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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
一章中編『黒の盟主と白の盟主』

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Deviance World Online ストーリー3『初めての売買』

一章中編開幕です!!

 『チキチキ!! 森林海洋お宝探し!!』


 そのふざけたイベント名の下に長々と書かれている事前情報。

 さらにその下にあるイベント参加ボタンを黒狼は押す。

 直後、黒狼の視界は歪み捻れ大きな町の中心部にリスポーンし。


「知ってたよぉぉぉおおおおおお!!」


 死んだ。


*ーーー*


(危ねぇ……、蛇皮がインベントリに入ってなかったら死んでたところだった。)


 いや、実際に死んでたんだが? というツッコミを飲み込んでおこう。

 本日は11月25日の6時、DWO初イベント『チキチキ!! 森林海洋お宝探し!!』が始まった直後である。

 早速とばかりに数多のプレイヤーがイベントにおける最初の街に転移してくる中、黒狼は日光対策を一瞬で行うと日陰に隠れた。


「『我が身、虚身(うつろみ)故夢幻(ゆえゆめまぼろし)我が身を隠せ(フェイク・フェイス)】』」


 ケンタウロスの賢人より授かったアーツが記された巻物、ソレの最初に書かれていた魔術を呪文化したソレを唱えると黒狼は己の姿を人間に見せかける。

 一見無駄に見えるかもしれないこの行動だが、もしソレをしなければ他プレイヤーとの交流が困難だと黒狼は判断した。

 人間という生き物、いやほとんどの生き物に共通する話だがソレらが社会性を持つ以上異物を嫌う。

 そして骨の姿をした存在など、格好の的だ。


 まぁ、つまり穏便に住む手段があるのなら迷わずソレを行使しろという話である。


「ホムホム、なかなかにイケメンなんじゃないか? まぁ、人化した時をベースに作ったけど。」


 自画自賛ここに極まれり、そして別にイケメンではない。

 容姿に関してはこのゲームでは拘ろうと思えば何処までも拘れるが、人化した時に黒狼は初めてキャラメイキングを行った訳だ。

 ぶっちゃけ直後にクソうまい飯と酒が控えてる状態で最初から作り上げるのは酷く面倒くさかったので黒狼は近くにいたレオトールをベースに(と言ってもほぼそのままで)髪型を軽く変えただけに留まった。

 とは言え、そんな顔だがレオトールと並んでもそっくりには見えないという謎がある。

 やはり性根は顔に出るのだろうか?


 まぁ、その顔をベースに作っているのだ。

 不細工なはずがない、イケメンというのは少々微妙と言えるが……。


「よし、ポーション買い漁るために金を稼ぐぞ!!」


 そう叫び早速とばかりに近くの露店に出向く。

 Ⅻの難行を攻略したおかげでインベントリには山ほど……、とまではいかないものの程々にレアな素材が入っている。

 メインとなるのは鉱石、すなわち金属だがモンスター由来の素材も多少ならばあったりするため販売できるアイテムレパートリーは普通にある。

 最大の問題といえばその価値を黒狼自身が把握していないことだろうか? ヒュドラ毒を持っていてうっかり売って仕舞えば犯罪者として一躍有名になることなしだ。

 何せ、あのレオトールが裏切られた時に即死すると判断し『水晶大陸』でステータスを増強。

 即座に解毒するため最高級の解毒ポーションを幾つも使った代物だ。

 その蒸気は吸うだけでも常人は5分と立たず死に、蒸気であったところで肌に触れて10分と立たずに死へと誘われる代物。

 こんな大量の人間がいる前で無造作に出せば一種のテロになることだろう。

 大量殺戮を繰り広げ、正規の犯罪者として名を広めたいのであれば兎も角そうでなければそう言った類のアイテムは出すべきではないだろう。


 と、そんなこんなで主要通りを通っていたらいかにもなお店を見つけた。

 早速とばかりに黒狼はそこに入る。


「あら、お客様でありんすか? 珍しいりんすね、他のプレイヤーの方々はもう早速マップを探索してるでありんすよ?」

「あー、すみません。買取ってできますか?」

「……、え? もしやわちきの事をご存じない?」

「知らないです。」

「一応、わちきもそこそこ名が売れてると思ったでありんすが……。ま、まぁいいでしょう。わちきは陽炎と言います、よろしゅうお願いします。」

「変な喋り方するなぁ……。あ、よろしく。」


(変な喋り方いうなし!! あちきはこんな感じのロールプレイが気に入ってるんでありんす!!)


