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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『イベント開始』

 上空に展開された魔法陣、そこから巨大化したヴィヴィアンの杖が迫りくる。

 同時にロッソが展開した魔法陣より現れた岩石の手が灼熱に熱され、溶岩となりロックゴーレムを溶かす。


「うぅ……、泣けるわね。なんでそんな魔術をあっさり使えるのよ? 空間置換? いや、空間置換と拡大解釈ね? なにそれ、普通にチートじゃないのよ!!」

「あまり困らせない様に、楽しくなるでしょう? ソレにあの魔術は、杖が汚れるから嫌いなのです。」


 和かに呟きながら、ヴィヴィアンは杖をグリグリと動かす。

 同時にロックゴーレムはそれによって押しつぶされ始めた、徐々にロックゴーレムの体にヒビが入る。

 そこに黒狼と村正が近接攻撃を加え、地面から吸収した土で再生する速度以上にダメージを与えていた。

 初めての合同戦闘とは思えないほどに息の合った戦いであり、プレイヤーとしての連携を行なっている。

 

「はっ!! 図体がでけぇだけの木偶の坊に負ける理由はねぇよ!!」

「油断はすんなよー!! 岩だからコイツ、一撃が重い!!」


 そうは言いつつも、黒狼はカウンターとして発動した『インパクト』により攻撃を相殺する。

 槍剣杖を上手く扱い、細かく流しながらその岩を破壊していく。

 また同時に村正は、脆弱な部分を捉え一気に断ち切り部位破壊を行なっている。

 

「とは言え、厄介だな。アイツらの魔術、主に溶岩だけど。」


 ロックゴーレムから一旦離れ、そう呟く黒狼。

 黒狼は光に対して酷く弱い、当然光を発生させる火や熱などにも耐性は低い。

 故に、ロッソが扱っている溶岩の手は厄介以外の何者でもない。

 だから、高火力を発生させた後に自殺することにした。


「『夜の風、夜の空、北天に大地、眠る黒曜。』」


 詠唱を開始する。

 高等技術ではない、だからこそ五節もかかるのだ。

 刻まれている文字数は酷く少なく、要求魔力量は青天井。


「『不和に予言、支配に誘惑、美と魔術。』」


 深淵の神、太陽を冠した主神の1人。

 太陽の53年の太陽の運行を13回繰り返したが故に、その神の権能には太陽が確と刻まれている。


「『其れは戦争、其れは敵意、山の心臓、曇る鏡。』」


 魔術式が完成、そして変容し出す。

 あらゆるスキルが勝手に発動し、太陽を降臨させる準備が整い始める。


「『五大の太陽、始まりの52、万象は13の黒より発生する。』」


 惑星を模す魔術、とは言えそれは熱量だけ。

 だが間違いなくそれは、あらゆる熱を超越している。


「『第一の太陽ここに降臨せり【始まりの黒き太陽(ファースト・サン)】』」


 魔術が展開され、摂氏数千度程度の太陽が降臨する。

 たかが岩は一瞬で溶け、周囲はガラス化した。

 莫大な熱量に黒狼は耐えきれず一瞬で死に絶え、近くにいた村正は即座に逃げ出す。

 高火力、高出力とは言えその影響範囲は比較的狭いその魔術から逃れるのは案外容易い。

 だが、近ければそうも言っていられない。


 ロックゴーレムはその巨体故に逃げられず、また太陽から逃れようとしたことによりヴィヴィアンの杖に一気に押し潰され、同時にロッソの手によって拘束、継続ダメージを発生させる。

