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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『初対面』

「『征服王』、流石に有名だったか。」

「当たり前でありんし、『キャメロット』や『探求会』が敵対しているNPC最大勢力を把握していないなどありえないなんし。」

「(『キャメロット』に『探求会』、か。掲示板で名前は見たが……。)で、気にならないか?」

「(今の反応……、『探求会』と『キャメロット』に反応したでありんしか? かなりプレイヤーの常識を知らないみたいでありんしね……。と言うか、『征服王』なんて普通誰も知らないなんし。)……価値としては非常に低いでありんすよ? それこそ千Gも出せない程度に……。」

「(嘘、だな。多分釣り上げられる……、だがコイツはソレを認めないだろう。金には興味ないがコイツの悔しがる顔は見てみたい。)じゃぁ、その中で最強人物を知りたいか?」

「(最強でありんしか……、まぁ嘘でありんしね。そんなモノ一介のプレイヤーが持っているわけないでありんす。)とっくの昔に出回っているでありんすね、その程度。情報通を舐めないでありんし。」

「(確定で嘘、さっきの情報も合わせると『征服王』と言う輩が有名なのも嘘だな。)笑わせるなよ? 嘘を吐くなって親から習ったことはないのか?」


 黒狼の判断、賭けに近い判断だがソレは奇しくも正解だ。

 黒狼が告げる最強、ソレはレオトールのことに他ならない。

 黒狼は『征服王』という人物を完全に知らない以上、その言葉のほとんどはブラフとなっている。

 この会話の瞬間だけでも値千金の情報が飛び込んできているような状況。

 先程は陽炎が黒狼を鴨と言っていたが、情報に関しては全く違う。

 黒狼はプレイヤーの常識を知らない、つまり聞こえる話全てが未知だ。

 その未知をボロボロと漏らす陽炎は、黒狼にとって鴨以外の何者でもない。


「(……嘘という断定、信じられるかは兎も角として交渉できるほどのナニカはあるみたいでありんすね?)では嘘でないという証明をして欲しいでありんし。」

「(さて、ここで傭兵団や伯牙の情報を売るのは悪手だ。ソレにアイツに対して申し開きができねぇ、好き好んで弱点を教えるなど言語道断ってわけだ。)その証明は金を払う意思を見せてからだな。」

