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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『円卓の騎士』

 攻略を始めたとは言え、即座に大きな動きが有る訳ではない。

 それどころか、さっきみたいな戦闘行為はないとヴィヴィアンは断言した。

 理由はいくつかあるが、最大の理由はやはり準備不足であると言う所だろう。

 そもそも、彼らはさっき初めて出会ったのだ。

 高度な連携はまず不可能、さっきの戦闘でもヴィヴィアンとロッソの魔術攻撃の範囲が同じでありその範囲が重複した事により十全な火力雨を発揮できていなかった時点でお察しとも言える。

 また、黒狼と村正もそうだ。

 連携はろくに取れておらず、その攻撃は無差別に各々が行なっていただけ。

 それでも、ボスですらない敵には十分だったが流石に今回はそうも言ってられない。

 大群を相手にするならば、相応の準備が必要と言うわけだ。


「んで、組み分けっていう訳か。悪かねぇ、最初から大人数でやっても最善の結果は得られねぇしな。」

「うむ!! よろしく頼むぞ!! 村正!!」


 と言うわけで連携を強化する為に、組み分けが行われた訳だがどうせなら互いを知らない形がいいと言う黒狼の案を聴き特に互いを知らない組み分けとなった。

 つまりは、ヴィヴィアンとロッソに黒狼。

 ネロと村正といった形になったと言うわけだ。

 

「しっかし、何だ其れ? 炎型の剣(フランベルジュ)と言ったところだろうが……。剣としては奇形もいいところだぞ?」

「さぁ? 余もよく分からぬ!! ただ『黄金の劇場(ドゥムス・アウレア)』が完成した暁に獲得したのだ!! 良い剣だろう? 銘は……。何だったっけ?」

「トラゴエディア・フーディア、ねぇ? 成程? 勝手に鑑定したが中々にいい剣だ、悪くねぇ。」


 そう言い、引きずるように持っているそのフランベルジュを奪う。

 刀工としての血が騒ぐ様で何やら細かく確認して居るようだ。

 反面、ネロは特に何かを気にした様子は無く呑気に周囲を見渡して居るだけ。

 ある意味対照的な構図となって居る。


「成程、手前には勿体無い代物だが手前にしか扱えない代物でもあるな、此奴は。」


 何かを一通り調べ終わったのか村正はトラゴエディア・フーディアをネロに返す。

 特に何か変わった様子はないが、ただ村正はネロを暫く見つめると憐れんだ様にため息をついた。

 たかが剣だ、だがソレがどの様に質が悪いのかを理解した村正にとってネロは憐れみの対象としか成らない。

 

「っと、モンスターが来るぞ!! 戦闘は任せた!!」

「最低限ぐらいは戦いやがれ!! 糞っ!!!」


 森の中を歩いて数分、例の魔法陣のポイントに向かうことを優先した村正たちだったが早速モンスターが現れた。

 インベントリから刀を抜き、抜刀しながら向かってくる敵を確認する村正。

 ネロは村正の後ろに隠れ、戦う気は無いようだ。

 其れを見た村正は呆れたようにため息をつくと襲いかかってきた猪に刃を閃かせる。


「ちっ!! 流石に一撃は無理か。」


 その言葉と同時に、猪の鼻つらを蹴り上げる。

 剣道ではなく剣術、実践で使う技を軽く扱い猪を弾き飛ばした。

 そして、帯につけて居る苦無を掴み投げるとスキルを使い頭部を切り飛ばした。

 