 さすが黒狼!! 俺たちにできない事を平然とやってのける!!

 そこに痺れる、憧れるゥ!!(※憧れない)


 そういうわけで、早速地雷を踏み抜いた黒狼だがその怒りを微塵も出さず交渉を行おうとする陽炎。

 だがナチュラルメイクの下にある眉間には軽く皺が寄っており相当な顰蹙を買ったと思われる、黒狼には他人との関わり方を覚えなければならないのかもしれない。

 

「んで、コレを買い取れるか?」

「(……ッチ)、コレでありんすね? 随分と多岐に渡っての商品でありんしね……、お? これは中々良い商品でありんす!!」


 あまりの不作法さにしれっと舌打ちをしながら、商品を鑑定スキルで見ていく陽炎。

 だがドバドバドバー、っと出されたアイテム群を見て表情が変わる。

 そのアイテムの殆どは蛇の皮や肉ではあるが、ほかに牙や蛇毒などもあったりした。

 また、雄牛の肉や鉱石しまいには矢や剣などもあり本当に出されたアイテムは多岐にわたる。

 そして、その中でも特筆すべきことはその全てのアイテムが市場に流れるモノの中でもかなり上等な品であるということだ。

 蛇皮であっても鞄などに加工し貴族に売ればそれだけで程々の大金が稼げるだろう、防具にすればかなり優秀なモノになってもおかしくない。

 出された鉱石も原石ではあるが、含まれている鉄や金属の量が多い。

 魔力が浸透しきっているモノもあり、相応の人物に渡せば魔法金属なるモノまで作れるかもしれないのだ。

 そんな代物を平然と出されればどれほど嫌な客であったとしても守銭奴の目の色は変わってしまう、鬱陶しい存在を見る目ではなく商売相手になりうるかどうかを測る目となった。


「(おっひゃぁ!? こんな高レアアイテムがザックザク!! コレは多少高くても絶対買うでありんす!!)……少し質が悪いでありんすね。レア度は高いでありんしが、職人系譜の職(スミス)へ直接持ち込んで加工しなければ満足に売れないと思うでありんす。とは言え、わちきであれば少し高めで買うでありんすが……、どうされるでありんす?」

「どれぐらいで売れるんだ?」

「(うんん? もしやこの人……、鴨? やったぁ!! 鴨がネギ背負ってきたでありんす!! 今晩は鴨鍋でありんすね!!)合計で……、二万六千Gぐらいでありんすか。レア度が高いのでサービスでありんすよ?」


 さて、黒狼くんが買い叩かれている間にこの世界での貨幣の解説をしようか。

 この世界では万国共通でGという貨幣単位とそれぞれの国家に合わせた貨幣が存在する。

 貨幣、そう聞くと大層なモノに聞こえるだろう。

 現実世界に置いては金属や紙幣などの貨幣の存在は2600年代には完全に消失したと記されている。

 だが、ここは文明が未発達の仮想世界。

 データ化された貨幣などは未だ存在せず紙幣貨幣どころか金属貨幣が主流の時代、つまり剣と魔法のイメージ中世。

 もちろん、貨幣も金属で作られている。

 その貨幣の種類は国ごとに多少異なるが、原則として10種類に分かれており価値が低い方から順に銅貨(コックス)鉄貨(アインクス)半銀貨(アルシクス)銀貨(シルンクス)魔銀貨(ミスリンクス)半金貨(タグニクス)金貨(ゴルシウス)純金貨(レアニクス)王貨(ペンドラクス)古貨(ゼロ)となっている。

 また先程述べた通り貨幣とは別に貨幣単位も存在し、ソレはG(へファス)と名付けれれている。

 Gの貨幣価値は、金の価値に直すと1Gに対して金が0.1グラムといったところだろうか? そして其々の貨幣の価値は。


 銅貨(コックス)=1G

 鉄貨(アインクス)=100G

 半銀貨(アルシクス)=1000G(千G)