「(ッチ、コイツ……。)いいでありんすよ? とりあえずどれぐらい?」

「最低100万G、そっからお前が値段をつけろ。」


 空気が凍る。

 はっきり言おう、陽炎にとって百万Gは決して出せない金額ではない。

 だが守銭奴で銭ゲバな陽炎にとってその言葉は逆鱗に触れるものだ。

 彼女にとってそれ以上の金額で回収できなければ、怒り狂いしばらくはまともな活動をしないだろう。

 そうなれば各所に影響が及ぶ、大規模クランである『探求会』ですら多少の損失を出すほどに彼女の影響力は高い。


「……へぇ? 本当にそれだけの価値がありんしか?」

「ああ、あるとも。ただなぁ……、その情報は()が持っているわけじゃねぇ。」

「どういうことでありんす?」

「話はイベント終了後、って訳だ。」

「なるほど、わちきとフレンド交換をしたいと?」

「え? してくれるの?」

「……どんなプレイをしてきたんです?」

「情報料よこせ」

「……、1万でよろしくて?」

「は? 最低10万に決まってんだろ。」

「冷やかしな帰っておかんなし!! あ、コレフレンド申請でありんす。」

「冷やかしじゃねぇよ!! フレンド申請承諾したから!!」


 そうして互いにガンを付け合うと、黒狼はその天幕から出た。

 ついでに黒狼くんが金を毟り取れてないと思い出すのは後5分後、陽炎が情報を毟り取れてないと気づくのは1分後である。


*ーーー*


「はっ!! 漸く二人目か。」

「よろしく、お前が村正?」

「ああ、そうだ。儂が、千子村正だ。まぁ、よろしく頼む。」


 そう言って互いに手を取り合う。

 ここは指定されていた集合場所、そこに少し早めに赴いた黒狼だったが先客がいたようだ。

 軽く言葉を交わし、少し話をしあう。


「手前は黒狼(くろおおかみ)だな?」

「いや、黒狼(こくろう)ね?」

「あー、悪い。次から気をつける。」

「まぁ、字面だけ見たらそう呼んでもおかしくないから。とは言え中々に珍しい間違いだと思うけどな。」


 そう言いながら、近くの岩にドスっと腰を下ろす村正。

 腰につけている鍛治道具らしきものがチャカチャカとなる。

 服装は和服、簡単な羽織を着込んだモノ。

 ソレらは全て渋めの赤で統一されており、また彼の髪と目も赤色であることから非常に統一感あふれる状態となっている。

 一眼見た印象は炎、燃え盛るような炎であり情熱に溢れているように見えた。

 エネルギッシュなその姿は少々、黒狼には眩しいぐらいに輝いており若干の気後れを感じてしまう。

 口調も荒々しく、その割に一人称はジジイくさいと言ったアンバランスさを感じさせるモノで黒狼は捻くれ者と言った感想を抱いた。


「で? なんでこんな依頼を受けたんだ? 手前は。」

「んー? まぁ、なんとなく? お前は?」

「そんなもんか、儂も偶々見かけたってところだな。」

「大した理由ねぇじゃん。」

「逆に、こんな謎めかしいもんに大した理由があったら驚かねぇか?」

「ソレもそうか。」


 これからイベントを共同で進めていく仲間、ある程度仲良くしていて損はないだろう。

 そんな打算と共に会話を弾ませる二人。

 