 もう後は見るまでもない、3分も経てばそこにロックゴーレムの姿は消え去っていた。


*ーーー*


 戦闘が終了したため、ヴィヴィアンは机と椅子を出す。

 そして優雅に、紅茶を飲み始めたところ他の4人も合流し始めた。


「あー、疲れた。まさか街の入り口まで飛ばされるなんて……。」

「阿呆、原則復活は都市に決まってらぁ。そんな常識も知らねぇとは相当に珍しいな。」

「うむ!! 凄い戦いだったのだ!! 褒めて遣わす!!」

「あんたねぇ……、なにもしてないでしょ? なんでそんな自慢げなのかしら?」


 ヴィヴィアンが紅茶を飲んでいると四方から騒がしい声が聞こえた。

 何やらロックゴーレムを見に行っていたロッソと、リスポーンしていた黒狼が復活した様であり走りながら村正と戻ってきている。

 ネロは少し離れて逃げていたため、そこから戻ってきていると言った具合だ。


「で、ヴィヴィアン。はい、コレ。」

「ありがとうございます、コレがこのイベントで重要となるアイテムですか。」

「何それ?」

「ん? 素材鑑定が効かねぇだと?」

「イベント概要に記載されているのですが……? まぁいいでしょう、説明すれば問題ありません。」


 そういうと、インベントリを開きイベントの詳細を見る。

 説明するために念のため、理解を深めておくためだ。

 一通り読み終えたヴィヴィアンは、突っ伏して寝ているネロと黒狼を杖で殴ると説明を始めた。


「先程はイベントで高レアアイテムを手に入ることまで説明しましたね? ではどうやって高レアアイテムを手に入れるか? と言う疑問が生まれるはずです。」


 淡々と、だが少し楽しそうに話し始める。

 何かを教えると言う行為にヴィヴィアンは楽しさを見出しているみたいだ。

 一人で永遠と何かを突き詰めていたからこそ、他者との関わりというのに楽しさが見出されたのだろうか? どちらにせよ、ヴィヴィアンは上機嫌に解説を始める。


「そこで高レアアイテムを手に入れる方法をいくつか解説しましょう、このイベント限定での方法として高レアアイテムを手に入れるのには3つ方法があります。まず一つ目はイベントにおけるボスモンスターを討伐すること。」


 そう言いながら、魔法陣を描く要領で空中に文字を書く。

 そこにはこのイベントマップが描かれており、通常ならば白色に発光しているはずの魔力ではあるがそこの一点には赤く輝く点があった。

 ロッソはその正体が分かったのか、泣きそうな顔でハンカチを噛む。


「たかが説明で属性魔力を平然と使わないでよ!! 私のプライドは粉々なのよ!?」

「……? この程度もできないのですか? 別に難しくはないのですが……。」

「はぁ!? 難しくないですって!? いいわ、表でなさい!! 貴方にはずっとムカついてたのよ!! 魔術の達人とか、叡智を得た魔女とかなんとか知らないけどぶっ殺してあげるわ!!」

「別に、構いませんが。まぁ勝敗は、決定しているので。」


 そう言って、互いにインベントリに仕舞っていた杖を取り出し立ちあがろうとし……、黒狼と村正に止められる。

 呆れた顔で溜息をついた黒狼は、ヴィヴィアンとロッソの頭を軽く叩くと椅子にドカっと座り直した。


「あのなぁ、ロッソ。別にキレるなって言わないけど、話は最後まで聞こうぜ? それに煽る様な真似をしたヴィヴィアンだがここのリーダーは一応コイツだ。最低限の礼節を持とうぜ?」

「手前が言えた義理じゃねぇが、儂も同意だ。喧嘩も糞も勝手だがせめて話が終わってからにしやがれ。」


 お前が言うな、というような声が聞こえてきそうなほどのブーメランが投げられたが華麗に黒狼はスルーした。

 そして、そんなブーメランを投げられたロッソとヴィヴィアンは若干眉間に皺を寄せながらも村正もそこに同意したことにより渋々納得、服を整え椅子に座り直す。


「コホン、話を戻します。第一の方法としてボスモンスターを討伐することを挙げました、私とロッソは貴方達がネロを救うため行動をしていた最中に街の周囲に張り巡らされていたサークルを解析しイベント最終日ぐらいにレイドボスが発生することを突き止めました。先程のゴーレムはその前座的存在ですね。」

