在がヒズメで地面を掻き黒狼たちに突進しようと溜めをつくる。


 正面から受ければ確かに、強いだろう。

 だが、3人にとって其れを強敵と見定める領域はとっくの昔に通り過ぎていた。


「魔術で倒す? 物理で倒す? どっちがいい?」

「圧倒的魔術ね、壁役はよろしく。」

「はいはい、わかりましたよ。」


 槍剣杖を手に掴み、剣を引き抜くと黒狼は突進してくるバッファローに穂先を向ける。

 同時に鑑定スキルを発動、相手が使う手段を全て暴く。


「『ペネトレイト』」


 スキル、発動。

 槍がスキルエフェクトに包まれ、黒狼の肉体はスキルによって強制的に駆動する。

 槍を突き出す動作、ただその動きは慢性なものでいながら突進するバッファロー相手には十分過ぎるモノ。

 超高速で突進してくるバッファロー相手に丁寧に槍を突き刺す。


「バッファロー、もといベリカスバッファローねぇ。お前の敗因は、1匹だけでいたことだ。」

「射線から退いてね? 当たったら自己責任よ!! 『ファイア・ランス』!!!」


 黒狼がカッコ付けながらベリカスバッファローに問いかけ、その背中に向かいロッソは魔法で攻撃する

 膨れ上がる熱気と共に、高温の槍がベリカスバッファローに襲いかかった。

 当たる一瞬前、黒狼は即座に槍から手を離し逃れていたからほぼノーダメージであり、精々が光によるダークシールドの破壊の発生と言ったところだろう。

 つまり、一回の死亡もなく黒狼たちはモンスターを討伐したのだ。


「やはり問題ありませんね、さすが私が見込んだ者達です。」

「結局、自画自賛じゃない。というか、黒狼? なんで余計な事をペチャクチャと喋っていたのかしら?」

「え? 気分。というか、あれだったら俺一人で十分だったんじゃないか? ほい、ドロップ品の皮。」

「ありがと、ってそうじゃないわよ!! 確かにあなた一人で十分だったかもしれないけどねぇ!!」


 腰に手を当て、如何にもな「わたし、怒ってます!!」アピールをするロッソだったが無駄だということをすぐに悟ったのか説教をする口もすぐに閉じる。

 ヴィヴィアンはその仲良さげな二人の様子を見て微笑むと、紅茶を飲み干した。


「さて、時間は有限です。早く動きましょうか?」

「ほいへい、わぁってるよ。」

「黒狼!! 次からはへんな行動しないでね!!」

「気おつけておくよ。」


 存外仲良くなっている二人に再度目を丸くするヴィヴィアン。

 距離感が仲間よりも兄弟という風に例えるのが適切なほどに親密な様子に、一瞬遅れて黒狼も気ずき驚いていた。

 そして、距離感を再度見直そうと黒狼は決心し平原を抜けた。

更新が遅れて申し訳ありません。

この3人の会話が酷く難しく表現するのに手間取りました。

次回、二人と合流です。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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