「そんな姿してんだし、やっぱ生産系?」

「んにゃ、あったりめぇよ。特に刀剣の類なら儂に任せな、満足以上の品を作ってやらぁ。」

「へぇ? 今度お願いしようかな? というか、刀作ってんなら研磨とかいけるよな?」

「依頼か? 高く着くぞ?」

「友達価格で割り引いてクレメンス。」

「断る、儂ぁ完璧な仕事をする代わりにたんまり報酬を貰うって決めてんだよ。」

「「アッハッハッハ!!!」」


 ……、どうやら心が通じ合っているみたいだ。

 少なくとも、ある程度わかり合っている様子の二人だがそんな二人はほぼ同時に訪れた一人の女性を見つける。


「お二人方は、早いようですね……?」

「よろしく、名前は?」

「ああ、よろしく頼む。」

「私の名前は、ヴィヴィアン。今回のリーダーと、言ったところでしょうか?」

「儂は千子村正、しがない刀工だ。」

「俺は黒狼、一介の凡夫ってとこだな。」

「自己紹介、ありがとうございます。」


 それぞれ自己紹介すると、ヴィヴィアンはインベントリから椅子と机を出して紅茶を入れ始めた。

 少し鼻をひくつかせる村正、思いっきりガン見する黒狼。

 そんな二人を意に介さず、ヴィヴィアンは紅茶を飲み始める。


「其れ、酒入ってねぇか?」

「よくわかりましたね? えぇ、リキュールを少々混ぜています。」

「りきゅーるだぁ? こっちじゃかなりの値段じゃねぇのか?」

「まぁ。こう見えて、お金はありますので。」


 早速会話に加われなくなった黒狼、やはり彼はボッチの星の元に生まれているのだ。

 というか、黒狼はアンデット。

 その中でも肉の体を持たないスケルトンのため嗅覚がない。

 酒臭さとかは一切わからないのだ。


「と、ロッソさんもきましたね。」

「あれ? 私遅れた感じ?」

「いいえ、ネロさんも来ていないので遅れたというわけではないと思いますよ。ソレに、集合予定時間にもなっていませんし。」

「儂らが早いってだけだ、なぁ? 黒狼。」

「そうそう、ソレにまだ15分前だしな。」


 そう言って、黒狼はインベントリから時間を確認する。

 予定時間より15分ほど前、5分前行動を前提に考えたとしてもやや早いぐらい。

 早いと言えても遅いとは言えない程度の時間だ。


「みんな自己紹介しない?」

「儂らで勝手にやったんだがなぁ、やはり纏めてやるべきだったか?」

「ネロ来るまでやらないでおくか?」

「別に大した手間でも無いのですし、やりましょうか。」


 そういうと、持っていた紅茶カップを起きインベントリから出した杖を手に取る。

 漆黒の魔杖、法衣ともドレスとも言えぬその服は不気味さと高貴さを醸し出しヴィヴィアンを一層ミステリアスにさせる。


「私の名前は、ヴィヴィアン。ただの魔女です、今回はお集まりいただき有り難く感じますね?」

「じゃぁ、次は儂だな。巷じゃあ、『妖刀工』なんぞ言われてるらしい。千子村正だ、宜しく。」

「え? 二つ名持ってんの? 裏山!! っと、俺は黒狼。ただの一般プレイヤーだ、よろしく。」

「私が最後ね? 私の名前はロッソ。『ウィッチクラフト』という二つ名を持ってるわ、貴方達は聞いたことない?」


 エヘン、というように胸を張りロッソと名乗った女性は自慢げに告げる。

 反応は三者三様、村正は興味なさげにヴィヴィアンはそもそも聞いておらず黒狼はたゆんと揺れた胸を見た。

 

「聞いたことないな、村正ー。お前はどうなんだ?」

「は? 知ってるはずがあると思うのか? 手前は。」

「うん、よし。聞いた俺がバカだったわ。」


 背後でプルプルと震えるロッソを無視して、黒狼は村正と会話を続ける。

 なお、ヴィヴィアンはいまだに紅茶を飲んでいる模様。


「なんなのコレ!! 私一応有名人なんですけどー!? なんでだれも知らないのよ!!」

「名前だけはお伺い、していますよ? ロッソ。」

「ならそうと言え!! これじゃあ自慢げに名乗ったのが恥ずかしいじゃない!!」

「正直、狼狽えてる姿は非常に面白かったです。」

「むきーーーー!!!」


 文字通り地団駄を踏むロッソ、その姿はかなり違えどゾンビ一号を思い出させる。

 具体的に言えば、弄られキャラというところが。


「さて、時間になりましたね? ネロはどうやら来る気配が無いようですが……。おや? 皆様掲示板をご覧ください。」

「ほむほむ……、なんか面白い事になってそうだな。」

「……はぁ、捕まってるだぁ? どうやったらこんな短時間で捕まるってんだよ。」

「……え、どういうことなの?」


 全員がインベントリに表示した掲示板を確認する。

 そこには、『余、捕まった!! 助けてくれ!! 座標はここ!!』と、書かれていた。

 全員呆れ顔で、その文言を見る。

 ロッソに至っては若干キレていたりする、プライドが高い故だろうか?

 