「……は?レイドボスだと? その前座にしては弱すぎる。」

「右に同じく、だ。前座とは言えあの程度じゃ、精々ボスにも満たん。」

「むむ? レイドボスとはそれほど強いのか!?」


 唯一、レイドボスを討伐した経験のある黒狼は酷く苦い顔をしており他の人も全員微妙な顔をしている、能天気な顔をしているのはネロだけだ。

 そんな中、黒狼が苦々しくヴィヴィアンに話かけた。


「レイドボスって言ったな? どれぐらいの強さだ?」

「わかりません、少なくとも『キャメロット』が戦闘したと言われているレイドボスが通称、黒騎士のみです。それもこれも『騎士王』アルトリウスを筆頭に円卓連中で挑んだらしいのですが碌に攻撃を当てることもできずそのまま倒されていますね。」

「黒騎士……、もしかして洞窟にいるやつか?」

「それ以外いるわけないでしょう?」


(……まぁ、死ぬわけないか。あの威圧感であっさり死んだらそれこそ笑い話だし。)


 若干の安堵と、そして呆れを含んだ感想を心の中で呟き身近にいるNPCたちの化け物具合を改めて思い知る。

 『騎士王』アルトリウス、流石の黒狼も何度か聞いた名前でありそしてこの場で知らないフリをし続けている血盟のプレイヤー代表。

 その強さは風の噂(つまり掲示板)でよく聞いている。


 曰く、彼は真っ先にゲーム内でボスと呼称された敵を倒した。

 曰く、彼は岩に突き刺さった聖剣を引き抜いた。

 曰く、彼は誰もが認めるプレイヤー最強である。


 そして、その全てを裏付けるだけの情報が出てきている。

 掲示板で時々出没する『黒の魔女』モルガンや、『探究会』のリーダーである『インフォメーション教授』、ほかに『豚忍』と呼称される二つ名プレイヤー。

 それ以外にも数多の人間が掲示板で『キャメロット』の活躍を書いており、多少の誤差はあれどほとんど事実であることが窺える。

 また、彼の傘下にいる円卓の騎士と呼称されるプレイヤーも一歩劣るとは言え相当の実力を持っていることが示されており少なくとも自分よりは圧倒的に強いという事を事実として黒狼は認識していた。


「……とりあえず、そのレベルのやつが来たらどうしようもないぞ?」

「流石に有り得ない、と思われます。」

「ええ、私も保証するわ。あの化け物騎士が強い大半の理由は人並みの大きさで気配が一切ないこと。今回のレイドボスはあのゴーレムのように超大型なの、私の魔道具やヴィヴィアンの魔術があれば十分対処可能ね。」

「流石に、二人では対処できませんが……。攻撃が通らないということもないでしょう、それにレイドボスです。他の血盟に協力を要請すれば戦えない事もないはず。」


 若干そうであってほしい、と言う願望が透けて見える。

 それほどまでにレイドボスは強いのだ。

 そして、それでも黒狼は二人がレイドボスを舐めていると認識していた。

 

 何故黒狼はそれほどまでに恐怖しているのか? 理由なら幾らでもある、だが最大の理由を挙げろと言われれば大人しく一つの理由を挙げるだろう。

 それはあのレオトールが戦闘終了後、食事中に何度も骨折している場面を見ていたからだ。

 本人曰く、『水晶大陸のデメリットだ、念のためポーションを幾つも携帯しているから問題はない』らしいが黒狼としてはそうも思えなかった。

 