 刀についたポリゴン片に変わりゆく血飛沫を軽く振り払うと、現れたドロップ品を手に取る。

 現れたアイテムは魔石、だがおよそ半分は石と同等の屑魔石でしかない。

 はぁ、と溜息を吐くとソレを投げ切り飛ばした。


「むむ? 勿体無い……。売れば多少の金にはなっただろうに……。」

「はっ!! この程度の端金程度なんざいらねぇよ。」


 そもそも村正は一線級のプレイヤーたちの武器を手掛けることもした職人だ。

 本当にこの程度ならば端金なのだろう。

 また勿体無いと言ったネロも特段興味を持って居る様子もない。

 ただ言ってみただけのようだ。


「っと、続々と敵も来ているな。」

「うむ、余の劇場を開いた方が良いか?」

「いや、必要ねぇ。ただ歌の補助は寄越せよ?」

「うむ!! 余の歌声に聴き惚れるが良い!!」


 そして、ラ〜〜〜♪ というように音を奏で始めたネロ。

 村正はインベントリから三本ほど刀を取り出し、『魔物察知』というスキルを発動する。

 一気に膨れ上がる気配、そこから明確にこちらに向かって来て居る気配を選別すると、森の中でも十分に扱える短刀に持ち替えた。

 直後、森の中から3〜4体ほど表れる猿のようなモンスター。

 村正たちを襲う様にそいつらは飛び掛かってきた。

 中の一体は、金属製の円柱を抱き抱えておりソレで殴ってこようとして居る。

 

