表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/95

黒夜(1)

 あまりにも壮絶な話に、頭がクラクラする。


 舞泉さんが言うようなことが、まさかこんなにも身近に起きていただなんて、信じられない思いである。



「次の話に移ろうか」


と、舞泉さんが切り出す。


 舞泉さんが知っている布瀬川校長の悪事は、これにとどまらないらしい。



「次は、ある意味では澪葉以上に悪魔によって人生を乱された被害者――水城時雨についてだ」



 え!? 水城先輩も、布瀬川校長の魔の手に堕ちていただなんて――



「舞泉さん、本当!? 水城先輩も、その、布瀬川校長に……」


「そうだ。時雨も、澪葉と同じく、飛んで火に入る夏の虫だったのだ」


 ということは、つまり――



「校長室に呼び出されて指導を受けていたということ?」


「そうだ。なぜなら、時雨は、シャンゼリアのレジのお金に手を出した張本人だからな」



――そんな。レジのお金を盗んだのは、澪葉さんではなく、水城先輩だったのか。



 たしかに、梓沙の報告によれば、澪葉さんがシャンゼリアでバイトしていた時期に、水城先輩もシャンゼリアでバイトをしていた。


 シャンゼリアのレジに触れられるポジションにあった以上、水城先輩が「真犯人」だ、というのはあり得ない話ではない。


 しかし――



「舞泉さん、どうして水城先輩がレジのお金に手を出さなきゃいけなかったの!? 水城先輩みたいに、気品があって、美しい人が……」


「シモベ君、随分と時雨を買い被ってるのだな。簡単な話だ。時雨はお金に困っていたのだ」


 え!? そんなの初耳である。



「我は生前の時雨のことはよく知らぬが、レジのお金、しかも、云十万というお金に手を出す理由はほかにないだろう? 生前の時雨を知っているシモベ君には、何か心当たりはないか?」


「そんな心当たりなんて……」



――いや、待てよ。たしか――



「思い出した。ポップソング部の打ち上げでスパークルパークに行った時、水城先輩は、1人だけ軽食を買いに行かなかったんだ」


 あれはダイエットのためだと思っていたが、節約のためだったのか。



「いずれにせよ、時雨が貧乏だった、というのが、我の推理には欠かせない要素なのだ。時雨は貧乏であったがゆえに、レジのお金に手を出した」


「……でも、それは澪葉さんのせい、ということになったんだよね?」


「そのとおりだ。学校の噂によれば、その責任を取り、澪葉は学校を退学になり、そのショックで入水自殺をした、となったとされているのだから。時雨は、強い罪悪感に苛まれたことだろう」


 時雨先輩は、優しい人である。それはおそらく耐え難いことだったに違いない。



「しかも、怪談話によれば、澪葉の霊は、音楽室を睨みつけていたのだ。時雨は、それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものだと考えた」


 それが、水城先輩の解釈するところの怪談の意味だったのか。

 水城先輩が震え上がったであろうことは、容易に想像できる。



「ゆえに、あまりの罪悪感に耐えられなくなった時雨は、最悪の選択をしてしまう」


「最悪の選択?」


「あろうことか、校長室に自ら赴き、悪魔に対して、シャンゼリアのレジのお金を盗んだのは自分である、と懺悔してしまったのだ」


 それは、たしかに最悪の選択である。


 それにより、水城先輩が、悪魔の次の標的にされてしまったのだから。



「時雨は、千翔高校屈指の美女だから、時雨が罠に飛び込んで来たことで、悪魔は感激したことだろう。しかし、1つ問題があった」


「問題?」


「女学生徒を襲うためのベッドがないのだ。そのための円形校舎が澪葉によって使われてしまってるからな」


 それは「問題」といえば、問題なのかもしれない。



「ゆえに、悪魔はまず、校長室にソファーベッドを新調したのだ」


「……よく知ってるな」


 そう口を挟んだのは、布瀬川校長だった。



「前回校長室に呼ばれた際に確認したのだ」


 たしかに舞泉さんは、あの時、ソファーを指で押して感触を試していた。



「あの時、新しいソファーは、広げることでベッドとしても使えるソファーベッドだと我は確認した」


「舞泉君、そんな余計なことまで確認をしていたのか……」


 「確認したのはそれだけではない」と、舞泉さんはニヤリと笑う。



「あの時、我は悪魔に質問した。『校長の執務は、家に帰れないほどに忙しいのか?』と。それに対して、悪魔は、『毎晩家には帰れている』と返答した」


 たしかにそのようなやりとりがあった。


 当時の僕には、サッパリ意味の分からなかったやりとりである。



「我はその時に、悪魔が良からぬ目的でソファーベッドを新調した可能性に気付いたのだ。わざわざソファーベッドを買ったのは、自分が寝るのに使うわけではない、と悪魔は自白したわけだからな」


 なるほど。舞泉さんの質問は、そのことを確かめるためだったのか。


 「小学生の職業インタビューみたい」などと勘違いしてしまった自分が恥ずかしくなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そ、そういう意図の質問だったのか(;゜Д゜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