「どうします? 助けにいきましょうか?」

「儂は反対だ、道理も無けりゃ理由もねぇ。」

「右に同じく、ね。私も反対、そもそも何故私がネロに気をかけなきゃならないの?」

「えぇ? お前ら非情すぎない? ついでに俺は助けにいきたい派。」

「2対1ですか、ならば私は助けに行くのに賛成しておきましょう。」


 これで2対2、同率だ。

 だが、ネロを助けに行くという意見はかなり弱い。

 だから、黒狼はさらに話を進める。


「おい、村正。お前は、道理も理由もないっていたよな?」

「ああ、そうだ。見も聞きもしねぇ他人を救うなんざ儂はやだね。」

「なら、理由があれば助けに行くよな? その理由、俺が助けにいきたいからじゃダメか?」

「……なるほど、多少の会話しかしてねぇが仕事仲間の頼みときた。求める仕事は、人助け。理由とするにゃぁ、十分だ。おい、ヴィヴィアン。」

「なんでしょう?」

「手前は依頼主、つまりは主格だ。彼女を連れて先にやることやってこい。」

「おや? あなた方二人で行くと。」

「なんだ? 不満か?」


 若干訛りの効いた口調でそう告げると、ヴィヴィアンはいいえと返す。

 二人ともそこまで強い拘りは無いらしい。

 だが、流れる緊張感は黒狼に汗を垂らさせるほどのモノだった。

 二つ名持ち、つまりは一般プレイヤーからさらに何かしら秀でているモノを持っているということ。


(なるほど、『Ⅻの難行』それを乗り越えた先には一筋縄では行かないプレイヤーが仲間になる。と。どうやら、俺の人生……、いやゲーム骨生。なかなかに波瀾万丈となりそうだな。)


 ニヤリと笑いながら二人を見る。

 会話はすでに終わっており、ヴィヴィアンはすでに片付けの体制に入っていた。

 村正は、インベントリからいくつか刀剣を出し繕っているようだ。


「別行動ってことか? それはそれでいいけどさ、ヴィヴィアン。なんであんな形で俺たちを集めたのかの説明ってしてもらえるか?」

「理由? なるほど、貴方はそういう人物ですか。ならば、その理由はネロを助けた後にでもしましょうか。」

「えぇ、今言ってくれないのかよ。」

「当然です、私は善人ではありませんので。」

「善人では無い、か。笑わせてくれる、お前は支配する側の人間だろ。」


 無言で、ただ笑みを返す。

 黒狼は不愉快そうにけっ!! と言いながら槍剣杖を取り出した。


「村正、行く?」

「ちと待て、インベントリを整理してからだ。さもなくば、武器が扱えずに天手古舞になっちまう。」

「え? そうなの?」

「あったりめぇよ!! 儂みたいにインベントリを戦闘方面で多用する人間にとって整理というのは必須だ。一瞬の隙が命取りになる中で武器を出し間違えたなんざぁ笑い話にもなりやしねぇ。」

「そ、そうなのか。」


 レオトールの凄さを認識した黒狼は、顔を引き攣らせて引く。

 レオトールはインベントリから多種多様な武器を即座に取り出し、入れ替えながら戦っていた。

 つまり、出したタイミングと入れたタイミングを完璧に覚えていたのだ。

 これを聞けば村正は耳を疑い、嘘を吐くのをやめろと告げるだろう。

 それほどまでに途轍もない話なのだ。


「よし、こんなもんか。行くぞ、黒狼。」

「りょー、かいっ!! っと、村正。」

「なんだ?」

「俺に剣って作ってくれたりする?」

「十万、払えるのなら作ってやってもいいぜ?」


 ニヤリと笑う村正、そこには圧倒的なまでの自負がある。

 それに対して黒狼は、軽く諦めたようにため息をつくと言葉を続けた。


「素材持ち込み?」

「あったりめぇよ、もしや儂の技量がそれ以下だとでもいうのが?」

「まさか、聞いてみただけだ。なるほど、10万……。10万ねぇ?」


 諦めたようにため息を吐くと、それでもというように自信を持った笑みを向ける。

 他人を不快にさせるようでいながら、ひどく挑戦的な笑みを。

 それをみた村正は高慢で、何かに挑むような笑みを浮かべて返す。


「もし頼むのなら素材持ち込みで1000万だ、それだけの価値がある無類の刀剣。作れるよなぁ?」

「いいぜ? 作ってやらぁ!! だが、間違えんなよ。貨幣で()の全てを測れると思うな。」


 互いに一歩も引かず、二人だけが理解できる空手形でしか無い約束。

 だが、それは確りと交わされた。

6000文字!! 更新頻度が落ちる落ちる!!

そして質の維持も大変だ!!


まぁ、やるんですけどね?


そして登場した新キャラクター(とはいえ間話的な感じで登場していましたが……。)!! 前回の宣言通り2章では新キャラが大量に増えると言いましたが2話目から早速とは!?

この作者、やりますねぇ()


以上、さまざまな事情で鳥取からお送りしました黒犬です!!

(鳥取砂丘の砂の質が変わってて面白かった、思いっきり走ったぜ〜)


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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