「洒落臭せぇ、と言うか補助は要らなかったか?」


 だが、そんなモンスターに対して村正は短刀で切りかかる。

 まずは1匹目、掴むように伸ばした腕を切り飛ばし襲い掛かる2匹目から半歩下がり避ける。

 直後、上から降ってきた猿に対して剣を持って居ないほうの腕で掴むとそのまま筒を持って居る個体に投げつけた。

 投げられた同族に潰された猿はキー!! と叫びながら手に持っていた金属筒を落とし逃走。

 他の猿もソレを見習う様に一斉に逃げ出した。

 案外さあっさり終わった戦闘に、やれやれと肩をすくめた村正。

 ネロは未だ機嫌よく歌って居る様だ。


「んで、この筒は何だってんだよ? まぁ、猿風情が持って居た物だし碌なもんじゃねぇだろうが。」

「余にもみーせーろー!! 興味があるのだぞ?」

「はいはい、とは言ってもただの筒だがな?」


 そう言って投げ渡す村正、ネロはソレを少し眺めると少し見ただけで放り捨てようとする。

 慌てて村正が取り返すと、インベントリに直そうとした。

 そこで違和感に気づく。


「何? 入りやがらねぇ?」

「どうしたのだ?」


 インベントリに入れようと、試行錯誤して居る村正。

 重量はそこまででもない以上、普通なら入るはずだが……。

 そう訝しげに思いながらいくつか刀剣を取り出し、挑んでみる村正だったがやはり失敗した。

 どうやら重量制限に引っ掛かった訳ではないということを確信した村正は、鑑定を発動し一切の情報が出なかったことに驚愕する。

 有り得ない、そう言いたい気持ちを抑えつつ村正はその筒を中心に何本かの取り出した刀を突き刺す。


「『沙羅、銀、桑散、豊品、徳洒落』 ふぅ、魔術の応用だが悪かねぇ。方陣を描くってのは儂ぁ苦手だが刀を刺して効果を発揮できるようにしたのはやはり正解だったな。」


 魔術、それも亜型と言えるそれを展開した村正は一息つく。

 村正オリジナルの魔術、とは言ってもゲーム内で知るひとぞ知る人気NPCである『アクシリア』という魔術師に教わったものだ。

 アイテムを媒介に指方向性を持たせ、魔法陣を不要とする魔術。

 村正はさらにオリジナルとして、刀を使用し属性や細やかな指示を限定しているがそれはまた別の話だろう。

 今回、村正は金属筒を隠す為に利用した。

 それだけ把握していれば問題は一切ないだろう。


「よし、じゃぁもうちっと奥に行くか? ヴィヴィアンからも地点の確認を頼まれてたしな。」

「うむ!! 任せたぞ!! 村正!!」


 丁寧なロリボイスで頼まれた村正は、呆れた様に溜息を吐きこめかみを抑えるとやれやれと言った様子で森を進む。

 協力プレイのカケラもない、と言うよりは役割分担の末に、と行った話だがここまで労力が偏るのは村正も想定していなかった。

 また、村正も戦闘は得意ではない。

 フリーの生産職という事もあり最低限はできるが、裏を返せば最低限しか出来ないと言った話だ。

 馴れない仕事である以上、最善は尽くすが否応なくストレスがたまあると言った話でもある。


「……止まれ、ネロ。」

「ん? どうしたのだ?」


 だからこそ、スキルに引っかかった何かを認識し村正はほくそ笑む。

 森に入ってから未だ10分、深部は未だ先で有りヴィヴィアンから示されたポイントはまだまだ遠い。

 つまるところ、他プレイヤーもまだまだ居る領域ということだ。


 ガサガサ…………。


 草木をかき分ける音、意志を持って移動する音が聞こえる。

 その音は徐々に村正たちに近づいており、明確に接触を望もうとすると認識できた。


「っと、初めまして?」

「そんな事ぁねぇだろ? 『キャメロット』のガウェイン。儂が卸した刀は活用してるかい?」

「ああ、何人かは武器アーツが開花したようだ。全く……、君の技量には驚かされる。」

「はっ!! 褒めても何も出てきやしねぇよ。んで? なんだ? 何で手前がここにいる?」

「サー・ガウェイン、誰と話して居るのです?」


 ガウェイン、血盟『キャメロット』の主要メンバーにして最大戦力の一人。

 その強さ、その戦い方は一言で説明できないほどに美しく気高くそして雄々しい。

 だがもし、そんな彼の戦い方を語るのであれば決して外せない要素がある。

 DWO世界において合計10本も発見されていない聖遺物、その中で太陽を冠する聖剣。

 銘を、『燃ゆる太陽の聖剣(ガラティーン)』。

 エクスカリバーと対をなす聖剣にして太陽の写し身そのもの。

 広範囲殲滅を得てとし、莫大な熱量で滅すべき悪を蹂躙する。

 その聖剣の保持者こそ目の前のガウェインという騎士なのだ。


「ああ、すまない。サー・ベディヴィエール、少し前に刀剣の類を卸してくれた鍛治士がいた物でね。少し歓談に耽ってしまった。」

「そうでしたか、またどこかにフラフラと行ってしまったのかと思いましたよ? っと、自己紹介がまだでした。私はベディヴィエール、円卓の騎士の一人です。弱いですけど……、アハハハ。」

「むむ? 弱いのか? 余にはかなり強く見えるぞ?」

「ハッハ、実際強いですよ? 御前試合ならば兎も角、戦場では相対したく有りませんね。」


 そういうガウェインだが、ベディヴィエールにはお世辞に聞こえたらしい。

 若干眉を顰めながら、ガウェインを小ずく。

 それを見たネロは笑い、村正は苦笑いする。

 確かに一騎当千万夫不当の英傑である彼に言われれば、強いという言葉など嫌味にしかならない。

 だが円卓屈指の参謀である彼に大群を指揮させれば、かのガウェインも苦戦は必至だろう。

 忖度のない率直な感想とも言える。


「っと、名乗ってなかったな。儂は千子村正。こっちはネロだ。」

「うむ!!」

「何というか、微笑ましい。兄妹ですか?」

「はっ!! まさか、血盟のメンバーだ。」


 そういうとネロは胸を張る。

 仲間として認められて居るのが嬉しいのか、はたまた何も考えずに行った行動なのか? どちらにせよ、ひどく微笑ましい光景だ。


「そういえば貴方方は何しにここへ?」

「少し気になるモノがあると言われたのでな?」

「……、魔法陣ですね?」

「正解、ということは手前らもか?」


 その質問に答えるか迷うガウェイン、ベディヴィエールに助けを求めようと視線を向けるが返されたのは呆れ顔だった。

 一瞬のちに、ガウェインは自分の失態に気づく。


「はぁ、さすがけいです。もう少し考えて行動してください、野原を焼き払った時の失態をもう忘れたのですか?」

「むむ、責めるのは良くないぞ?」

「いえ、彼にはこのぐらい言わなければわかりません!! 王女様から芸を見たいと言われて城を破壊した時も、技を考えたと言って危うく住人を殺しかけた時も一体私がどれだけ苦労したのかわかりますか!!」