 『水晶大陸』のデメリット、それはスキルによるステータス補助の大幅減少。

 今のレオトールのステータスは1000にも届かない。

 コレだけ聞けば、未だ遥かに高いと思うかもしれないがそれは認識が甘い。

 レオトールの本来のステータスは2000を超えており、水晶大陸を展開すればそのステータスは20000にも届く。

 それだけ膨れ上がったステータスが、一瞬にして1000に減少すればステータスの急激な変動に肉体がついて来ず異常に怪我をしやすい状態になる。

 数日も経てば健常な状態になるが、逆を言えば数日間はそれだけ肉体が脆い状態なのだ。

 ただの食事で細かな骨折が発生するほどに脆くなるほどのデメリットを抱えて漸く倒したレイドボス、その存在を黒狼は舐められるはずがないのだ。


「まぁいい、俺たちはそのレイドボスを倒すことを狙うのか?」

「それは大前提ですね、勿論それも行います。」

「ほーん、それもと言うぐらいだ。他にも何かあるんだろうなぁ?」

「ええ、それが二つ目になります。このイベントではウェーブ形式でこの町に定期的に雑魚モンスターが押し寄せてきます、それを殲滅することですね。」


 そう言って描いたマップにいくつか青い印を入れるヴィヴィアン。

 またキレそうになりながらも、難しい話についていけず寝ているネロを見て癒されるロッソ。

 黒狼と村正はそのマップに現れた印を見て何かを察する。


「魔法陣、か?」

「俺にもそう見えるな。」

「おぉ正解です、お二人とも。」


 魔法陣か? そう二人が問うた理由はその点が黒狼たちが立ち寄っていた街を中心に規則的に置かれていたからだ。

 この短い時間でよく調べたな、と感心しながら黒狼は魔力眼を使う。


「この点はモンスターが発生する起点となってます、魔法陣の交差する点に置いておき収束した魔力によってモンスターを発生させると言う仕組みのようですね。発生するモンスターを倒せばこのようなアイテムがドロップするらしくコレを回収し武器に付与すればこのイベント限定で非常に有用な武装となる様です。今回はこのアイテムを解析しより汎用性に富んだものを作成したいのですが……、いささかサンプルが足りません。」

「ほぉん、つまり儂らはそのモンスターを倒せばいいわけか。」

「そうですね、と。黒狼、何を見て居るのです?」

「いや、三つ目の強いアイテムをゲットする方法? 三つ目ってフィールドにあるアイテムを獲得するってところだろ? 解説見てねぇけど。」


 黒狼が視線を向けた先、そこには何も無い草原が広がっている。

 だが、ヴィヴィアンも何かに気付いたのか魔術式を開きその場を確認した。


「成程、巧妙に隠されて居るわけです。こんなモノどうやって見つけろと言うのでしょうか?」

「あぁん? どう言うことだ?」

「難かしい話では有りません、魔力を視認できる存在からすれば見つけるのは容易い。」

「いや、そんなことは無い。と言うか、常事魔力を見てるわけじゃねぇし。」

「謙遜は要りません、現に最初に気いたのは貴方でしょう?」


 その言葉と共に立ち上がり、ヴィヴィアンは杖に魔力を込める。

 ロッソは先程、ヴィヴィアンが描いた術式を目コピし書き上げてその場所を見た。

 

「ああ、成程ね。何か封印……、と言うか隠されてるわ。」

「魔力の流れを見なければ分かりませんね、コレは。一応スキルは獲得したようですが……、使う機会は早々無いことを願います。」

「こんなのを見つけながら行動するのは正直ゴメンだわ、と言うかナニコレ? 気づけば違和感があるけど、そうじゃなかったら何もわからないじゃ無い。」


 そう言いながら、ロッソは魔法陣を登録すると彼女も立ちあがった。

 ヴィヴィアンと共に魔力の揺らぎ、すなわち異常箇所に近づく。

 それを呑気に見る黒狼だったが、何かに気づくと慌てて止めに入った。


「待て待て待て待て!! ストップストップ!! 今獲得するのか?」

「入手は早ければ早い程良い、そうは思いませんか?」

「いや、コレ。レイドボスと本当に関係ないのか? と思ってな。無意味且つランダムに強いアイテムをこの運営が配置してるとは思えないんだよ。」

「……、一考の余地有りと言ったところですね。いいでしょう、今はコレを取るのは辞めて置きましょう。」


 そう言ってヴィヴィアンは机を回収するとネロを揺さぶりながら起こす。

 若干寝ぼけているネロは、ヴィヴィアンに抱きつくようにして立ち上がった。

 村正も其れを見て椅子から立ち上がる。


「ではどこにどれほどどのように隠されて居るのか? ついでにモンスターを倒しながら進んで行くとしましょう。」


 彼らは漸くイベントを攻略し始めた。

ようやくこの5人はイベントを進めはじめました。

遅いですね…


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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