 銀貨(シルンクス)=10000G(一万G)

 魔銀貨(ミスリンクス)=100000G(十万G)

 半金貨(タグニクス)=1000000G(百万G)

 金貨(ゴルシウス)=10000000G(千万G)

 純金貨(レアニクス)=100000000G(一億G)

 王貨(ペンドラクス)=市場に出回らない、使い方は約束手形と同じ。

 古貨(ゼロ)=価値不明


 となっている。

 特に王貨と古貨は例外的な扱い方をされるため価値は非常に付けづらい。

 どちらも現存する神話金属で作られており片方は加工が困難とされるオリハルコン、片方は完全に未知とされる通称【古代金属】によって作られている。

 この二つは単純な価値を付けることが不可能であり、また古貨に至っては余人の目に触れることすら許されない代物だ。

 現在プレイヤーが確認している貨幣は純金貨までであり、その二つの貨幣を手に入れることは商売を生業とするプレイヤーにとっての夢でもある。


 っと、話が横道に逸れた。

 本編に戻ろう。


「うーん、二万六千か……。じゃ、ソレで。別に他にもあるし。」

「(待て待て待て待て待ってくださいでありんし!? この鴨、更に鴨肉持ってるでありんしね!! 徹底的に搾り取るでありんしよ!!)他にも持っているでありんすか? 他の店ではここほど高値はつけられないでありましょう、良ければ買い取りましょうか?」


 にやけ顔が若干出始めた『化け狐』こと陽炎、そして鴨にされていることに気づいた黒狼。

 ただ買い叩かれても別にいっかという超呑気な思考をしているためそのまま交渉を続行する。


 ついでに、現在出した分量だけで正規価格で買い取られていた場合おおよそ十万Gほど手に入っていた。

 かなりぼったくられている。


「けどなぁ、ここほどって言っても俺自身である程度加工できるんだよ。ぶっちゃけ、自分でも使い道があるワケ。」

「(ッチ、大人しゅう売っておけば良いモノを……。)……ではここは出血大サービスで先程とお同じほどの量であれば三万!! 三万Gで買い取りんす!!」

「(つまりこのクソアマは七千G以上は余裕でぼったくっているワケね? 粘れば価格をもう少し上げられそうだけど……、いやいいか。あのダンジョン、難行別でフィールド移動できたしそこまで要求するモノでもないか)七千Gも上げてくれるんですか!? えぇ!!」


 少しどころではないぐらいにぼったくっているがソレは知らぬが花。

 ソレに黒狼もただでぼったくられているわけではない。


「売ります!! あ、けど……。」

「ど、どうしたでありんすか?(か、勘づいたか? 掲示板で適正価格を調べられてればなす術がない……、でありんす!! もし切れてきたら最初の交渉分は絶対に取らせないでありんし!!)」

「……俺ぇ、ちょっと買いたいモノもあるんですよ。ソレって売ってませんかね?」

「(ふぅ、所詮は鴨でありんしね。)買いたいモノでありんしか? なんでしょう?」

「適正価格情報、その代わり同じ量を三万で売ってやるよ。」


 おっとここで黒狼!! 強気に出た!!

 この馬鹿は相手が真っ当な情報を出すと思っているのか!?

 とは言え、商売は信用が資本である。

 ここで明確な嘘を吐けば陽炎は目の前の鴨から二度と巻き上げることは不可能だろう。

 両者、一歩も譲らぬ舌戦!! 手から汗が滲み出る!!