「う、うむ!! 余が悪かった!!」


 ベディヴィエールの迫力に押され、思わずそう言ってしまうネロ。

 擁護者を得て、我が意を得たりとばかりに胸を張っていたガウェインだったがそのネロの行動で一気に肩を落とす。

 そんな彼を鎧越しでポンポンとたたき慰めた村正は、若干怯えたネロを背後に隠すとベディヴィエールと会話を始める。


「目的は同じ、だろ? ならばちっと協力しねぇか?」

「協力、ですか。いいですね、どうせ行き先も同じなのでしょうしそうしましょうか。」

「そういう事だ、それに儂らに戦闘に長けてるやつがいねぇ。この兵がいれば百人力もいいとこよ。」

「その実力は認めざるを得ませんしね、いいでしょう。」


 そう言って互いに手を取り合う二人、その背後ではネロとガウェインが謎に仲良くなっている。

 利用し利用され、そういう考えが根底にある二人と違い直情的な二人は仲良くなりやすかったのだろうか? 興味深い話だ。

 

 と、そんな時ガウェインが聖剣に手を掛けた。

 少し遅れベディヴィエール、さらにワンテンポ遅れて村正が警戒する。

 

「来ます、私一人で十分ですが何やら今日は森が騒がしい。」

「はっ、今日は? 今日もの間違いだろ? この世界の森なんざ、戦えなきゃ入れん魔境以外の何物でもねぇよ。」

「彼にとってはソレぐらい騒がしい内に入らないんですよ、さて来ますよ。」


 直後、獣が吠えた。

 猛々しい叫び、その絶叫を捉えたガウェインは聖剣を抜刀する。

 瞬間、聖剣に内包された熱が広がり灼熱が顕現する。

 紅蓮、もしくは太陽。

 ガウェインはその熱を好ましく受け入れながら、迫り来る獣に対して刃を向ける。


「『大切断』」


 スキルの発動、瞬間スキルエフェクトを纏った聖剣が大ぶりに振るわれた。

 飛びかかっていた獣に刃は触れられない、ただ膨大な熱が獣にぶつけられる。

 獣は情けなく悲鳴を上げると、慌てて回避行動を行うが完全には躱し切れずその毛皮に焦げ跡が発生した。


「なるほど、騎士剣術か。しかし、馬上での戦闘に向いたモノだと聞いた覚えがあるんだが?」

「馬上のみが騎士の戦いではないですよ? 村正殿。」


 そう軽くいうと、ベディヴィエールも剣を引き抜く。

 ソレを見た村正は引き抜いていた刀を納刀し、自分の出番がないことを悟る。


 どうやら獣はガウェインを相手にするのには骨が折れると判断(きづ)いたようで、村正たちを狙うように木々に隠れながら襲ってきた。

 一瞬の目配せ、ガウェインからその目配せを受けたベディヴィエールは襲いかかってきた獣に軽く剣を振った。

 先程のガウェインの攻撃、その恐怖ゆえに警戒していた獣は一瞬狼狽える。

 その狼狽、それが致命的な隙となった。

 狼狽えたその一瞬のうちに舞い戻ってきたガウェインに背後から切り裂かれる。

 獣は断末魔を上げながら死んだ。


「やっぱ本職はつえぇな。」

「はは、と言っても彼に頼ってばかりですが。」

「いやいや、サー・ベディヴィエール。君の協力がなければここまであっさりとは倒せて居なかったさ。」


 そういって剣を納刀すると、爽やかで煌めくような笑みを浮かべた。

円卓の騎士が来ましたね。

そしてガウェインさん、強い!!


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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