「(ッチ、コイツ……。何処から気づいて……、まぁいいでありんし。どうせ適正価格を差額で買おうとか甘い考えでありんしね? その場合、帳簿に金額がつかないから知らぬ存ぜぬで通せるでありんし!!)ど、どう言うことでありんしか……?」

「はい、一万。言えよ、騙してんのはわかってんだよ。適正価格を知るので一万は十分だろ?」

「(こ、小癪な!! 情報料金を払ってくるでありんしか!? これでは嘘は吐けない……、成程。コヤツ、ただの鴨ではないでありんしね?)ック、仕方ありません。正規価格は……、十万Gでありんし。」


 告げると同時に同量ほど出されたアイテムの数々と、露店の机に置かれた一万Gを奪い取るように回収し三万を出す。

 そして、フー!! フー!!! と息を吐きながら奪った……、もとい騙し買った商品を守るようにしながら黒狼を睨みつけた。


「(やべ、可愛い)……なんか言うことはないか?」

「ないでありんしね!!(シャー!!!!! もう見たくないでありんし!! 鴨鍋が不味くなるでありんし!!)」

「(まぁ、交渉材料他にもあるんだよなぁ。と言うか、コイツかなりぼったくってるぞ?)まぁまぁ、そう言うなよ? ソレにソレをどうやって手に入れたか気にならないか?」

「(鴨の皮を被った悪魔!! 鬼!! 鬼畜!!)話だけ聞くでありんし。」

「無料で手に入るとでも? 俺も相当苦労したんだがなぁ?(うわー、怒ってる怒ってる。)」

「クッ、いくら払えばいいでありんしか?(絶対に後でギッタギタにしてやる!!)」

「(激昂してるけど聞き耳は立てる、か。とは言え、絶対に売ってやらねぇと言うか普通に考えて金のなる木の情報なんて売るはずないけど。)いや何、別に代金は要求しないさ。金は欲しいが別にお前ほどではない、陽炎……、だったか?」

「(コイツ……、売る気がないでありんしね……。けど、交渉をするってことは相応のカードがあると言う……。成程、この『化け狐』相手に交渉……。舐められたモノでありんし、ケツの毛までむしり取ってやる!!)何を要求するでありんし……?」

「『神々への復讐者』や『神々の栄光』、っていうのは知らないか?(知っていれば早からずバレる話だ、隠す理由が消える。)」

「(大層な名前でありんしね……、と言いたいところだけどコレ……。『教授』に預けるべきメインストーリー案件でありんしね……、上手く知れば恩を売れるカモ?)大層な名前でありんしねぇ? 嘘を吐くのは程々にしておくでありんしよ。」

「(知らない、もしくは知っていても大した内容は知らないってところか? このはぐらし方を見るに。成程、狐の獣人なだけある。騙すのがうまいな?)やっぱ嘘はバレるかー、じゃぁこっちは知ってると思うけど……。『征服王』、その情報は欲しくないか?」

「(嘘、いや嘘と告げた真実の可能性……。真実であれば前座で出すにはあまりにも妄言壮大でありんすが……、嘘にしてはわちきの持つ情報と合致しすぎる……。成程、騙し続けた結果『化け狐』と呼ばれたわちきに舌戦を挑むほどの相手でありんしね……? そして征服王……、探求会が情報統制を意図的にしている代物を態々出すとはこの男……、中々に豪胆でありんす。)『征服王』……、交渉するには足りうる情報でありんしね?」


 互いに交渉カードは十二分。

 リアルINTは高く、表情筋は真実を語らない。

 ただ無意識に動くその目線や手の動きなどで真実を探っているのだ。

 ……今、世紀最大の交渉合戦が炸裂する!!(炸裂しない。)

なんで初手で二つ名プレイヤーと舌戦をしているのか? 作者はソレがわからない。

どうも黒犬です。

今回から一章中編開幕!! そして始まりがコレというのは作者でも予想してなかったよ……。

上編は基本的に3000文字程度で書いていたのですが折角ですので中編は文字数を増量して書こうかな? と思っています。

その代わり更新頻度は下がるかな……? 下がるかも? ……まぁ、週一更新は必ずしますので安心してください。

また、上編と打って変わり中編は沢山のプレイヤーが登場する予定です。

是非、期待していてください。


(以下定型文)

お読みいただきありがとうございます。

コレから黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『◼️◼️◼️◼️』    (ヴィヴィアン)の先行きが気になる方は是非ブックマークを!!

また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね

「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 100話おめでとうございます
[気になる点] 黒狼くん魔力で周囲の情報を得ているとしたら、全身タイツでおおっても大丈夫なのでは?これはもしかして天才か(絶対に違うし、そもそも誰でも思いつくだろ) [一言] なんかとてもちせいがあふ…
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